芝大門にある「つるべ」を訪ねた。
芝明神から第一京浜側に僅か100m。
「魚がうまい」という触れ込みで、以前から行ってみたかったお店だ。
お店の看板にはこうある。
「旬珍魚丸楽食処」
おぅ、これは期待できる。
魚出すとこに銘酒あり、と。
しかも、カウンターだけの店内はいつも賑わっていた。何度かお店の前を通りかかり、その盛況は居酒屋好きを奮いたたせた。
こうして、雨が降りそぼる晩春のある日、Sちゃんを誘い、お店を訪れることにしたのである。
店の前に辿り着くと、昔ながらの薄い引き戸の向こう側は案の定大勢の客で賑わっていた。見たところ、席はひとつも空いてそうにない。
しかし、一応店内に入って確認することにし、自分らはガラリと引き戸を開けてみた。すると、意外な反応が返ってくる。
「2階へどうぞ」
えっ、この店2階もあるのか。自分とSちゃんはお互いの顔を見わたした。
2階のスペースは頗る狭かった。
4人がけのテーブルが3卓のみ。1階の活気に満ちた雰囲気とは全く違う、荒涼とした飛び地のような酒処が広がっていた。
ホントに1階のお店と同じ店なのか、そうやって疑ってしまいたいくらいに、その雰囲気は異なるところだった。
瓶ビールで喉をうるおし、いざ注文といった段で女性店員に「お奨めは?」と聞くと、「分かりません」と日本人離れしたイントネーションで返答するのであった。
恐らく、ホントに推測だが、1階にいれば、好みの酒や肴など適切なアドバイスをしてくれることだろう。
そうであるからこそ、1階のカウンターだけのお店が立錐の余地のない繁盛っぷりを見せているはずだ。
だが、2階のテーブル席には、そうした酒を飲む適切な相談相手が居なかったのである。
仕方なく、自分らは漁師料理の定番「なめろう」とポテトサラダを頼むのであった。
ここで、酒は高知の酒「酔鯨」(酔鯨酒造)をチョイス。やはり、「なめろう」にはキレのいい酒で臨まないと失礼に価する。こうして、自分らはうまい酒と魚を食べる臨戦態勢を整えたのである。
しばらくして「なめろう」と銚子に入った「酔鯨」が運ばれてきた。
手間をかけた「なめろう」は店の蛍光灯に反射し、てらてらと鈍い光を湛えている。
早速、「なめろう」を箸で掬い口に運んだあと、猪口に入った「酔鯨」を飲る。
いやぁ、溜まらんねぇ、この一瞬。まさか、東京の中心地でこんな贅沢を味わってもいいのか、そんな後ろめたさを感じさせるほどの旨みである。
そうこうしているうちに、今度は「鯵の刺身」が突き出しとしてテーブルに運ばれてきたのであった。
「頼んでないよ」と異国の女性店員に告げると、
「お通しです」
などと答える。えっ、注文した料理より、「お通し」が後にでてくるのかなどと思いながら、鯵刺しをつついてみると、鯵特有の鮮烈な味わいが出てこない。
何か気が抜けたような味が口の中でパァ~っと広がったような気がした。
同店は「相模湾で獲れた魚」という触れ込みである。普段はトレーサビリティなんて気にもしないのだが、何となくこの鯵には新鮮味が感じられない。妻の実家で食べるお父さんが釣ってきた、さよりやスズキのほうが断然にうまい。きっと1階で店員さんと相対していれば、仕入れに関する小噺も聞けるのだろうが、いかんせんここの2階は忘れられた地のように別世界なのだ。
酔鯨の銚子を転がし、次なる酒を注文する。
「お奨めの焼酎は?」と店員さんに聞きたいとこだが、2階には異国の女性しかいない。ここはSちゃんと協議し、芋焼酎「明るい農村」(霧島町蒸留所)を選んだ。
Sちゃんはお湯割り。自分は水割りで。
Sちゃん曰く「芋焼酎の醍醐味はお湯割りにある」と断言する。「お湯でなければ香りが開かない」ともいう。
尤もな意見だと思う。
けれど、芋によってはお湯割りにして当たりはずれがあるように思う。更に言えば、水で割っても、鼻に抜ける香りで、芋の醍醐味は充分に堪能できると自分は思う。これは好きか、嫌いかという問題だろう。
その点、「明るい農村」は当たりの芋焼酎だった。アヤムラサキという赤芋でこしらえているそれは芋独特の臭みをまろやかにした稀有な焼酎だ。
2杯目はロックでいただいてみた。口の中で溶け込むような甘みが拡がった。
そうこうするうち、1階が騒がしくなった。誰かが喧嘩しているようであった。
後に2階にあがってきた店員に話しを聞くと、あるお客さんが所持金が乏しいため、お勘定を払えなく、逆ギレしたとのことだった。
「オレを誰だと思っているんだよ!」
その人は店員にそう言ったという。
「誰なんだよっ」
店員はそう応酬したらしい。
よくも悪くも1階と2階は別世界であった。
今度来るときは必ず1階に陣取ろうと思う。
そして、旨い魚の出自と旨い酒の手ほどきをうけようと思う。
芝明神から第一京浜側に僅か100m。
「魚がうまい」という触れ込みで、以前から行ってみたかったお店だ。
お店の看板にはこうある。
「旬珍魚丸楽食処」
おぅ、これは期待できる。
魚出すとこに銘酒あり、と。
しかも、カウンターだけの店内はいつも賑わっていた。何度かお店の前を通りかかり、その盛況は居酒屋好きを奮いたたせた。
こうして、雨が降りそぼる晩春のある日、Sちゃんを誘い、お店を訪れることにしたのである。
店の前に辿り着くと、昔ながらの薄い引き戸の向こう側は案の定大勢の客で賑わっていた。見たところ、席はひとつも空いてそうにない。
しかし、一応店内に入って確認することにし、自分らはガラリと引き戸を開けてみた。すると、意外な反応が返ってくる。
「2階へどうぞ」
えっ、この店2階もあるのか。自分とSちゃんはお互いの顔を見わたした。
2階のスペースは頗る狭かった。
4人がけのテーブルが3卓のみ。1階の活気に満ちた雰囲気とは全く違う、荒涼とした飛び地のような酒処が広がっていた。
ホントに1階のお店と同じ店なのか、そうやって疑ってしまいたいくらいに、その雰囲気は異なるところだった。
瓶ビールで喉をうるおし、いざ注文といった段で女性店員に「お奨めは?」と聞くと、「分かりません」と日本人離れしたイントネーションで返答するのであった。
恐らく、ホントに推測だが、1階にいれば、好みの酒や肴など適切なアドバイスをしてくれることだろう。
そうであるからこそ、1階のカウンターだけのお店が立錐の余地のない繁盛っぷりを見せているはずだ。
だが、2階のテーブル席には、そうした酒を飲む適切な相談相手が居なかったのである。
仕方なく、自分らは漁師料理の定番「なめろう」とポテトサラダを頼むのであった。
ここで、酒は高知の酒「酔鯨」(酔鯨酒造)をチョイス。やはり、「なめろう」にはキレのいい酒で臨まないと失礼に価する。こうして、自分らはうまい酒と魚を食べる臨戦態勢を整えたのである。
しばらくして「なめろう」と銚子に入った「酔鯨」が運ばれてきた。
手間をかけた「なめろう」は店の蛍光灯に反射し、てらてらと鈍い光を湛えている。
早速、「なめろう」を箸で掬い口に運んだあと、猪口に入った「酔鯨」を飲る。
いやぁ、溜まらんねぇ、この一瞬。まさか、東京の中心地でこんな贅沢を味わってもいいのか、そんな後ろめたさを感じさせるほどの旨みである。
そうこうしているうちに、今度は「鯵の刺身」が突き出しとしてテーブルに運ばれてきたのであった。
「頼んでないよ」と異国の女性店員に告げると、
「お通しです」
などと答える。えっ、注文した料理より、「お通し」が後にでてくるのかなどと思いながら、鯵刺しをつついてみると、鯵特有の鮮烈な味わいが出てこない。
何か気が抜けたような味が口の中でパァ~っと広がったような気がした。
同店は「相模湾で獲れた魚」という触れ込みである。普段はトレーサビリティなんて気にもしないのだが、何となくこの鯵には新鮮味が感じられない。妻の実家で食べるお父さんが釣ってきた、さよりやスズキのほうが断然にうまい。きっと1階で店員さんと相対していれば、仕入れに関する小噺も聞けるのだろうが、いかんせんここの2階は忘れられた地のように別世界なのだ。
酔鯨の銚子を転がし、次なる酒を注文する。
「お奨めの焼酎は?」と店員さんに聞きたいとこだが、2階には異国の女性しかいない。ここはSちゃんと協議し、芋焼酎「明るい農村」(霧島町蒸留所)を選んだ。
Sちゃんはお湯割り。自分は水割りで。
Sちゃん曰く「芋焼酎の醍醐味はお湯割りにある」と断言する。「お湯でなければ香りが開かない」ともいう。
尤もな意見だと思う。
けれど、芋によってはお湯割りにして当たりはずれがあるように思う。更に言えば、水で割っても、鼻に抜ける香りで、芋の醍醐味は充分に堪能できると自分は思う。これは好きか、嫌いかという問題だろう。
その点、「明るい農村」は当たりの芋焼酎だった。アヤムラサキという赤芋でこしらえているそれは芋独特の臭みをまろやかにした稀有な焼酎だ。
2杯目はロックでいただいてみた。口の中で溶け込むような甘みが拡がった。
そうこうするうち、1階が騒がしくなった。誰かが喧嘩しているようであった。
後に2階にあがってきた店員に話しを聞くと、あるお客さんが所持金が乏しいため、お勘定を払えなく、逆ギレしたとのことだった。
「オレを誰だと思っているんだよ!」
その人は店員にそう言ったという。
「誰なんだよっ」
店員はそう応酬したらしい。
よくも悪くも1階と2階は別世界であった。
今度来るときは必ず1階に陣取ろうと思う。
そして、旨い魚の出自と旨い酒の手ほどきをうけようと思う。
怪鳥のホームですよっ!!
時間が短い?
あれっ?9連休を目一杯使ったんじゃないの?
まぁ、詳しい話しは次回にでも。
ゆっくりできましたか?
しっかりとビールにありつけたかな?タイ国境に近いからウイスキー「メコン」とかも手に入ったのではないでしょうか?
さて、昔、津田沼の超暇そうな居酒屋に入ったとき、明らかに店員は我々の話を聞いていた!
小さい声でメニューを決めていると、まだ頼んでもいないのに、それらが運ばれてきたことがありました。
イヤらしい居酒屋だったなぁ。
それにしても、今回の居酒屋は1階と2階が天と地との差があったなぁ。
1階はあんなに熱気があるのに・・・・・。