重い扉を開くと、そこは漆黒の闇。一体どこに連れて行かれるのか、一抹の不安が頭をもたげる。
インセンスの香りが廊下を満たし、やがてヒンドゥのどこかで見たような神の像が現れると、そこはもう日常の空間からだいぶ遠ざかってしまったような気になっていく。
狭くて真っ暗な廊下。
知らない者なら、一体誰がここを酒場と考えるだろうか。
フロントのようなところで、店員に会う。
「2人です」と連れが告げると、そのスタッフは静かに我々を案内する。
そして、また暗い階段。
3階くらいまで昇っただろうか。そこのフロアにゲルの形をした蚊帳が幾つか設えられ、ロウソクの灯りがぼんやりと点る。どうやら、ここが席のようだ。
蚊帳のようなレースの布は微妙に中を見通せる。
お香の香りが少し緊張を解くが、それでもまだ緊張している。
ビールを頼んだ。
生ビールは「一番搾り」。
ヒーリングの音楽が心地よく流れ、一口ビールを飲むと、ようやく落ち着いてきた。
絨毯はキリム。座布団はどこかのアジアでみたようなエスニック調のそれ。
酒肴は変わった趣向を凝らす。
「ハイジのチーズフォンデュ」
「女王蜂チーズ」
「バチカン帝国のロールキャベツ」などなど。
安心して食べられそうなものと言ったら「ベトナムの生春巻き」くらいか。
ビールには「大麻ビール」などというものもある。
大麻の香りがするという代物らしいが、まさかバングビールではないだろう。
怪しい、妖しい。
いろんな言い方ができる。
ヒーリング、リラクセーション、これもいろんなことがいえる。
でも、なんとなく落ち着かないのは気のせいだろうか。
何か、KKKのような白装束のような人が出てきたりはしないだろうか。
トイレに立ったが、ものの見事に自分の席が分からなくなった。この店のビギナーはリラックスどころではないかもしれない。
ビールを飲み干して、「レッドアイ」を頼んだ。
ちょっと薄め。
「レッドアイ」は昨日行った「Pa’INA Aloha Table」の方が断然おいしかった。
しかし、これだけ徹底された癒しの空間作りは始めてみた。
部屋は真っ暗、インセンスの香りと音楽、一瞬のうちに非日常の世界に誘われるのは、まさに遮断の世界。
癒されたような、でも少し緊張したような、ちょっと微妙な経験となった。
※画像は同店のHPより拝借しました。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます