「関所」に行ったものだから、「信濃路」への思いが脳に刷り込まれてしまったか。ボクは終業を前にして山手線に乗り、鶯谷で降りた。
「信濃路」に来るのは、何年ぶりだろうか。それは、まだ「居酒屋放浪記」時代に遡り、ロットナンバーは「0123」。だから多分、もう11年は来ていない。毎日のように電車の車窓から店を眺めているのに。
星野道夫さんのエッセイ、「もうひとつの時間」を思い出す。ボクが通勤電車に乗ってる時間とは違う時間があの酒場には流れているのだろうと。
かくして、16時20分に入店した「信濃路」には、全く違う時間が流れていた。
素性の分からないおじさんが2~3人。どうみてもサラリーマンではない。ボクはカウンターに腰かけて、厨房に「ホッピー」を頼む。
カウンター越しからは、厨房の様子が見えない。皿やキッチンのシステムが厨房の視界を遮る。注文したホッピーは、微かに狭いその隙間から、にゅっと出る。店員も客も顔を合わせることがない。それはまるでラブホのフロントのようである。さすが、区内屈指のラブホの街だ。
つまみのメニューの多さに改めて驚く。しかも、全てが安い。
まずは「赤ウィンナー」。
例の如く、顔が見えない、手元だけのやりとり。
しかし、素朴だ。素朴すぎる。昔ながらの赤いウィンナーが実に6本。十分すぎるつまみである。
そして、「チーズカリカリ揚げ」。
またしても、受け渡しはフェイストゥフェイスではない。
これって、形こそ違えど、「晩杯屋」の「チーズカリカリ」じゃないか。
うん。うまい。
赤ウィンナーといい、チーズカリカリといい、これって今をときめく酒場の人気メニューじゃないか。もしや、「信濃路」のメニューをヒントにした店もあるのではないか。
24時間営業のこの店には、独特の時間が流れている。それは夜の街ならではの非日常の時間かもしれない。すぐ横を走る通勤列車に揺られる時間とは全く違うのである。
■ 「信濃路 鶯谷店」の過去記事
メニューが多すぎて、「チーズカリカリ揚げ」ってあったけ?と思って、検索したら、画像が出てきました。それをクリックしたら、ひざげりさんの食べログのレビューでした。
https://tabelog.com/tokyo/A1315/A131503/13008261/dtlrvwlst/B304865713/
初蒲田だったのですか?
昔、蒲田に会社がありました。でももう、かれこれ1年くらい行っていません。