インディラガンジー空港のターミナル3の清潔さといったら、ここがインドかと、思わず疑ってしまうほど。
2010年に竣工したターミナル3はかつての薄暗い空港とは隔世の感がある。
1週間のインド滞在を終え、ボクは帰国の途についていた。
余ったルピーでビールを飲もうと、空港内を右往左往していた。手元にあるルピーは100ルピー余り。これだけあれば、1週間は暮らせるなどと、かつてのバックパッカー時代の感覚でついつい考えてしまうが、あれから20年、インドの物価は激しく上昇していた。
マクドナルドを覗いてみた。マハラジャバーガーでも食べながら、ビールでも飲もうかと思ったが、コンボでも70ルピーする。これではビールは到底買えないだろからやめた。
しばらく、空港内を歩いた。
すると、「SPORTS BAR」と書かれたバーを見つけた。入りやすそうだ。
今回のインドでは一度だけ、バーに入った。メトロの駅、「Viveka Vihar」の改札を出た駅ナカにあるバー。エアコンが効いた高級そうな店に入ったが、高そうなのでやめた。インドでは酒を飲む施設は限られている。日本のように公共の場において、気軽に飲めるわけではない。
だから、西側諸国の雰囲気で「SPORTS BAR」という店舗を見たとき、思わず感動した。
店頭に飾られたメニューを見ると、「キングフィッシャー」があるらしい。
だが、1杯110ルピーもする。おいおい、3ドルかよ。
too expensive!
ポケットの小銭を集めたら、なんとか110ルピー程度はありそうだった。あとは、サービス料みたいなものがかからなければいいなと思い、最悪カードで支払えばいいだろうと、店に入った。
ボクはカウンターに座り、「キングフィッシャー」をオーダーした。
日本人が知る最も有名なインドビールが恐らく「キングフィッシャー」であろう。けれど、インドでは必ずしも、ポピュラーなビールではない。町中にある酒屋に殺到するインドの飲んだくれが選ぶのは、ほとんどが「キングフィッシャー」以外の銘柄である。多分、値段が高いからであろう。
ともあれ、都会的なインドの若い女性が注いでくれたグラスの「キングフィッシャー」が目の前に置かれた。
冷えたビールである。インドにおいて、冷えたビールが出てくるのは珍しい。大抵の場合、ビールは常温である。20年前のバックパッカー時代、常温のビールを何度飲んだことか。常温といっても、日本の常温とは違う。カンカン照りの外に出ているビールならば、日本で言うところのぬる燗に相当するくらいの常温ビールが出てくることもしばしばだった。
その冷えた「キングフィッシャー」を飲んだ。
うまい。さすが樽生。
ちょっとドライなピルスナー。ビールはやはり現地で飲むに限る。
過日、タイの代表的なビール「シンハー」の樽生を上野で飲む機会があったが、全然おいしくなかった。あれは、やはりタイの気候の中で飲むからおいしいのだろう。
7日間のインド滞在が終わろうとしている。
ここに来るのに、20年の時間がかかってしまった。19歳の大学生だった、ボブネッシュは2児の父親になっていた。いや、あのとき、ボブネッシュは、ボクに彼女を紹介し、その後、「自分は彼女とは結婚できない」と泣いたんだっけ。その2人が今や結婚し、2児の子どもを授かっていた。その長い時間を思い返してみる。
次にまたインドに来るのはいつのことだろうか。
そんなことを思いながら、ボクは「キングフィッシャー」を一気にあおった。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます