タクシーの運転手に紹介された店に行く気力がなかった。炎天下の中を実証実験にほぼ1日付き合い、スーツもシャッツももうよれよれだった。だから、JR川越の駅に着いたとき、店を選ぶ余裕もなく、目の前に見えた安酒のチェーン店「かぶら屋」に入ってしまったのだった。
席に通され、崩れるように席に座ったオレはすぐさまこの店に入ったことを後悔した。店が自分と同じように、よれよれになってみすぼらしかったからである。
「かぶら屋」は何度か入ったことがあった。
初めて入ったのは蒲田。次に入ったのが新宿の東口である。このチェーン店のコンセプトはわざと昭和レトロ調にした駄菓子屋さん的ノスタルジーを訴求しているのだが、この店は演出ではなく、本当にみすぼらしかった。時間の堆積が店を味わい深いものにするか、それとも不衛生なものにするかは店次第ではあるが、この川越店は明らかに後者だった。
みすぼらしい自分にみすぼらしい店。
「誰もサタジット・レイの映画など見たくはない」(沢木耕太郎)のである。
ともあれ、入ってしまったのは仕方ない。まずは生ビールと「モツ煮」(280円)を頼んだ。
そういえば、新宿の「かぶら屋」で頼んだ「モツ煮」のぬるかったことが突如フラッシュバックしてくる。
あぁ、二度と来ないと思った店にまた入っている自分に再び嫌気がさす。
「オレちょっと、疲れているのかな」
これだったら、川越の駅で吉野家と駅のおそば屋がコラボレートした店でかき揚げでもつまみながら、ビールを飲めばよかったなと思えてくる。
ともあれ、「モツ煮」は一応はまともだった。スーパードライの生ビールもまず普通だった。
蒸し暑いから、この店の「黒おでん」はパスすることにして、串焼きをひととおり頼んでみた。
カシラ、ハラミ、タン、レバー、ハツとシロ(各80円)。
そうそう、「かぶら屋」の串焼きは1本が80円なのである。身の大きさはそれなりで、特筆するものはないが、モツ焼き屋界に価格競争を持ち込んだ同店のインパクトはかなり大きかったと思う。
だが、鶯谷の「ささのや」は「かぶら屋」よりも大きな身であるにも関わらず1本が70円である。これに比べると「かぶら屋」のそれは、身が硬くどこか貧相だ。
その串焼きがわたしの目の前に出てきて、わたしはまたみすぼらしい気持ちになった。
まるで自分を見ているかのようだった。
壁に貼られたビール会社のポスターが哀れだった。
厨房のピカピカに光るシステムが店内とちぐはぐだった。
注文を聞きに回るアルバイトの女の子は義務的だった。
背中の汗がようやく乾いてきたけれど、このままずっとここにいるのも情けなくなったので、1杯のビールだけで店を後にした。
「ちょっと疲れただけ」
店の扉を閉め、ため息と一緒に言葉が無意識に口にでた。
席に通され、崩れるように席に座ったオレはすぐさまこの店に入ったことを後悔した。店が自分と同じように、よれよれになってみすぼらしかったからである。
「かぶら屋」は何度か入ったことがあった。
初めて入ったのは蒲田。次に入ったのが新宿の東口である。このチェーン店のコンセプトはわざと昭和レトロ調にした駄菓子屋さん的ノスタルジーを訴求しているのだが、この店は演出ではなく、本当にみすぼらしかった。時間の堆積が店を味わい深いものにするか、それとも不衛生なものにするかは店次第ではあるが、この川越店は明らかに後者だった。
みすぼらしい自分にみすぼらしい店。
「誰もサタジット・レイの映画など見たくはない」(沢木耕太郎)のである。
ともあれ、入ってしまったのは仕方ない。まずは生ビールと「モツ煮」(280円)を頼んだ。
そういえば、新宿の「かぶら屋」で頼んだ「モツ煮」のぬるかったことが突如フラッシュバックしてくる。
あぁ、二度と来ないと思った店にまた入っている自分に再び嫌気がさす。
「オレちょっと、疲れているのかな」
これだったら、川越の駅で吉野家と駅のおそば屋がコラボレートした店でかき揚げでもつまみながら、ビールを飲めばよかったなと思えてくる。
ともあれ、「モツ煮」は一応はまともだった。スーパードライの生ビールもまず普通だった。
蒸し暑いから、この店の「黒おでん」はパスすることにして、串焼きをひととおり頼んでみた。
カシラ、ハラミ、タン、レバー、ハツとシロ(各80円)。
そうそう、「かぶら屋」の串焼きは1本が80円なのである。身の大きさはそれなりで、特筆するものはないが、モツ焼き屋界に価格競争を持ち込んだ同店のインパクトはかなり大きかったと思う。
だが、鶯谷の「ささのや」は「かぶら屋」よりも大きな身であるにも関わらず1本が70円である。これに比べると「かぶら屋」のそれは、身が硬くどこか貧相だ。
その串焼きがわたしの目の前に出てきて、わたしはまたみすぼらしい気持ちになった。
まるで自分を見ているかのようだった。
壁に貼られたビール会社のポスターが哀れだった。
厨房のピカピカに光るシステムが店内とちぐはぐだった。
注文を聞きに回るアルバイトの女の子は義務的だった。
背中の汗がようやく乾いてきたけれど、このままずっとここにいるのも情けなくなったので、1杯のビールだけで店を後にした。
「ちょっと疲れただけ」
店の扉を閉め、ため息と一緒に言葉が無意識に口にでた。
今が大切なとき。