京都の立ち飲み屋が急速な発展を遂げている。数年前までは、その誇り高いプライドのせいか、立って飲む店は極端に少なかったが、ひとたび市民権が得られるや、今や立ち飲み屋が林立しつつある。しかも、さすが京都という質の高い店が多いのが特徴だ。
この「もみじ」という店も評判がいい。食べログの得点は3.53(2018年2月4日現在)である。一方、過日足を運んだ、「いなせや」も3.53(同)。互角の評価である。なお、友人MJが絶賛する「すいば 四条河原町店」(「居酒屋さすらい」未訪店)は3.58(同)、メディアでの露出が多い「井倉材木」(「居酒屋さすらい」未訪店)は3.56(同)。京都の立ち飲みニューカマーは総じて評価が高いのだ。
「もみじ」は河原町、四条大橋の手前、高瀬川沿いに店を構える絶好のシチュエーション。しかも正午から開店するというご機嫌な店である。ちなみに京都立ち飲みの老舗「たつみ」も12時からだから、さてどっちへ行こうかと思わず迷ってしまう。そういえば、この高瀬川沿いを歩いていると、昔ふらいんぐふりーまん師と一緒にナンパしたことをついつい思いだしてしまう。
「もみじ」は落ち着いた外観だが、出入り口がビニールシートになっており、そこでボクは少しがっかりした。東京でビニールシートを使う店は大抵駄店だからである。店内は10坪くらい。雑然としており、節操のないレイアウト。頭上にテレビがぶら下がり、大きな音で昼下がりの番組を映している。壁一面には落書きのようなものがかかれ、無造作にメニューが貼り付けられている。一見すると、ちょっとだらしないような店である。
客はボクひとりだった。
店内を一望すると、日本酒のキーワードが目に着いた。
「日本酒好きの店員が選んできたお酒を日替わりで」。
ほほぅ。日本酒か。いいじゃない。
その日本酒好きな店員なのか分からないが、とにかくちゃきちゃきした女性の店員さんが出てきた。「おすすめの日本酒はなんですか」。ボクが女性に尋ねると、「『もみじ』をお勧めしますね」と言う。お、店の名前と同じじゃないか。もしかすると、「もみじ」はそのお酒からきているのか。
1合500円。まぁまぁいい値段だ。
日本酒ならば、肴は魚がいい。メニューを見ると、魚介ものが豊富だ。
「本日の魚」がホワイトボードにびっしりと書きこまれている。
「ナガスクジラ」刺しとタタキ。
お、鯨か。これが480円。
「ヒラマサ」450円。
魚の全てに地域名がかかれている。多分、水揚げされた地域名だろう。
中には知らない名前の魚もいる。
「ツバス」。聞いたこともない。
その中から選んだのが「サワラ 炙り」。
これが僅かに420円。ちょっと信じられない値段だ。
肉厚の中トロが5切れ。これをかぼすを絞っていただく。
まるで口の中でとろけるようだ。うまし。
しかも、ご当地京都の酒、「もみじ」とよく合う。やはり、地酒はその土地で飲まなければならない。
あまりにもおいしいので、もう1杯おかわりしてしまった。
実は、ふらいんぐふりーまん師から、「立ち飲みに寄らずに早く来いよ」と言われていたので、「もみじ」×2杯と「サワラ」のみで退散。慌ただしく店を後にしたのだった。
ちなみに、「もみじ」の店内には11月11日、「立ち飲み」の日開催のポスターが貼られていた。東京ではもうとっくに終わってしまった「立ち飲みの日」。それが今も脈々と受け継がれていることに驚きを感じる。なお、京都駅近くの立ち飲み「天空の立ち呑み とさか」でも「立ち飲みの日」(「居酒屋さすらい」未収録)を開催していた。京都はまだまだ「立ち飲みの日」が盛り上がっているようだ。
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