とにかく腹ペコだった。十条に降りたら、腹にたまるものが食べたい。その小さな望みを叶えてくれるとしたら、「天将」か「三忠食堂」だろう。だが、なんということか。店の前まで行ってみると両店舗とも休業日だったのだ。いきなり奈落の底に突き落とされた気分になった。これは困ったことになった。さて、どこへ行こうかと思案していると、目の前に町中華が現れた。「三忠食堂」の数軒隣にある「王華」という店である。
店舗外観がごちゃごちゃしている。看板には店のアピールポイントを大きく謳う。「安くてボリューム満点」と。でも、自ら謳う店でそうであった試しはあまりない。手作り餃子をウリにしているのか、看板の周囲に電飾を点けて、殊更アピール。正直、嫌な予感がする店だ。このプレモダン感は昭和の店主だろう。しかしながら、自分の空腹感はもう限界。店に入ることにした。
店は本当に小さなこじんまりとした店内だった。テーブル4卓にL字のカウンター。自分はカウンターにフィッティングした。
さて、「瓶ビール」550円か。まずまず。町中華とすれば安くもないし、高くもない。焼酎系は300円から。これも町中華水準だ。
まずは「玉露割」(350円)から。
小さな柿ピーが添えられて出てきた。その「玉露割」は鮮やかなグリーン。濃さは平準。もちろん、「光栄軒」には及ばないし、「三忠食堂」にも。
さて、つまみをどうするか。何度も言うように、腹が減っている。すぐにごはんでもOKなくらい。
ホワイトボードを見ると、「焼肉定食」がお得であると示されている。通常780円が730円に。ここでもやはり思う。いや、思わざるをえない。780円、いやたとえ730円だとしても、その金額でら決して安いとは思えないのだ。同店自慢の餃子の注文には躊躇した。皮まで手作りを謳う、餃子はやはり一食の価値がある。だが、「ボリューム満点」という「焼肉定食」で「餃子」を食べられるか、一抹の不安があったのだ。
お店のおばさんにとりあえず「焼肉定食」と「玉露割」のおかわりをオーダーした。お店はそのおばさんと厨房の男性で切り盛りをしている。おばさんといっても、かなり高齢だ。お店の男性は意外にも若い。ふと、台東の「勝太楼」を思い出した。この店も老親のおばあさんと息子と思しき男性の二人三脚で切り盛りしていた。「王華」もその可能性がある。厨房の男性は、自分くらいの年齢だ。店のごちゃごちゃした外観は、この男性の趣味ではないだろう。彼のひとつ上の世代のトレンドだ。すると、彼は二代目なのか。それとも三代目なのか。
やがて、「焼肉定食」が眼前に。
「ボリューム満点」というのは些かオーバーではある。ただ、丼飯というのが嬉しい。これなら「餃子」も食べられるなと思い、よっぽどオーダーしようか悩んだが、時間がかかるのが嫌なのでやめた。手延べの餃子は次回の課題にしよう。
多分、町中華は今、事業承継の波にあるはずだ。昭和40年代にオープンした店の主は80歳を迎えつつあり、店の存続か廃業かの選択に迫られている。多くの店は後者を選択する、或いは選択せざるを得ない状況と思われるが、こうして世代交代した店、世代交代できた店を見ると、ついつい応援したくなってしまう。
また来よう。自慢の「餃子」を食べに。
ご飯つけると定食になってそれで完結ですが、単品だと「このお客さんはもう1種類オーダーしてくれるのかしら?」って。
まぁお腹の空き具合にもよりますが。
ジャンさん。
本文に記載しませんでしたが、単品の表示がありました。まぁ、メニューになくても、飲める町中華なら、言えば大体やってくれるような気がします。
単品なら、2品は頼みたいです。