「陽射しがとても強いわ」。
大隈講堂を出た彼女は、独り言のようにそう言った。
6月の晴れ間はもうすっかり夏のそれだった。
「ビール、飲みに行こう」。
それが、ボクの返事だった。
タフな話しが心の中に鉛のように沈殿していき、空腹感はなかったけれど。
ヱビスのスタウトを飲みながら、彼女のフランス語の抑揚を聞きたいと思った。
「ヱビス麦酒館」には「Le Petit Prince」の原書が置いてある。「チーズの盛り合わせ」なんかよりも「ピクルス」なんかよりも、彼女の声でビールが飲みたかった。
だが、迂闊だった。
恵比寿ガーデンプレイスは人もまばら。
「ヱビス麦酒館」は月曜日、休館だったのだ。
4か月前、札幌は雪だった。
煉瓦の赤は白い雪にきれいに映えた。でも、少し陽炎がゆらぐ、白い雲が茜色に染まる6月の煉瓦も悪くはない。
「ビヤステーション恵比寿」は西ヨーロッパの駅のような外観。
4時を過ぎたばかりの店はまだお客がほとんどいなかった。
バルコニー席に座り、「ザワークラウト」(580円)をつまみながら「スタウト」(840円)を口にする。
スタウトの苦味とドイツ料理の爽やかさ。
フランスの甘い抑揚はないけれど。
漆黒のローストビールの薫りが夕方の風に溶けていき、ビルの向こうの空が淡い色に染まっていく。
季節がまた変わろうとしている。
憂鬱な梅雨?
うぅん。
今は雨の季節が待ち通しくさえ感じる。
※写真は同店の「ぐるなび」より拝借しました。
大隈講堂を出た彼女は、独り言のようにそう言った。
6月の晴れ間はもうすっかり夏のそれだった。
「ビール、飲みに行こう」。
それが、ボクの返事だった。
タフな話しが心の中に鉛のように沈殿していき、空腹感はなかったけれど。
ヱビスのスタウトを飲みながら、彼女のフランス語の抑揚を聞きたいと思った。
「ヱビス麦酒館」には「Le Petit Prince」の原書が置いてある。「チーズの盛り合わせ」なんかよりも「ピクルス」なんかよりも、彼女の声でビールが飲みたかった。
だが、迂闊だった。
恵比寿ガーデンプレイスは人もまばら。
「ヱビス麦酒館」は月曜日、休館だったのだ。
4か月前、札幌は雪だった。
煉瓦の赤は白い雪にきれいに映えた。でも、少し陽炎がゆらぐ、白い雲が茜色に染まる6月の煉瓦も悪くはない。
「ビヤステーション恵比寿」は西ヨーロッパの駅のような外観。
4時を過ぎたばかりの店はまだお客がほとんどいなかった。
バルコニー席に座り、「ザワークラウト」(580円)をつまみながら「スタウト」(840円)を口にする。
スタウトの苦味とドイツ料理の爽やかさ。
フランスの甘い抑揚はないけれど。
漆黒のローストビールの薫りが夕方の風に溶けていき、ビルの向こうの空が淡い色に染まっていく。
季節がまた変わろうとしている。
憂鬱な梅雨?
うぅん。
今は雨の季節が待ち通しくさえ感じる。
※写真は同店の「ぐるなび」より拝借しました。
今や北方氏は歴史小説の大家になったね。