働き方や価値観の多様化により、労働組合組織率の下降傾向が止まらない。
昭和24年に55.8%であった推定組織率は、令和4年には、全体で16.5%、1000人以上の企業でも39.6%にまで低下している。
【参照】 厚生労働省 > 令和4年労働組合基礎調査の概況
さて、労働関係諸法令は、「労働者の過半数で組織する労働組合」に以下のような役割(例示)を担わせるものとしている。
(1) 時間外労働・休日労働に関する労使協定(三六協定)の締結(労働基準法第36条)
(2) 変形労働時間に関する労使協定の締結(労働基準法第32条の2~第32条の5)
(3) 年次有給休暇の時間単位付与等に関する労使協定の締結(労働基準法第39条)
(4) 就業規則の作成・変更に対する意見申述(労働基準法第90条)
(5) 安全衛生改善計画の作成に対する意見申述(労働安全衛生法第78条)
(6) 育児休業等の適用除外者に関する労使協定の締結(育児介護休業法第6条他)
(7) 派遣労働者の待遇に関する労使協定の締結(労働者派遣法第30条の4)
(8) 派遣先における派遣可能期間延長に関する意見申述(労働者派遣法第40条の2)
これらは過半数組合であるゆえの役割であるので、もし当該労働組合の組織率が低下して50%以下になったら、民主的に選出された「労働者の過半数を代表する者」にこれらを担わせなければならないことになる。
もっとも、これら労使協定の締結や意見申述の時点で過半数であったなら、その後に過半数割れを生じたとしても、それらの効力は継続する。 この件に関しては、「労働者の過半数を代表する者」が上述の行為の後に退職したようなケースであってもそれら各行為は有効のままであるのと同じ考え方だ。
一方、会社は過半数組合との間にユニオンショップ協定を締結することができる(労働組合法第7条第1号ただし書き)が、この協定は、当該労組が過半数割れを生じたら無効となる。 これだけは上に例示したものとは扱いが異なるので注意しておきたい。
ちなみに、ユニオンショップ制は「雇用された労働者は労働組合に加入しなければならず、会社は労働組合に加入しない者や労働組合から脱退しもしくは除名された者を解雇しなければならない」とするものだから、なぜその組織率が50%以下となる可能性があるのか疑問を抱かれるかも知れない。 でも、(1)管理職を組合員としない労働組合が多い、(2)「会社がその者を特に必要と認める場合は解雇しないことができる」とする「尻抜けユニオン」も少なくない、といった理由が考えられ、実は珍しいことではない。
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