音楽の喜び フルートとともに

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塩麹の紳士

2014-11-07 23:39:58 | 紀行

大分に行くのに関空から格安航空会社のジェットスターに乗りました。


「非常出口の通路側なら、ご案内できます。」と言われて、夫が「お願いします。」と即答。
「えー。通路側違うの?」となぜ変わったのかわからない私。
「だって、狭いぞー。狭いと、ほんとっに疲れるから。」

乗ってみて納得。すごい狭い。非常口の前だけ少し幅が広いのでした。
しかし、非常口なので、特別に非常時の説明を聞かないといけません。
3人掛けの真ん中に座って、ドアの開け方を聞ききましたが、「いざとなったらできるかしら?」とついつぶやいてしまいました。
すると、となり窓側の見知らぬ老年の紳士が、「僕は、こういうのは得意だから、一度聞いたら大丈夫です。」と私に言ってくれました。安心させようとしたのかな?

「そうなんですか?では、安心ですね。」というと、「どちらから、おいでですか?」と言われるので、「大阪、枚方です。」
「そうでしたか。僕はね、大分に実家があって今からそこに帰るんです。」

おお、ラッキー、このさい聞いてみよう
「大分で、おすすめの所とかありますか?」というと、
「大分はね、温泉県といって、温泉が多いんです。全国に5000ほど温泉が出て、そのうちの4000は大分にあるんですよ。2番は北海道だけど、桁違いに少ない。」と言われます。
「それにね、温泉は普通は同じ地域のところは同じ泉質ですが、大分のは違う。世界中に温泉は14種類あって、そのうちの13種類が大分にはあるんです。」

「へーっ!」と感心していると、
「魚も港があってたくさん漁れるんですよ。伊勢海老は、大分がたくさん獲れて、美味しいんですよ。三重県よりたくさんとれる。名前を変えようと言う話もあったけど、それじゃ売れないから。しかし、一番美味しいのはここの伊勢海老です。関サバ、関あじもいいしね。」

「おおっ!」

「それからうちの実家は、元禄2年から、塩麹を作って売っているんですがね、3年くらい前から、塩麹、塩麹って言ってますでしょ。」
「ええ、とっても流行ってますね。」
「うちの姪がね、テレビに出たり、世界中行って塩麹の食べ方なんかを教えてるんですわ。」
「今も、シンガポールに行ってるんですよ。」
「塩麹のつくり方は、全部公開しておしえてるんですよ。知ってもらって、食べてもらうことがだいじですから。」

「麹いうもんは、こんな分厚い壁の室(広げた手は30cmほどもありました。)の中でつくるんですが、発酵してくると、熱を持ってくるんで、高温になりすぎると、麹菌が死ぬから、温度の低いところに移動させるんです。ガスも発生するから、空気が無くなって死なないように、カナリアを持って入るんです。」

「壁や、柱に麹菌がついているから、建て替えんのです。その空気が麹を発酵させるんです。」

「麹を入れるとなんでも美味しくなる。白菜や、きゅうり、野菜に塩麹を塗っておいたら直ぐにつけもんみたいに美味しくなります。塩麹と普通の麹の違うところは、他の麹は、甘いものか辛いものかどちらかにしか使えんけれど、塩麹は甘いものも、辛いものも作れる。甘酒、みりん、味噌、醤油。」

「その麹の上がってきた液をつかって、うちでは饅頭を昔から作りましてね。これが、うまくて、近所
の人達が並んで買いに来てました。」

「でも、作らんようになって、その味を知ってるもんは私だけになりました。」

「今頃になって、そのまんじゅうを復活させて売ってるんですが、いやぁ、まだまだ、あの味にはなってません。」

おもしろい話ばかりで、大分に着くまでずっと聴いていました。
大分に着いて、別れ際に、ご実家がどこにあるのかお聞きしたら、佐伯市。

後でググったら、出てきました。佐伯市のK屋本店。元禄二年創業300余年の伝統を持つ塩麹の老舗。
饅頭もちゃんと復刻して売っていました。甘酒饅頭というそうです。

佐伯市には行きませんでしたが、大分に行って、これこそ大分という人に飛行機の中で出会ったようです。