おすすめ度 ☆☆☆★
Unext鑑賞 2008年製作
是枝裕和監督が、年老いた両親の元に久々に集った家族の情景を静かなタッチで切り取り、人生の喜びと悲しみを浮かび上がらせたホームドラマ。
一見何気ない家族の集まりを描いた映画ではあるけれど、その中にいる年老いた父母と息子とそのお嫁さんなどの心情などが丁寧によく描かれている。父と息子の関係、嫁姑の関係、ちょっとギスっとしていて家族なのにお互い何だか間接的に向き合っているのを描いているのがお見事。
目で見せるのは今日一日のディテールだが、そのディテールの積み重ねが指し示すのは、目に見えない存在、15年前に海で溺れた少年を助けて死んだ長男。
跡取りを失った父親の失意、未だに兄へのコンプレックスを克服できない弟。そして、息子の死の痛手が辛辣な言動になって出てしまう母親。不在の存在がこの家族の葛藤の因になっていることが顕わになっていく経緯は、周到に仕組まれた推理ドラマを見るよう。