おすすめ度 ☆☆☆
ロシア系フランス人のウラジーミル・コズロフ氏が撮影。国後島の現状をロシアの許可をとりつつ、取材したもの。
北海道からわずか16キロに位置し、かつては四島合計で約1万7000人の日本人が暮らしていたという北方領土。しかし戦後1947年から48年にかけて日本人の強制退去が行われ、日本政府は問題が解決するまで入域を行わないよう国民に要請している。寺の石垣、朽ち果てた船や砲台、欠けた茶碗など、現在も島のいたるところに残る第2次世界大戦の痕跡。ロシア人島民たちはそれらを土から掘り起こしながら、日本人との思い出を振り返る。国後島の厳しい現状や島民たちの生活の様子、政治に翻弄されてきた彼らの複雑な思いなど、ロシア側の主張に偏ることなくありのままに映し出す。
本作が映し出す国後島には、美しく豊かな自然や風景があるし、普通に暮らしている人々だって多くいる。と同時に、戦争の残骸が今なお残り、社会に置き去りにされたみたいに不便な暮らしを余儀なくされる人がいて、ゴミの投棄で荒れ果てた場所もあるようだ。島民の一人がこぼす一言はとても複雑な余韻を残す。とはいえ、これは決して政治的な映画ではない。難しい話を抜きにして、じっと見入ってしまえる作品である。
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