完全にタイトルに惹かれて手に取った1冊。
「鎌倉」「うずまき」「案内所」あらま、面白そう。
作者の青山美智子さん、著作もちろん初めて。失礼ながらお名前も初めて。
悩みを抱えた人たちは それぞれ鎌倉の町へと。
目的の行先から外れて 別のところへタイムスリップ そこは。
古ぼけた時計屋 店の端に分厚い一枚板の看板「鎌倉うずまき案内所」
下向き赤い矢印 たどって一番下までたどりつくと
グレーのスーツを着た小柄な爺さんがふたり、同じ顔同じ背格好、
髪の毛のカールが 外巻さん内巻さん
このおじいさん二人がいい味出して、思わずクスっとなったりして。
壁にはアンモナイト 実は所長さん。アンモナイトの所長さん、うふふ。
「はぐれましたか?」
いい言葉ね。
道を外れたのか人生の何かを外れたのか分からないけれど「はぐれましたか?」
さらに案内されると大きな甕。
かめのぞき色の甖の中に見えるものは悩める人を手助けするアイテム。
例えば蚊取り線香。
決め言葉は「ナイスうずまき!」
悩むものに対してアンモナイト所長が宣託する、それは例えば
「変化を恐れず味方につけよ」なんてアドバイス。
出口の籠の中にはセロフアンに包まれた青い渦巻き模様のキャンディが
「困ったときにのうずまきキャンディ」
おひとり様につき、おひとつ限定。このキャンディがいい働きするのよ。
そして、悩みの解決の糸口を見つけてそれぞれ己の人生を進んでいくわけ。
平成を6年ごとにさかのぼりながら6人の悩める話が続いていくわけ。
会社を辞めたい20代男子。ユーチューバーを目指す息子を改心させたい母親。
結婚に悩む女性司書。クラスで孤立したくない中学生。
40歳を過ぎてしまった売れない劇団の脚本家。ひっそりと暮らす古書店の店主。
手助けアイテムは目次通り、どれもうずまき。
蚊取り線香の巻 つむじの巻 巻き寿司のの巻
ト音記号の巻 花丸の巻 ソフトクリームの巻
読んだ後はとても温かい気持ちになります。ほっとします。
悩みも解決方法もべたと言えばべた、でもそれがとても心地いいの。
変にひねってないから、しみじみと共感できて余韻はしばらく続いて。
そして、あれっこの人、確か前の回に出て来た人よね、なんて戻って頁をめくったりして。
話を遡りながらぐるぐると。まるでうずまきのように、よ。
私も青い渦巻き模様のキャンディをなめてみたいもんだわ。