駅前のひまわり市場で買い物して、よたよたとミニバスこまわりくん乗車場所へといった。
大根なんかここでわざわざ買うんじゃなかった、なんて後悔しながら。
と、ベンチに座っていた老女が手招きして「ここに座って」と招待する。
5人掛け真ん中の隙間に私が入るかしらと一瞬躊躇すると、お隣の人が腰をずらして
隙間を作ってくれたから、好意は有難く受けねばと腰を下ろした。
老女が話しかけてくるの。
コロナ禍の世になってからバス停、バス車内でおしゃべりする人はほとんどいない。
でも、老女は話しかけてくるの。小心者だから毅然とした態度がとれない。
いいのか、まずいんじゃないかと思いつつも、ついつい。ま、いっかと。
はあだのひいだの相槌打っているうちに話はどんどん膨らんで。
娘さん夫婦と同居しているんですって。子供は二人でひ孫が10人もいるんですって。
えっ?!ひ孫が10人、って。しかもひ孫の一番上は中学生ですって。びっくりよ。
「孫二人が双子を産んだのよ。おんなじ年によ、笑えるよね、だから10人もいるの」
と言われても、ね、笑っていいものかどうか、ね。
娘さんに言われるんですって。
「お母さん幸せよ、こんなに大勢の家族がいるんだから」って。そうか。
老女は86歳、同居している娘は60代、孫は40代、夫は36年前に亡くなっているそうな。
言っておきますけど、私が聞きだしたのではありませんよ。ほんと。
今日はこれから園芸店のグリーンファームに行くと言う。
えっ?!ここからJR駅前まで乗って、それから違うバスに乗り換えて、ご自宅からだと
3系統のバスを乗り継いでいくことになるじゃないの。
「今日はね、娘は勤めに出て婿が家にいるのよ。一緒にいるの嫌だから出かけるの。
出かけるところないからグリーンファームに行くの。
あそこで花見ていると楽しいからね、気を遣うの。ひとりの方がよかったわ」
こまわりくんが来てやれやれと。老女が乗って私が乗って。
「おくさん、ここに座って」と前の席を指さされ、
蛇に睨まれた蛙のごとく言われるままに前の座席に座ってしまったのよ。
でもね、まさか後ろから話しかけられるとは、油断してたわ。
「おくさん、年寄りはお金を持ってなきゃだめよ。孫や子のために使っちゃだめよ」
とアドバイスをくれる。なんでも娘のマンション購入のために○万円(大金)出して
今も月6万円を入れているんですって。あちゃあ。
でも娘さんたちの夕食は遅いから、今じゃ別々に作って食べているんだそうな。
「そのほうが気楽だからね。気を遣うのよ」そっか。
あっそうそう、老女に「荷物持ってあげる」と言ってもらったけれど。
席は譲られても、さすがに年上の方に荷物を持ってもらうわけにはいかない。
私が下車するバス停まで、次から次へと話題は尽きず後ろから話しかけられた。
とてもとても書ききれないわ。
話題はやや湿っぽいけれど、ご本人はカラッと明るくとても86歳には見えない方。
こんな状況じゃなければ、私も後ろ振り向いて合いの手入れただろうな。
それにしても、杖ついてでもバス3台乗って一人でお買い物に行くエネルギーは凄い。
つくづく、人生はいろいろだ、街中で見習うことは多いと感じた昨日よ。