わが家からバス停までは2分とかからない。だから、たいてい3分前に家を出る。
ミニバスこまわりくん、毎日のようにお世話になって。
原チャ手放したから足は足とこまわりくん。私が使う時間帯のあちら行きとこちら行きの
時刻表はだいたい頭に入っているのよ。それが平日と土日の時刻が違うから近頃は混乱して。
その日も平日なのに土曜日の時刻に合わせて家を出た。平日時刻の方が3分ほど早い、
3分前に家を出た時はバスは発車した後だったのね。反対側バス停で待っていた人が
「今行きましたよ」
と教えてくれたの。次は20分後だ、仕方がない諦めて反対側のあちら行きに乗車した。
終点で下車して、開店前のスーパー前に突っ立っていた。そこへ久しぶりのスギヤマサンが。
ほんとにめったに会わない人。バス乗り遅れてよかった。
あら、あら、となって開店まで立ち話。スギヤマサン、我が道を行く趣味人なのよ、
わたしのようにぼんやりしていないのよ。ぼやかないのよ。その人が。
「お帰りなさい、ドイツの娘さんのところに行ってたんでしょ」「分かった?」て。
分かったも何も年末年始ずっと雨戸が閉まりっぱなしだったんだから、それしかない。
「いいわねえ、羨ましいわ」と。ほんとに羨ましいのよ、ドイツの娘家族と3週間過ごす。
ところが開口一番「よくないわよ、疲れたわ」と言うからどうしたのとなって。
「婿にノー!って言われたわ」と穏やかならざるひと言。ドイツ人の婿に「ノー!」ね。
なんでも、お庭の木にちょっとじゃまな枝があったから、娘さんに「切ったら」と
言ったんですって。すると娘さんがすぐに婿さんに言って。「ノー!」のお言葉。
私、笑うっきゃない。大したことがないといえば大したことがないと思うからね。
きっとその他にもいろいろあったんだろうな、とは推測する。その代表例が「ノー!」
そりゃあ楽しかったわよ、でも3週間は長いわね、疲れたわ。もうこれが最後だわ
とスギヤマサン。で、極めつけが、
「帰ってから1週間も経つのに、娘から何の連絡もないの。疲れたでしょのひと言も
ないの、ねえ。私も親にそうだったのかしら」とのぼやき。ああこちらだな、と。
同じ年だからよおく分かる、お気持ちよおく分かる察する。
いつも前向きなスギヤマサンのめずらしいネガティブ思考。ドイツの冬の気候が悪かった
んだなと言うことにしておく。帰り際、
「外からは分からないだろうけれどいろいろあるのよ。家見たらそう思ってちょうだい」
と言うから可笑しくて。もちろん、我が家にだってあるわよ、そう思ってと伝えたわ。
外から見れば問題なさそうだけれど、家うちでは多かれ少なかれいろいろあるわよね。