気ままに

大船での気ままな生活日誌

去年今年貫く棒の如きもの

2012-12-31 18:25:55 | Weblog
2012年も、いよいよ大晦日となったが、ぼくは毎日が正月みたいな生活をしているから(大汗)、本当のお正月が来るからといって、あまりどきどきもわくわくもしない。この句の本心がどんなところにあるのか知らないが、ぼく流に解釈して、”去年今年貫く棒の如きもの (虚子)”のような気持ちだ。

そうはいっても、世間さまの慣習に従わないわけにはいかない。そこで、恒例の”今年の美術館で出会った美人、ベスト3”を発表して、さようなら2012年としたい。

まずは、四月に巴里のルーブル美術館で出会ったこの方。文句なしと思います。モナリザさまでーす。


そして、次にお控えなされしは、”フェルメールのモナリザ”。この方も。上野の東京都美術館でお会いしました。


あと一人は、熱海の向こうの三島で出会った、雪岱美人。モナリザや青いターバンの少女のように、万人に評価されているわけではないのですが、ぼくの独断と偏見で(汗)。


・・・・・

では、よいお年を、とここで終わるつもりでしたが。何故、私を入れないのかとの声が。私もコローのモナリザと云われているのよ。そうですね、たしかルーブルでお会いしました。よし、大盤振る舞い、今年は4美人でいこう!



ふん、何よ。私の人気にはかなわないでしょ。ミロのビーナスといえば、美人の代名詞よ! た、たたしかに、じゃあ今年だけ、五大美人とします。(もうすぐ、紅白が始まるし、もうどうでもいいや)



ついでに、あたしもお願いします。山種美術館でお会いしました、にゃんこです。 


どさくさに紛れて、結局、今年の大トリは竹内栖鳳の美人猫にとられてしまいました。

皆さま、良いお年をお迎えください。

本ブログに正月休みはありませんので、明日もどうぞおいでください。本ブログも、去年今年貫く棒の如きものでござんす。
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今年の締めはレ・ミゼラブル

2012-12-31 10:37:28 | Weblog
今年の締めにふさわしい映画だった。その名はレ・ミゼラブル。今年、最高の映画だった。断言する!愛とは生きる力


ジャンバルジャン: たった一個のパンを盗んだ罪で19年間も服役。仮出獄したときに、飢えに耐え切れず、盗みをはたらく。司教さんのやさしい言葉で回心、その後、努力し、市長にまでなる。しかしその後、また、波乱万丈の人生がつづく。


フォンテーヌ:市長の経営する工場で働いていたが、仲間から追い出され、子供を育てるため、売春婦にならざるをえなくなる。死ぬ前にジャンバルジャンに娘の養育を依頼する。


娘コゼットは美しく育ち、革命家を目指すマリウスと一目ぼれの恋に落ちる。マリウスは暴動の中で死にかけていたが、ジャンバルジャンに救出され、ふたりは結ばれる。


逃亡者ジャンバルジャンを執拗に追い続ける警部、シャベール。革命派に捕まるが、ジャンバルジャンに命を助けてもらう。しかし、まだ追い続けるが・・


そして、ジャンバルジャンが修道院でマリウスとコゼットだけではなく、天上からフォンテーヌも現れ、清らかな歌声の中で召されていく感動的なラストシーン。愛、勇気、希望/世界が泣いた、永遠に語り継がれる物語

セリフは、アフレコではなく、生の歌声だそうだ。それだけ感情がこもっていて、われわれの心にビンビンと響いてくる。終始流れる、バックのミュージックも素晴らしい。来春、帝劇で舞台”レ・ミゼラブル”が上演されるらしい。ぜひ、行かねば。



すばらしい原作はヴィクトル・ユゴー。ロダン作。
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ぼくの、2012年美術展ベストテン

2012-12-30 18:43:49 | Weblog
はずかしながら、ぼくのブログ史上初の、マイ2012年美術展ベストテンを発表します。”制覇”がキーワードです。

第一位 絢爛豪華 岩佐又兵衛絵巻展(MOA美術館) 三絵巻全巻制覇
    山中常盤物語、浄瑠璃物語、堀江物語
第二位 小村雪岱展 二展制覇 
    大正・昭和のグラフィックデザイン 小村雪岱展(ニューオータニ美術館)
    小村雪岱 江戸の残り香/清水三年坂美術館コレクションより(佐野美術館)
第三位 平治物語絵巻原本 三巻制覇
    ボストン美術館/日本美術の至宝展で”三条殿夜討巻”(東京国立博物館)  
    東博常設展で”六波羅行幸巻”
     ”信西巻”(静嘉堂文庫美術館)
第四位 KORINN展(根津美術館)&RINPA展(メトロポリタン美術館)光琳の八橋図屏風を両展制覇
第五位 馬込時代の川瀬巴水(大田区郷土博物館)
第六位 リヒテンシュタイン 華麗なる侯爵家の秘宝( 国立新美術館)
第七位 マウリッツハイス美術館展(東京都美術館)
第八位 バーン=ジョーンズ展/ 装飾と象徴(三菱一号館美術館) 
第九位 悠久の光彩/東洋陶磁の美 (サントリー美術館)
第十位 美術にぶるっ!(東京国立近代美術館)
第十位(同着)篠山紀信展/写真力 (東京オペラシティアートギャラリー) 

次点(ハナの差)上村松園と鏑木清方 (平塚美術館)
   はじまりは国芳 (横浜美術館)       
   あとは、団子状態でゴール。
・・・・・
今年は春と秋に欧米の美術館にも行きましたので、メモしておきたいと思います。フェルメール制覇の一環でもあります。

巴里(5月)(特別展)
ルーブル美術館 (レオナルド展) 
オルセー美術館
ロダン美術館 
ギュスターヴ・モロー美術館
ピカソ美術館
オランジュリー美術館 (ドビュッシー展)
マルモッタン美術館 (モリゾ展)
グリューニー中世美術館 
プチ・パレ(パリ市立美術館)
ポンピドゥーセンター美術館 


米国(11月)
ワシントン・ナショナルギャラリー
フィリップスコレクション
ボルチモア美術館 
ウオルター美術館
フィラデルフィア美術館 
バーンズコレクション 
メトロポリタン美術館 (RINPA展)
クロイスターズ美術館 
フリック・コレクション 
ニューヨーク近代美術館 (ムンク展、TOKYO展)


光琳 八橋図屏風 メトロポリタン美術館にて
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明月院の蝋梅 初春間近

2012-12-29 21:18:59 | Weblog
東慶寺にひきつづき、明月院の蝋梅も咲き始めた。






初春が間近に。




春雪 清方 (鏑木清方記念館の”正月風情/羽子板展”で、この下図が展示されている)


・・・・・
ここから追加

若宮大路の老舗の酒屋さんで見つけたこのお酒。群馬県太田市の蔵元の”初しぼり”。毎年、年末に発売するしぼりたての、人気の酒だという。早速、購入し、夕食で一杯
おいしい、おいしい、おいしい。ワインでいえば、生ワイン。また、明日、大きい方を買って、お正月のお酒にしよう。


気持ちよく酔って、時空を超えた紅白歌合戦。ますますいい気持ちになった。

涙のリクエストはチェッカーズ


石川さゆり、十代の映像。


中島みゆき 地上の星 プロジェクトX 黒部ダムから中継


河島英五が亡くなった年の紅白、堀内 孝雄が歌う。


襟裳岬 森進一


そして、待ってました、ちあきなおみ 喝采


これから、第2部じゃ。今度は赤ワインでいこう! 初春、先取りじゃ!


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白隠の富士

2012-12-29 11:36:13 | Weblog
今朝の富士山は格別にうつくしかった。ピンク色に輝く新雪の山腹にちょうどいい具合に白雲がかかっている。うっとりと10分ほどながめてしまった。



ふと、白隠さんのことを思い出した。”駿河に過ぎたるもの二つあり、富士のお山と原(地名)の白隠”と呼ばれたように、白隠さんは、富士山を目の前にして生まれ、育った。先日の白隠展では100点もの作品が展示され、達磨像や観音像などが主だったが、ふたつほど富士山の絵があった。ひとつは、”一富士二鷹三茄子”で、画面中央に一筆で富士山の輪郭だけを描き(一富士)、左隅に、二枚の鷹の羽(二鷹)と三つの茄の絵(三なすび)がさらさらと描いているものである。賛に”初夢や 一冨士 二鷹 三なすび”とある。ちょっと茶化して、うふふのふの絵だ。

展示物としてはなかったが、こんな賛をつけた富士山の絵も描ているらしい。”おふじさん 霞の小袖 ぬがしやんせ 雪のはだへが見たふござんす”。今朝の富士山でいえば、霞の小袖をぬぎはじめた風情といったところか。ちょっと色っぽい賛。

”恋ひ人は雲の上なるおふじさん はれて逢ふ日は雪のはだ見る”なんて粋な賛も。臨済宗中興の祖といわれた、えらい白隠禅師さまも、さばけたところがありますね。きっとあるラインを突き抜けると、融通無碍、心の赴くまま、すたすた坊主になれるのでしょう(爆)。

しかし、厳しい目を投げかける時も。”富士大名行列”。うしろにそびえる富士山を見向きもせずに参勤交代の大名行列が、粛々と進んでいる。でもよくみてください、二人だけ富士山を見ている人がいます、と音声ガイドが耳元でささやく。本当だ。右端の茶店に座っている笠をかぶった墨染めの衣の人。それと、これは、すぐには見つからなかったけど、左端の岩影にも僧侶風の人が富士をみつめている。優雅な風景じゃんとぼくレベルは思うけど、そうじゃないらしい。莫大な金をつかって(民、百姓を苦しめて)、参勤交代などという馬鹿げたことをしてていいのか、という批判が込められているらしい。加えて、霊山、富士をみなさい、聖なる真理をみなさいと言ってるのだそうだ。そうか、それで富士山の前の大名行列か。真と俗か。ふーん。

富士山大好き人間としては、うれしい画題だったけれど、ちょっと、ななな、何を言うかの画題も。兼好法師をこばかにしてる。”吉田猿侯”。テナガザルが、筆を持って掛軸に何かを書いている、つれづれなるままに・・・賛には”吉田のゑんこうつれづれ草を書玉ふ所”。 すたすた坊主と、”日暮らし, 硯にむかひて”では気が合わないかな。兼好法師も坊さんをこばかにしている記述もあるし、おあいこかな。ぼくは、お二人からいいとこ取りする。スタスタ歩いて、”今”を生きる(爆)。

BUNKAMURAでの”白隠展”素晴らしかったですよ。

とくに達磨像の並ぶ部屋は圧巻。その代表作”半身達磨”。これは80歳を超えてからの作だそうです。60歳頃から本格的に描けきはじめたとのこと。その頃の作は”若書き”というらしい。40歳代の達磨像は別人みたいに神経質そうな筆使い。書も、伝統的な書き方より、人間力を表すものだ考えるようになってからは、自由自在風。いきなり書くから、最後の字はいつも小さくなる。これでいいノダ、人生は。かっこつけることはない!(爆)。



すたすた坊主


マザコンだったという説もある。母を想って描いた、蓮池観音。


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おわりは国芳

2012-12-28 21:54:17 | Weblog
今年最後に訪問する美術館を何処にしようかと、新聞の美術館・博物館の会期一覧をみてみたら、今日(28日)も開けているのは横浜美術館だけだと知った。で、お墓詣りの帰りに、寄ってみた。”はじまりは国芳”展。後期展に見たいものがあったのでちょうど良かった。で、ことしの”終わりは国芳”展となったわけ。

前期も観てるんですがね、入れ替えが多くて、十分、楽しめましたよ。とくに福富コレクションがどっと入ってきて、清方の、”刺青の女”や”妖魚”、そして、池田蕉園の”秋苑”、池田輝方の”お七”、水野秀方の”つげの花”、山本芳翠の”眠れる女”などなど。できれば清方の”薄雪”も来てほしかったけれどね。

刺青の女(清方)

妖魚(清方)


新版画は、余り入れ替えがなく、伊東深水、川瀬巴水は同じものだけど、何度みてもいいものはいい。そうそう、前回、見過ごしていた、巴水とよく似た画風の石渡江逸の作品。常設展でも5点ほど展示されていた。いずれも横浜の風景で、横浜出身かと思って、調べたら、浜松町辺りの出で、巴水の門下生ということだった。覚えておこう。横浜の風景の江逸作品を、横浜美術館が所蔵した(あるいは寄贈された)ということだろう。





岡倉天心は結構、でっぱらだったので安心した(爆)


というわけで、今年の美術館納めは横浜美術館でした。美術館初めはトーハクに決めているノダ。博物館に初もうで

お寺のお地蔵さんは、新年に向けて、ピッカピッカのマントを掛けてもらってましたよ。


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松井秀喜 引退

2012-12-28 18:35:58 | Weblog
とうとうこの日がやってきてしまった。今朝7時のニュースの途中で、ニューヨークからの松井の引退会見が生中継された。”命懸けでプレーし、メジャーという場で力を発揮するという気持ちでやってきましたが、結果が出なくなった、命懸けのプレーもこれで終わりを迎えたんじゃないかと思います”と。

メジャーが駄目なら、日本の球界に復帰という、うわさがあったが、ぼくはそれは絶対ないと思っていた。松井とイチローだけは、そういう選択肢はありえない。王だって、ホームラン30本以上打ってても、辞めた。長嶋だって、余力を残して去った。それが本当のスターだ。

ぼくの、松井選手の思い出というと、(何度か書いているのではずかしいが)、2006年4月にヤンキース本拠地開幕試合3連戦を3試合とも観戦したこと。そのとき、松井はもちろんクリーンアップを打ち、たしか5番だった。ホームランは出なかったが、何本かクリーンヒットを目の前でみることができ、いい思い出となった。ヤンキースタジアムはそのシーズンが終わったときに取り壊されたから、最後の年の、伝統のスタジアムで観たことになる。でも、松井選手に悪夢のようなアクシデントが襲ったのが、その一か月後だった。あの怪我さえなければ、さらに、すばらしい成績をおさめたはずで、本当に残念だった。

それでも、日米通算507本塁打、そして、何よりも、ぼくらを喜ばせたのは、2009年にヤンキースがワールドチャンピオンになり、松井がMVPに選ばれたこと。あのときの松井の笑顔は格別だった。契約最終年だったが、これで再契約間違いなしと思っていたが、そうはとんやがおろさなかった。”ヤンキースは馬鹿な決断”とNWの新聞で報道された。できれば、そのあと数年、ヤンキースでやって、今日を迎えてほしかった。でも、ヤンキースの松井に対する評価は高く、今日も、元選手の引退では異例の談話を発表したそうだ。

本当に、長年、ぼくらを楽しませてくれてありがとうございました。今度は、巨人の監督としておいでください。阪神の監督だけには絶対ならないようにお願いします。





2009年11月6日のぼくのブログから




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氷の華 シモバシラ咲く

2012-12-27 21:37:27 | Weblog
この冬一番の寒さです、という今朝7時のニュース。もしやと頭にひらめいた、シモバシラ。朝食後、いそいそと大船フラワーセンターに出掛ける。毎年、楽しみにしているシソ科の植物、シモバシラの枯れ枝にびっしりとつく氷の華。まるで、霜柱のようだと、名付けられたシモバシラ。

観察歴は、まだ7,8年だが、これまで、年末に観察したことは一度もない。すべて年明け、1月の上旬。今日もし、氷の華を観ることが出来たなら、ぼくにとっては、歴史的快挙となる(汗)。わくわくどきどき。

入口で目に飛び込んできた、お知らせの言葉。”本日シモバシラ出ています”やったあ。


正門から、さほど遠くないところに、そのシモバシラが群生している(群生というほど多くはないが)。つかつかと近寄る。すると、遠目からも、見事なシモバシラが。




おおっ!すごか。太くて長いシモバシラ。30センチはゆうにある。これまで、こんな立派なのを見たことがない。そういえば、今朝の寒さは十二月としては尋常ではなかった。しめしめ。比較のためにボールペンを土に刺す。




しげしげ眺めていると、係りの方が近寄ってきて、この冬、3度目ですが、今日のが一番立派です、と話してくれた。


アイスキャンディーみたい、うまそう。


年内観察の初記録。おまけに、大きさまで記録的。新記録達成!おめでとう、と誰も言ってくれなかったが・・・

立寒椿がお祝いの笑顔を。


・・・

その足で、渋谷へ。白隠展とシャガールのタピスリー展を観て、駅前に戻ると、なななんと、ハチ公の近くに、シモバシラの木が!!。


でも、よくみると、ただの白塗りの木だった(汗)。

夕方、帰宅すると、満月一歩手前のお月さまが、ぼくの新記録達成をお祝いするように、こうこうと輝いていた。
明日の満月は、雨天で見られないようだから、今日が2012年、最後のまんまるお月さま。シモバシラさま、白隠さま、シャガールさま、そしてトリはお月さまに出会え、本当に、めったにない、うれしい1日だった。



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玉三郎の日本橋

2012-12-27 09:00:45 | Weblog
歌舞伎座以外での玉三郎の公演を観たことがなかった。前回、横浜の遊廓・岩亀楼を舞台にした”ふるあめりかに袖はぬらさじ”を見逃してしまったので、今回は是非にと思っていた。ようやくチケットが手に入り、千秋楽の前日、日生劇場に出掛けてきた。一言で感想をいえば、”さすが、玉三郎”の素晴らしい舞台だった。

幕が開くと、スポットの中に一組の男女が何やら話し込んでいる。葛木(松田悟志)と清葉(高橋恵子)の別れの場面のようだ。そして一転、舞台は一国橋の場面に入る。清葉に振られた、医学士葛木が、夜更けに、橋の上からものを(雛祭りに供えたサザエとハマグリなのだが)投げ捨てるところを巡査(藤堂薪二)にみられ不審尋問を受けて困っている。そこに通りかかって、機転でその場を納めたのが、日本橋の名妓として清葉と張り合っていた、稲葉家のお孝(玉三郎)だった。

ここから物語がはじまる。鏡花は”日本橋”を上梓したあと、これが気に入って、自身でも舞台用の脚本も書いている。この舞台では、さらに、玉三郎と斉藤雅文が脚色して”玉三郎色”を前面に出している。物語の進行に、めりはりがあり、舞台の入れ替えもスムーズだし、葛木とお孝が話し合っているところに、幻想の清葉が現れるシーンなんかも工夫が凝らしてあった。また、舞台美術もとてもよかった。雪の降る場面なんかもうつくしく、うっとりするような雪やこんこんだった。そうそう、雪の場面に現れた、雪のような、お孝の着物の柄も印象的だった。着物といえば、玉三郎は、自身の美的センスで柄を選んでいるそうで、それも見もののひとつだろう。

永島敏行が、熊のような男、五十嵐伝吾を演じている。お孝のところに住み着いているこの男が、葛城とお孝の仲を知り、葛城に別れてくれと懇願する。悩む葛城は巡礼の旅に出、一方、お孝は気がふれて病床に伏す。時がたち、日本橋に大火事が起こり、伝吉の、お孝と間違えて、お千世(斎藤菜月、玉三郎に見いだされた新人)を斬りつけるところから始まる、悲惨な最期が待っている。ときどき正気に戻るというお孝が伝吉を刺し、自身は毒をあおる。清葉に笛の所望をし、笛の音を聞きながら、葛城に抱かれて死ぬ最後が悲しい。

ぼくが鏡花の”日本橋”を知ったのは、小村雪岱による装幀本を観たとき。雪岱があこがれていた泉鏡花に、大正3年にはじめて依頼されて、装幀したのが、この”日本橋”。いかにも精根込めて、つくったという傑作で、ぼくも一番好きなものだ。表紙は日本橋川の両岸に並ぶ蔵。無数の蝶が舞っている。装幀はこれだけではない、表裏の見返しの絵も含む。これがまた、素晴らしい。ここに日本橋の四季が描かれているが、青柳の向こうの和室に三味線と鼓だけが置かれている、春の絵なんかとくにいい。これをきっかけに、泉鏡花本を28冊、手掛けている。この初版本は今のところ、見つけられないが、たしか復刻版が出ているはずだ。この本で、玉三郎の舞台を思い出しながら、また読んでみようかと思っている。

玉三郎








女優陣


男優陣


雪岱による装幀。鏡花”日本橋”の表紙と見返し(春夏秋冬)






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お正月準備

2012-12-26 18:37:34 | Weblog
午前中、年賀状を仕上げて、投函。床屋さんにも行って、ぼくのお正月準備は万端。ゆったりした気持ちで、鎌倉散歩に出掛けた。が、家内の故郷言葉でいえば、寒かですね、今日は。ぶるっぶるっとして、短時間で切り上げた。そんな短い散歩の中でも、お正月準備の風景をいくつか、目にすることができた。

本覚寺の正月夷の準備は万端だった。


5日前はまだ、こんなだった。


おんめさまも門松が建っていた。


境内のインドハマユウも新しい防寒着を着せてもらっていた。


お月さまのうさぎさんの餅つきも準備万端。


でも、満月は明後日、28日です。お正月まで待てないらしい。それは残念たい。

私も、お正月まで待てないわよ。今日が千穐楽よ。
たまがった。たたた玉三郎さまでございますね、昨日はお目にかかれて大変うれしく思いました。
はやく感想文書いてよ、へたなこと書いたらただじゃおかないわよ。
玉さまというより、美川憲一風な物言いでござんすね。
わ、わわかりました。今日は泉鏡花ゆかりの逗子の、図書館に行って、”日本橋”を読んでめえりましたばってん、明日は必ずと思っておりますたい。



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