こんばんわ。
国立新美術館でのメトロポリタン美術館展が5月いっぱいで閉幕しようとしている。ニューヨークのメトロポリタン美術館が改修工事に入ったため、常設展で展示していた主要作品が一挙来日するという豪華な展覧会である。その記録を始めようと思うが、一回でまとめきれないので、数回に分けてレポしたいと思う。
ぼくは5月18日に訪ねたが、その日はぼくにとっては記念すべきフェルメール制覇の日となった。フェルメールの全作品は真偽不明のものを含めて37点ほどあるが、今回展示されたフェルメールの”信仰の寓意”は直接、この目で見た35点目になる。完全制覇にはあと2点残しているではないかと文句が出そうだが、一つはボストンの美術館所蔵だった作品、”合奏”は1990年に盗難され、未だ行方不明である。そしてもう一つはイギリス王室コレクションで、通常、非公開で、気が向いたときに公開するという”気まぐれ美術館”の所蔵である。ということで、この2点を除く35点で”フェルメール制覇”と言っている人が多い。それでカッコ付の「制覇」とした。正確には”ほぼ制覇だけど(笑)。
長い道のりだった(笑)。フェルメールは好きだったが、この日がくるとは夢にも思わなかった。定年後、国内の展覧会を見たり、海外旅行をしたりして、知らぬ間にたどりついていた。フェルメール好きの多い日本人なので、国内で展覧会が何度もあり、2008年には都美で7点、2018年には上野の森美術館に9点も一挙来日した。加えて、一、二点の来日はしばしばだった。これだけでも、かなりカバーできるが、美術館によっては門外不出の作品がいくつもある。
フェルメール作品は生まれ故郷のオランダの美術館に7点ほどあり、ロンドン、パリやドイツに数点ずつ、それと制覇には欠かせない米国東海岸、ニューヨークとワシントンには合計11点もある。それぞれの地域に旅行し、フェルメール数を増やしてきた(笑)。とくに2012年の米国東海岸の旅は8点も稼がせてもらい、収穫が多かった。ただ、メトロポリタン美術館ではフェルメールが5点もあるのだが、残念なことに、そのうち2点が貸し出し中だった。”信仰の寓意”と”リュートを調弦する女”。後者はすでに来日したときに観ていたが、前者は残っていてほしかった。その時点で28点まで到達していたが、先は長かった。さらに、2013年東ドイツの旅で稼ぎ、2018年前には、残すは”赤い帽子の女”と”信仰の寓意”の2点になっていた。そして、前述の2018年の展覧会で前者(赤い帽子)が来日して、そして、今年ようやく、メトロポリタン美術館展で”信仰の寓意”がはるばるやって来てくれたのだ。ありがたいことだ。折しも、ちょうど、ぼくが喜寿の年に(笑)。目的達成でもうよかろうと、そろそろお迎えがくるかも。
これが、信仰の寓意。
17世紀オランダの画家フェルメールは、オランダ市民の日常を描いた小ぶりの静謐な風俗画で有名ですが、晩年のこの作品は彼の全作品の中でも異例の寓意画です。キリストの磔刑の絵画を背にして座る女性は、「信仰」の擬人像です。胸に手を当てる仕草は心のなかの信仰を示し、地球儀を踏む動作はカトリック教会による世界の支配を示唆するものと解釈されます。十字架、杯、ミサ典書が載ったテーブルは聖餐式を暗示します。床には原罪を表すリンゴと、キリストの隠喩である教会の「隅の親石」に押しつぶされた蛇が見いだされます。プロテスタントを公認宗教としたオランダ共和国では、カトリック教徒は公の場での礼拝を禁じられましたが、「隠れ教会」と呼ばれる家の中の教会でミサや集会を行うことは容認されていました。ここに描かれた部屋は、こうした教会なのかもしれません。フェルメールはおそらく1653年の結婚を機にカトリックに改宗しています(公式サイトより)。
以下、ぼくの備忘録として、Wikiよりフェルメールの生涯作品を制作年代順に挙げておこう。
フェルメールの生涯作品は多くて37点。うち、数点が、真作かどうか疑われている(緑字)。前述の閲覧困難な2作品(赤字)も入れてある。
1650年代 (11)
聖プラクセディス 1655年 個人蔵(西美寄託)
マルタとマリアの家のキリスト 1654年 - 1655年頃 スコットランド美術館
ディアナとニンフたち 1655年 - 1656年頃 マウリッツハイス美術館
取り持ち女 1656年 アルテ・マイスター絵画館(ドイツ・ドレスデン)
眠る女 1657年頃 メトロポリタン美術館
窓辺で手紙を読む女 1657年頃 アルテ・マイスター絵画館
小路 1657 - 1658年頃 アムステルダム国立美術館
士官と笑う娘 1658年 - 1660年頃 フリックコレクション
牛乳を注ぐ女 1658年 - 1660年頃 アムステルダム国立美術館
紳士とワインを飲む女 1658年 - 1660年頃 ベルリン絵画館
ワイングラスを持つ娘 1659年 - 1660年頃 アントン・ウルリッヒ公爵美術館(ドイツ)
1660年代の作品 (20)
中断された音楽の稽古 1660年 - 1661年頃 フリック・コレクション(ニューヨーク)
デルフトの眺望 1660〜1661年頃 マウリッツハイス美術館
音楽の稽古 1662年 - 1664年頃 ロイヤル・コレクション(バッキンガム宮殿)
青衣の女 1663年 - 1664年頃 アムステルダム国立美術館
天秤を持つ女 1664年頃 ワシントンナショナルギャラリー
水差しを持つ女 1664年 - 1665年頃 メトロポリタン美術館
リュートを調弦する女 1664年頃 メトロポリタン美術館
真珠の首飾りの女 1664年頃 ベルリン絵画館
手紙を書く女 1665年頃 ワシントンナショナルギャラリー
赤い帽子の女 1665年〜1666年頃 ワシントン・ナショナルギャラリー
真珠の耳飾の少女(青いターバンの少女)1665年 - 1666年頃 マウリッツハイス美術館
合奏 1665年 - 1666年頃 1665年 - 1666年頃 イザベラ・スチュワート・ガードナー美術館(ボストン)
フルートを持つ女 1665年 - 1670年頃 ワシントン・ナショナルギャラリー
絵画芸術 1666年 - 1667年頃 美術史美術館(ウイーン)
少女 1666年 - 1667年頃 メトロポリタン美術館
婦人と召使 1667年頃 フリックコレクション
天文学者 1668年 ルーブル美術館
地理学者 1669年 シュテーデル美術館(フランクフルト)
レースを編む女 1669年 - 1670年頃 ルーブル美術館
恋文 1669年 - 1670年頃 アムステルダム国立美術館
1670年代 (6)
ギターを弾く女 1670年頃 ケンウッド・ハウス(ロンドン)
手紙を書く婦人と召使 1670年頃 アイルランド国立絵画館
信仰の寓意 1671年 - 1674年頃 メトロポリタン美術館
ヴァージナルの前に立つ女 1672年 - 1673年頃 ロンドンナショナルギャラリー
ヴァージナルの前に座る女 1675年頃 ロンドンナショナルギャラリー
ヴァージナルの前に座る若い女 1670年頃 個人蔵
(メトロポリタン美術館)