旅先からの投稿です。二日目は天気にも恵まれ、楽しい山形日和でした。さくらんぼ、紅花、蕎麦街道と。さて、今朝の話題はボルドー展です。
国立西洋美術館でボルドー展が始まったというので、初日は逃したが、二日目に覗いてきた。パリには何度か行っているのに、ボルドーは未踏の地。パリより100年も前に都市整備されたとのことで、18世紀には、世界一エレガントな街だったそうだ。当時の港町、ボルドーの景観をはじめにどうぞ。
ピエール・ラクール(父) ボルドーの港と河岸の眺め
ガロンヌ河の流れに沿って三日月のかたちに発展したことから”月の港”とも呼ばれた。ボルドーの地図。ラトレの地図(版画)して名高いそうだ。精密な描き込み。
さて、展覧会は、プロローグで、25000年前の”角をもつヴィーナス”が迎えてくれる。1911年にローセルの岩陰で発掘された。おっぱいとお尻の大きさで、わが土偶、”縄文のヴィーナス”と張り合えそう(笑)。クロマニョン人骨もこの近くで発見された。
そして第1章 古代のボルドー。BC1世紀にケルト系ガリア人がガロンヌ河畔に建てた商都”ルディガラ”がボルドーの始まり。古代ローマの属州アクィタニアの中心都市として発展する。ワインの生産は、早くもこの頃から。この章では、当時の市民生活が偲ばれる墓碑や装身具などが展示されている。幼くして亡くなった少女のために父親が建てた墓碑が涙を誘う。少女がワンコを抱いて、尻尾は鶏がくわえている(写真なし)。
当時のワインの器。アンフォラ(一世紀半ば)。イタリアやスペインのワインの交易している内に、自らもワインをつくり始め、1世紀末には銘醸地として知られるようになったとのこと。
第2章 中世から近世のボルドー
アリエノール妃が、後の英国国王ヘンリー二世と再婚したのがきっかけで、ボルドーは、12世紀から15世紀まで約300年にわたり英国領となる。一方、スペインの聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼路の街としても栄えた。また、16世紀に入ると、世は宗教戦争。ボルドーも例外ではない。大思想家モンテーニュがこの時代、この地に生まれている。その頃の市庁舎や教会の断片なども展示されている。
まず、バロックの旗手、ベルニーニの彫刻。”フランソワ・ド・スルディス枢機卿の胸像”。モデルの枢機卿は対抗宗教改革の旗手として活躍し、ボルドーの教会にバロック芸術を花開かせた方だそうだ。
ここで、ベルニーニ作品をみることができたのは嬉しかったが、さらに増して、ぼくを喜ばせてくれたのは、モンテーニュの”エセー(随想録)第5版”がみられたこと。ぼくが近くの女子大の市民講座を受講した最初の科目が”エセー”だった。モンテーニュは死ぬまで、加筆訂正を繰り返していたが、展示本にも自筆のメモが書かれていたのにびっくり。トマ・ド・ルーによる、モンテーニュの肖像画も。ついでながら、モンテーニュの名言の一つ。私たちは死の心配によって生を乱し、 生の心配によって死を乱している。とか、いろいろ、いわゆる知識人をぎゃふんと言わせる言葉がいっぱいエセーには出てきて面白い。
なお、ボルドーには、モンテーニュ(1533-1592)のほか、モンテスキュー(1689-1755、法の精神)、モーリアック(1885-1970、1952年ノーベル文学賞)の3Mの巨人がいて、それぞれの実家がシャトーで、現在もワインをつくっているとのこと。やっぱり、ボルドーはワインの街なのだ。
第3章 月の都 ボルドー
冒頭のボルドーの街の絵と地図にように、18世紀、ボルドーは交易とワイン産業で黄金期を迎え、”月の港”はフランス第一の港となった。パリに100年先立ち、世界で最も美しい街のひとつとなった。ここでは、その繁栄を支えたワイン商や法服貴族たちが飾った絵画や装飾品が展示されている。
ジャック・ユスタン陶器製作所(ボルドー) ”銘々用のワイングラス・クーラー”
ヴェルトムラー ”エミリー・ネラクの肖像
第4章 フランス革命からロマン主義へ
19世紀、ボルドーは海運業の衰退により、陰りがみえるようになる。しかし、ナポレオンの時代、1801年にボルドー美術館が設立され、美術活動が活発化する。この章で、お待ちかね、ドラクロワ晩年の大作《ライオン狩り》が登場する。を中心に、ボルドーで最期の日々を過ごしたゴヤの版画や、美術館草創期の重要コレクションも交えつつ、革命やブルボン王家に関連する品々から、ロマン主義を中心とするボルドーゆかりの画家たちの作品までをご紹介します。
ドラクロワ ”ライオン狩リ”1854-55年 175×360 cm
ドラクロワは父親がジロンド県知事を務めた関係でボルドーで幼年期を過ごし、街には今も父と兄の墓が残ります。この作品は1855年のパリ万博のために政府の注文で制作され、展覧会終了後、ボルドー美術館へ送られました。不運にも1870年の美術館の火災で大きな損傷を受け、画面の一部を失いましたが、その迫力は決して損なわれていません。人と猛獣の戦いを通じ、ほとばしる自然の生命力に対する畏怖や憧れが画家独自の雄渾な筆遣いで描き出された本作品は、ドラクロワの画業の集大成にふさわしい傑作です(解説より)。
ルドン ライオン狩 ドラクロワ作品に基づく摸写 火災による消失した部分も描かれている貴重な作品。
第5章ボルドーの肖像 都市/芸術家/ワイン
19世紀末から20世紀初頭にかけてボルドーが輩出した芸術家たちの作品を中心に、市民の肖像や、「月の港」の眺め、そしてワインに関連する作品や資料などの展示を通じて、世紀転換期の都市ボルドーの肖像を描き出します。さらに、富裕な美術愛好家ガブリエル・フリゾーが形成した知的サークルにも目を配りつつ、ジャン・デュパやルネ・ビュトーらの作品とともに、20世紀初頭のボルドーで花開いたアール・デコ芸術を紹介します(解説より)
モネ”ボルドーワイン”&ジャン・デュバ”ボルドー/港、歴史建築、ワイン
そして、エピローグはボルドーの現代作家ジョルジュ・ルースの作品が。
ボルドーに行きたくなってしまうような展覧会だった。ボルドー展のおみやげは、もちろん、ボルドーの赤!