=前稿から続く=
日本のバブル期の損失額合計の開示状況と比較するのは、いささか無謀とも思えるかも知れませんが、土地のバブルの崩壊でデフォルトが急速に進むことにより、融資元の金融機関に損失が出るという構図は同じです。
違うのは、日本のバブル崩壊の時は、直接に個人や企業に土地・住宅融資を行っていた日本の金融機関だけに損失が留まっていたのに対して、今回は証券化商品として世界中の金融機関に損失が拡大していること、そして、3ヶ月サイクルの時価会計をとっているため、欧米の含み損の公表のスピードが、当時の日本の場合より断然速いということです。
問題の構図が同じということは、損失拡大のスピードが違いこそすれ(日本の場合は10年もかかってしまった。)、損失額拡大の積み上がり方は、それほど違わないと推定することも或いは可能です。
今回も当初の損失額は、最初はFRBが最大1000億ドル程度と言っており、その後IMFが昨年10月に2000億ドルと増やし、12月にゴールドマン・サックスのアナリストが4000億ドルと指摘し、そして今回のUBSが6000億ドルです。誰がこれで損失額の打ち止めであると納得できるでしょうか?
ここで日本のバブル崩壊の時の例が参考になりそうです。
ご存じのように、最終的に日本の銀行の不良債権総額は100兆円規模にまで拡大した訳ですが、地価が下落し始めてから、3年目の1995年に住専が破綻しました。その不良債権の規模は6.4兆円だったそうです。
この事実と、今回のサブプライム・モーゲージでの欧米の金融機関の損失額公表のペースとを、あえて比較するのもそれなりに意味を持つと言えるかも知れません。
アメリカ連邦預金保険公社(FDIC)の総裁が、76社の金融機関がトラブルリストに上がっていると、昨日言明している今の段階は、ちょうど住専の破綻の前段階だと考えることができそうです。
その、6.4兆円→100兆円までの比率で、今回の最終的な損失が膨れあがる可能性が見えてきます。約15倍です。
仮にIMFの損失見込み額の2000億ドルを、住専の破綻での額と見なしてみると、その15倍は3兆ドル(300兆円強)になります。筆者の試算の100兆円はかなり控えめだったということにもなります。FRBの見込みの1000億ドルをベースにしても150兆円となります。
この試算はいかにも雑駁なものですが、何かの事象を巡る世の中の動き方というのは、ある程度の共通点があるものです。こうした共通の視点をいくつも見出しながら、現在起きていることの真の姿をいち早く見極めることは、そうそう侮れないものと思います。
この雑駁な損失試算を補完するものとして、当時の日本のバブル崩壊と、今回のサブプライム・モーゲージを端緒とする信用収縮問題との違いを、改めて整理しておきます。
1.アメリカの住宅ローン総額は1400兆円と巨額。日本の国債問題以上の問題。
2.ホームエクイティローンでの過剰な借金。(可処分所得の133%)
3.BIS規制(金融機関の自己資本は総資産の8%以上)の存在。
4.巨大なクレジット・デリバティブ市場の存在(45兆ドル)
問題の所在は、日本のバブル期のそれとはかなり異なります。1つに繋がった世界の金融市場の収縮と、アメリカという個別の国の消費過剰による借金漬け(ドル安の進行)が複雑に絡み合っている事態は、はるかに日本のバブル期の問題を超えるものです。
にもかかわらず、再度言いますが、世界の金融機関の損失見込総額が、6000億ドルで済むというのはとても理解出来ません。
しかしながら、この悲観的な見通しが、即、世界恐慌に至るというのは、いささか性急な議論ではないかと思っております。1つの救いは、アメリカを始め、世界の関係機関は、事態をより迅速に認識し、処理のスピードが日本の10倍は速いことがあります。
日本はだらだらと、裏帳簿やら子会社への飛ばしやら、卑劣とも言える手段で事の隠蔽を図ったがために、100兆円もの損失に膨らんでしまったとも言えます。それから、アメリカはインフレよりリセッションに陥らないことを優先すると言明しておりますが、この際必要となる「経済のインフレ耐性」については、グローバル化した世界経済がある程度下支えするであろうことも異なる点です。
但し、長期金利の上昇がこれまで通りに制御できることが条件です。この長期金利の問題は筆者の手には負えません。低金利の元、中央銀行が国債の買い上げをどんどん増やしていけばいわゆる流動性の罠にいつか陥り、市場原理で動く長期金利がいつか暴走し始めるのではないか?それを制御する方法はあるのか?といった、金融と経済の根幹に深く関わる問題だからです。
日本のバブル期の損失額合計の開示状況と比較するのは、いささか無謀とも思えるかも知れませんが、土地のバブルの崩壊でデフォルトが急速に進むことにより、融資元の金融機関に損失が出るという構図は同じです。
違うのは、日本のバブル崩壊の時は、直接に個人や企業に土地・住宅融資を行っていた日本の金融機関だけに損失が留まっていたのに対して、今回は証券化商品として世界中の金融機関に損失が拡大していること、そして、3ヶ月サイクルの時価会計をとっているため、欧米の含み損の公表のスピードが、当時の日本の場合より断然速いということです。
問題の構図が同じということは、損失拡大のスピードが違いこそすれ(日本の場合は10年もかかってしまった。)、損失額拡大の積み上がり方は、それほど違わないと推定することも或いは可能です。
今回も当初の損失額は、最初はFRBが最大1000億ドル程度と言っており、その後IMFが昨年10月に2000億ドルと増やし、12月にゴールドマン・サックスのアナリストが4000億ドルと指摘し、そして今回のUBSが6000億ドルです。誰がこれで損失額の打ち止めであると納得できるでしょうか?
ここで日本のバブル崩壊の時の例が参考になりそうです。
ご存じのように、最終的に日本の銀行の不良債権総額は100兆円規模にまで拡大した訳ですが、地価が下落し始めてから、3年目の1995年に住専が破綻しました。その不良債権の規模は6.4兆円だったそうです。
この事実と、今回のサブプライム・モーゲージでの欧米の金融機関の損失額公表のペースとを、あえて比較するのもそれなりに意味を持つと言えるかも知れません。
アメリカ連邦預金保険公社(FDIC)の総裁が、76社の金融機関がトラブルリストに上がっていると、昨日言明している今の段階は、ちょうど住専の破綻の前段階だと考えることができそうです。
その、6.4兆円→100兆円までの比率で、今回の最終的な損失が膨れあがる可能性が見えてきます。約15倍です。
仮にIMFの損失見込み額の2000億ドルを、住専の破綻での額と見なしてみると、その15倍は3兆ドル(300兆円強)になります。筆者の試算の100兆円はかなり控えめだったということにもなります。FRBの見込みの1000億ドルをベースにしても150兆円となります。
この試算はいかにも雑駁なものですが、何かの事象を巡る世の中の動き方というのは、ある程度の共通点があるものです。こうした共通の視点をいくつも見出しながら、現在起きていることの真の姿をいち早く見極めることは、そうそう侮れないものと思います。
この雑駁な損失試算を補完するものとして、当時の日本のバブル崩壊と、今回のサブプライム・モーゲージを端緒とする信用収縮問題との違いを、改めて整理しておきます。
1.アメリカの住宅ローン総額は1400兆円と巨額。日本の国債問題以上の問題。
2.ホームエクイティローンでの過剰な借金。(可処分所得の133%)
3.BIS規制(金融機関の自己資本は総資産の8%以上)の存在。
4.巨大なクレジット・デリバティブ市場の存在(45兆ドル)
問題の所在は、日本のバブル期のそれとはかなり異なります。1つに繋がった世界の金融市場の収縮と、アメリカという個別の国の消費過剰による借金漬け(ドル安の進行)が複雑に絡み合っている事態は、はるかに日本のバブル期の問題を超えるものです。
にもかかわらず、再度言いますが、世界の金融機関の損失見込総額が、6000億ドルで済むというのはとても理解出来ません。
しかしながら、この悲観的な見通しが、即、世界恐慌に至るというのは、いささか性急な議論ではないかと思っております。1つの救いは、アメリカを始め、世界の関係機関は、事態をより迅速に認識し、処理のスピードが日本の10倍は速いことがあります。
日本はだらだらと、裏帳簿やら子会社への飛ばしやら、卑劣とも言える手段で事の隠蔽を図ったがために、100兆円もの損失に膨らんでしまったとも言えます。それから、アメリカはインフレよりリセッションに陥らないことを優先すると言明しておりますが、この際必要となる「経済のインフレ耐性」については、グローバル化した世界経済がある程度下支えするであろうことも異なる点です。
但し、長期金利の上昇がこれまで通りに制御できることが条件です。この長期金利の問題は筆者の手には負えません。低金利の元、中央銀行が国債の買い上げをどんどん増やしていけばいわゆる流動性の罠にいつか陥り、市場原理で動く長期金利がいつか暴走し始めるのではないか?それを制御する方法はあるのか?といった、金融と経済の根幹に深く関わる問題だからです。