昨年10月にIMFが世界のサブプライムの損失額を2000億ドルと発表しましたが、ついに、8000億ドルに訂正です。
日を追う毎に損失額見込みが増えていっております。筆者の初期の想定損失額の1兆ドルはおろか、先日の破天荒な計算による損失見込み額の300兆円まで視野に入ってきました。
何故こうなっているのでしょうか?
1株80ドルしていたベア・スターンズが、たったの2ドルで買収されたとの先日の記事がヒントです。ベア・スターンズは銀行から借り入れをして、住宅関連証券に偏った投資をしていたのが災いしたと言われておりますが、何故か、たったの1日で事態が急変したのです。
既にご承知の通り、13兆ドルの住宅ローンのうち、6兆ドルが証券化されて、それが世界の金融機関やヘッジファンドに転売されております。この6兆ドルには、サブプライムローンの1.3兆ドルだけでなく、オルトAローンや、優良といわれるプライム・ローンまですべて含んでおります。
こうした住宅の資産担保証券(ABS)の市場価格が、サブプライム問題をきっかけとして、全て下落してしまったのが原因です。AAA格でも元本価値を100とすると55に、AA格は更に低く20に、そしてBBB格はたったの15に、この3月段階では下がっているのです。
プライム・ローンはAAA格ですが、これでも55の価値しかないということは、6兆ドルの45%が最低でも毀損していることを示します。2.7兆ドルです。(注)
問題は、株価と同じようにABSの市場価格の下落がこれで打ち止めになるのかどうかです。少なくとも、住宅価格が下げ止まるのかどうかが1つの鍵となります。日本のバブル崩壊の時に、住宅価格が下落に転じてから1-2年で下落が止まったでしょうか?ここにヒントがあります。住宅価格は、その国に住んでいる人々がローンを組んで借りても、その平均年収からして十分に返済できる程度にまで下落調整するのが、その時の教訓でした。
今のアメリカの住宅価格はまだ高すぎます。高値からの下落率はまだ平均で見ても10%程度です。まだまだ下がると見なければなりませんね。(以前から言っている通り、実はアメリカ以上に、イギリスやスペインなどヨーロッパでも住宅バブルとなっており、少し遅れて下落に転じていることも、世界経済の深刻な問題ですが、このことはまだあまり報じられておりません。)
今日の論点は、最低に見たてても、ABSの価値が2.7兆ドル以上も毀損していること、そして、この毀損は今後の住宅価格の下落により、まだまだ進むという点にあります。
仮に2.7兆ドルの含み損が既に世界の金融機関に発生しているとするなら、驚くなかれ、欧米の主要金融機関の自己資本は実質的に既になくなっていることになります。(自己資本総額は2兆ドルと言われております)
これがベア・スターンズがたったの1日で実質的に「倒産」したことの背景でしょう。
また、その前にFRBがAAA格の優良ABSを担保に、現金化が可能な国債を2000億ドルほど金融機関に貸し出して、いわゆる流動性を高めたことの背景かと思います。
そうしないと、金融機関は「既に消失している自己資本」を何とかリカバリーするため、貸し出している金を一斉に引き上げ、手持ちの証券やら株やら何でも換金可能なものは売り飛ばし、とにかく、毀損した含み損失を何とかしなければなりませんでした。その「貸し剥がし」のとっかかりがベア・スターンズだった訳です。
これをやられると、世界の経済がどうなるのかが、いくら何でもFRBも分かっていたための、このところの狼狽的とも思える緊急利下げであり、市場への資金の緊急供給でした。
とりあえず、こうした処置をとらないと、これは確実に世界恐慌への引き金になることが目に見えていたためです。
IMFがついにサブプライムの損失を8000億ドルと4倍にも引き上げたことの意味から、こうした背景を読み解かねばならないとならないと思います。
株式市場はまだまだ一喜一憂しながら「能天気」な上げ下げを繰り返しております。任期切れを間近に控えて何もする意欲のない、あのブッシュの能天気な顔つきと同じように。。。本当にとんでもない大統領をアメリカ人はよくも再任したものです。
まあ、この大変な事態への対処として、主要銀行や証券会社の国有化(資本注入)を一気にやらざるを得ないでしょうが、「もう火の手はそこまで来ております」というのが、今回、ベア・スターンズを生け贄として差し出した市場からの警告メッセージだったという訳ですね。
以上、この程度のことは皆さんとっくの昔にご存じかと思いますが、新聞やテレビなど、日本のメディアが伝え切っていない「ニュアンス」を、筆者のような金融のど素人が勝手に書き殴っております。悪しからずご了承下さい。
注:07年末での住宅ローン担保証券(RMBS)の総額は7.2兆ドルとの試算もあります(第一生命経済研究所 嶌峰義清氏)。このうち、4.5兆ドルはファニーメイやフレディマックの準政府系連邦住宅抵当公庫が保有しております。残りの2.7兆円がくしくも、サブプライム・モーゲージ関連のいわゆる「隠れ不良資産」であり、上記の金額とも一致しております。さらに、準政府系とはいえ、ファニーメイやフレディマックのRMBSもデフォルトの可能性があることは以前に論じたとおりですので、2.7兆ドルは控えめに見た数字ということです。
嶌峰氏のレポートによると、ABSの発行残高は11.5兆ドル、CDOの発行残高1兆ドルと更に巨額です。
日を追う毎に損失額見込みが増えていっております。筆者の初期の想定損失額の1兆ドルはおろか、先日の破天荒な計算による損失見込み額の300兆円まで視野に入ってきました。
何故こうなっているのでしょうか?
1株80ドルしていたベア・スターンズが、たったの2ドルで買収されたとの先日の記事がヒントです。ベア・スターンズは銀行から借り入れをして、住宅関連証券に偏った投資をしていたのが災いしたと言われておりますが、何故か、たったの1日で事態が急変したのです。
既にご承知の通り、13兆ドルの住宅ローンのうち、6兆ドルが証券化されて、それが世界の金融機関やヘッジファンドに転売されております。この6兆ドルには、サブプライムローンの1.3兆ドルだけでなく、オルトAローンや、優良といわれるプライム・ローンまですべて含んでおります。
こうした住宅の資産担保証券(ABS)の市場価格が、サブプライム問題をきっかけとして、全て下落してしまったのが原因です。AAA格でも元本価値を100とすると55に、AA格は更に低く20に、そしてBBB格はたったの15に、この3月段階では下がっているのです。
プライム・ローンはAAA格ですが、これでも55の価値しかないということは、6兆ドルの45%が最低でも毀損していることを示します。2.7兆ドルです。(注)
問題は、株価と同じようにABSの市場価格の下落がこれで打ち止めになるのかどうかです。少なくとも、住宅価格が下げ止まるのかどうかが1つの鍵となります。日本のバブル崩壊の時に、住宅価格が下落に転じてから1-2年で下落が止まったでしょうか?ここにヒントがあります。住宅価格は、その国に住んでいる人々がローンを組んで借りても、その平均年収からして十分に返済できる程度にまで下落調整するのが、その時の教訓でした。
今のアメリカの住宅価格はまだ高すぎます。高値からの下落率はまだ平均で見ても10%程度です。まだまだ下がると見なければなりませんね。(以前から言っている通り、実はアメリカ以上に、イギリスやスペインなどヨーロッパでも住宅バブルとなっており、少し遅れて下落に転じていることも、世界経済の深刻な問題ですが、このことはまだあまり報じられておりません。)
今日の論点は、最低に見たてても、ABSの価値が2.7兆ドル以上も毀損していること、そして、この毀損は今後の住宅価格の下落により、まだまだ進むという点にあります。
仮に2.7兆ドルの含み損が既に世界の金融機関に発生しているとするなら、驚くなかれ、欧米の主要金融機関の自己資本は実質的に既になくなっていることになります。(自己資本総額は2兆ドルと言われております)
これがベア・スターンズがたったの1日で実質的に「倒産」したことの背景でしょう。
また、その前にFRBがAAA格の優良ABSを担保に、現金化が可能な国債を2000億ドルほど金融機関に貸し出して、いわゆる流動性を高めたことの背景かと思います。
そうしないと、金融機関は「既に消失している自己資本」を何とかリカバリーするため、貸し出している金を一斉に引き上げ、手持ちの証券やら株やら何でも換金可能なものは売り飛ばし、とにかく、毀損した含み損失を何とかしなければなりませんでした。その「貸し剥がし」のとっかかりがベア・スターンズだった訳です。
これをやられると、世界の経済がどうなるのかが、いくら何でもFRBも分かっていたための、このところの狼狽的とも思える緊急利下げであり、市場への資金の緊急供給でした。
とりあえず、こうした処置をとらないと、これは確実に世界恐慌への引き金になることが目に見えていたためです。
IMFがついにサブプライムの損失を8000億ドルと4倍にも引き上げたことの意味から、こうした背景を読み解かねばならないとならないと思います。
株式市場はまだまだ一喜一憂しながら「能天気」な上げ下げを繰り返しております。任期切れを間近に控えて何もする意欲のない、あのブッシュの能天気な顔つきと同じように。。。本当にとんでもない大統領をアメリカ人はよくも再任したものです。
まあ、この大変な事態への対処として、主要銀行や証券会社の国有化(資本注入)を一気にやらざるを得ないでしょうが、「もう火の手はそこまで来ております」というのが、今回、ベア・スターンズを生け贄として差し出した市場からの警告メッセージだったという訳ですね。
以上、この程度のことは皆さんとっくの昔にご存じかと思いますが、新聞やテレビなど、日本のメディアが伝え切っていない「ニュアンス」を、筆者のような金融のど素人が勝手に書き殴っております。悪しからずご了承下さい。
注:07年末での住宅ローン担保証券(RMBS)の総額は7.2兆ドルとの試算もあります(第一生命経済研究所 嶌峰義清氏)。このうち、4.5兆ドルはファニーメイやフレディマックの準政府系連邦住宅抵当公庫が保有しております。残りの2.7兆円がくしくも、サブプライム・モーゲージ関連のいわゆる「隠れ不良資産」であり、上記の金額とも一致しております。さらに、準政府系とはいえ、ファニーメイやフレディマックのRMBSもデフォルトの可能性があることは以前に論じたとおりですので、2.7兆ドルは控えめに見た数字ということです。
嶌峰氏のレポートによると、ABSの発行残高は11.5兆ドル、CDOの発行残高1兆ドルと更に巨額です。