筆者が注目しているブログの1つ、「厭債害債」で、”タクシー「接待」事件報道に見る問題意識の貧困”と題して、この度の霞ヶ関の官僚の深夜タクシー利用の際の報道に関して書かれておりました。
既に、このブログのコメント欄に「異議あり」の部分について触れられておりますが、それに補足する形で、今回の件について筆者が感じるところを少し述べてみます。
今回の件は、表面的には些細な問題に見えます。しかし、こうしたことを通じてまで税の濫費があったのかと、筆者がまだ働いていた時の経験からも少々驚いた次第です。
まず、タクシー、特に個人タクシーにとって、深夜の長距離客は最高の上得意客です。そのため特に霞ヶ関の近辺には、タクシーが夜の10時頃からもう行列を作っている筈です。とりわけ予算編成の時期の主計官は、それこそ毎日利用していることでしょう。個人タクシーが何とか取り入って、電話で毎日呼び出して貰いたいと考えても不思議ではありません。
筆者もバブルの頃は、夜の12時にもなるともうタクシーがつかまらないため、近くの深夜喫茶で朝まで夜を明かしたこともあります。多分、その頃から、当時の大蔵省の主計官を中心として、個人タクシーとの「電話1本の縁」が出来ていたに違いありません。
さて、民間会社と霞ヶ関とでは、かくも違うのかと思ったことは、タクシーチケットを未だに使っていることです。チケットはそれはそれは便利です。筆者はそうした目的で使ったことはありませんが、1部の人間が、接待用に使ったと見せて、実は身内の送迎やら、本人の夜の遊び(仕事に全く関係ない)にチケットを利用するのは、いわばそれなりの役職者の「特権」のようなものでした。
ところが、バブルも弾けて景気が悪くなってくると、経費節減の一環で、タクシーチケットを取りやめる会社が多くなった筈です。筆者の会社もそうでした。何も仕事で遅くなって、交通手段がなくなった時までタクシーを利用するなとは、会社が言っている訳ではありません。使っても良いのですが、自分の手持ちの現金で立て替えるようにルールが変わったのです。しかも、更に経費節減が厳しくなると、タクシーの利用は3000円までなるルールまで一時的には出現しました。それがごく普通の会社の経費節減策でもあったと思います。
タクシーチケットは、その安易な利用に加えて、チケットならではの「不正使用」が考えられます。何も霞ヶ関の官僚がそのような手段を使っているとは思いたくはありませんが、下車時に、例えば15000円の料金がかかったところ、18000円の料金がかかったことにして、タクシーチケットにその金額をお客さんが記入することが可能です。差が少額だと、その日の迂回路やら渋滞で運賃が容易に変動しますので、これは誰にも分かりません。そしてその3千円分のタクシーにとっての余録と、2000円のクオカードを交換するような「互酬の慣例」が特定の個人タクシーの運転手と出来上がっていても不思議ではありません。
現金払いだとそうは行かないでしょう。そもそも「薄給」である筈の官僚が、1回1万円を超えるタクシー料金を立て替えること自体、後から払い戻しを受けるとはいえ毎日利用するならかなりの先行負担です。ましてや、そうした立て替え払い金から、更に3000円も余計に渡して、わざわざ虚偽の領収書を書かせ、それと引き替えにクオカードを受け取るような、みみっちいやりとりなど、いくら何でも誰もやりたくなくなるでしょう。(いや、そうも言えないのかな???)
担当大臣は、タクシーを利用しないで済むような残業規制だとか何だとか、頓珍漢なことをのたまわっておりますが、予算編成時期の大変さは、これは理解してあげねばなりません。
従って、今回の問題でまず着手しなければならないのは、タクシーチケットの廃止です。
それから上述のブログでは、飛行機で「正規のエコノミー料金」を払った社用族に、ビジネスクラスへのアップグレードを航空会社の好意で行うことがあることや、マイレージのことにも触れております。
筆者が勤めていた会社も、バブルが弾ける頃からそれまでのビジネスクラスの利用からエコノミークラスへと変わり、更に、スケジュールの変更が効かないチープチケットへと変わった時期もありました。但し、旅行代理店では大口顧客故に、何かあった時の航空会社との便宜は図ってくれたものです。筆者が経験したケースでは、大雪でワシントン行きの飛行機が飛べなくなった時、旅行代理店の配慮で、翌日はエコノミーからビジネスクラスへと好意で変更してくれました。
こうした便宜供与は、会社と旅行代理店の間でのやりとりですので、迷惑料のような意味合いでの配慮、もしくはいつもの引き立てに関する感謝の1部であり、それで会社や社員の負担が増える訳でもなく、恒常的でない限り、問題はないと思います。
マイレージの問題はどうでしょうか?
昔、聞いたことがありますが、本田技研は社員の出張でたまったマイレージは、社員本人ではなく、会社として召し上げるそうです。会社の費用で行った出張でたまったマイレージですから、会社全体として再利用するという趣旨です。そこまではやることもないのに、という気がしますが、それはそれで筋が通っている話だと思います。海外出張にはどこの会社も、Per Diemと言う日当がそもそも出ております。それで十分に、当の社員の海外出張に絡む苦労には報いているという考えです。
要は、会社のお金を使って、個人の便宜に供することができるような仕組みは排除するのが、経費削減以前の大前提です。
今回の場合は、会社ではなく国民の税金ですから、民間会社以上により適切に使われるように、そもそも手続きそのものを「設計」しなければならなかったのではないでしょうか。喩え、額は小さくても、税金を使って自分のためにタクシー会社から上述のような便宜あるいは現金を受け取っていたとしたら、これはもう、立派な業務上の横領に該当し、民間会社なら懲戒免職処分ものです。
事はタクシーチケットだけに限った問題ではないと考えます。
あえてこの際ハッキリと書くと、今回の問題からかいま見えるお役所の濫費の構造と、頭が切れる筈の霞ヶ関の官僚の節税への鈍感さが透けて見える以上に、ここまでモラルが退廃(もし、既に退廃していたのなら、形骸化したエリート官僚の無意識下での、力の弱いタクシー運転手への尊大な振る舞い)していたのが分かったからこそ、マスコミも含めて国民の怒りの論調が高まっているものと思います。
既に、このブログのコメント欄に「異議あり」の部分について触れられておりますが、それに補足する形で、今回の件について筆者が感じるところを少し述べてみます。
今回の件は、表面的には些細な問題に見えます。しかし、こうしたことを通じてまで税の濫費があったのかと、筆者がまだ働いていた時の経験からも少々驚いた次第です。
まず、タクシー、特に個人タクシーにとって、深夜の長距離客は最高の上得意客です。そのため特に霞ヶ関の近辺には、タクシーが夜の10時頃からもう行列を作っている筈です。とりわけ予算編成の時期の主計官は、それこそ毎日利用していることでしょう。個人タクシーが何とか取り入って、電話で毎日呼び出して貰いたいと考えても不思議ではありません。
筆者もバブルの頃は、夜の12時にもなるともうタクシーがつかまらないため、近くの深夜喫茶で朝まで夜を明かしたこともあります。多分、その頃から、当時の大蔵省の主計官を中心として、個人タクシーとの「電話1本の縁」が出来ていたに違いありません。
さて、民間会社と霞ヶ関とでは、かくも違うのかと思ったことは、タクシーチケットを未だに使っていることです。チケットはそれはそれは便利です。筆者はそうした目的で使ったことはありませんが、1部の人間が、接待用に使ったと見せて、実は身内の送迎やら、本人の夜の遊び(仕事に全く関係ない)にチケットを利用するのは、いわばそれなりの役職者の「特権」のようなものでした。
ところが、バブルも弾けて景気が悪くなってくると、経費節減の一環で、タクシーチケットを取りやめる会社が多くなった筈です。筆者の会社もそうでした。何も仕事で遅くなって、交通手段がなくなった時までタクシーを利用するなとは、会社が言っている訳ではありません。使っても良いのですが、自分の手持ちの現金で立て替えるようにルールが変わったのです。しかも、更に経費節減が厳しくなると、タクシーの利用は3000円までなるルールまで一時的には出現しました。それがごく普通の会社の経費節減策でもあったと思います。
タクシーチケットは、その安易な利用に加えて、チケットならではの「不正使用」が考えられます。何も霞ヶ関の官僚がそのような手段を使っているとは思いたくはありませんが、下車時に、例えば15000円の料金がかかったところ、18000円の料金がかかったことにして、タクシーチケットにその金額をお客さんが記入することが可能です。差が少額だと、その日の迂回路やら渋滞で運賃が容易に変動しますので、これは誰にも分かりません。そしてその3千円分のタクシーにとっての余録と、2000円のクオカードを交換するような「互酬の慣例」が特定の個人タクシーの運転手と出来上がっていても不思議ではありません。
現金払いだとそうは行かないでしょう。そもそも「薄給」である筈の官僚が、1回1万円を超えるタクシー料金を立て替えること自体、後から払い戻しを受けるとはいえ毎日利用するならかなりの先行負担です。ましてや、そうした立て替え払い金から、更に3000円も余計に渡して、わざわざ虚偽の領収書を書かせ、それと引き替えにクオカードを受け取るような、みみっちいやりとりなど、いくら何でも誰もやりたくなくなるでしょう。(いや、そうも言えないのかな???)
担当大臣は、タクシーを利用しないで済むような残業規制だとか何だとか、頓珍漢なことをのたまわっておりますが、予算編成時期の大変さは、これは理解してあげねばなりません。
従って、今回の問題でまず着手しなければならないのは、タクシーチケットの廃止です。
それから上述のブログでは、飛行機で「正規のエコノミー料金」を払った社用族に、ビジネスクラスへのアップグレードを航空会社の好意で行うことがあることや、マイレージのことにも触れております。
筆者が勤めていた会社も、バブルが弾ける頃からそれまでのビジネスクラスの利用からエコノミークラスへと変わり、更に、スケジュールの変更が効かないチープチケットへと変わった時期もありました。但し、旅行代理店では大口顧客故に、何かあった時の航空会社との便宜は図ってくれたものです。筆者が経験したケースでは、大雪でワシントン行きの飛行機が飛べなくなった時、旅行代理店の配慮で、翌日はエコノミーからビジネスクラスへと好意で変更してくれました。
こうした便宜供与は、会社と旅行代理店の間でのやりとりですので、迷惑料のような意味合いでの配慮、もしくはいつもの引き立てに関する感謝の1部であり、それで会社や社員の負担が増える訳でもなく、恒常的でない限り、問題はないと思います。
マイレージの問題はどうでしょうか?
昔、聞いたことがありますが、本田技研は社員の出張でたまったマイレージは、社員本人ではなく、会社として召し上げるそうです。会社の費用で行った出張でたまったマイレージですから、会社全体として再利用するという趣旨です。そこまではやることもないのに、という気がしますが、それはそれで筋が通っている話だと思います。海外出張にはどこの会社も、Per Diemと言う日当がそもそも出ております。それで十分に、当の社員の海外出張に絡む苦労には報いているという考えです。
要は、会社のお金を使って、個人の便宜に供することができるような仕組みは排除するのが、経費削減以前の大前提です。
今回の場合は、会社ではなく国民の税金ですから、民間会社以上により適切に使われるように、そもそも手続きそのものを「設計」しなければならなかったのではないでしょうか。喩え、額は小さくても、税金を使って自分のためにタクシー会社から上述のような便宜あるいは現金を受け取っていたとしたら、これはもう、立派な業務上の横領に該当し、民間会社なら懲戒免職処分ものです。
事はタクシーチケットだけに限った問題ではないと考えます。
あえてこの際ハッキリと書くと、今回の問題からかいま見えるお役所の濫費の構造と、頭が切れる筈の霞ヶ関の官僚の節税への鈍感さが透けて見える以上に、ここまでモラルが退廃(もし、既に退廃していたのなら、形骸化したエリート官僚の無意識下での、力の弱いタクシー運転手への尊大な振る舞い)していたのが分かったからこそ、マスコミも含めて国民の怒りの論調が高まっているものと思います。