「冬の関西1デイパス」で敦賀に上陸。敦賀は交通の要衝であり、天然の良港を擁して海の幸に恵まれたところである。私が関西に戻った昨年以降、ここを訪ねたり経由したりということが多く、そのたびに海の幸を買い求めたり味わったりで「関所」になっている街である。
今回もその例にもれず、ここで早めの昼食まで摂ることにする。まずは駅前通りに面した矢部魚問屋へ(ちなみにこの2階が若狭の味が楽しめる「まるさん屋」)。この時期ということで店内には越前ガニも並び、カレイなどの干物も並ぶ。こういう店で鯖のへしこにおぼろ昆布を買い求めるのがこのところの習慣になっている。
さて、ふと通りの向かいに目をやるとこんな看板が見える。よく見ればプロ野球12球団の帽子をかたどった看板が並んでいる。その中には今はなき近鉄バファローズの三色帽子もあれば、千葉ロッテマリーンズの帽子が今の「明徳義塾」ではなく「CLM」となっていたり、大洋ではなく横浜ベイスターズがあったりして、おそらく制作年度は1993~1994年頃と推察できるもの。特にパ・リーグファンから見れば「おおっ!」とうなってしまう代物。・・・・ただ、これがスポーツ用品店かと思えば、「魚辻」という魚屋さんなんですね。何でまた、このような看板をおっ立ててしまったのやら。
昼食は敦賀駅待合室横に併設の寿司屋で焼き鯖寿司。鯖を焼いたものに敦賀特産のおぼろ昆布を巻いた一品。これも昆布消費量の多い敦賀ならではの料理である。店内ではテレビがついており、FBC福井放送でテレ朝系の「サンデープロジェクト」を放映していた。農協のあり方について経済ジャーナリストの財部誠一さんがリポートするというものだったのだが、突然「この放送は11時29分で終了します」との字幕が出て、その時間になると番組の途中なのにいきなり画面がフェイドアウト。「???」と思ううちに11時30分となり、「NNNニュース」が始まった。ありゃりゃ、同じチャンネルでテレ朝と日テレかいな・・・。このFBCというのも節操がないというのか何と言うのか、JNNとNNNとANBがいろんな感じで放送され(FNN系列は福井テレビがそのまま放映)、視聴者から見て「どうなの?」という地方局の実態を現しているところである。こういう現状って、地元の人たちはどう受け止めているんだろうか。
・・・地デジ化もいいけど、こういう「チャンネル格差」の解消にこそ総務省は乗り出さなければならないと思うのは私だけだろうか。
さて、ここで腹ごしらえした後、北陸線の列車を待つ。この後は長浜に向かい、現在開催中の長浜盆梅展鑑賞をはじめとして、町並みをぶらつくことにしている。待合室にちょうど滋賀のパンフレットがあったので、何か情報はないかと眺める。
・・・すると、「SL北びわこ号運転」の文字。米原から木ノ本まで走るイベント列車であるが、運転日の記載の中に「2月7日」とあった。2月7日・・・思いっきり今日やないですか。この時間からなら、米原を13時26分に出発する便があるが、おそらく座席は満席だろう。ならば長浜で下車した時に少し待ってその顔だけでも見るとしようか。
そういうことに決めて、敦賀からの新快速に乗車。途中の近江塩津で米原行きの鈍行に乗り換える。車内には「その筋」とおぼしき客も多く乗る。
余呉を通る。余呉の湖を見るのも久しぶりのことである。湖のあたりにはこの時期にも関わらず大勢の観光客で賑わっているようにも見える。ちょうど雲も切れて青空が広がり、雪の積もった水田地帯は雪原となって見るものを楽しませてくれる。
木ノ本、高月と過ぎると沿道に三脚を立てる人の姿が目立つようになった。SL目当てで陣取っているのだろう。寒い中ご苦労なことで・・・といううちに河毛に近づく。すると、駅にほど近いところに雪原(水田地帯)が広がり、三脚を立てる人が目立つ。そして駅に着くと結構席を立つ人が多い。それを見て私もほとんど衝動的に席を立った。
・・・・どうせSLの通過を見送るのなら、雪が積もって絵になりそうなところで写真を撮るのもいいかなと。
さてこの河毛駅に降り立つのも初めてである。駅舎内には観光案内所が設けられており、戦国グッズなど売られていた。ここは戦国大名の浅井長政ゆかりの小谷城への最寄り駅であり、駅前には浅井長政とお市の方の坐像が並んで安置されている。来年の大河ドラマの舞台でもあることから早くも盛り上げようとしているようだ。
ここから雪道に足を取られながら歩くこと5分ほどで、踏切に出る。ここにも多くの人がSLの通過を待っており、地元の人が踏切警備と交通整理に当たっている。
SL通過まで時間がある中で特急や新快速が通過し、その旅に少しずつ雪に足を踏み入れてカメラを構えるが、もう一つ自分の思うような構図にならない。まあ、素人が酒を飲んで酔っ払っているようなカメラのこととて(こういうところで三脚立てて構えている人が持つカメラから見れば全然劣る性能のもので、ましてや撮影者の腕前が酔っ払いなものだから)、そんなもんだろう。
やはりここは多くの人が集まっているところからかなと思い、「雪中行軍」の後、河毛駅と北側の高速道路のガードとの間の一角にたどり着く。ここでは10数人が待ち構えており、その中に入れてもらう。この集団の少し向こうにも撮影の設営跡があるが、「そこに立ったら後ろのほうの人から怒られるからあかんで」と言われる。
振り返ると後方数十mのところでカメラの砲列が並び、まさしく変なことをしそうものなら「その筋」の人たちから砲弾をぶっ放されて蜂の巣にされるか、簀巻きにされて「人間鮒ずし」にされても文句は言えないなという雰囲気。とりあえずミニ集団の中で大人しくする。それにしてもこういうところで酔っ払いのカメラを出すのは気が引けるなあ・・・(じゃ来るなよ)。
SLの通過までには時間があるので、それまでにやってきた列車で予行演習のようなことをする。これまで使用することのなかった「スポーツ連写モード」を試してみることにする。
そして13時55分。汽笛とともに遠方に煙漂うのが認められた。河毛駅に停車したSL。そしてもう一度汽笛を鳴らして出発。SLらしく、実にゆったりした走りだ。北近江の田園に時代を感じる汽笛の音が響く。
ゆっくりと走るSL、とそこで前方から「どこに立っとんじゃあボケぇ!!!」という怒号が、先ほどの汽笛と同じくらいに響き渡る。そんなものも交えながら、駅発車直後と少し上りになるのとでゆったりとしたスピードでやってくるSL北びわこ号。
C56のゆったりした駆動を見ることができ、酔っ払いカメラでもそれなりのものは撮影できたのかな、と思う。
雪の白さと、SLの黒が際立っているように思う。これに空の青さ。撮影としては結構絵になる条件が揃っていた。・・・だからこそ、絶好のコンディションを崩されたというのが先の怒声なんだろうと思う。怒声を浴びせられたほうの主がその後砲弾に倒れたか、琵琶湖で簀巻きにされたかの消息はわからないのだが・・・・。
SLが通過すると一つのイベントが終わったようで、ここでぞろぞろと河毛駅に戻る。思いもかけない途中下車であったが自分では楽しめたということでよしとして(全然想定していなかったスケジュールだし)、後続の列車で長浜に向かった・・・・。(続く)