まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

第5回四国八十八所めぐり~勝浦町から遍路ころがしへ

2016年11月15日 | 四国八十八ヶ所
明石海峡大橋のたもとから乗った高速バスは、途中渋滞もなく8時20分よりすこし早く徳島駅に到着した。朝が早かったぶん、車内で一眠りすることもできた。

路線バスの9時10分発の勝浦線横瀬行きまで時間があり、昼食をコンビニで仕入れた後、駅ビル内のスターバックスで時間待ち。行楽シーズンと思うが、駅前には巡拝とおぼしき人の姿は見えない。同じバスで移動して、同じように上る人がいてもよさそうなものだが。

時間になりバスがやって来た。乗ったのは私の他には、地元の人が4人。前回、小松島の恩山寺前まで路線バスで行ったが、小松島市内までは同じルートをたどる。

その小松島の交通の要衝が、徳島赤十字病院。この辺りの系統の路線バスはほとんどここを発着または経由する。これから目指す勝浦町へは、徳島市街からだと手前で曲がり、勝浦川沿いに走ったほうが近いのだが、わざわざ小松島を経由している。勝浦町の人が日赤病院に通う利便性を図っているのだろうか。

いつしか乗客は私一人。勝浦川に沿って走る。河原にクルマを乗り入れて釣りも楽しめる穏やかな川である。いっぽうで、結構ダンプカーとすれ違うことがある。運転席に「加藤鉱業」のプレートがある。

走るうちに、川をはさんだ右手に斜面をかなりえぐられた山が見える。これは加藤鉱業の鉱山で、セメントやアスファルトの原料となるけい石が採れるそうだ。

勝浦町はこれから目指す鶴林寺も有名だが、最も知られているのは「ビッグひな祭り」ではないだろうか。ひな祭りの時季に、あちこちから寄贈されたひな人形を何段にも重ねて豪華に飾るもの。私も以前クルマを持っていた時に、高知へのドライブの途中にこの案内にひかれて一度見物したことがある(その時の記事がこちら)。この時は体育館に並べられた何段もあるひな人形だけでなく、山の斜面に張りつくように家が建つ集落の家の軒先に飾られたひな人形も印象的だった。ちなみに、特に関東の方だと、「勝浦町でビッグひな祭りって、房総のほうでしょ?」と思うかもしれない。千葉の勝浦でも大々的なひな祭りをやっているが、これは徳島の勝浦町から派生したものである。同じ名前として友好都市提携していることから実現したそうだ。

生名バス停に到着する。バス停のすぐ横に鶴林寺の石柱があり、徒歩で上る道を示す看板がある。ここから3キロあまりの道のりである。ここで巡拝の身支度をする。この時季はどんな格好で来たものか迷ったのだが、ここまでは長袖シャツの上に半袖シャツを重ね着してフリースを着ていたのだが、フリースを白衣に替えて出発することに。着替えをしている間に、歩きで来ている女性2人と男性1人が「こんにちは」と先に進む。

看板に従って路地を上る。周りはみかん畑が広がる。前回、小松島の恩山寺から立江寺まで歩く途中にみかん畑があるのを見て、徳島でみかんは意外だと思ったのだが、こちら勝浦も山の斜面を利用して結構畑が広がっている。ちょうどこれから熟すようで、いい色が広がっている。上り坂を振り返るとみかん畑と勝浦川沿いの町並みがいい感じで広がっている。

茅葺き屋根の休憩所や、路肩に「ご自由にお使いください」と杖が置かれているのを見る。そろそろ本格的な上りで、2つ目の「遍路ころがし」が始まるのかと気持ちを改め、杖に「頼むぞ」と言い聞かせる。別に急ぐのではないが、先ほど生名のバス停で先に行った女性2人を追い越す。私がバスで着く前から歩いていたわけで、早朝に前の札所がある立江からだろうか。

まずはコンクリートの坂を上り、水呑大師というスポットに着く。弘法大師が杖で地面を突くと水が湧き出たという伝説がある。そしてここからは昔ながらの山道になる。阿波遍路道のうち、水呑大師から鶴林寺までの1.27キロは、鶴林寺道として国の史跡に指定されている。立江から歩くことはしないにしても、こうした区間は、公共交通機関利用とか関係なく歩くのが風情あっていいだろう。

途中、木々の向こうにクルマの音がする。観光バスも途中まで上がることができるそうだ。

ここだけ木を切って展望が開けたようにしているところがある。眼下には那賀川の流れがカーブを描いている。その向こうに山があるのだが、右手の山が鶴林寺の次に行く太龍寺への道である。つまり、ここから山を下りて、再び同じくらいの高さを上る。標高差は400メートルくらいあり、これは結構きつそうだ。この上り、そして下ってまた上る・・・2つ目、3つ目の「遍路ころがし」と言われるのもわかる。

最後は昔の参道らしく石畳の道が続き、ようやく山門に到着した。生名のバス停から50分の道のりだった。まずはやれやれ・・・・。
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