ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

史上最強の軍隊を持つ米国が、最もテロを恐れてる。軍事力は問題を解決せず悪化させる。学べ日本!

2013年11月11日 | 日本とわたし
【8】那覇市情報公開訴訟と「防衛秘密」―――「秘密」はどのようにつくりだされるか

安倍政権が制定をもくろむ秘密保護法案は,防衛・外交等の4分野に関する事項を、保護する秘密の範囲としている。
 
そのうちの、防衛情報の秘密性の存否が、直接の争点となった裁判例がある。
那覇市情報公開訴訟である。
防衛情報の本質が、具現化された訴訟と言える。

1 事案の概要
 
那覇防衛施設局(当時)は、1988年12月、
建築予定のASWOC(対潜水艦戦作戦センター)庁舎(以下、「本件施設」という)の建築計画通知書、および添付図書44点を那覇市に提出したところ、
一市民が
ASWOCは有事の際、真っ先に敵の攻撃目標とされかねない。平和な市民生活を営む上からも、その内容について、十分に市民の知る権利と、チェックの機会が保障されるべきである」旨主張して、
那覇市情報公開条例に基づいて、公開請求した
ASWOCは、対潜哨戒機P3-Cに対する戦術支援、指揮管制を行って、敵潜水艦を攻撃させる任務を負う、軍事施設である。
 
那覇市長は、国民の知る権利の保障の観点から、同年9月、これらの図書の全面公開を決定した。
国(那覇防衛施設局)は、これら44点の図書には、防衛秘密が存すると主張して、
ただちに那覇地方裁判所に対して、那覇市長を被告として、情報公開決定の取消を求める行政訴訟を提起し、
併せて、公開決定の執行停止の申立をした
この執行停止申立事件の審理の過程で、国は、23点の図書には秘密性はないと、自ら公開に同意したので、
那覇地方裁判所は、残る21点の図書について、それを見ないまま、国の主張を全面的に受け入れて、執行停止を決定した。
 
こうして、本件施設の21点の建築図書(以下、本件図書という)の、秘密性の存否をめぐる那覇市情報公開訴訟(以下、本件訴訟という)が、開始された。

2 「防衛秘密」についての国の主張
 
国は、本件図書には、複数の防衛秘密が存し、そのうち、本件施設の抗たん性に関する情報については、次のように主張した。
準備書面の主張を、そのまま引用する。
 
「自衛隊の行動にとって不可欠な航空基地、指揮通信施設等は、有事における抗たん性の確保、すなわち、攻撃を受けた場合でも、簡単にはその機能を停止することのないよう、所要の措置を講じている」
「本件施設は、主として、爆撃機による爆弾攻撃を想定し、その爆弾の重量、投下速度、投下高度等から、弾道、弾着角度、弾着速度を見積もり、
地中爆発による破壊威力を計算して、これに耐えうる鉄筋コンクリートの壁厚等を設計したものである。
この点、本件施設は、一般庁舎、宿舎、隊舎などの、通常の自衛隊施設とは、全く異なった特殊な施設である」
「本件施設の壁の構造、厚さなどの情報を含む、本件図書が公開されると、本件施設の対爆撃強度が判明して、
本件施設の破壊にとって、最も効率的なデータ(爆弾の重量、爆撃高度等)を、攻撃側に対して与えることになり、
ひいては、我が国に対する攻撃を、極めて容易、かつ効率的なものにすることとなる」


3 「秘密」主張の破たん
 
しかし、国の上記主張はまったくの虚偽であった
 
本件施設の実態は、壁の構造に何ら特殊性はなく、地下階の壁厚はわずか35㎝で、およそ一般庁舎建築物と、何ら異なるものではないからである。
その虚偽性は、本件図書を所持している那覇市側にとっては、一見明白であったが、
国は、本件図書を見ることのできない裁判所や国民なら、誤魔化せるとの判断の下に、虚偽の主張をしたものと解さざるを得ない。
 
一審判決は、公開図書をもとに、「一般事務所建築物」と特段異なるものではないと判断した。(那覇地方裁判所平成7年3月28日付判決)
国は控訴したが、控訴審は一審判決を支持。
最高裁判所平成13年7月13日付判決で、那覇市の勝訴が確定。
 
大仰な虚偽の主張を平然としてまでも、本件図書を隠蔽しようとする国の姿勢は、
防衛情報は、国家が独占すべき聖域化されたもので、裁判所も当然に、それを受け入れるべきであり、
国民には「知らしむべからず」という、国家優先の思想的基盤に立脚したもの
であろう。

虚偽と隠蔽こそ、防衛情報の内在的本質であり、それは際限なく拡大することを、本件訴訟は実証した。
去るアジア太平洋戦争における大本営発表は、虚偽の代名詞となっているが、
その虚偽性は、戦争という時代的背景の下で、やむを得ず生じた偶発的なものではなく、防衛情報の内在的本質がもたらした、必然の帰結に他ならない
 
防衛情報は、国民の生存や安全に直結するものであり、それ自体が、独自の存在理由を持つものではない。
常に、国民の生存や安全と関連して、吟味されるべきであり、特に、国民の知る権利の保障を侵害するものであってはならず、その聖域化は絶対に許されない

4 秘密保護法が生み出すもの
 
秘密保護法案は、国家安全保障会議(日本版NSC)設置法案とセットである。
同会議が設置された場合、米国などの同盟国と、秘密情報を交換・共有することになるので、厳重な秘密保全が必要であるというのが、安倍政権の特定秘密保護法制定の理由である。
米国の国家安全保障会議は、戦争司令部として機能し、その究極的な局面は、戦争の決断だといわれている。
その日本版設置は、戦争のできる軍事国家体制づくりに他ならない。
特定秘密保護法の制定は、その一環であり、虚偽と隠蔽、それを保護する罰則の脅威に支えられた、暗黒の国家の出現をもたらし、明文改憲への布石
でもある。
 
「軍事によらない平和」の構築を、国家存立の基本原理とする日本国憲法下において、
自己増殖性を不可避的特性とする軍隊は、その名称(自衛隊、国防軍、米軍)の如何に関わらず、存在自体が許容されるべきではない。
その観点から、防衛(軍事)情報そのものの存在性、そしてその存在根拠である軍隊としての自衛隊や、安保条約の違憲性や是非が、改めて鋭く問われなければならない。  
(仲山忠克・沖縄)


【9】情報保全隊違憲訴訟と「秘密」――― 情報保全隊はなにを監視し、なにを秘密としたか

秘密保護法による、人権侵害の危険の先取りともいえる事件が、
現在仙台高裁で審理されている、陸上自衛隊情報保全隊(現在は自衛隊情報保全隊)による、国民監視違憲訴訟である。

1 何が秘密とされていたか
 
訴訟では、情報保全隊が、自衛隊の活動に反対する市民を監視し、その収集情報を、秘密文書として保有していることが認定された
イラクへの自衛隊派兵が、大きな社会問題になった時期(2003年末から04年2月)に、
派兵に反対する全国の広範な団体・市民の集会、デモ等の動向を、組織的・系統的・日常的に監視し、
個人の実名を含む情報を、収集・分析・管理保管した内部文書が、自衛隊員の内部告発によって、発覚したのである。
監視対象は、平和・護憲・女性などの、様々な市民団体から国会議員・地方議員、マスコミ、さらには弁護士会や、著名な映画監督の動向など、広範囲に及んでいた。

 
仙台地裁は、2012年3月26日、被告国が、文書の成立すら認否しなかった、この秘密文書が存在することを認定し、
この文書は、国民の自己情報コントロール権を含む人格権を、侵害する違法文書と判断して、5人の原告に対する国家賠償を、国に命じた。
 
国の秘密文書が、国民の人権を侵害する違法文書だったことが明らかにされ、これによって、私たち国民は、国家の人権侵害を救済し、これを抑止する足がかりを得たのである。
 
人権を侵害された原告には、秘密保護法は、情報保全隊による人権侵害の違法文書を、国民に内部告発してくれた勇気ある公務員を、
懲役10年の犯罪者にしたてて、社会的に抹殺する法律にしか見えない
のである。

2 情報保全隊はなにを監視していたのか
 
以下は、元情報保全隊隊長(鈴木健氏)の、仙台高裁での証言である。

(1) 情報保全隊はなにを監視するのか
情報保全隊の任務は、「外部からの働きかけから部隊等を保全すること」であり、外部からの働きかけには、「秘密を探知する動き」が含まれる。
 
秘密を探知する可能性のある団体等の動き、活動、これらの団体等による隊員、あるいは家族に対する接触状況
こういったものが情報保全隊の情報収集の対象となる(第1回尋問調書2頁)。
一般市民についても、情報を集めることはあり得る(同21頁)。
自衛官人権ホットラインの開設や、そのホームページの開設も、外部からの働きかけ等に当たり得る(同50頁)。
 
秘密保護法の「特定秘密」を探知しようとする団体(報道機関等)の動き、活動は、自衛隊にとって、外部からの働きかけそのものであり、当然に情報保全隊の監視対象となる。

(2) 報道機関の取材は、外部からの働きかけにあたるか
報道機関の記者が、隊員の話を聞かせてほしいと取材を申し込むことは、外部からの働きかけに当たり得ない(同33頁)。
 
隊員に対する取材については、広報を通じて申し込むものであるというふうに、私は認識をしている。
だから、外部からの働きかけには該当しない、と認識している(第2回調書13頁)。

(記者が広報を通さずに、隊員や家族に直接取材を申し込むことは、外部からの働きかけに当たり得るかとの問いに対し)
そういう場合はあり得ない、と私は認識している。マスコミが、報道の方が、広報を通さずにそういうことをすることはない、と認識している(同上)。
 
(広報を通さない取材は、問題のある取材なのかとの問いに対し)
それは取材ではありません(同14頁)。取材は、広報を通じてなされるものであると認識している(同上)。
マスコミの取材というならば、広報を通じて言ってきていただくということで、それが取材だと認識している。それだけです(同上)。
 
秘密保護法は、「取材の自由に十分配慮しなければならない」というが、
自衛隊が念頭においている「取材」とは、「広報を通した取材」に過ぎないのであり、それ以外は「外部からの働きかけ」となる

(3) 情報保全隊は、国民のどのような情報を収集しているのか
秘密を探知しようとする、外部からの働きかけに該当する行為(広報を通さない取材や集会・デモ行進等)の内容に関する情報のほか、
それら活動の関係者、及び関係団体等が行う他の活動、関係団体等に所属する、個人に関する情報も収集し、整理していた
(同31頁)。
 
その情報には、氏名、職業、住所、生年月日、学歴、所属団体、所属政党、個人の交友関係、過去にその個人が行った活動も含まれる(同53頁~56頁)。
 
このように、秘密保護法が制定される前から、自衛隊は、国民のプライバシーに関する広範な情報を、収集し保管しているのである。

(4) 情報保全隊が集めた情報はどうなるか
外部からの働きかけ等を行った、団体・個人の情報についてまとめたリスト(第1回調書64頁)、個人や団体について整理した文書は、存在していた(第2回調書4頁)。
 
さらに、鈴木証人は、本年10月28日の第3回証人尋問で、
情報保全隊は、警察も含む全ての他の行政機関から、非公開の情報の提供を受け得ること、
情報保全隊が収集した情報は、団体の傾向(セクト?)ごとに整理していることまで、認める証言を行った(現時点で尋問調書は未完成)。

3 情報保全隊訴訟と秘密保護法
 
このように、秘密保護法のない現在においても、自衛隊情報保全隊は、国民の人権を侵害する違憲違法な監視活動を行っており
私たち国民は、この人権侵害を許さない闘いを、法廷で行っている。
秘密保護法は、自衛隊に、違憲違法行為を隠蔽する口実を与えるとともに、自衛隊の違憲違法行為を正そうとする国民を、抑圧する凶器にほかならない。 
(小野寺義象・宮城)


【10】原発情報と秘密保護法 

1 問題の所在

 
福島原発事故に際して、放射性物質の拡散状況に関するデータ(SPEEDI)が、米国には提供されたが、国民からは隠されていたために、
福島県浪江町の住民が、放射線の高い方向に避難する、という悲劇が起きた。
政府は、原発事故に関する情報を、国民のためには使おうとしなかったのである。
そんな政府が、「国民の安全のため」として、「特定秘密の保護に関する法律」(特定秘密保護法)を、国会に上程している。
原発情報は、きちんと国民に提供されるのであろうか。
「特定秘密」とされ、隠蔽されることはないのだろうか。
それが問題である。

2 原発情報は特定秘密になるか
 
この間、政府は、「原発情報が秘密になることは絶対にない」と断言してきた(例えば、磯崎陽輔首相補佐官の9月18日のテレビ番組での発言)。
ところが、10月24日に開かれた、超党派議員と市民による政府交渉の場で、法案担当の内閣情報調査室橋場健参事官は、
原発関係施設の警備等に関する情報は、テロ活動防止に関する事項として、特定秘密に指定されるものもありうる」と説明したのである。
そして、核物質貯蔵施設などの警備状況についても、同様であるという。

3 政府説明の矛盾と法案
 
政府の説明は、矛盾しているのである。
いずれの説明が正しいのであろうか。
法案に基づいて検討してみよう。
 
法案の別表第四号イは、
テロリズムの防止のための措置、またはこれに関する計画、もしくは研究」を、特定秘密と指定するとしている。
原発は、核エネルギーを利用している施設であり、そこで事故が起きれば、「死の灰」が人間と環境を襲うことは、誰でも知っていることである。
今、私たちは、その渦中にいるのである。
その核施設が、テロの対象とならない保証はない。
むしろ、格好の標的であろう。
であるがゆえに、各国は、原発のセキュリティ(核セキュリティ)に、心血を注いでいるのである(ちなみに、原発は世界に430基ある)。
テロ対象の各原発において、どのようなテロ対策が取られているのかは、秘密にされなければならないであろう。
このように、法案上、原発情報が除外されるなどということは、ありえないのであって、
「秘密とされることは絶対ない」などというのは、明らかな虚偽である。

4 原発情報はブロックされる
 
この法案は、原発に関する情報を、ブロックする機能を果たすのである。
そして、そのブロックの対象は、テロリストだけではなく、国民全体も含むことになる。
テロリストだけを排除しての情報公開など、ありえないからである。
また、ブロックされる情報は、テロリストの攻撃だけではなく、
自然災害に関する情報、人為的な事故に関する情報、更には、原発の内部構造なども含まれるであろう。
テロリストがどのように情報を利用するか、判らないのであるから、すべての情報を隠さなければ、目的を達成できないからである。
 
こうして、国民は、原発に関する情報に、接することができないことになり、
自然災害であろうが人為的事故であろうが、その危険性から免れることができない事態が、想定されるのである。
安全と安心を求めて、テロとの戦いを優先する、という発想と論理が行き着いた体制が、ここに出現するのである。
安全と安心の確保を、政府にお任せする。
その代償として、「知る権利」や「報道の自由」を差し出すことになる。
にもかかわらず、安全と安心から遠ざかるというパラドックス
である。
私たちは、そのような社会を望むのであろうか。

5 法案の構造
 
法案によれば、防衛、外交、特定有害活動、テロ対策などに関する情報は、行政機関の長の判断で「特定秘密」とされ
国会や第三者機関の関与は予定されていないので、何が秘密とされたのかも不明ということになる
のみならず、その「秘密」を漏らした公務員も、政府情報を明らかにしようとする国会議員も、取材しようとするジャーナリストも、
「犯罪者」とされる危険性に晒される
のである。
 
秘密保護法などなくても、放射性物質の拡散に関するデータを隠蔽した政府が、秘密保護法を手に入れてしまえば
国民の生命や健康にかかわる情報や、環境汚染にかかわる情報も、「テロ対策」などの名目で、国民の目から隠してしまうであろう。
そして、それを知らせようとする人たちは、「犯罪者」とされることを恐れ、その行動を自主規制することになるであろう。
 
この法律は、国際情勢の複雑化に伴い、我が国、及び国民の、安全の確保に係る情報の重要性が増大したので、
その漏えいの防止を図り、もって、我が国、及び国民の安全の確保に資することを目的とする、としている。
目と耳をふさがれることは、自主的判断の材料を奪われることを意味している。
防衛、外交などだけではなく、国内の治安情報や原発情報についても同様である。
ここでは、基本的人権は無視され、国民は、主権者の地位から追いやられことになるであろう。
このような事態を想定して、国会と政府に、注文を付けている地方議会がある。

6 福島県議会の意見書
 
福島県議会は、10月9日、「特定秘密の保護に関する法律案に対し、慎重な対応を求める意見書」を、全会一致で採択している。
同意見書は、日弁連の反対の立場を援用しながら、原発の安全性に関する情報や、住民の安全に関する情報が、
核施設に対するテロ活動防止の観点から、「特定秘密」とされる可能性を指摘している。

その上で、今、必要なことは、情報公開の徹底であり、刑罰による情報統制ではない
内部告発や取材活動を委縮させる法案は、情報隠蔽を助長し、ファシズムにつながるおそれがある
もし採択されれば、民主主義を根底から覆すこととなる、瑕疵ある議決となることは明白であるとして、
両院議長と内閣総理大臣に、慎重な対応を求めている。
 
原発事故を体験し、現在もそれと対抗している福島県議会は、事態を正確に認識しているのである。
ちなみに、毎日新聞は、この福島県議会の意見書について、
10月26日の社説「国会は危険な本質を見よ」で、「この重い指摘を、全国民で共有したい」としている。
私たちもこの指摘を共有したい
ところである。

7 小括
 
外国からの攻撃やテロを、恐れないで済む最も根本的な方法・手段は、敵対関係を解消することである。
国際情勢が複雑になったからといって、軍事力を整えれば問題が解決するわけではないであろう。
史上最強の軍隊を持つ米国が、最もテロを恐れている姿を見れば、容易に理解できるところである。
軍事力では、問題を解決できないだけではなく、むしろ事態を悪化させてしまうことは、イラクやアフガニスタンの現状が物語っている。
そして、盗聴に明け暮れても、得られるものよりも失うものの方が多いことは、今の米国を見れば明らかであろう。
そんな米国に、歩調を合わせなければならない理由はない。
そして何よりも、テロや戦争は、人間の営みである。
それをなくすことは困難かもしれないけれど、不可能ではない。
現に、日本は、この70年近く、他国との戦争はしてこなかったし、テロのターゲットにもなっていない。
今まで出来たことが、これからできないということはないであろう。
 
他方、原発事故は起きている。
その直接の原因は、地震と津波という自然現象である。
自然現象をコントロールすることはできない。
災害や事故は避けられないのである。
テロリストを恐れるあまり、国民の必要不可欠な情報まで隠蔽してしまうことは、本末転倒であろう。
テロ対策を理由として、原発情報をすべて隠蔽することに道を開く「特定秘密保護法」は、廃案にしなければならない。

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2013年11月11日 | 日本とわたし
【4】知る権利と報道又は取材の自由は保障されない 

1 知る権利と報道又は取材の自由をめぐる修正経過とその意味するもの


(1) 修正経過
9月3日に発表された特定秘密保護法案(以下「本法案」という)の概要では、
(この法律の解釈適用)の項で、
本法の適用にあたっては、これを拡張して解釈して、国民の基本的人権を不当に侵害するようなことがあってはならない旨を定める」との訓示規定の提案がされていた。
 
その後、パブリックコメントにおける、国民のきびしい反対意見を経て、発表された政府原案の第6章「雑則」の(この法律の解釈適用)の項では、
報道の自由に十分に配慮するとともに、これを拡張して解釈して、国民の基本的人権を不当に侵害するようなことがあってはならない」(傍線は修正部分)と、
報道の自由に配慮する旨の規定を、追加する修正がなされた。
 
さらに、国会上程前に、自民党と公明党との間で修正協議が行われて、結局、前記の点は、上程法案の21条1項で、
この法律の適用に当たっては、これを拡張して解釈して、国民の基本的人権を不当に侵害するようなことがあってはならず、国民の知る権利の保障に資する報道又は取材の自由に十分に配慮しなければならない」と修正され、
また、21条2項で新しく、
出版又は報道の業務に従事する者の取材行為については、専ら公益を図る目的を有し、かつ、法令違反又は著しく不当な方法によるものと認められない限りは、これを正当な業務による行為とするものとする」(傍線はいずれも修正部分)との規定が加えられた。

(2) その意味するもの
この間の経過は、政府が、国民の意見を形式的に聞いて、臨時国会開会と同時に法案を上程し、多数を頼んで一気に法案を通そうと画策したものの、
国民の強い反対の前に、法案の手直しを余儀なくされ、その上程が遅れたことを示している。

 
ちなみに、1985年の「国家秘密に係るスパイ行為の防止に関する法律案」は、国会に上程されたあと、大きな反対運動の結果廃案となったが、
その後、(この法律の解釈適用)の項で、今回の法案の概要とほぼ同様の、基本的人権に関する訓示規定に、「表現の自由その他」を加えたうえで、
2項で新しく、
「出版又は報道の業務に従事する者が、専ら公益を図る目的で、防衛秘密を公表し、又はそのために正当な方法により業務上行った行為は、これを罰しない」との規定(傍線はいずれも修正部分)が、提案されたことが想起される。
結局この修正案は、国会上程に至らなかったが、この修正案は、今回の修正案の法的性格を考えるにあたって、参考となる。
 
本法案の修正過程は、1985年から1986年にかけての修正過程と類似しているが、
今回は、法案上程前に、いわば切り札とも言うべき修正をせざるを得なくなって、予定を遅らせて国会上程に至ったことが特徴
である。

2 解釈適用規定(21条)の性格と検討

(1) 21条1項
この項は、第6章の(雑則)の章に規定されており、
しかも、基本的人権に関する規定も含めて、「知る権利の保障に資する報道又は取材の自由に十分に配慮しなければならない」との配慮を求めるだけの規定にすぎないうえ、
そもそも本法案は、特定秘密を隠して、その限りで知る権利も、報道、又は取材の自由も否定する立場に立っているから、
このような訓示規定に、権力の濫用を防ぐ効果のないことは、明らかである。
 
むしろ、多くの批判を受けて、ことさらこのような規定をおくこと自体、
実は立法者が、本法案が、基本的人権や、報道又は取材の自由を侵害する危険性を内在させていることを、自認していることの反映だと言うべきである。
 
また何よりも、昨年末に廃案となった情報公開法改正案における、「知る権利」の保障規定は目的条項であり、
国政に関する情報は国民のものであって、情報公開法は国民の知る権利に奉仕するものであるという、この法律の基本的性格を示しているのに対し、
本法案に規定された知る権利は、単なる訓示規定であるから、その性格は全く異なる

(2) 21条2項
取材行為に関する規定であり、1986年に提案され国会上程には至らなかった
いわゆる「スパイ防止法」(国家秘密法)の修正案や、刑法230条の2の名誉毀損罪における「専ら公益を図る規定と、類似した条文である。
 
しかし、これが、以て非なることは、①項で明らかにし、
②項以下で、いわゆる、スパイ防止法の修正案の際に批判された多くの論点が、ここでも妥当することを明らかにする。

① 
1986年に提案された前記修正案は、まがりなりにも「これを罰しない」との規定であったが、
それでも、これが、違法性阻害事由か訓示規定か、必ずしも明らかではないと批判され、
また、詳細な検討の結果、この規定の新設によって、不可罰となることはほとんど考えられない、と批判された。
次に、名誉毀損罪については、一定の要件のもとに、「これを罰しない」と規定され、違法性阻却事由として解釈適用されているのに対し、
本規定の末尾では、「正当な業務による行為とするものとする」と、あいまいな規定がされているだけであって、
立法者が、これを違法性阻害事由として規定しているとは思われない
 むしろ、「雑則」の章に、明らかに訓示規定である1項と並んで、規定されていることは、この2項もまた、訓示規定であるとの疑いを強めざるを得ない。

② 
「出版、又は報道の業務に従事する者」「正当な業務」の定義とその範囲を、どう考えるのであろうか
フリージャーナリストがこれに含まれるのか疑問であり、また、オンブズマン、NPO、学者・研究者、一般国民については、当然不適用になると思われる。
次に、「正当な業務」とされるのは、「特定秘密の取得行為」とされる「取材行為」だけであろうから、
業務従事者だけの、かつ情報に接近する行為の一部が、この規定の適用を受けるにすぎない。
これでは、出版、又は報道の業務に従事する者の「取材行為」だけが、「正当な業務」として一応保障の対象になる、ということになる。

③ 
しかも、「取材行為」の「正当業務」性には、「専ら公益を図る目的を有し、かつ、法令違反又は著しく不当な方法によるものと認められない限りは」との限定が付されている
しかし、「専ら」が文字どおり「専ら」なのか、「主として」と解釈されることになるかは明らかではない。
また、「著しく不当な方法による」とあるが、その対象となる行為は「取材行為」であって、
結局、犯罪とされる「特定秘密を保有する者の管理を害する行為により、特定秘密を取得」する行為を指すことになるから、同じことを言っているに過ぎず
いずれにせよ、そのあいまい性、無限定性は著しい

④ 
また、そもそも「公益」とは何であろうか
本法案第1条に規定された目的は、
「我が国及び国民の安全の確保に係る情報」(引用者注、「秘密」)の保護であるから、このいわば「国益」に優越する「公益」とは何か明らかではなく、
結局、本法案の目的に優越する「公益」が認められる余地は、ほとんどないであろう。

⑤ 
さらに、出版、又は報道の業務に従事する者の取材行為については、
もともと刑法35条を根拠に、報道目的という正当業務行為に基づく違法性阻却事由を主張することもあり得るところ、
本規定による「専ら公益を図る目的」は、むしろ要件を加重する結果になることにならないであろうか。

⑥ 
そもそもこの規定は、本法案に基づいて指定された秘密についても、適用されるということにはならないと思われるから、
結局、この規定によっては、何も保障したことにならない

⑦ 
「取材行為については」「専ら公益を図る目的を有し、かつ、法令違反又は著しく不当な方法によるものと認められない限りは」との規定が、
実際の取材現場や、警察等の捜査、刑事裁判における審理のあり方に、具体的にどう影響を与え機能するのであろうか
仮に刑事裁判になってから、被告人、弁護人が、違法性阻害事由の主張ができたとしても、少なくとも犯罪構成要件には該当するので、
これに基づく捜索、押収、逮捕、呼び出しなどがなされれば、それは取材、報道の自由に対する重大な脅威となり、
取材する側にも取材される側にも、著しい萎縮効果が及ぶ
であろう。

また、「専ら公益を図る目的」「法令違反又は著しく不当な方法」についての立証責任は、事実上、捜査や裁判を受ける側が負うことにならざるを得ないであろう。  
(守川幸男・千葉)


【5】秘密保護法と国会の弱体化・空洞化 

1 憲法が保障する国会の権能・・・特に行政監視権能

 
国会は、主権者である国民の代表機関であり、憲法上、国権の最高機関、唯一の立法機関である(憲法41条)。
国会は、その憲法上の権能を発揮するために、行政機関が保有する情報を広く収集し、法案審議に活用し、行政を監視する活動をなす。
国会は、立法機関であると同時に、行政監視機関である。
 
憲法上、衆参両院には、国政調査権が保障されている(憲法62条)。
国政調査権は、国政に関して調査する、議院に与えられた権利である。
実際には、野党が国家権力に対し、国政調査権を通じて、国民の知る権利にこたえる情報を入手し、国政に反映させるという重要な役割を果たす
行政の保有する情報は、国民のものであり、原則として公開されなければならない
行政の保有す情報を活用し、行政を監視することは、行政権限が強化されている「行政国家現象」と言われる現代社会において、
国会の各院が、主権者たる国民の負託にこたえる、極めて重要な権能である。

2 秘密保護法案による国会権能の変質・・・「秘密会」
 
ところが秘密保護法案は、「特定秘密」を各院に提供する場合は、「公開しない」こと、非公開の「秘密会」(憲法57条1項但し書)とすることを要求している
憲法上の「秘密会」の開催には、公開原則の例外として、「出席議員の3分の2以上の賛成」が必要である。
 
日本国憲法のもとで、本会議において、秘密会が開催されたことはない。
しかし、戦前の大日本帝国憲法の下では、秘密会が頻繁に行われていた
衆院・参院あわせて、本会議で、少なくとも41回にのぼっている。
政府の要求で開催された秘密会は、総計31回(衆院17回、貴族院14回)と、約8割を占めている。
その内容は、治安維持法事件の報告、戦争(満州事変、支那事変)の報告、空襲被害状況の報告等である。
戦前の帝国議会が、議会を非公開とし、国民への情報提供を拒絶した内容は、
侵略戦争や言論弾圧などの、権力の暴走や大災害など、国民の安全、国の将来にかかわる重大問題ばかりである。

 
重要な情報を国民に隠ぺいし、国会を、政府の戦争遂行の翼賛機関としてきた事実がある。
 
現在、衆院で、自民・公明の与党は、3分の2以上の議席を占めており、野党議員の要請があっても、与党が反対すれば、秘密会は開催できない。
参院では、自民・公明の与党が過半数の議席を占めており、秘密会開催は不可能である。
安倍自公政権のもとでは、「秘密会」による国会での秘密の審議は、事実上不可能である。

3 「秘密会」での討議内容も秘密・・・5年以下の懲役刑
 
秘密会が開催されても、秘密会で知りえた秘密を漏えいすれば、国会議員といえども、5年以下の懲役に処せられる(秘密保全法22条2項)。
 
秘密会に出席して、「特定秘密」を知得した議員は、
自分の所属する政党・会派に持ち帰って議論することも、その調査を秘書に命じることも、国民にその情報を知らせることも、専門家に意見を聞くことも、
「秘密の漏えい」に該当し、処罰される
ことになる。

4 重要情報の提供拒否も可能
 
秘密会が開催されても、行政機関の長が、「我が国の安全保障に著しい支障を及ぼす」と判断すれば、結局、秘密を提供しないことが可能である(同法10条1項)。
国会で、秘密会の開催が決まっても、最終的には、行政機関の長の判断によって、重要情報が国会に全く提供されないことになる。
 
国会議員には、議院で行った演説・討論・表決については、院外で責任を問われないという免責特権(憲法51条)がある。
秘密会で知得した秘密を、院内の活動で発言しても、刑事責任は問えないことになっている。
「秘密漏えい」の懲役5年以下の刑罰の脅しが、効かなくなる。
そのため、行政機関の長に、秘密提供の拒否権を認めた
のである。
 
免責特権は、国会議員が自由に発言を行うことができなければ、その本来的な使命を果たすことが出来なくなりことから、
院内における言論の自由を、特に保障することによって、議会制度を保障するものであり、各国の憲法において等しく認められている。
特に、日本においては、戦前、大日本帝国憲法のもと、治安維持法による言論統制が強まり、
翼賛議会のもとで、国会議員の活動が制限され、本来の使命を果たせなかった、という苦い教訓もあって、
主権者たる国民の代表者としての、国会議員の活動を保障するための、重要な権利となっている。
 
この免責特権による国会議員の活動を制限するのが、秘密保全法案である。

5 独自ルートによる秘密の入手と公開
 
国会議員が、独自のルートから秘密を入手して、国民に知らせること、国会の審議の中で提示し活用することは、処罰の対象となっていない。
 国会議員に対する処罰は、「秘密会」に提供された秘密を、「漏えい」した場合のみである(秘密保護法10条2項)。
 
1985年に、国会に提出された「国家機密法」には、独自ルートで入手した秘密の単純漏洩罪も、処罰対象とされていた。
しかし、偶然に入手できた秘密の漏えいを、処罰対象とすることは、国民の知る権利や、議会制民主主義も否定するに等しい、との痛烈な批判がなされた。
そのため、秘密保護法案では、国会議員の処罰対象を、「秘密会」に提供された秘密の「漏えい」に限定したのである。
 
ただし、その秘密の入手が、「管理を害する行為」によるものとされた場合には、国会議員といえども処罰は免れない
秘密を公開した国会議員は、入手の段階で、刑事責任の追及を受けるリスクを甘受せざるを得ない。

6 国会の弱体化・空洞化・・・戦前国家体制の復活
 
秘密保護法制定の狙いの一つは、国民代表機関である国会を、弱体化・空洞化することである。
憲法によって、国権の最高機関としての権能が認められている国会が、国家権力の問題点を浮き彫りにし、国政に国民の声を反映させることを、阻止する狙いがある。
国会への情報提供を、「秘密会」により制限し、提供を受けた国会議員による情報の漏えいを、刑罰で脅し、
免責特権により保障されている国会議員の、院内での活動を制限するために、「我が国の安全保障に著しい支障を及ぼす」と判断して、情報提供を拒絶する。
国会は、国権の最高機関の地位を失い、国家権力の監視下に置かれることになる。
まさに、戦前の翼賛議会、治安維持法下での、言論弾圧のような社会が生まれることになる。  
(長澤 彰・東京)


【6】秘密保護法が生み出す暗黒裁判―――「秘密」の立証、「秘密」は裁判所に提出されない

1 秘密保護法による重い処罰

 
法案には、重い罰則規定が存在する。
 
罰則の内容は、特定秘密の取扱いの業務に従事する者が、その業務により知得した特定秘密をもらしたときは、10年以下の懲役(法案22条1項)、
第9条、又は第10条の規定により、提供された特定秘密について、当該提供の目的である業務により、当該特定秘密を知得した者がこれを漏らしたときは、5年以下の懲役(同条2項)に処する。
これらの罪の未遂も罰し、過失により漏らしたときも罰する
 
また、人を欺き、人に暴行を加え、若しくは人を脅迫する行為により、又は財物の窃取、
若しくは損壊、施設への侵入、有線電気通信の傍受、不正アクセス行為、その他の特定秘密を保有する者の管理を害する行為により、
特定秘密を取得した者は、10年以下の懲役に処し(23条1項)、未遂も罰する
更に、これらの行為の遂行を共謀し、教唆し、又は扇動した者も、処罰することにしている。
 
国家公務員法に違反して、秘密を漏らしたときは、1年以下の懲役(国家公務員法109条)であり、
自衛隊法に違反して、防衛秘密を漏らしたときは、5年以下の懲役(自衛隊法122条)とされている。
これらと比較しても、極めて重い処罰である。
 
この重い刑罰を課すための捜査、裁判は、どのように行われるのであろうか。
 
表現の自由に関する裁判は、必ず、公開の法廷で行わなければならないのであるから(憲法82条2項)、
公開の法廷に、その漏らしたと言う「特定秘密」を顕出すると、「特定秘密」の内容が公表されることになるので、
「特定秘密」を指定した側は、それを拒否する
ことになる。
そのようにして、「特定秘密」の内容が明らかにされないまま、裁判が進み、判決を言い渡されることになる
と予想される。
 
事件と裁判はどうなるか。

2 基地に反対する住民の逮捕と起訴
 
現在、米軍移動式早期警戒レーダー(Xバンドレーダー)を、京都府丹後市の航空自衛隊経ケ岬分屯基地に、配備する計画が進行している。
 
こんなことも起こるだろう。
 
住民のなかに、配備されるXバンドレーダーが、健康に悪い影響がないか、
あるいは、多数の米軍人が配属されて、米軍人による犯罪が増えるのではないか、などの心配が広がった。
反対する住民たちが、Xバンドレーダーの詳細を知りたいとお思い、相談をして、基地の自衛隊員に接触をして、情報提供を呼びかけた・・・。

 
秘密保護法では、「特定秘密をもらすこと」を「共謀し、教唆し、又は扇動した」者は、処罰されることになっている(24条)。
この規定によって、共謀しただけで共謀罪が成立し、
教唆(そそのかし)をしただけで独立教唆罪が成立し(教唆をされた側が秘密を漏らさなくても成立する)、
他の人に呼びかければ扇動罪とされることになる。
 
これらを違法行為であると判断した警察は、住民の代表者らを逮捕し、警察が関係すると考える、あらゆる箇所の捜索差押を実施した。

住民の反対運動は、大きな打撃を受けることになる。
 
逮捕された代表者らが起訴されると、裁判を受けることになるが、
裁判では、住民が知りたいと思った「バンドレーダーの詳細」は、全く明らかにされないまま、審理が進むことになる。
被告人や弁護人は、刑罰をもって保護すべき、特定秘密(実質秘)に該当するかを争うことになるので、
「詳細」を明らかにするよう求め、証拠開示命令の申立をすることになるだろう。
しかし、検察官が、これを明らかにすることはない

3 法廷に「秘密」は提出されない
 
大阪高等裁判所、昭和48年10月11日、国家公務員法違反被告事件判決は、
「刑罰によって保護するに値する秘匿の必要性、すなわち、いわゆる実質的秘密性を備えたものでなければならず、単に、国家機関により秘扱の指定がなされているだけでは足りない」
「裁判所は、国家機関の判断に拘束されることなく、独自に実質的秘密性の有無を判断すべき」
「もっとも、裁判の公開の原則と、秘密保護の要請は、互いに矛盾する関係にあるから、実質的秘密性を立証するには、必ずしも、秘密とされる事項の内容自体を、明らかにしなければならないわけではない」
「当該事項の種類、性質、秘扱を必要とする由縁を立証することにより、実質的秘密性を推認せしめ得る場合も」あるとしている。
つまり、外形から実質的秘密性を立証できる、としているのである(外形立証)。
 
裁判所は、インカメラ(刑事訴訟法316条の27第1項)により、「バンドレーダーの詳細」を見ることはできるが(法案10条1項ロ)、
これは証拠ではないので、これにもとづいて判決することはできない。
仮に、裁判所が証拠開示命令を出しても、検察官が提出に応じない場合(刑事訴訟法103条)は、「詳細」は法廷に提出されないことになる。
 
かくして、運動団体の代表者らには、自分たちが知りたいと思った秘密の内容を、全く知らされないまま、有罪判決が言い渡されることになるのである。
裁判官も、秘密の内容を知らないまま、有罪判決を言い渡すことになる。
有罪としても、本来は保護する利益(保護法益)との比較で、量刑が決められるのであるが、
何が秘密であり、被告人が侵害したと言う、保護法益の内容が明らかにされないまま、例えば「懲役~年」と決められることになると言う、
恐ろしい裁判を受けることになるのである。

4 記者の取材と報道の場合
 
特定秘密を取り扱う者が、新聞記者の、いわゆる「夜討ち朝駆け」等の取材攻勢に根負けして、
「A」という特定秘密を漏らし、その記者が取材源を秘匿して、「A」の存在を記事にしたとする。
 
どのような捜査と裁判が行われることになるのであろうか。
 
まず、「A」を漏らした犯人捜しが始まる。
 
捜査をするためには、「A」の内容を知らなければ捜査できないとして、
法案10条1項ロにより、「当該捜査又は公訴の維持に必要な業務に従事する者」として、検察官や警察官の一部の者に、「A」の内容が提供される。
警察官や検察官は、「A」の内容から、「A」を漏らした人を特定する。
 
裁判所から、逮捕状、捜索差押令状の発布を受けて、強制捜査が行われる。
但し、逮捕状請求書や捜索差押令状の請求書には、「A」は使用されず、特定秘密であることだけが記載されることになる。
最近の捜索差押は、捜査する側が大きく網を広げて、事件と関係があるかないかにかかわらず、一網打尽に押収する
パソコンを押収し、内部データをコピーして解析をするなどの、大がかりな捜査が行われる。
漏らした人は逮捕され、連日の取調べで、自白を強要される。
その結果、不当な取材方法であったとして、記者も逮捕・起訴されることがある。
 
取材行為については、
「専ら公益を図る目的を有し、かつ、法令違反、又は著しく不法な方法によるものと認められない限りは、これを正当な業務による行為とするものとする」(法案21条2項)とされているが、
それを判断するのは裁判所であるので、判決までの間、裁判をたたかわなければならない。
 
最終的に、最高裁判所で無罪判決を勝ち得たとしても、この間の、失われた数年間の時間は取り戻せないのであり、
なによりも、国が隠そうとする秘密に対する記者の取材活動が、強制捜査の対象になり得ること自体が、
報道に与える萎縮効果は甚大
、と言わざるを得ない。                          


【7】イラク派兵違憲訴訟と「秘密」―――なにが裁判所の違憲判断を可能にしたか

1 イラク派兵差止め訴訟と情報収集

 
2003年、イラク戦争は、アメリカによる一方的な攻撃で始まった。
日本は世界に先駆けて支持し、イラク特措法を作り、2004年から本格的に、自衛隊をイラクに派兵した。
 
国は、イラク派兵の実態について、「人道支援」という宣伝をするばかりで、
その実態を明らかにするように求める情報公開請求に対しては、「墨塗り」の書面を出しつづけ、イラク派兵の実態を国民に隠蔽し、欺き続けた
 
そうしたなかで、イラク派兵差止訴訟弁護団は、独自の情報収集をした。
また、中日新聞・東京新聞など、一部のジャーナリストが、精力的にイラクでの航空自衛隊の活動の実態を取材し、報道を続けた。
そういった積み重ねの上で、
2006年7月に、陸上自衛隊が撤退したと同時にこっそりと始まった、航空自衛隊によるバグダッドへの輸送活動の実態が、武装米兵の輸送であることが判明した。
 
2008年4月17日、名古屋高等裁判所は、バグダッドが、当時激しい戦闘地域であり、
その最前線に、武装した米兵を多数送り込むことが、米軍との「武力行使一体化」にあたるとして、
憲法9条1項に違反するとの、イラク派兵違憲判決を宣告した。
 
もしあのとき、秘密保護法が成立していれば、弁護団の情報収集も、中日新聞・東京新聞の取材活動も、処罰の対象となりかねなかったのではないだろうか。
イラク派兵の実態は隠蔽されたままで、当然、違憲判決なども出ることがなかったであろう。
 
2008年4月に、違憲判決があり、当初、政府は、この判決を軽視する発言を繰り返していたが、
2008年の年末には、イラクから自衛隊を完全撤退させた。
 
憲法9条が、力を発揮したと言っていい。

2 情報収集と秘密保護法
 
名古屋高裁が、憲法9条違反の判決を宣告したのは、原告側が、イラクでの自衛隊の活動を、詳細に証拠として提出したからである。
その証拠は、我々原告弁護団が、イラク隣国ヨルダンへの調査を行うなどによって、独自に入手したものもあれば、
中日新聞・東京新聞の優れた記者達が、地道な取材活動によって入手したものもある。
 
こうした情報は、「外交・防衛」に当たるため、特定秘密に指定され、入手できなくなる。
そうであれば、憲法違反の事実が、海外で積み重ねられたとしても、情報入手ができない以上、憲法9条を活かす訴訟自体が不可能となり、憲法9条は空文化してしまう
 
さらに、違憲判決から1年あまり経った2009年10月、
国はそれまで、ほぼ全面的に墨塗りに形でしか「開示」してこなかった、航空自衛隊の活動実績について、全面的に開示をしてきた
その「全面開示情報」から、航空自衛隊の輸送活動が、人道支援でも何でもなく、武装した米兵の輸送が多数に上っていたことが、明らかとなった
 
仮に、特定秘密保護法があり、「特定秘密」に指定されていたとすれば、こうした情報が開示されることはなかったであろう。

3 国家安全保障基本法=平和憲法破壊基本法
 
安倍政権は、現在、秘密保護法と同時に、「日本版NSC設置法」を強行しようとしている。
さらに、来年には、国家安全保障基本法の制定を狙っている。
 
国家安全保障基本法は、集団的自衛権のみならず、海外での武力行使を、全面的に解禁していくことにつながる法案であり、
憲法9条を、完全に空文化させしまう法案である。
同法案では、国民に対する「防衛協力努力義務」も課されれ、
この基本法の下で作られて行くであろう様々な法律によって、戦争に反対すること自体が、処罰対象となりかねない
 
国家安全保障基本法の中には、秘密保護法制の制定と、日本版NSCの創設自体が明記されており、
この国家安全保障基本法と、特定秘密保護法と、日本版NSC法とは、一体となって、日本を軍事国家に作り上げる法体系の基本として機能していくことが予定されている。
 
国家安全保障基本法は、まさに「平和憲法破壊基本法」である。
 
明文改憲手続きを経ることなく、憲法9条に規範を根こそぎ否定し、
軍事中心の新たな国家体制を作り上げるのが、国家安全保障基本法であり、その大事な骨格となるのが、特定秘密保護法
である。
 
このようなやり方が認められては、もはや我が国は、立憲主義国家とは言えない
しかし、現実には、内閣法制局長官のクビをすげ替え、集団的自衛権を容認する人物を「長官」として送り込んだ
内閣法制局を握った安倍内閣は、一見「敵なし」である
国家安全保障基本法も、来年、制定に向けて大きく動くであろう。
 
特定秘密保護法は、戦争国家への大きな第一歩である。
 
特定秘密保護法が出来れば、自衛隊が海外に派兵されても、もはやその活動実態について、調査することは不可能になり、
活動実態についての情報公開について、国は応ずることもないだろう。
 
海外で、自衛隊が、憲法9条違反の行為をしていたとしても、その実態を、私達が直接情報収集をしていくことは、極めて困難になり、
憲法9条違反の活動は、国民に隠さてしまうだろう。 
そして、国家安全保障基本法の下、9条違反の事実が次々積み重ねられ、その「事実」に合う形で「法律」が次々作られ
憲法9条は、明文改憲手続きを経ることなく、あってもなくても良い規定になってしまう
 
特定秘密保護法は、単に「知る権利」云々、という問題にとどまらない。
私達が今直面しているのは、「平和憲法」の危機であると同時に、「立憲主義」の危機である。
 
立憲主義を破壊する、一連の「手口」に対して、大きく連帯していくべき時である。
 
幸い、広汎な連帯を行う大きな素地が出来つつある。
一見敵なしの安倍政権であるが、私たちも決して無力ではない。
全力で、戦争国家への「手口」を止めていこう。
  
(川口 創・愛知)
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この道はいつか来た道。けれど断じて再び歩んではならない道。秘密保護法は決して通してはならない道!

2013年11月11日 | 日本とわたし


を紹介させてもらいます。

このページでは、特定秘密保護法案というものが、どういうものであるかが、とても分かりやすく解説されています。
膨大な量なので、ここにすべてを載せることはできませんが、ぜひ、時間を作って、PART1の内容を読んでください。
太文字のタイトル、要約文だけでも、この法案がどれほど恐ろしく愚かしいものかがよくわかります。

これから、PART2の、『秘密保護法がもたらすもの』を、何回かに分けて(ブログ記事の文字数制限のため)転載させていただきます。

↓以下、転載はじめ

【1】秘密保護法と有事法制 

1 戦争法のなかの秘密保護法

 
秘密保護法案は、さまざまな問題をはらんでおり、広範な分野に深刻な影響を与えるものであるが、
その「本籍」はあくまで、戦争法・軍事法の領域にある。
 
この国の現在の戦争法は、アフガン戦争・イラク戦争を背景に、2003年から2004年にかけて強行された有事法制が、基本となっている。
 
有事法制は、
① 基本法制=武力攻撃事態法
② 作戦・兵站法制=自衛隊法、特定公共施設利用法、船舶検査法、捕虜法、人道法等
③ 米軍サポート法制=米軍支援法、後方支援・物品・役務協定(ACSA)
④ 後方構築法制=国民保護法
という体系をもっている。

この有事法制の眼目は、地方自治体と民間企業を戦争に組み入れるとともに、
国民を、動員(徴用・徴発)と保護(避難など)の両面で組み込み、しかも、平時からそのための態勢を整えるところにある。
小泉純一郎首相(当時)が、ことあるごとに、「備えあれば憂いなし」と唱えたのは、そのためである。
 
当初は、「武力攻撃事態」(=戦争)のみを対象としていた有事法制は、
制定過程で、「テロ」などの「緊急対処事態」が追加された結果、軍事と治安の領域にまたがる法制となっている。
国民保護計画にもとづいて、「ゲリラ部隊の上陸(=武力攻撃事態の類型)」だけでなく、
「爆破テロ(=緊急対処事態の類型)」を想定した、演習・訓練が繰り返されている
のは、そのためである。
 
このことは、軍事と治安の領域にまたがって、「平時からの備え」を構築する有事法制と、
軍事・外交・治安にかかわる情報を、平時・有事を問わず、「特定秘密」として秘匿を強制する秘密保護法が、完全に重なりあっている
ことを示している。
 
ところで、有事法制が強行される過程で、「軍機保護」や秘密漏えい等による国民処罰について、論議が交わされることはなかった
有事法制に、新たな「秘密保護」が組み込まれていなかったことによる。
「国民の自主的協力で安全を守る」ことをうたい文句にした、有事法制を推進する上で、
政府権力と「軍部」が、情報を独占する「秘密保護」を持ち出すことは、「禁句」だったからに違いない。
 
10年を経て登場した秘密は、戦争法=有事法制体系に、メディアや国民、国会や裁判所に沈黙を強いたまま、戦争に突き進む「弾圧・鎮圧の武器」をつけ加えるのである。


2 秘密保護法と国民保護
 
秘密保護法が加わった有事法制のもとで、国民保護や住民の安全は、どのように扱われるか。
このことは、法案と国民保護法を読み比べれば、明らかになる。
 
法案に加えられた情報管理・管制システムは、「特定秘密」を指定する主体や、提供できる対象を、厳しく制限している
「特定秘密」の指定は政府機関に限られ、政府機関から提供を受けて「特定秘密」を保有できるのは、
他の政府機関や警察、同質の秘密保護システムをもった外国、契約によって秘密を扱う適合事業者などである。
 
この情報管理・管制のシステムから、警察を除く地方自治体の機関は、完全に除外されている
法案には、「地方公共団体」なる言葉は、まったく登場しないのである。
地方自治体を、「特定秘密」と完全に遮断する法案の構造は、地方自治体の役割や住民の安全との関係で、深刻な問題を投げかけることになる。
 
武力攻撃事態法や国民保護法によって、地方自治体は、「住民の生命、身体及び財産の保護」(事態法7条)を担う機関とされ、
住民の避難などの対処措置は、自治体職員と消防が担当することになっている。
地方自治体や消防が、住民の避難などを適切に行うためには、
武力攻撃・ゲリラ攻撃(武力攻撃事態)や爆破テロなど(緊急対処事態)の、被害や対抗措置についての情報が、迅速かつ適切に伝達されねばならない。

 
国民保護法による、はじめての実働演習だった「美浜原発・テロ対処訓練」(2005年11月27日)では、
「美浜原子力防災センター」におかれた対策本部で、被害の状況や対策の進行が刻々と報告され、映像によって視察者に公開されていた。
少なくとも、対策本部への状況報告なしに、避難などの対処措置がまともに行えないことは明らかだろう。
 
また、国民保護法にもとづいて、東京都が作成した「東京都国民保護計画」には、
「平時からの備え」のなかに、「首都防衛との錯綜の防止」との一節がもうけられている(第3章第3節1(4))。
昼間、人口1500万人の首都東京からの避難を行うには、軍事作戦との調整を行わざるを得ないためであり、その限りでは当然の要請である。
 
だが、法案によって、「テロリズムによる被害」(法案別表四イ)や、戦況(収集した「情報」同一ロ)・作戦計画(「自衛隊の運用」同一イ)などは、「特定秘密」とされるに違いない。
「軍部」や治安当局からすれば、戦況や作戦計画を知られれば、「手の内を明かす」ことになり、「被害を発表すればテロリストを利する」と考えられるからである。
 
しかして、その「特定秘密」は、政府機関や警察には提供されても、
国民保護を担当し、住民の避難などに責任を持つ地方自治体や消防には、提供されることはない。
自治体職員や消防署員が無理に知ろうとすれば、「管理を害する行為」(法案23条)、
自衛官や警察官が漏らせば、「業務上知悉した特定秘密の漏えい」(同22条)で、
いずれも懲役10年の犯罪
とされる。
 
こんなことで、国民保護の責務を果たし、住民の安全が守ることができるだろうか。
 
国民保護を口実に、戦争に組み込んだ地方自治体を、重要な情報から遮断するのは、深刻な問題をはらんでいる
だが、「国家を守るために、住民の安全は切り捨てる」に等しいこの構造こそ、「特定秘密」の本質にほかならない。
 
かつてこの国は、「軍機」の名のもとに、いっさいの軍事情報を遮断し、
沖縄や中国東北部(旧「満州」)などの戦場で、無数の民間人を死に至らせた

いまこの国は、同じ「哲学」をもった国になっていこうとしているのである。


3 秘密保護法と戦争
 
どのような戦争が念頭におかれているか。

(1) 戦争のはじまり
武力攻撃事態法にもとづく「武力攻撃事態」やm「緊急対処事態」の対処基本方針には、国会承認が要求されている(事態法9条7項、25条5項)。
周辺事態法によるm対処措置の実施も同様である(同法5条)。
国会審議が適正に行われるには、事態の性質・規模・状況やm対処の方向・方策などがm報告されねばならない。
だが、国会への「特定秘密」の提供はm秘密会に限定されているから(法案10条1項一イ)、「特定秘密」にかかわる審議は公開では行えず、
メディアが報道することも、議員が国民に報告することもできない。
 
これでは、「国民の知らないところで戦争に突入していく」と宣言しているに等しい

(2) 国民動員
武力攻撃事態法と国民保護法によって、一定の民間企業は、平時から戦争態勢に組み込まれており(指定公共機関・指定地方公共機関 事態法6条、国民保護法21条)、
自衛隊法は、武力攻撃事態等に際しての、国民動員を規定し、業務従事命令(医療・土木建築・輸送)まで認めている(同法103条など)。
特定公共施設利用法では、地方自治体等が管理する、港湾・空港・道路等についての、優先的軍事利用を認めている。
いずれも、民間事業者や国民などが、いやおうなしに戦争に引き寄せられる場面である。
 
状況が緊迫すれば、秘密法保護法の改正を含めて、秘密の保持を義務づけられる国民は、飛躍的に拡大することになるだろう。
そのことは、「軍機保護」のための監視の網が、この国の社会に張りめぐらされることを意味している

(3) 「日本有事」から「米国有事」への拡大
10年前に登場した有事法制は、アメリカに追随した侵攻戦争に、対処するためのものであったが、
それでも、この国をめぐる事態(日本有事)を想定していた。
 
あれから10年、事態そのものが、飛躍的に拡大されようとしている。
 
「集団的自衛権」の許容とは、要するに、アメリカをめぐる事態(米国有事)での、海外での武力行使・参戦を意味している
日米軍事同盟で結ばれた同盟国アメリカ以外に、この国が「集団的自衛」と称して、戦端を開こうとする国は存在しないのである。
 
そのために、米日両軍の統合軍化や、米日共同作戦のための「情報の共有」が叫ばれ、
有事法制体系をも「下位法」とし、集団自衛事態法や国際平和協力法(海外派兵恒久化法)を組み込んだ、国家安全保障基本法体系が構想されるにいたった。
 
秘密保護法とは、そのために生み出された、「新時代の秘密保護法制」にほかならない。
秘密保護法を含む、国家安全保障基本法体系が守ろうとしているのは、国民ではなく、この国ですらなく、同盟国アメリカそのものなのである。
 国民的批判を受けて廃案となった国家秘密法案(スパイ防止法案)が浮上してから30年、有事法制が強行されてから10年の歳月が流れている。この歳月を経ていま問われるべきこと、それは、「戦争の道を克服しようとしている世界の趨勢に背を向けて、そこまで外征の国になっていくか」という、根本的な命題と言わねばならない。                      
(田中 隆・東京)


【2】日本版NSC設置法+秘密保護法は、この国をどこに導こうとしているか 

1 国家安全保障会議設置法は有事法制の一環

 
朝鮮半島での有事を想定し、北朝鮮に対するアメリカ軍の軍事行動を、後方支援することを目的に、「周辺事態法」が1999年に制定され、
さらに、2003年には「武力攻撃事態法」が、2004年には「国民保護法」が、強行成立させられた。
これらは、アメリカが行う戦争に、この国が「予測」の段階から、軍・官・民をあげて加担、
アメリカ軍に追随して、自らも参戦していく、侵攻型の有事法制
であった。
 
いわゆる「有事三法案」として、武力攻撃事態法案、自衛隊法「改正」案とともに国会に提出されたのが、現行の安全保障会議設置法「改正」案であった。
武力攻撃事態法の制定を踏まえ、設置法「改正」により、
「武力攻撃事態等への対処に関する基本方針」や、「内閣総理大臣が必要と認める武力攻撃事態等への対処に関する重要事項」が、内閣総理大臣の諮問事項に新たに加えられ、
また、会議の審議を、迅速かつ的確に実施するための、事態対処専門委員会が新設された。
現行安全保障会議そのものが、有事法体制の一環として整備、構築されてきた組織である。
その意味で、国家安全保障会議設置法は、有事を想定した軍事法・戦争法の一環であって、
軍事体制に適合的な組織へと、国家機構を変容させるものである。

2 4閣僚への権力集中と制服組自衛官の大量進出
 
国家安全保障会議(日本版NSC)は、内閣総理大臣を中心に、外交・安全保障に関する諸問題を、戦略的観点から、日常的・機動的に議論することにより、
我が国の外交・安全保障政策の、司令塔の役割を果たすとされ、有事法体制の集大成ともいうべき、抜本的強化策と位置づけられている。
 
「改正」案の特徴は、
第1に、内閣総理大臣・内閣官房長官・外務大臣・防衛大臣の4閣僚による「4大臣会合」を新設することにある(国家安全保障会議設置法5条1項二号)。
この「4大臣会合」の新設により、従来からある「9大臣会合」(同1項一号)ではできなかった、中身の濃い議論と迅速な結論が可能となり、外交・防衛政策の司令塔となるのだという。
 
第2の特徴は、内閣官房内に、総理大臣を直接補佐する「国家安全保障担当補佐官」を常設し(内閣法21条)、国家安全保障会議を恒常的にサポートする「国家安全保障局」を新設する(内閣法17条)ことである。
国家安全保障局には、局長、局次長のもと50人体制で、「総括」「同盟・友好国」「中国・北朝鮮」「その他(中東など)」「戦略」「情報」の6班が置かれる。
しかも、50人の中には、10数名の制服組自衛官が送り込まれ、6班の半分、3班の班長が、防衛省の出身者がつとめる(他の2班を外務省、1班を警察庁出身者がつとめ)と報じられている(10月24日付読売新聞)。
 
安全保障会議の前身である国防会議は、文民統制を目的としていたが、本「改正」は、文民統制を軍人統制へと変容させるものであって、
安全保障局を、制服組自衛官(軍人)や防衛省出身者に委ねることに他ならない


3 4閣僚への権力集中は憲法上許されない
 
第2次世界大戦後の1947年、共産主義の脅威に対抗すべく、冷戦期に創設されたのが、「アメリカ国家安全保障会議(National Security Council)」であり、
これを手本にしたのが、国家安全保障会議(日本版NSC)である。
 
本家(アメリカ)のNSCは、大統領、副大統領、国務長官、国防長官、その他を構成員とする大統領の諮問機関であり、
政策決定権者である大統領がメンバーであるため、NSCの決定が即座に政府の決定となり、それにより、機動性や迅速性が担保されている。
しかし、日本の場合、内閣が国会に対し連帯責任を負う(憲法66条3項)議院内閣制を採用しているため、
4大臣会合の決定を、そのまま内閣の決定とすることは、憲法上許されない
あらためて、全員一致の閣議決定を経なければならないことになる。
その意味で、日本版NSCには、迅速性・機動性において、もともと憲法上の限界がある、というべきである。
 
日本と同様に、議院内閣制を採用するイギリスにおいても、2010年5月に、NSCが設置された。
しかし、イギリスの場合、NSCは、内閣委員会(日本の内閣委員会とは趣旨も性格も異なる)の1つとされ、
内閣委員会の決定は、閣議決定と同様の効力を持つとされており、あらためて閣議決定の要求される我が国とは異なる。(以上、「調査と情報」548号、801号)
 
日本版NSCの議論において、迅速性や機動性を強調し、4大臣会合を、「実質的」な決定機関とすることを求める議論がある。
しかし、内閣が連帯して、国会に責任を負う我が国においては、事実上であれ実質であれ、4閣僚の意向により閣議を左右することは、憲法原則を蔑ろにするものであって許されない(改憲手続きを要する)。
4大臣会合で開示された情報(秘密)、それを踏まえた決定である以上、閣議においても、当該情報の開示を踏まえた決定でなければならない
そうでなければ、内閣の国会に対する連帯責任が、全うできないからである。

4 情報・秘密の囲い込みと、一部閣僚による国政の専断
 
日本版NSCは、海外のNSC、とりわけアメリカのそれとの情報共有を前提としており、
すでに、日米間においては、NSC担当者同士の相互交流が始まっているといわれている。
国家安全保障会議が適確に機能するためには、秘密保護体制の整備が不可欠だとされる。
国家安全保障会議の各議員に、秘密保持義務を課す(7条)とともに、秘密保護法とのセットでの、今国会での成立が目指されている。
 
しかし、このNSC+秘密保護法の体制は、権力中枢部のごく一部のみが、重要な情報(秘密)を独占し、
国民はもちろん、国会議員や4閣僚以外の大臣すらも、情報の共有者から排除され(「同盟国」アメリカの中枢やNSCとは情報共有がなされる)、
無理矢理アクセスすれば、処罰対象となることが想定される。


その結果、情報享受の階層性―重要であればあるほど少数にしか共有されず、共有者の範囲が広がるにつれ重要度が低下する―が生まれ、
ごく限られた者の意思が、事実上の国家意思となってしまう
重要情報(秘密)に接することのできない国会議員や国務大臣は、適確な判断者たりえず、NSC+秘密保護法体制は、この国を軍事・専制国家に導きかねないのである。
(松島 暁・東京)


【3】秘密保護法と海外派兵・九条改憲 

1 秘密保護法と戦争への道


安全保障に関して、防衛、外交などの秘密を保護しようとする、今回の秘密保護法づくりは、
平和憲法を踏みにじり、日本を戦争する国にしようとする動きと、一体のものである。
 
以下、秘密保護法案は、
第1に、平和憲法と相容れないものであり、
第2に、アメリカとともに、日本を戦争する国にする動きと一体のものであり、
第3に、9条改憲の先取りであることを明らかにする。
第4に、広範な情報が国民から隠され、文民統制や国民のコントロールを不可能にするなど、平和憲法に反する重大な問題点についても述べる。

2 平和憲法と相容れない秘密保護法
 
戦前、軍事秘密の保護は、侵略戦争と一体のものとして進められてきた
日清戦争後の1899年には、軍機保護法が制定され、それが日露戦争を経て、1937年日中戦争が激化するもとで拡充された。
太平洋戦争開戦前夜の1941年には、軍事上の秘密のみならず、外交、財政、経済、政治など、広範な秘密を保護する国防保安法の制定にいたる。
違反者は、死刑を含む重罰で処罰され、治安維持法などとあいまって、多くの国民が弾圧された
ものの言えない社会がつくられ、侵略戦争が遂行されていったのである。
 
戦後、戦争を放棄し、軍隊を保持しないとした日本国憲法のもとで、軍機保護法や国防保安法は廃止された。
しかし、在日米軍の秘密を保護するための、刑事特別法が制定され、
また、日米相互防衛援助協定等に伴い、アメリカ政府から日本に供与された装備品、及び装備品に関する情報を保護する、MDA秘密保護法が制定された。
秘密漏えいなどには、10年以下の懲役刑をもって処罰する、秘密保護法制であるが、これらは、平和憲法と矛盾する法制度といわざるを得ない。

3 日米の共同作戦、海外派兵と秘密保護制度

(1) 日米ガイドラインと国家秘密法案
日米での共同作戦計画づくりを進めようとする、1978年の日米防衛協力の指針(旧ガイドライン)では、日本における情報保全が確約された。
すなわち、自衛隊及び米軍は、効果的な作戦を共同して遂行するために、情報の要求、収集、処理及び配布などを行い、
これらの情報については、それぞれが責任を持って保全すること、すなわち、他に漏えいなどされないように、責任を持つことが確約されたのである。
秘密が漏らされるようなことでは、戦争を進めるうえで、重要な情報を共有できないというわけである。
そして、1985年、スパイ防止の名のもとに、国家秘密法案が国会に提出された。
軍事・外交に関する広範な情報を秘密とし、法違反の犯罪者に、死刑を含む重罰で対処するというものであった。
法案は、国民の知る権利を著しく侵害するものであり、マスコミはもとより、多くの国民が反対の声をあげ、結局は、廃案となった

(2) 自衛隊の海外派兵と防衛秘密法制
湾岸戦争を契機にして、自衛隊の海外派兵の動きが進められるなかで、
1997年の日米「新ガイドライン」では、効果的な作戦を共同して実施するため、情報活動について協力することとし、
共有した情報の保全に関し、各々責任を負うことが明記された。
 
2001年、アフガニスタンに対する戦争が始まると、日本は、アメリカから求められ、テロ特措法を成立させて、これに参戦していく。
その際、政府は、防衛秘密を特別に保護する自衛隊法「改正」をも、国会で成立させた。
軍事・国防のための秘密保護制度であり、平和憲法と矛盾する制度である。

(3)日米両軍の一体化と秘密保全法の提起
地球規模での米軍再編が進められて、米軍と自衛隊との一体化が強化されるなかで、
2005年、日米安保協議委員会(2+2)でも、二国間の安全保障・防衛協力の態勢を、強化するための不可欠な措置として、
情報共有、及び情報協力の向上とともに、共有された秘密情報を保護するために、必要な追加的措置をとることが確認されてきた。
 
そして、日米両政府は、2007年8月、「秘密軍事情報の保護のための秘密保持の措置に関する協定」(GSOMIA)を締結した。
この協定では、両国間で相互に提供される、秘密軍事情報を取り扱う条件として、
その担当者が、秘密軍事情報取扱資格を有すること
当該情報にアクセスすることを許可されている資格者の登録簿を、各部署で保持すること、が求められている。
 
国内でも、2010年8月、新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会(新安保防衛懇)が、秘密保護法制づくりを提起し、
同年12月の「防衛計画の大綱」も、政府横断的な情報保全体制を強化することを、統合的かつ戦略的な取組として位置づけた。
そして、2011年8月、有識者会議の報告が、秘密保全法づくりを提起したのである。

(4)秘密保護法案は9条改憲の先取り
自民党が、2012年4月に発表した改憲草案では、
9条改憲により、国防軍を保持することとあわせて、
国防軍の「機密の保持に関する事項は法律で定める」と、秘密保護法の制定を提起した。

また、同年7月、自民党が発表した国家安全保障基本法案(概要)は、
集団的自衛権の行使や、海外で武力行使、武器輸出などもできるようにすることとあわせて、
「我が国の平和と安全を確保する上で、必要な秘密が適切に保護されるよう、法律上・制度上必要な措置を講ずる」として、秘密保護法を制定することを求めている。
 
新ガイドラインの見直しを確認した、本年10月3日の日米安保協議委員会(2+2)においても、
アメリカは、集団的自衛権の行使とともに、情報保全の法制化(秘密保護法づくり)の取り組みを、歓迎する態度を明らかにしている。
 
このように秘密保護法案は、集団的自衛権の行使容認と一体の動きであり、
9条改憲、戦争する国づくりを、先取的に進めようとするものであることは、明白
である。

5 国民から隠される広範な情報と戦争への道

(1) 隠される広範な情報
防衛秘密だけとっても、秘密保護法案では、包括的、かつ広範な情報が、すべて防衛秘密の対象となって、国民から秘匿されることとなる。
国民は、防衛予算や基地機能、防衛計画、作戦運用の実態、配備される武器・弾薬・航空機に関する情報から、一切遠ざけられる危険がある。
 
何より「自衛隊の運用」(1項)すべてが、防衛大臣の指定により秘密となりうるのであるから、
自衛隊の行い、行おうとする活動すべてを防衛秘密として、国民から秘匿することも可能となる。
日本が、アメリカとどのような憲法違反の共同作戦行動に突入しようと、
極秘に新兵器を開発し、あるいは外国を攻撃する戦争を計画しようとも、一切国民に知らされない危険性がある
 
これまでも、米艦船等による核兵器持ち込みなど、日米での密約が国民から隠されてきた経緯からみて、いっそう広範な情報が国民に隠され続けることになる

(2) 処罰の矛先が向けられる広範な関係者 
現在自衛隊が、その装備調達の発注をしている企業は、膨大な数にのぼる。
これらの膨大な企業に関わる秘密が、「防衛秘密」のなかにとりこまれる。
そしてこれら「防衛秘密」に関与する労働者、技術者の数は、計り知れないほど多数にのぼる。
兵器・艦船・航空機の製造のみならず、修理、さらには航空、港湾、海運、建設、陸運、医療、情報産業等、
極めて広範で多岐にわたる各分野の産業に、従事する労働者、技術者、経営者が、対象になりうる。
これら民間人・労働者が、秘密保護の義務を負わされ、故意過失を問わず、漏洩を処罰されることとなる。
不正や違法を告発したり、市民の側から情報公開を求めることも、きわめて困難となる。
まさに、国民多数に、処罰の矛先が向けられるものである。

(3) 否定される文民統制、国民側からのコントロール
防衛大臣は、内閣の関与なしに、秘密を指定できる
広範な情報が秘匿され、内閣のチェックもコントロールも、困難となる。
国会においても、十分な資料に基づき調査し議論することが、困難となる。
防衛・外交など広範な情報に関する答弁拒否がまかりとおり、国会審議の空洞化を招くことになる。
文民統制は形骸化することとなるのである。
 
そもそも、平和憲法を持つ日本において、自衛隊の活動に関し、主権者である国民が、常に監視・批判を行うのは、国民の当然の権利である。
ところが、防衛・外交など、広範な情報が「秘密」とされ、国民がこれら情報から遠ざけられることになれば、国民からの批判・監視は、行えないこととなる。
自衛隊の運用・作戦行動が、いかに憲法9条に重大に反するものであっても、それを知ることができないこととなり、自衛隊の独走を許すこととなる。
憲法前文で保障されている平和的生存権をも、ないがしろにされてしまうのである。
 
これでは、戦前の二の舞になりかねない。
断じて歩んではならない道
である。                         
(吉田健一・東京)
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これ以上、日本人としての恥と罪を増やさないためにも

2013年11月11日 | 日本とわたし
ハーヴェイ氏からまたメールが送られてきた。

第4号機の燃料取り出し作業のみならず、福島の事故原発のすべての問題から東電を外させて、世界中から集めた極めて優れた科学者や技術者で組まれたチームを作り、収束に当たってもらう。
この願いを通すための署名を集める運動の中心人物が、このハーヴェイ氏。

今日は、原発事故の発端となった巨大地震と津波が起こったあの日から、丁度2年と8ヵ月。
彼は、今日から毎月11日に、陽が落ちるまでの断食(水分はオッケー)をすることを決め、人々に呼び掛けている。
この断食は、福島原発の事故処理に目処が立ち、希望の灯火が見えるようになるまで続けられ、
そうすることで、我々は、生きている間中、あの大災害で命を亡くされた人々、困難を強いられている人々に、思いを馳せ、
同時に、地球を脅かし続けている、重篤な放射能汚染の危機を、忘れずに生きていくことになる。
そしてまた、こうやって、大勢の人たちが、たった一日にせよ、食べ物を口にしない日があるということは多分、
地球の環境にとっても、わずかでも良い影響をもたらすことになる。

そして今日のニューヨークタイムズに、第4号機についての記事が大きく取り上げられた。

日本はというと……「大丈夫です、いつもの作業となんら変わりがないことですから」、などと言う、東電の責任者の言葉をそのまま流している。
4号機の事故については、あれほど隠されたことだらけで、なにひとつ解明も検証もされてないのに……。

先日、アメリカ合衆国原子力規制委員会が作成した記録文書(後に訂正された部分がある)の、特に気になる部分を訳して載せた。
その記事に対して、また別の見解があることを教えてくださった方が数名いた。
そのすべてを読ませていただき、この数日間、わたしなりに考えた。

そして、どの推測も有り得ることであると思った。
だって、アノ東電なんやから。
いや、確信持って言うけれども、日本の電力会社は多分、程度の差はあれ、アノ東電と似たり寄ったりだから、陰でなにをやってても全然驚かない。
実際のところ、地震とか津波とかの想定なんか無しに、やりたい放題の隠し事をやってたと思う。
それらは多分、政府や官僚や財閥や兵器商人らの思惑が反映された、ものすごく危険だけれども、無責任で身勝手で、行き当たりばったりの希望であり、
それらを金と一緒に受け取ってきたのは、これまた無能で無責任極まる電力会社の役員たちであり、
そこから下々に命令が下り、危険で無茶苦茶な現場作業を押し付けられた挙げ句に、酷い被曝を受けて使い捨てされてきた作業員の方たちがいる。

そして一番確信を持って言えることは、
東電も政府も、特に原発党が蘇った政府は、今後、どのような事態に陥っても、それを必ず隠す。
絶対に隠す。
そのための準備に必死であることが、それをまさしく証明してる。
そんな連中に、この作業を、絶対に任すようなことをしてはいけない。
それはもう、日本人としての恥であり、罪であると思う。

そんな恥と罪を、これから生まれてくる日本の子どもたちに、押し付けてはいけない。


↓以下は、記事を読んでコメントをしてくださった方々からの、別の見解を証明する記事。

http://kiikochan.blog136.fc2.com/blog-entry-2072.html
一番危険な福島第一原発4号機「本当は自力で爆発していた!?」仏独共同の国営放送と事故直後の新聞記事


『事故時のプールに1535体の燃料はありませんでした。
定期点検中のはずだったのに、一部は格納容器内に入っていたのです。
赤外線映像が格納容器内の熱を証明しています』

http://phnetwork.blogspot.jp/2011/05/blog-post_11.html
核燃料の無いはずの4号機原子炉が発熱している
しかも防衛省がコメント

http://inventsolitude.sblo.jp/article/53430889.html
4号機の謎は解けない


http://blog.livedoor.jp/ail01u9j10taw/archives/3825866.html
「阿修羅」転載: 東電よ!『4号機爆発』の原因を公表しなさい
  

以上の中から、きーこさんの記事の引用をさせてもらう。

なぜかというと、非常に驚いたから。
きーこさんも驚いておられるけれども、アノ読売新聞が、当時書かれた記事を、今現在も読めるように、きちんと保管してくれている。
特にこのような内容の記事は、さっさと削除されるのが当たり前になった昨今では、本当にありがたい処置だと思う。

↓以下、引用はじめ

一番危険な福島第一原発4号機「本当は自力で爆発していた!?」仏独共同の国営放送と事故直後の新聞記事

福島第一4号機で火災、爆発音も…屋根には損傷
(2011年3月15日11時46分 読売新聞)

東京電力福島第一原発4号機で、15日午前6時14分、原子炉建屋付近で大きな爆発音がした。

東電によると、使用済み核燃料プールがある建屋5階の屋根に、損傷を確認した。
さらに、同日午前9時38分、4階付近で出火しているのが見つかり、
東電は、地元福島県と国に通報するとともに、自衛隊と米軍に、消火活動への協力を要請した。
原子炉内に水を供給する再循環ポンプの配電盤付近が、火元とみられる。

東電によると、4号機は、地震発生時は定期点検中で停止中。
プールは、使用済み核燃料や、定期点検で炉内整備する際に取り出した、核燃料を冷やしながら保管する場所。
4号機では、原子炉内を整備しており、核燃料も、このプールで同時に保管していた。

地震に伴い、プールは電源を失って、水を循環できなくなり、
通常40度程度の水温が85度にまで上昇、東電で監視を続けていた。


福島第一原発4号機、超高濃度放射能が拡散
(2011年3月15日13時50分 読売新聞)





東京電力は15日、東日本巨大地震で被災した、福島第一原子力発電所4号機(福島県)の、
原子炉建屋内にある使用済み核燃料を、一時貯蔵するプール付近で、同日午前9時38分頃に、火災が発生
同日午前10時22分には、毎時400ミリ・シーベルト(40万マイクロ・シーベルト)の放射線量を観測した、と発表した。

同日午前11時過ぎに記者会見した枝野官房長官は、
身体に影響を及ぼす可能性があることは間違いない」と述べた。

2号機では、同日午前6時14分に大きな爆発があり、原子炉格納容器の下部にある、圧力抑制室の圧力が低下した。
原子炉付近の相次ぐ破損で、核燃料が損傷し、大量の放射性物質が漏れだした可能性がある。
茨城、栃木両県や都内などで、ごく微量の放射性物質が検出されている。
政府と東電は15日、事故対策統合本部を設置。
菅首相は、同日午前11時に記者会見し、
同原発周辺の半径20~30キロ・メートル圏内の住民約13万6000人に対し、屋内退避を求めた

東電などによると、原発周辺で、同日午前10時22分に、高い放射線を観測した。
2号機と3号機の間で、毎時30ミリ・シーベルト(3万マイクロ・シーベルト)、
3号機付近で同400ミリ・シーベルト(40万マイクロ・シーベルト)、
4号機付近で、同100ミリ・シーベルト(10万マイクロ・シーベルト)
で、
枝野長官は
「従来発表してきた『マイクロシーベルト』とは単位が違う。身体に影響を及ぼす可能性のある数値」と話した。

400ミリ・シーベルトは、がんになる確率が高まる100ミリ・シーベルトの4倍で、
一般人が1年間に浴びていい放射線量(日常生活と医療目的を除く)の、400倍にあたる。

4号機の火災で、
東電は、福島県と国に通報するとともに、自衛隊と米軍に消火活動への協力を要請したが、
同日午前11時ごろ、自然に鎮火したのが確認された。

東電によると、地震発生時に、4号機は定期検査で運転を停止していたが、
使用済み核燃料一時貯蔵プールの冷却水を、循環させる電源を失っていた。
燃料棒の余熱で、通常40度程度の水温が85度にまで上昇し、水位が低下していた。


専門家は、
プールの水位低下でむき出しになった燃料の被覆管と蒸気が反応し、水素が発生して、爆発火災に至った
(京都大原子炉実験所の今中哲二助教)と分析する。

プールの中には、使用済み燃料棒783体が保管されていた。
4号~6号機は定期検査中だったが、4号機の冷却機能が失われていた。
使用済み核燃料は、1~3号機にも、約300~500体保管されている。

同原発の南約100キロ・メートルにある、茨城県東海村の東京大学の研究施設敷地内では
午前7時45分頃、原子力災害対策特別措置法の基準値に定められた、毎時5マイクロ・シーベルトを超える放射線量を観測した。

東電によると、2号機で破損した圧力抑制室は、
格納容器内の蒸気圧が高まった場合に、圧力を逃がして下げる機能を持つ
爆発によって、3気圧から1気圧に低下した。

2号機の原子炉内は、14日に、著しい水位変動を繰り返して、
燃料棒が2度にわたって完全に露出しており、一時的に空だき状態になっていた
とみられる。

原子炉の水位は改善傾向にあるが、燃料棒は午前6時30分現在、2・7メートル露出した状態になっている。
格納容器本体の圧力は、7・3気圧で変化していない。

圧力抑制室は、放射性物質の混じった蒸気と水が入っており、
原子炉建屋上部に生じたすき間から、放射能を帯びた蒸気が流れ出た懸念がある。

爆発直後には、同原発の敷地周辺の放射線量が、毎時969・5マイクロ・シーベルトを記録したため、
原子炉への注水作業に関係のない作業員らを退避させた。

同原発の正門前では、同日午前10時15分、
一般人が1年間に浴びてもいい放射線量の、8倍を超える、毎時8837マイクロ・シーベルトを観測
した。

計6基の原子炉がある同原発は、地震後、運転中の3基が自動停止し、
1号機と3号機は、水素爆発を起こして原子炉建屋が破損。
1~3号機では、原子炉内の核燃料棒が露出した。


福島第一4号機北西側に8m四方の穴2か所
(2011年3月15日18時28分 読売新聞)

東京電力は15日、
東日本巨大地震で被災した福島第一原子力発電所(福島県)の、3号機付近で、
同日午前10時22分に、毎時400ミリ・シーベルト(40万マイクロ・シーベルト)の放射線量を観測した、と発表した。

同日午前11時過ぎに記者会見した枝野官房長官は、
身体に影響を及ぼす可能性があることは間違いない」と述べた。

同日朝には、2号機で大きな爆発があり、原子炉格納容器の下部にある、圧力抑制室の圧力が低下。
4号機では、原子炉建屋内にある、使用済み核燃料の一時貯蔵プール付近で火災が起き、
建屋北西側の上部側壁に、8メートル四方の穴が、2か所開いている
のが確認された。

1~3号機では、原子炉内の水位が低下して、核燃料棒が露出する事態が続いており、
核燃料が損傷して、大量の放射性物質が外部へ漏れ出ている可能性がある。
茨城、栃木両県や都内などで、ごく微量の放射性物質が、検出されている。
政府と東電は15日、事故対策統合本部を設置。
菅首相は同日午前11時の記者会見で、
同原発周辺の半径20~30キロ・メートル圏内の住民約13万6000人に対し、屋内退避を求めた。


建屋から再び白煙…福島第一の4号機、鎮火せず
(2011年3月16日10時15分 読売新聞)


煙が確認された福島第一原発=日本テレビ映像から撮影

経済産業省原子力安全・保安院は16日、
東日本巨大地震で被災した東京電力福島第一原子力発電所4号機(福島県)で、
同日午前5時45分に火災が発生したという連絡を、東電から受けたと発表した。

東京電力によると、4号機の、原子炉建屋の内部の北西側角付近で、
前日の爆発で破損した壁の穴ごしに、炎が上がっているのを発見
した。

建屋内部は放射能が高いため、立ち入ることができず、何が燃えているかは未確認という。
6時10分に、国と県に連絡した。
東電の社員が、6時15分には、炎が消えたのを確認したが、
午前10時現在、建物から白い煙が上がっており、火災は鎮火していない
消防車4台、隊員13人が現場へ向かったが、近付けない状態となっている。

炎が確認されたのは、使用済み核燃料プール付近
プールでは、燃料を水に浸して、高レベルの放射性物質の拡散を防いでいる。
東日本巨大地震で、プールの水を循環させることが不可能となり、燃料の熱による水位低下で、燃料棒が露出。
火災につながったと見られる


東電は、プールへ給水を行うため、16日から自衛隊、在日米軍などの協力を得て、
ヘリコプターを使って給水する計画を検討していた。

東電によると、午前6時現在、風向きは北西の風2メートル

事態を重くみた海江田経済産業相も15日、
原子炉等規制法に基づき、東電へ、速やかな注水の実施を命じていた。


15日の4号機火災の鎮火、東電が確認怠る
(2011年3月16日12時45分 読売新聞)


福島第一原発4号機(中央)と3号機(手前)(15日撮影、東京電力提供)

福島第一原子力発電所4号機で、16日朝に発生した2度目の火災を巡り、
東京電力は同日の記者会見で、
「1度目の火災で、鎮火したことの確認をしていなかった」と、確認を怠っていたことを明らかにした。
火災場所は前日と同じ4号機の北西部分で、社員が目視で鎮火したと思い込んでおり、同社のずさんな対応が浮き彫りになった。

東電の大槻雅久・原子力運営管理部課長が、同日午前6時45分の会見で公表した。
1度目の火災は、15日午前9時38分に発生し、東電は同日、「午前11時頃に自然鎮火した」と説明したが、
大槻課長は16日、
社員が、目視で炎が見えないのを確認しただけだった。申し訳ない」と謝罪した。

実は、1度目の火災が鎮火していなかった可能性を、報道陣から指摘されると、大槻課長は、
「放射線量が高くて現場に近づけず、確認できない」と釈明した。

東電によると、火災確認後、社員が2度消防に通報したが、つながらなかったため、放置していた

2度目の火災は、16日午前5時45分頃、
4号機の原子炉建屋から、炎が上がっているのを社員が確認。
午前6時20分に消防に通報した。

東電によると、福島第一原発では通常、協力企業の社員を含めて、約800人が作業を行っているが、
被曝の危険性が増した15日、70人を残して、福島第二原発などへ退避させた



4号機消火の切り札、大型ヘリでホウ酸投入準備
(2011年3月16日14時55分 読売新聞)

火災が相次ぐ福島第一原発4号機。
消火活動がなかなか進まない背景には、何があるのか。

東京電力によると、16日午前5時45分に、社員が火災を確認した後、
地元の富岡消防署(福島県富岡町)に通報したのは、午前6時20分
発見から35分が経過していた。
同社の担当者は、「避難区域に入っているためか、なかなか連絡がつかなかった」としている。

ようやく消防車4台、隊員17人が到着したのは、午前8時14分から47分にかけて。
東電本社には、消火活動の状況について、ほとんど情報が入っていないという。

一方、15日朝に発生した火災では、東電は、自衛隊と米軍に、消火活動を要請。
実際は、放水活動は行われなかったが、米軍は、消防車両を原発近くで待機させ、自衛隊もヘリコプターの活用を検討した

通常、上空からの水の散布は、困難が伴う。
高濃度の放射能が漏出している中で、防護服を着た状態での操縦は難しいうえ、
水を投下してガスが発生したりすれば、操縦が不安定になる恐れもあるためだ。
このため政府は、陸上自衛隊ヘリによる、上空からの冷却水散布の実施を見送った。

ただ、16日に白煙が上がった3号機について、北沢防衛相は、ヘリでの消火活動の可能性に言及した。
4号機と違い、建屋の上部が開いているためで、防衛省幹部によると、ヘリは現在、4機程度が準備している。

また、東電は自衛隊に対し、核分裂反応を抑制するホウ酸の粉末を、4号機の上部から、建屋内にある核燃料棒の貯蔵プールに投入することも要請している。

4号機の建屋上部には、亀裂はあるが、はっきりとした穴は確認されていない。
このため東電は、建屋上部に、ホウ酸の粉末50~60トンを置き、亀裂から内部に浸透させることを提案。
自衛隊では、命令が出次第、大型ヘリで、ホウ酸を建屋上部に載せる方法を検討している。


米原子力委員長「4号機プールに水ないと思う」
(2011年3月17日10時04分 読売新聞)

【ワシントン=山田哲朗】
米原子力規制委員会(NRC)のグレゴリー・ヤツコ委員長は16日、米下院エネルギー・商業委員会で証言し、福島第一原発4号機について
使用済み燃料プールの水はすべて沸騰し、なくなっていると思う」との見解を明らかにした。

使用済み燃料棒が露出した結果、
放射線レベルは極めて高く、復旧作業に影響する可能性がある」とも指摘した。
具体的な人体への影響については、
かなり短い時間で、致命的になるレベルだ」と述べた。

ヤツコ委員長の発言は、東京に派遣した米国の専門家チームからの情報を基にしているとみられる。
米当局が、日本政府や東京電力よりも、原子炉の状況について、悲観的な見方をしていることを示した。


米フェアウィンズ社のアーニー・ガンダーソン氏は13日のビデオ会見で次のように語っている。

前略
次は4号機ですが、4号機は傾いています
傾いていることは、東電も認めています。
構造が損傷したのは、明らかに、3号機の火災と爆発によるものでしょう。
ですが、一番上の部分が傾いている
これは良くありません
もしも、強い余震が来たら、4号機は崩壊するおそれがあります
東電はなんとか、4号機を支持構造で補強しようと、懸命に努力していますが、これは大変な作業です。
それから、4号機についても、燃料プールの映像が公開されました。
ラックは壊れていないように見えます。
だとすれば、周辺で発見されたプルトニウムは、4号機からのものとは考えられません。
4号機では、2日間火災が発生しましたので、その原因となる熱源があったのは確かですから、
プルトニウムをはじめ、ほかの放射性同位元素、セシウムやストロンチウムなどが、4号機で揮発化したのは間違いないでしょう。
ですが、周辺で検出された大量のプルトニウムが、4号機由来のものだとは思いません。
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その裏付けとして、発電所全体が、大地震の影響で30cm地盤低下している。と指摘している。


↓当時の新聞の切り抜きより





一方、日本政府の要請を受けた米軍は、米領グァム・アンダーセン空軍基地から、グローバルホークを発信させ、東北地方の被災地や、福島第一原発上空の、偵察飛行を実施。
搭載された高性能カメラによる映像を、日本側に提供した。

映像の分析から、福島第一原発4号基の、使用済み核燃料プールが、空になっていることなどを確認し、
こうした情報が、日本側に伝えられた。
コメント (4)
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