前回の記事を書いてからずっと、まるで悪い夢を見続けているような気持ちが続いています。
あれは本当に、本当のことやったんやろうか……。
例によって、もう今ではありふれたことのように思えますが、
当時にやり取りしたメールの内容、そしてNRCが作成したファイル情報は、しっかり撤回されているそうです。
なにしろ、我らが英雄のオバマ氏は、経済政策においてはバリバリの保守派で、原発ホイホイの考えの持ち主ですから、こんなファイルは存在してはいけない!のです。
原子力界においては、知識と経験が断トツに優れている、ヤツコ元原子力規制委員長という人は、
相当に一貫して、「使用済み核燃料の危険性」について、強い懸念を持っていました。
その彼が、今回5月に辞任に追い込まれ、その辞任劇にも、おなかの黒~い人たちの姿が見え隠れしています。
ということで、今日、さらに、和彦さんからの情報を得て、続きの記事をもうひと踏ん張り書くことにしました。
昨日の記事の内容が、もし真実であったとしたら、あの極めて危険な線量になっていたであろう時の、風や雲の流れが向かっていた地域で暮らしておられた方々は、
ありったけ頑張って、良いものを食べ、よく眠り、よく動き、そしてできることなら、放射能汚染の少ない地域にしばらくでも身を置いて、汚れを抜けるだけ抜いてほしいと思います。
わたしは専門家ではありません。
ただのピアノ教師であり、息子をふたり育てた母親である。それだけです。
それも、あの原発事故が起こるまで、日本に原発が50以上も建てられており、住宅街のすぐそばに、劣化ウランのような恐ろしいものが貯蔵されていたり、
もんじゅやなんやかやの、何の役にも立っていない、今後も立たないままであろう物に、一日何千万ものお金が使われていたことも、
そしてなによりも、日本は大丈夫、きちんとしてるからという、ずっと誇りにしてきた日本の国の政府というものが、実は多分、どこのそれよりも愚かで劣っていて、
戦勝国アメリカに、ぎゅうぎゅう締めにされたまま、何十年もの間、引きずられ続けていたのだということも、
まったく知らず、考えず、気づくチャンスがあっても無視をしてきたような人間です。
ですから、わたしには何一つ、これと言って、役立つ情報や物事を、的確に、適時に、与えられません。
なので、ご自分のことはご自分で、自分ではできない幼いお子さんや動物には助けの手を差し延べて、どうか、どうか、守ってください。
今はもう、平時ではありません。
緊急時であり、戦時でもあります。
そのことをせめて、頭の片隅にでもいいので、置いて生きてください。
では、和彦さんからの情報を、以下(↓)に転載させていただきます。
全国各地の核燃料プールの90%以上は、使用済み核燃料でいっぱいです。
大地震が起きれば、今回のような危機になることは、誰にもわかることです。
それなのに、地震原因説に目をつぶり、津波対策だけをすれば事足りるとする、電力会社のメンタリティ、
それに疑問を持たないヒトビトの気持ちがわかりません。
UCSのLockbaum氏は、原子炉の専門家で、NRCとUCSを行ったり来たりしています。
http://www.ucsusa.org/about/staff/staff/dave-lochbaum.html
元の資料を見つけました。
http://www.nrc.gov/reading-rm/doc-collections/commission/slides/2012/20120807/lochbaum-ltr-20120807.pdf
今日のロイターによると、NRCは、記事のメールの内容を撤回してるようです。
原発シンジケートは、オバマ大統領の資金源の一つですから、政治的な圧力があったと推察できます。
東電(実質は日立)の、ヘタな事故処理で被曝するのはイヤだが、原発は稼働させたい、という下心が見え見えです。
http://jp.wsj.com/article/SB10001424052702304218104579184411334104276.html
東電、福島原発で、核燃料取り出しの準備
【ロイター通信】2013年11月8日
【東京】
2011年3月の東日本大地震に伴い、深刻な原発事故を起こした福島第1原子力発電所で、近く、
4号機の建屋上部にある核燃料貯蔵プールから、核燃料棒を取り出す作業を開始する。
事故で残された、最大級のリスクを除去するという、新たな段階に入るが、
同時に、それ自体がリスクの高い作業だと、専門家は指摘している。
今月、原子炉事業者である東京電力は、4号機建屋の上部にある、危なっかしい貯蔵プールから、
核燃料ペレットの入った燃料集合体1533本を、原発敷地内のもっと安全な場所に、移動する作業を開始する。
全体のうち、202本は未使用、残りの1331体は使用済み燃料の集合体という。
核燃料を、福島第1原発の全原子炉6基のための共通プールに移動することは、
30年かかる原発施設浄化を進める、重要な一歩とみられている。
しかし、1本当たり250キログラムの核燃料集合体を移動するには、完了までに13カ月以上かかる。
おのおのの集合体は、金属で覆われた棒60ないし74本が収めてあり、中に、原子炉推進用の核燃料ペレットが入っている。
大地震と津波以降、原子力専門家は、使用済み核燃料プールの、ぜい弱な状態への懸念を指摘してきた。
4号機の燃料プールは、高さ約40メートルの原子炉建屋上部にある。
この建物は2年半前、9.0マグニチュードの地震に揺さぶられた。
このため、同様の規模の大地震が発生すれば、亀裂が入り、水が流出して、中の燃料棒がむき出しになり、危険な状態になる恐れがある、と一部専門家は言う。
11年3月の原発事故直後、米国の原子力規制委員会(NRC)は、プールの水がほとんど失われ、こうした重大事故が発生していたかもしれない、と指摘していた。
NRCはその後、この主張を撤回したが、懸念は続いている。
東京大学名誉教授(原子力工学)の井野博満氏は、
「核燃料集合体の移動は、正しい動きだ。燃料を建屋上部にとどめておくのは、極めて危険だ」と述べた。
同時に、井野氏やその他の専門家は、この作業自体がリスクをはらんでいる、と指摘している。
例えば、燃料集合体の移動に使われるコンテナが、地上に落下し、中に収めた集合体がばらばらになって、核燃料を大気にさらす可能性などだ。
原子力規制委員会の田中俊一委員長は、最近の記者会見で、
「使用済み核燃料の取り扱いには、相当大きなリスクがある」と述べ、「一つ一つ、極めて慎重に処理しなければならない」と語った。
同委員会は、福島第1原発事故後に、原子力業界への監視を強化するため発足した。
京都大学の原子力科学者で、原発反対派として有名な小出裕章氏は先月、
「作業が膨大であるだけに、事故発生の可能性を極めて憂慮している」と述べた。
小出氏は、
「東電が、1331本の使用済み核燃料棒を問題なく扱えるか、また、どれほど長い期間がかかるか心配している」と語った。
原子炉4号機を擁している建屋は、大地震直後の爆発で大破してしまっているため、
作業に向け、東電は、建屋の大規模な補強を行い、鉄枠を構築した。
この鉄枠によって支えられたクレーンは、おのおのの燃料集合体を持ち上げて、プール内に据え付けたコンテナに収める。
コンテナの重さは、満杯の場合約91トンになり、その後密封され、プール外に持ち上げられ、トラックに乗せられる。
トラックは、既に、集合体6375本を収めている建屋外の共用プールに、コンテナを運搬するという段取りだ。
東電は、燃料保護で、特別の予防措置を講じた、と述べている。
核燃料集合体の移動中に、地震が発生し、停電になっても、施錠装置がコンテナの地上への落下を防ぐだろう、という。
福島第1原発の小野明所長は7日、現場を視察した記者団や規制当局者に対し、
「使用済み核燃料の移動は、何回も行ったことのある作業で、極めて危険なことをしているとは思わない」と語った。
さて、
11年3月の原発事故直後、米国の原子力規制委員会(NRC)は、プールの水がほとんど失われ、
昨日の記事に書いたような重大事故が、発生していたかもしれないと指摘していた。
NRCはその後、この主張を撤回したが、懸念は続いている。
はまさに、昨日、翻訳した文書に書かれていたことでした。
その主張は、案の定、撤回されていたのです。
そのことについて、こんな記事が書かれていました。
紹介します。
↓以下、引用はじめ
第579回 「福島第一4号機の謎と、米NRCヤツコ委員長の辞意」
村上龍氏の『Japan Mail Media』 2012年6月2日の記事より引用
前略
ですが、私(村上氏)がどうしても気になるのは4号機です。
4号機に関しては、事故当時は定期点検中のため、原子炉内の燃料棒は全て除去されて、
使用済み燃料棒と、定期点検のため使用中の「熱い」燃料棒が、建屋内の上部(オペレーションフロア)にある「燃料プール」で冷却されていました。
事故当初は、この冷却水循環が止まり、加熱した燃料棒の、ジルコニウム皮膜から水素が発生して爆発した、という理解がされていたのです。
この燃料棒の加熱を防止するために、何よりも、東京消防庁や自衛隊の「決死隊」が編成されて、注水の作業が必死に行われたことから考えて、
4号機の水素爆発に関しては、「プール内での燃料棒加熱」という説明、また「燃料プール空焚き」という解説もされています。
ですが、その後に、東電は何度も「燃料棒の写真を見ると損傷していない」ということから、「燃料プール空焚き説」を否定しています。
私は、この説明に関しては、一度も信じたことはないのですが、
信頼できる人物で、この事件を現在に至るまで、綿密に取材しているジャーナリストの方からも、「空焚きはなかった」というコメントをもらっています。
どうやら、「空焚き」や「燃料棒の冷却停止による加熱」というのは「なかった」というのが、政府と東電としては、強固な公式見解であるようです。
その代わりの説明としては、「3号機の燃料棒加熱で発生した水素が、配管を通じて4号機の建屋に回った」というのです。
確かに、3号機と4号機は、タービン建屋でつながっていますが、
3号機と4号機には、稼働時期にも2年の差がある中で、配管は独立していると考えられます。
また、仮に行ってはならない水素が、遠くの4号機まで回った、そんなことが起きるまでに「配管に損傷があった」のであれば、
事故の位置づけが、「全電源喪失事故」ではなく、地震と津波による物理的な破壊、という面からの分析を、要求することになってしまいます。
更に、冷静に考えれば、水素というのは非常に比重が軽いわけです。
ですから、配管にズレや漏れがあれば、その場所から抜けて、すぐに上方に行ってしまいます。
配管にはトラブルがあって、3号機からタービン建屋経由で水素が回ったけれども、
その経路を通じては、水素が抜けるようなことのない「密閉性」が保たれていたというのは、どうにも腑に落ちません。
もっと言えば、3号機の水素爆発が3月14日で、4号機での水素爆発が15日、その後何度か、4号機では発火があったと報告されています。
また、その後は、20日前後になって、「決死の注水作戦」が、4号機に対して行われています。
更に妙なのは、昨年の後半から今年にかけて、この4号機のプールの「耐震性」の話が、何度も蒸し返されています。
報道によれば、
プールの底に鋼鉄製の支柱を設置して、周りをコンクリートで固める工事を行い、耐震性を20%高めたとか、
注水の際に入った海水によって、プールが腐食するのを防ぐため、塩分を取り除く装置も設置したそうです。
更に東電は、最近になって、燃料プールの水位を測定したり、建屋の壁の傾きを光を当てて直接調べたり、
プールのコンクリートの強度を、特殊なハンマーを使って調べたりするなど、色々なことをしているのです。
更に、政府も、4月23日には、復興庁の中塚一宏副大臣が、
「4号機の建屋の中を視察し、健全性を確認したと強調するなど、不安の払拭(ふっしょく)に全力を挙げていた」(NHKによる)などという報道もあります。
こうした報道においても、「政府と東電の公式見解」は貫かれています。
しかし、これも不自然な話です。
まず、1号機や3号機など、水素爆発を起こした建屋の損傷状態を見れば分かるように、
福島第一の各炉は、「万が一の水素爆発」を想定して、建屋上部のオペレーションルームの外壁は、薄くしてあるのです。
4号機も、この点に関しては同じだと考えられますし、事故後の外観写真からもハッキリ、オペレーションフロアから上の外壁が、吹っ飛んでいるわけです。
勿論、水素が濃ければ相当な爆発となり、建屋全体に負荷がかかるでしょう。
ですが、上部の外壁が特に薄く作ってあり、そこが吹っ飛んだ場合に、固いコンクリートの建屋下部は崩壊しない、という設計になっているのです。
しかも、繰り返しになりますが、水素というのは比重が軽いので、建屋の最上部に充満し爆発した、と考えられます。
その場合に、爆発によって外壁が吹っ飛んで、爆発エネルギーが放出されるより前に、
エネルギーが建屋のコンクリート造りの下部を破壊したり、
水があった(という説明ですが)プールの水を、爆発の衝撃波が圧迫して、プールの底や側壁が破壊される、というのも不自然です。
この4号機の問題に関しては、
3号機から回った水素が混入して爆発したのではなく、4号機の燃料プールの燃料棒が加熱した、と考えるのが自然です。
燃料棒から水素が発生して、建屋の爆発になったし、燃料棒が加熱することで、プールの構造から建屋全体の構造が劣化した、と考えれば辻褄が合うからです。
爆発の後に発火が見られた、ということの説明もつきます。
では、仮に、そうした可能性が強いとして、どうして「水素は3号機から回った」という説を、公式見解にしなくてはならないのでしょうか?
それは、当初考えられた「4号機では、全電源喪失により、燃料プール内の燃料棒が加熱し、水素が発生して爆発に至った」というシナリオは、
仮にそうだとすると、大変なインパクトを持つからです。
まず、1号機から3号機に関しては、稼働中の原子炉を緊急停止したところ、
全電源喪失により冷却ができなくなり、炉内の燃料が高温となって、圧力容器損傷に至ったというのが、事故の要約です。
従って、現在、一部に議論があるような、「原子炉を稼働させない」という措置を取れば、この種の事故は避けられる、その点に間違いはありません。
ところが、使用済み核燃料の冷却というのは、「脱原発」を即刻やるにしてもやらないにしても、
原発を一旦利用した社会は、背負っていかねばならない問題です。
仮に、原子炉建屋内のプールに貯蔵しておこうが、そこから隔離した敷地内のプールに集めようが、
あるいは、各々の原子力発電所の近くではなく、集約して管理するにしても(一旦相当冷やさないと運ぶのは不適当ですが)、
水の循環冷却が必要だという現実から、逃げることはできないのです。
また、1号機から3号機の事故は、ある意味では、この世代の原子炉が持っていた脆弱性に原因がある、とも言えるわけです。
少なくとも、現在、新しく販売がされている「第三プラス世代炉」では、受動安全性、つまり全電源喪失を想定した緊急時の自動停止機能を持っているわけで、
福島第一と同じような負荷がかかった場合にも、同様の事故を起こすとは考えにくいわけです。
一方で、使用済み燃料プールの構造というのは、ハッキリ言って、原発が実用化されて以来、何の進歩もないのです。
水を満たしたプールに燃料棒を入れて、ポンプで水を循環させて熱を取る、その基本的な構造は全く変わりません。
進歩があったとすれば、炉に近い建屋内に燃料プールを設置するのは危険だから、少し離れた場所にしよう、というぐらいの話です。
しかも、この使用済燃料プールというのは、全世界の原発には必ずあるわけです。
歴史上、大きな原発事故というのは、チェルノブイリ、福島、TMI(スリーマイル島)が有名であり、
その他にも、原子力関係の開発に伴う事故というのは、米国、ソ連、英国などで、かなり深刻な事故の歴史があるのです。
ですが、原発の歴史の上で、商用に供されていた原発から出た、使用済み燃料の冷却失敗による加熱、そして水素爆発という事故は、いまだに発生したことがないのです。
他に起きたことがない一方で、どこでも起きる可能性のある事故、
仮に、燃料プールの冷却失敗というのが現実に起きたとしたら、そうした深刻性を持っているわけです。
問題は、プールでの冷却時に、全電源喪失が起きたら大変だ、というだけではありません。
この問題は、そもそも、使用済み核燃料をどう処理するかという、原子力のエネルギー利用の、長期的な政策に関わってきます。
これまで、フランスもアメリカも日本も、使用済み核燃料に関して、悩み続けてきました。
この中では、フランスと、福島以前の日本(その他にもロシア、中国など)に関しては、
世論はともかく、政府と電力業界の方針は、比較的ハッキリ決まっていました。
それは、使用済み核燃料は、再処理工場で化学処理をして、プルトニウムを抽出するという方向性です。
抽出したプルトニウムは、中長期的には、炉内の中性子速度を減速させない高速増殖炉(ブリーダー)で、高効率の発電に利用するか、
短期的には、ウランと混ぜたMOX燃料にして、「プルサーマル炉(和製英語ですが)」で使用するのです。
いわゆる「核燃料サイクル」です。
一方でアメリカは、プルトニウムという物質は、核兵器に転用できることから、
世界全体におけるプルトニウムの総量を減らすことが、核テロや「ならず者国家」の核武装の危険を下げることになる、という立場であり、
これを率先垂範する、という名目で「核燃料サイクル」に否定的でした。
もっとも、最近は、化石燃料の枯渇や高騰という危険を意識する中で、MOX燃料の製造を試験的にやろう、という動きはあるのですが、
基本的には、「再処理しない」という立場です。
さて、この「再処理しない」という政策を前提としますと、
膨大な使用済み燃料棒を、どうやって保管するかというのは、エネルギー政策上の大問題になるわけです。
勿論、再処理をするにしても、高濃度の放射性廃棄物は出ますが、
再処理をしないで全量を冷却保管するとなると、やはり、その量の問題は違ってきます。
このように、仮に、4号機の水素爆発について、使用済燃料が加熱した、というのが原因であるということになれば、それは大変なインパクトがあるのです。
従って、日本政府、東京電力に関しては、仮に、核燃料サイクルを止めた場合に、使用済燃料の処分という大問題と向かい合わねばならず、
その際に、「加熱事故」があったという現実があるのとないのとでは、自分たちの施策の自由度は、全く違ってくることになります。
もっと言えば、アメリカの場合は、そもそもこの「使用済み燃料問題」について、
ここ10年ぐらいの間、色々な形で政治的な対立があり、極めて敏感になっている、という事情があります。
選択肢を狭めないとか、余計なコストをかけたくない、という立場に立って考えると、
アメリカの場合は日本以上に、「使用済み燃料プールの加熱事故」というのは「起きて欲しくない」と、政府や業界が考えていると見て良いでしょう。
以上のストーリーは、水素爆発と4号機の損傷、という問題をめぐる考察に関しては、私なりに真剣に検討した結果ですが、
日本とアメリカの政府や、業界の思惑という話に関しては、全くの状況証拠的な推測を積み重ねただけです。
ですが、先月5月の21日に、そうとも言えないと思わせるニュースが、飛び込んできました。
アメリカの、原子力政策に関する独立機関、NRC(原子力委員会)のグレッグ・ヤツコ委員長が、辞意を表明したというニュースです。
報道によれば、
ヤツコ委員長は、委員長を含む総勢5名で構成される委員会の中で、完全に孤立しており、他の委員との間で、修復不可能な認識の相違があった、とされています。
他の委員は、昨年、この問題に関して、
ヤツコ委員長を更迭してほしいという請願を、ホワイトハウスの大統領補佐官に文書で申し立てている、というのですから穏やかではありません。
具体的な対立というのは、例えば、
今年に入ってNRCは、アメリカの2箇所の原発の新規建設を認可しているのですが、
その際の評決では、他の4名は賛成、ヤツコ委員長のみが少数意見を述べて反対、という結果になっているのです。
ちなみに、ヤツコ委員長の反対理由は、
「福島第一の事故原因が十分に究明され、事故を受けた米国での対策が十分でない以上、新規建設は時期尚早」というものでした。
実は、ヤツコ委員長は、同僚の委員たちとの確執にとどまらず、委員会の事務局の女性に対して、恫喝に近い暴言を吐いたとか、色々なトラブルが伝えられています。
その中でも、有名な確執というのは、オバマ政権の閣僚である、スティーブン・チュー・エネルギー長官との対立です。
これが、他でもない、福島第一の4号機の問題なのです。
事故発生の直後である3月16日に、ヤツコ委員長は、アメリカ議会の下院エネルギー・商業委員会で証言しているのですが、
4号機について、「燃料プールの水は沸騰し、カラになっていると思う」と述べているのです。
これに対して、順序としては、「政権側のチュー長官が否定、両者が対立、ヤツコ氏本人が福島第一を視察して、空焚き説取り下げ」というプロセスを踏んでいます。
勿論、この話も、政府東電の公式見解とは辻褄が合うわけです。
チュー長官も、そして説得された後のヤツコ委員長も「空焚きはなかった」というのが、現在の公式見解なのですから。
但し、今回、ヤツコ氏が辞任表明したということになると、そこにはどうしても、強い政治性を感じざるを得ないのです。
ところで、今回の辞任劇(ちなみに後任が指名されるまで、ヤツコ氏は留任しますが)の際に、
最も大きな原因とされたのは、
ヤツコ委員長が、「ユッカ・マウンテン貯蔵施設計画」を潰した際に、暗躍しているのであり、
その際に、「施設の建設に不利になるデータだけを、不法に公表した」という問題である、そう報道されているのです。
さて、この「ユッカ・マウンテン」の施設ですが、先ほど申し上げたように、アメリカは、「再処理」を基本的には否定しているので、
使用済みの燃料棒は、最低5年間は、「プールで冷却(ウェット貯蔵)」の後は、
「金属キャスク」という容器に入れ、不活性ガスを充填したコンテナに密閉すること(ドライ貯蔵)になっています。
一方で、911の同時多発テロを受けた「ポスト911」の「空気」を受けて、
「核物質の盗難」や「貯蔵場所への攻撃」に対する危機感が増す中で、この際、半永久的な「地層処分」をやろう、ということになったのです。
その結果として、ブッシュ政権は、ネバダ州の「ユッカ・マウンテン」という、堅い岩盤の中に施設を作る、
しかも、「100万年」という長期間の保管を前提に、計画を立てたのです。
ところが、この場所が、商業都市のラスベガスに近いことなどから、反対運動が激しくなり、最終的には2010年に、中止が決定されています。
この時に、反対論の急先鋒に立っていたのは、地元選出のハリー・リード上院院内総務(民主)であり、
実は、リード議員は、この2010年の中間選挙が改選に当たり、ティーパーティー系の女性候補に追い詰められて苦しい情勢の中、
ユッカの施設への反対論を選挙戦の決め手に使った、という状況もあったのです。
ヤツコ氏は、その反対論に、極めて近い立場にいたわけです。
つまり、ヤツコ委員長という人は、相当に一貫して、「使用済み核燃料の危険性」について強い懸念を持っていた、ということが言えます。
そのヤツコ委員長が、今回、(2012年)5月に辞任に追い込まれたということ、
その一方で、今年に入って、福島第一の4号機では、「燃料プールを含む建屋の構造の劣化」という懸念が増している、
この2つを結びつけて考えると、どうしても、「空焚きはなかった」とか、「3号機からタービン建屋経由で、大量の水素が4号機に回って爆発」というストーリーには、疑いが残るのです。
後略
↑以上、転載おわり
■事故発生の直後である3月16日に、ヤツコ委員長は、アメリカ議会の下院エネルギー・商業委員会で証言しているのですが、
4号機について、「燃料プールの水は沸騰し、カラになっていると思う」と述べているのです。
これに対して、順序としては、
「政権側のチュー長官が否定、両者が対立、ヤツコ氏本人が福島第一を視察して、空焚き説取り下げ」というプロセスを踏んでいます。
■ヤツコ委員長という人は、相当に一貫して、「使用済み核燃料の危険性」について強い懸念を持っていた、ということが言えます。
そのヤツコ委員長が、今回、(2012年)5月に辞任に追い込まれたということ、
その一方で、今年に入って、福島第一の4号機では、「燃料プールを含む建屋の構造の劣化」という懸念が増している、
この2つを結びつけて考えるとどうしても、「空焚きはなかった」とか、「3号機からタービン建屋経由で大量の水素が4号機に回って爆発」というストーリーには、疑いが残るのです。
↓当時の新聞記事です。
4号機、燃料溶融寸前だった…偶然水流入し回避
【読売新聞】2011年4月28日
東京電力福島第一原子力発電所4号機で、3月15日に発生した火災に伴う爆発の際、
使用済み核燃料一時貯蔵プールに、爆発の衝撃で、隣接する場所から水が偶然流れ込み、
プール内にあった核燃料の過熱を、食い止めた可能性があることが、東電の調査でわかった。
過熱が続いていれば、核燃料が溶融し、現状を大幅に上回る、放射性物質が放出される最悪の事態もあり得た、としている。
同原発は、3月11日の東日本大震災で、津波に襲われ、外部電源が途絶。
4号機の燃料プールへの、冷却水注入も止まった。
東電は現在、プールから、1日約70トンの水が蒸発しているとみて、生コン圧送機で注水しているが、水位は計算通り上がっていない。
東電は、プールから水が漏れている疑いもあるとして調べたものの、原子炉建屋下部への漏水は、確認されていない。
爆発は、原子炉建屋の側壁が崩落するほど激しく、水素爆発が起きたとみられる。
水の漏出先として、東電が有力視しているのは、可動式のゲートを挟んで、プールに隣接する「原子炉ウェル」。
ゲートは爆発で破損し、水は、原子炉ウェル側に漏れている可能性が高いという。
4号機の写真です
http://www.google.co.jp/search?q=福島%E3%80%804号機の写真&client=safari&rls=en&tbm=isch&tbo=u&source=univ&sa=X&ei=wnJ8Uq3KOoW4kgW4-4HgDA&ved=0CCsQsAQ&biw=1008&bih=668
あれは本当に、本当のことやったんやろうか……。
例によって、もう今ではありふれたことのように思えますが、
当時にやり取りしたメールの内容、そしてNRCが作成したファイル情報は、しっかり撤回されているそうです。
なにしろ、我らが英雄のオバマ氏は、経済政策においてはバリバリの保守派で、原発ホイホイの考えの持ち主ですから、こんなファイルは存在してはいけない!のです。
原子力界においては、知識と経験が断トツに優れている、ヤツコ元原子力規制委員長という人は、
相当に一貫して、「使用済み核燃料の危険性」について、強い懸念を持っていました。
その彼が、今回5月に辞任に追い込まれ、その辞任劇にも、おなかの黒~い人たちの姿が見え隠れしています。
ということで、今日、さらに、和彦さんからの情報を得て、続きの記事をもうひと踏ん張り書くことにしました。
昨日の記事の内容が、もし真実であったとしたら、あの極めて危険な線量になっていたであろう時の、風や雲の流れが向かっていた地域で暮らしておられた方々は、
ありったけ頑張って、良いものを食べ、よく眠り、よく動き、そしてできることなら、放射能汚染の少ない地域にしばらくでも身を置いて、汚れを抜けるだけ抜いてほしいと思います。
わたしは専門家ではありません。
ただのピアノ教師であり、息子をふたり育てた母親である。それだけです。
それも、あの原発事故が起こるまで、日本に原発が50以上も建てられており、住宅街のすぐそばに、劣化ウランのような恐ろしいものが貯蔵されていたり、
もんじゅやなんやかやの、何の役にも立っていない、今後も立たないままであろう物に、一日何千万ものお金が使われていたことも、
そしてなによりも、日本は大丈夫、きちんとしてるからという、ずっと誇りにしてきた日本の国の政府というものが、実は多分、どこのそれよりも愚かで劣っていて、
戦勝国アメリカに、ぎゅうぎゅう締めにされたまま、何十年もの間、引きずられ続けていたのだということも、
まったく知らず、考えず、気づくチャンスがあっても無視をしてきたような人間です。
ですから、わたしには何一つ、これと言って、役立つ情報や物事を、的確に、適時に、与えられません。
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緊急時であり、戦時でもあります。
そのことをせめて、頭の片隅にでもいいので、置いて生きてください。
では、和彦さんからの情報を、以下(↓)に転載させていただきます。
全国各地の核燃料プールの90%以上は、使用済み核燃料でいっぱいです。
大地震が起きれば、今回のような危機になることは、誰にもわかることです。
それなのに、地震原因説に目をつぶり、津波対策だけをすれば事足りるとする、電力会社のメンタリティ、
それに疑問を持たないヒトビトの気持ちがわかりません。
UCSのLockbaum氏は、原子炉の専門家で、NRCとUCSを行ったり来たりしています。
http://www.ucsusa.org/about/staff/staff/dave-lochbaum.html
元の資料を見つけました。
http://www.nrc.gov/reading-rm/doc-collections/commission/slides/2012/20120807/lochbaum-ltr-20120807.pdf
今日のロイターによると、NRCは、記事のメールの内容を撤回してるようです。
原発シンジケートは、オバマ大統領の資金源の一つですから、政治的な圧力があったと推察できます。
東電(実質は日立)の、ヘタな事故処理で被曝するのはイヤだが、原発は稼働させたい、という下心が見え見えです。
http://jp.wsj.com/article/SB10001424052702304218104579184411334104276.html
東電、福島原発で、核燃料取り出しの準備
【ロイター通信】2013年11月8日
【東京】
2011年3月の東日本大地震に伴い、深刻な原発事故を起こした福島第1原子力発電所で、近く、
4号機の建屋上部にある核燃料貯蔵プールから、核燃料棒を取り出す作業を開始する。
事故で残された、最大級のリスクを除去するという、新たな段階に入るが、
同時に、それ自体がリスクの高い作業だと、専門家は指摘している。
今月、原子炉事業者である東京電力は、4号機建屋の上部にある、危なっかしい貯蔵プールから、
核燃料ペレットの入った燃料集合体1533本を、原発敷地内のもっと安全な場所に、移動する作業を開始する。
全体のうち、202本は未使用、残りの1331体は使用済み燃料の集合体という。
核燃料を、福島第1原発の全原子炉6基のための共通プールに移動することは、
30年かかる原発施設浄化を進める、重要な一歩とみられている。
しかし、1本当たり250キログラムの核燃料集合体を移動するには、完了までに13カ月以上かかる。
おのおのの集合体は、金属で覆われた棒60ないし74本が収めてあり、中に、原子炉推進用の核燃料ペレットが入っている。
大地震と津波以降、原子力専門家は、使用済み核燃料プールの、ぜい弱な状態への懸念を指摘してきた。
4号機の燃料プールは、高さ約40メートルの原子炉建屋上部にある。
この建物は2年半前、9.0マグニチュードの地震に揺さぶられた。
このため、同様の規模の大地震が発生すれば、亀裂が入り、水が流出して、中の燃料棒がむき出しになり、危険な状態になる恐れがある、と一部専門家は言う。
11年3月の原発事故直後、米国の原子力規制委員会(NRC)は、プールの水がほとんど失われ、こうした重大事故が発生していたかもしれない、と指摘していた。
NRCはその後、この主張を撤回したが、懸念は続いている。
東京大学名誉教授(原子力工学)の井野博満氏は、
「核燃料集合体の移動は、正しい動きだ。燃料を建屋上部にとどめておくのは、極めて危険だ」と述べた。
同時に、井野氏やその他の専門家は、この作業自体がリスクをはらんでいる、と指摘している。
例えば、燃料集合体の移動に使われるコンテナが、地上に落下し、中に収めた集合体がばらばらになって、核燃料を大気にさらす可能性などだ。
原子力規制委員会の田中俊一委員長は、最近の記者会見で、
「使用済み核燃料の取り扱いには、相当大きなリスクがある」と述べ、「一つ一つ、極めて慎重に処理しなければならない」と語った。
同委員会は、福島第1原発事故後に、原子力業界への監視を強化するため発足した。
京都大学の原子力科学者で、原発反対派として有名な小出裕章氏は先月、
「作業が膨大であるだけに、事故発生の可能性を極めて憂慮している」と述べた。
小出氏は、
「東電が、1331本の使用済み核燃料棒を問題なく扱えるか、また、どれほど長い期間がかかるか心配している」と語った。
原子炉4号機を擁している建屋は、大地震直後の爆発で大破してしまっているため、
作業に向け、東電は、建屋の大規模な補強を行い、鉄枠を構築した。
この鉄枠によって支えられたクレーンは、おのおのの燃料集合体を持ち上げて、プール内に据え付けたコンテナに収める。
コンテナの重さは、満杯の場合約91トンになり、その後密封され、プール外に持ち上げられ、トラックに乗せられる。
トラックは、既に、集合体6375本を収めている建屋外の共用プールに、コンテナを運搬するという段取りだ。
東電は、燃料保護で、特別の予防措置を講じた、と述べている。
核燃料集合体の移動中に、地震が発生し、停電になっても、施錠装置がコンテナの地上への落下を防ぐだろう、という。
福島第1原発の小野明所長は7日、現場を視察した記者団や規制当局者に対し、
「使用済み核燃料の移動は、何回も行ったことのある作業で、極めて危険なことをしているとは思わない」と語った。
さて、
11年3月の原発事故直後、米国の原子力規制委員会(NRC)は、プールの水がほとんど失われ、
昨日の記事に書いたような重大事故が、発生していたかもしれないと指摘していた。
NRCはその後、この主張を撤回したが、懸念は続いている。
はまさに、昨日、翻訳した文書に書かれていたことでした。
その主張は、案の定、撤回されていたのです。
そのことについて、こんな記事が書かれていました。
紹介します。
↓以下、引用はじめ
第579回 「福島第一4号機の謎と、米NRCヤツコ委員長の辞意」
村上龍氏の『Japan Mail Media』 2012年6月2日の記事より引用
前略
ですが、私(村上氏)がどうしても気になるのは4号機です。
4号機に関しては、事故当時は定期点検中のため、原子炉内の燃料棒は全て除去されて、
使用済み燃料棒と、定期点検のため使用中の「熱い」燃料棒が、建屋内の上部(オペレーションフロア)にある「燃料プール」で冷却されていました。
事故当初は、この冷却水循環が止まり、加熱した燃料棒の、ジルコニウム皮膜から水素が発生して爆発した、という理解がされていたのです。
この燃料棒の加熱を防止するために、何よりも、東京消防庁や自衛隊の「決死隊」が編成されて、注水の作業が必死に行われたことから考えて、
4号機の水素爆発に関しては、「プール内での燃料棒加熱」という説明、また「燃料プール空焚き」という解説もされています。
ですが、その後に、東電は何度も「燃料棒の写真を見ると損傷していない」ということから、「燃料プール空焚き説」を否定しています。
私は、この説明に関しては、一度も信じたことはないのですが、
信頼できる人物で、この事件を現在に至るまで、綿密に取材しているジャーナリストの方からも、「空焚きはなかった」というコメントをもらっています。
どうやら、「空焚き」や「燃料棒の冷却停止による加熱」というのは「なかった」というのが、政府と東電としては、強固な公式見解であるようです。
その代わりの説明としては、「3号機の燃料棒加熱で発生した水素が、配管を通じて4号機の建屋に回った」というのです。
確かに、3号機と4号機は、タービン建屋でつながっていますが、
3号機と4号機には、稼働時期にも2年の差がある中で、配管は独立していると考えられます。
また、仮に行ってはならない水素が、遠くの4号機まで回った、そんなことが起きるまでに「配管に損傷があった」のであれば、
事故の位置づけが、「全電源喪失事故」ではなく、地震と津波による物理的な破壊、という面からの分析を、要求することになってしまいます。
更に、冷静に考えれば、水素というのは非常に比重が軽いわけです。
ですから、配管にズレや漏れがあれば、その場所から抜けて、すぐに上方に行ってしまいます。
配管にはトラブルがあって、3号機からタービン建屋経由で水素が回ったけれども、
その経路を通じては、水素が抜けるようなことのない「密閉性」が保たれていたというのは、どうにも腑に落ちません。
もっと言えば、3号機の水素爆発が3月14日で、4号機での水素爆発が15日、その後何度か、4号機では発火があったと報告されています。
また、その後は、20日前後になって、「決死の注水作戦」が、4号機に対して行われています。
更に妙なのは、昨年の後半から今年にかけて、この4号機のプールの「耐震性」の話が、何度も蒸し返されています。
報道によれば、
プールの底に鋼鉄製の支柱を設置して、周りをコンクリートで固める工事を行い、耐震性を20%高めたとか、
注水の際に入った海水によって、プールが腐食するのを防ぐため、塩分を取り除く装置も設置したそうです。
更に東電は、最近になって、燃料プールの水位を測定したり、建屋の壁の傾きを光を当てて直接調べたり、
プールのコンクリートの強度を、特殊なハンマーを使って調べたりするなど、色々なことをしているのです。
更に、政府も、4月23日には、復興庁の中塚一宏副大臣が、
「4号機の建屋の中を視察し、健全性を確認したと強調するなど、不安の払拭(ふっしょく)に全力を挙げていた」(NHKによる)などという報道もあります。
こうした報道においても、「政府と東電の公式見解」は貫かれています。
しかし、これも不自然な話です。
まず、1号機や3号機など、水素爆発を起こした建屋の損傷状態を見れば分かるように、
福島第一の各炉は、「万が一の水素爆発」を想定して、建屋上部のオペレーションルームの外壁は、薄くしてあるのです。
4号機も、この点に関しては同じだと考えられますし、事故後の外観写真からもハッキリ、オペレーションフロアから上の外壁が、吹っ飛んでいるわけです。
勿論、水素が濃ければ相当な爆発となり、建屋全体に負荷がかかるでしょう。
ですが、上部の外壁が特に薄く作ってあり、そこが吹っ飛んだ場合に、固いコンクリートの建屋下部は崩壊しない、という設計になっているのです。
しかも、繰り返しになりますが、水素というのは比重が軽いので、建屋の最上部に充満し爆発した、と考えられます。
その場合に、爆発によって外壁が吹っ飛んで、爆発エネルギーが放出されるより前に、
エネルギーが建屋のコンクリート造りの下部を破壊したり、
水があった(という説明ですが)プールの水を、爆発の衝撃波が圧迫して、プールの底や側壁が破壊される、というのも不自然です。
この4号機の問題に関しては、
3号機から回った水素が混入して爆発したのではなく、4号機の燃料プールの燃料棒が加熱した、と考えるのが自然です。
燃料棒から水素が発生して、建屋の爆発になったし、燃料棒が加熱することで、プールの構造から建屋全体の構造が劣化した、と考えれば辻褄が合うからです。
爆発の後に発火が見られた、ということの説明もつきます。
では、仮に、そうした可能性が強いとして、どうして「水素は3号機から回った」という説を、公式見解にしなくてはならないのでしょうか?
それは、当初考えられた「4号機では、全電源喪失により、燃料プール内の燃料棒が加熱し、水素が発生して爆発に至った」というシナリオは、
仮にそうだとすると、大変なインパクトを持つからです。
まず、1号機から3号機に関しては、稼働中の原子炉を緊急停止したところ、
全電源喪失により冷却ができなくなり、炉内の燃料が高温となって、圧力容器損傷に至ったというのが、事故の要約です。
従って、現在、一部に議論があるような、「原子炉を稼働させない」という措置を取れば、この種の事故は避けられる、その点に間違いはありません。
ところが、使用済み核燃料の冷却というのは、「脱原発」を即刻やるにしてもやらないにしても、
原発を一旦利用した社会は、背負っていかねばならない問題です。
仮に、原子炉建屋内のプールに貯蔵しておこうが、そこから隔離した敷地内のプールに集めようが、
あるいは、各々の原子力発電所の近くではなく、集約して管理するにしても(一旦相当冷やさないと運ぶのは不適当ですが)、
水の循環冷却が必要だという現実から、逃げることはできないのです。
また、1号機から3号機の事故は、ある意味では、この世代の原子炉が持っていた脆弱性に原因がある、とも言えるわけです。
少なくとも、現在、新しく販売がされている「第三プラス世代炉」では、受動安全性、つまり全電源喪失を想定した緊急時の自動停止機能を持っているわけで、
福島第一と同じような負荷がかかった場合にも、同様の事故を起こすとは考えにくいわけです。
一方で、使用済み燃料プールの構造というのは、ハッキリ言って、原発が実用化されて以来、何の進歩もないのです。
水を満たしたプールに燃料棒を入れて、ポンプで水を循環させて熱を取る、その基本的な構造は全く変わりません。
進歩があったとすれば、炉に近い建屋内に燃料プールを設置するのは危険だから、少し離れた場所にしよう、というぐらいの話です。
しかも、この使用済燃料プールというのは、全世界の原発には必ずあるわけです。
歴史上、大きな原発事故というのは、チェルノブイリ、福島、TMI(スリーマイル島)が有名であり、
その他にも、原子力関係の開発に伴う事故というのは、米国、ソ連、英国などで、かなり深刻な事故の歴史があるのです。
ですが、原発の歴史の上で、商用に供されていた原発から出た、使用済み燃料の冷却失敗による加熱、そして水素爆発という事故は、いまだに発生したことがないのです。
他に起きたことがない一方で、どこでも起きる可能性のある事故、
仮に、燃料プールの冷却失敗というのが現実に起きたとしたら、そうした深刻性を持っているわけです。
問題は、プールでの冷却時に、全電源喪失が起きたら大変だ、というだけではありません。
この問題は、そもそも、使用済み核燃料をどう処理するかという、原子力のエネルギー利用の、長期的な政策に関わってきます。
これまで、フランスもアメリカも日本も、使用済み核燃料に関して、悩み続けてきました。
この中では、フランスと、福島以前の日本(その他にもロシア、中国など)に関しては、
世論はともかく、政府と電力業界の方針は、比較的ハッキリ決まっていました。
それは、使用済み核燃料は、再処理工場で化学処理をして、プルトニウムを抽出するという方向性です。
抽出したプルトニウムは、中長期的には、炉内の中性子速度を減速させない高速増殖炉(ブリーダー)で、高効率の発電に利用するか、
短期的には、ウランと混ぜたMOX燃料にして、「プルサーマル炉(和製英語ですが)」で使用するのです。
いわゆる「核燃料サイクル」です。
一方でアメリカは、プルトニウムという物質は、核兵器に転用できることから、
世界全体におけるプルトニウムの総量を減らすことが、核テロや「ならず者国家」の核武装の危険を下げることになる、という立場であり、
これを率先垂範する、という名目で「核燃料サイクル」に否定的でした。
もっとも、最近は、化石燃料の枯渇や高騰という危険を意識する中で、MOX燃料の製造を試験的にやろう、という動きはあるのですが、
基本的には、「再処理しない」という立場です。
さて、この「再処理しない」という政策を前提としますと、
膨大な使用済み燃料棒を、どうやって保管するかというのは、エネルギー政策上の大問題になるわけです。
勿論、再処理をするにしても、高濃度の放射性廃棄物は出ますが、
再処理をしないで全量を冷却保管するとなると、やはり、その量の問題は違ってきます。
このように、仮に、4号機の水素爆発について、使用済燃料が加熱した、というのが原因であるということになれば、それは大変なインパクトがあるのです。
従って、日本政府、東京電力に関しては、仮に、核燃料サイクルを止めた場合に、使用済燃料の処分という大問題と向かい合わねばならず、
その際に、「加熱事故」があったという現実があるのとないのとでは、自分たちの施策の自由度は、全く違ってくることになります。
もっと言えば、アメリカの場合は、そもそもこの「使用済み燃料問題」について、
ここ10年ぐらいの間、色々な形で政治的な対立があり、極めて敏感になっている、という事情があります。
選択肢を狭めないとか、余計なコストをかけたくない、という立場に立って考えると、
アメリカの場合は日本以上に、「使用済み燃料プールの加熱事故」というのは「起きて欲しくない」と、政府や業界が考えていると見て良いでしょう。
以上のストーリーは、水素爆発と4号機の損傷、という問題をめぐる考察に関しては、私なりに真剣に検討した結果ですが、
日本とアメリカの政府や、業界の思惑という話に関しては、全くの状況証拠的な推測を積み重ねただけです。
ですが、先月5月の21日に、そうとも言えないと思わせるニュースが、飛び込んできました。
アメリカの、原子力政策に関する独立機関、NRC(原子力委員会)のグレッグ・ヤツコ委員長が、辞意を表明したというニュースです。
報道によれば、
ヤツコ委員長は、委員長を含む総勢5名で構成される委員会の中で、完全に孤立しており、他の委員との間で、修復不可能な認識の相違があった、とされています。
他の委員は、昨年、この問題に関して、
ヤツコ委員長を更迭してほしいという請願を、ホワイトハウスの大統領補佐官に文書で申し立てている、というのですから穏やかではありません。
具体的な対立というのは、例えば、
今年に入ってNRCは、アメリカの2箇所の原発の新規建設を認可しているのですが、
その際の評決では、他の4名は賛成、ヤツコ委員長のみが少数意見を述べて反対、という結果になっているのです。
ちなみに、ヤツコ委員長の反対理由は、
「福島第一の事故原因が十分に究明され、事故を受けた米国での対策が十分でない以上、新規建設は時期尚早」というものでした。
実は、ヤツコ委員長は、同僚の委員たちとの確執にとどまらず、委員会の事務局の女性に対して、恫喝に近い暴言を吐いたとか、色々なトラブルが伝えられています。
その中でも、有名な確執というのは、オバマ政権の閣僚である、スティーブン・チュー・エネルギー長官との対立です。
これが、他でもない、福島第一の4号機の問題なのです。
事故発生の直後である3月16日に、ヤツコ委員長は、アメリカ議会の下院エネルギー・商業委員会で証言しているのですが、
4号機について、「燃料プールの水は沸騰し、カラになっていると思う」と述べているのです。
これに対して、順序としては、「政権側のチュー長官が否定、両者が対立、ヤツコ氏本人が福島第一を視察して、空焚き説取り下げ」というプロセスを踏んでいます。
勿論、この話も、政府東電の公式見解とは辻褄が合うわけです。
チュー長官も、そして説得された後のヤツコ委員長も「空焚きはなかった」というのが、現在の公式見解なのですから。
但し、今回、ヤツコ氏が辞任表明したということになると、そこにはどうしても、強い政治性を感じざるを得ないのです。
ところで、今回の辞任劇(ちなみに後任が指名されるまで、ヤツコ氏は留任しますが)の際に、
最も大きな原因とされたのは、
ヤツコ委員長が、「ユッカ・マウンテン貯蔵施設計画」を潰した際に、暗躍しているのであり、
その際に、「施設の建設に不利になるデータだけを、不法に公表した」という問題である、そう報道されているのです。
さて、この「ユッカ・マウンテン」の施設ですが、先ほど申し上げたように、アメリカは、「再処理」を基本的には否定しているので、
使用済みの燃料棒は、最低5年間は、「プールで冷却(ウェット貯蔵)」の後は、
「金属キャスク」という容器に入れ、不活性ガスを充填したコンテナに密閉すること(ドライ貯蔵)になっています。
一方で、911の同時多発テロを受けた「ポスト911」の「空気」を受けて、
「核物質の盗難」や「貯蔵場所への攻撃」に対する危機感が増す中で、この際、半永久的な「地層処分」をやろう、ということになったのです。
その結果として、ブッシュ政権は、ネバダ州の「ユッカ・マウンテン」という、堅い岩盤の中に施設を作る、
しかも、「100万年」という長期間の保管を前提に、計画を立てたのです。
ところが、この場所が、商業都市のラスベガスに近いことなどから、反対運動が激しくなり、最終的には2010年に、中止が決定されています。
この時に、反対論の急先鋒に立っていたのは、地元選出のハリー・リード上院院内総務(民主)であり、
実は、リード議員は、この2010年の中間選挙が改選に当たり、ティーパーティー系の女性候補に追い詰められて苦しい情勢の中、
ユッカの施設への反対論を選挙戦の決め手に使った、という状況もあったのです。
ヤツコ氏は、その反対論に、極めて近い立場にいたわけです。
つまり、ヤツコ委員長という人は、相当に一貫して、「使用済み核燃料の危険性」について強い懸念を持っていた、ということが言えます。
そのヤツコ委員長が、今回、(2012年)5月に辞任に追い込まれたということ、
その一方で、今年に入って、福島第一の4号機では、「燃料プールを含む建屋の構造の劣化」という懸念が増している、
この2つを結びつけて考えると、どうしても、「空焚きはなかった」とか、「3号機からタービン建屋経由で、大量の水素が4号機に回って爆発」というストーリーには、疑いが残るのです。
後略
↑以上、転載おわり
■事故発生の直後である3月16日に、ヤツコ委員長は、アメリカ議会の下院エネルギー・商業委員会で証言しているのですが、
4号機について、「燃料プールの水は沸騰し、カラになっていると思う」と述べているのです。
これに対して、順序としては、
「政権側のチュー長官が否定、両者が対立、ヤツコ氏本人が福島第一を視察して、空焚き説取り下げ」というプロセスを踏んでいます。
■ヤツコ委員長という人は、相当に一貫して、「使用済み核燃料の危険性」について強い懸念を持っていた、ということが言えます。
そのヤツコ委員長が、今回、(2012年)5月に辞任に追い込まれたということ、
その一方で、今年に入って、福島第一の4号機では、「燃料プールを含む建屋の構造の劣化」という懸念が増している、
この2つを結びつけて考えるとどうしても、「空焚きはなかった」とか、「3号機からタービン建屋経由で大量の水素が4号機に回って爆発」というストーリーには、疑いが残るのです。
↓当時の新聞記事です。
4号機、燃料溶融寸前だった…偶然水流入し回避
【読売新聞】2011年4月28日
東京電力福島第一原子力発電所4号機で、3月15日に発生した火災に伴う爆発の際、
使用済み核燃料一時貯蔵プールに、爆発の衝撃で、隣接する場所から水が偶然流れ込み、
プール内にあった核燃料の過熱を、食い止めた可能性があることが、東電の調査でわかった。
過熱が続いていれば、核燃料が溶融し、現状を大幅に上回る、放射性物質が放出される最悪の事態もあり得た、としている。
同原発は、3月11日の東日本大震災で、津波に襲われ、外部電源が途絶。
4号機の燃料プールへの、冷却水注入も止まった。
東電は現在、プールから、1日約70トンの水が蒸発しているとみて、生コン圧送機で注水しているが、水位は計算通り上がっていない。
東電は、プールから水が漏れている疑いもあるとして調べたものの、原子炉建屋下部への漏水は、確認されていない。
爆発は、原子炉建屋の側壁が崩落するほど激しく、水素爆発が起きたとみられる。
水の漏出先として、東電が有力視しているのは、可動式のゲートを挟んで、プールに隣接する「原子炉ウェル」。
ゲートは爆発で破損し、水は、原子炉ウェル側に漏れている可能性が高いという。
4号機の写真です
http://www.google.co.jp/search?q=福島%E3%80%804号機の写真&client=safari&rls=en&tbm=isch&tbo=u&source=univ&sa=X&ei=wnJ8Uq3KOoW4kgW4-4HgDA&ved=0CCsQsAQ&biw=1008&bih=668