お腹がいっぱいになり過ぎて、なんや静かになってしもたchi-koちゃん、なにげに余裕をかましてるrobaちゃん、わたしと同じく肉巻き定食を頼み、「ちょっと味が濃かったなあ」と、既に自分でアレンジして試作する計画を練ってるかわちゃん、chi-koちゃんがどないしても完食できんかった海老天カレーうどんを平らげ、爪楊枝でしぃ~しぃ~しながら歩く仁ちゃん。
これからどないする?
「僕、仕事で4時にどうしても姫路に戻らなあかんねん」とかわちゃん。
頭の中の大阪地図をナビする仁ちゃん。
よっしゃ、通天閣行こ!
ディープサウス大阪。あいりん地区のある西成区。旦那がこよなく愛するジャンジャン横町。残念やったね旦那!
合計したらけっこう長いこと大阪に住んでたのに、いっぺんも足を運んだことがない三角公園。
まさかこんな形で行けることになろうとは……思いも寄らなかった展開に胸はどきどきわくわく。
助手席にかわちゃん、後ろに美女三人を乗せた仁ちゃん観光高級車は、するするとよどみなく、西成の深みに入って行った。
景色が少し様変わりしてきた。ワンカップを片手に通りで立ち飲みしてるおっちゃんがけっこうぎょうさんいる。なぜか皆、背がちっちゃい。
「ここが飛田新地。こんなん見るの初めてやろ」と、運転しながら仁ちゃんがボソッと言う。
後部座席の窓は、外からは見えない加工がしてあるので、外の様子が陰って見える。
けども、それでもわかる、なにやらすごく特異な世界。
両脇にずらりと並んだ、格子戸も美しい、一見こじんまりした料亭のような店の一軒一軒に、名前入りの電灯がついている。
豪快に開かれたどの玄関先にも、女性が二人座ってる。
どこのペアも決まってひとりは中年、ひとりは若い。
「あれがやり手婆、ほんでその横がおネエちゃんや」と仁ちゃん。
絶句するしかなかった……表向き、あまりにもあっけらかんとしたように見える売春宿の羅列。スゴ過ぎる……。
ゆっくりと車で通り過ぎる仁ちゃんとかわちゃんに、にこやかに微笑みかけるお姉ちゃんと手招きする横のおばちゃん。それを後ろの座席からこそこそ覗くわたし達。
あの暑い夏の、家具一切が持ち出されてった日の夜中に、辛うじて残ったシーツ一枚敷いて、縁側のかたい板間で眠っていたわたしに、父の友人だった島のおっちゃん(島さん、もう時効やからええよね)が電話で密告してくれへんかったら、ほんで、まだ高校生やった弟が、狼狽えてるわたしを「送ったるから」とバイクに乗せて家を飛び出してへんかったら、若いうちはこういうとこで働かされてたかもしれへん。
ほんで、もしかしたら根性出してこの世界なりに出世して、今頃ごうつく婆になって若い娘の横であんな感じで座ってたかもしれへん。
そんなことをしみじみ思いながら彼女達の顔を見ているうちに、少しだけ、ほんの少しだけ、哀しい思いがこみ上げてきた。
唖然としているわたし達とまるでフツ~の仁ちゃんは、車から降りた後、ジャンジャン横町に繰り出した。
串カツのうまそぉ~な店が次から次へと現れるのやけど、さっきのんがまだ胃の中に入り切らんと上がってきそうで、食べ物の写真を見ないようにして歩いた。
「ちょっとここで遊ぶか?」と言う仁ちゃんの後をついてったら、ありゃまあ、そこは懐かしいスマートボールの遊技場。
そこでもお父ちゃんみたいにゲーム台に小銭をちゃっちゃと入れて、「ほれ、遊べ」と言う仁ちゃん。
三人のかしまし娘は飛びついた。さっそくすっからかんになったのはわたし。ほんま、下手っちゅうかツキに恵まれん性分。
ちょっと粘ったのがchi-koちゃん、なんか知らんけどドカドカと玉が出てきて、ボテチと交換してはったんがrobaちゃん。めちゃ嬉しそうやったし。
そのゲーム途中に、とうとう時間切れになったかわちゃんが「ほな」と言いながら手を振ってるというのに、スマートボールに熱中する(勝ってる最中のchi-koちゃん&robaちゃん)は半分以上無視ってて、こういう感じでバイバイできるのもなんかええ感じ、なんて勝手に思いながらわたしと仁ちゃんは彼を見送った。
喉乾いたなあと、これも勝手知ったる仁ちゃんについてったら、すごい!ミルクセーキ屋さん!
卵がいっぱい積んである。注文したら卵割って、なにやら秘密の液体混ぜてミキサーでガ~ガ~。それを一人分ずつグラスに入れてくれる。
けど、ジュース屋さんやのに、店の奥の方から昆布を煮るええ匂いがプンプン。なんでなんで?
「あ、これ?昆布炊いてるねん」
「昆布の佃煮も売ってはるん?」
「ちゃうちゃう!家で食べるねがな~」とニッコリ。さすが、大阪のおばちゃん、自分とこの家用にしたら炊いてる鍋がめちゃデカい!
ついに来たでぇ~通天閣。待っててくれてありがとう~!
展望台から見た大阪は、新しいビルと瓦の家が密集する、ほんでちょっと緑の少ない町やった。
ビリケンのことも初めてまともに読んだら、なんとなんと、こういうことやった?!
『1908年にアメリカ合衆国の芸術家フローレンス・プリッツが制作した像で、彼女が夢の中で見た神がモデルになっているという。これが「幸福の神様」として世界中に流行した。当時のアメリカ大統領であったウィリアム・タフトの愛称が名前の由来とされている。また、セントルイス大学のマスコットになっている』って……めちゃなんか縁あるやん……と勝手に思うわたし。
「通天閣はな、東京タワーより高いねんで」と仁ちゃん。
無茶苦茶言うわ、このおっさん。と思いながらも、ひょっとしたらひょっとするんかな?とふと思てしまう純なわたし。
タワー頂上から降りるエレベーターの中で、係のお兄ちゃんにコソッと尋ねてみた。
「いいえ、東京タワーは通天閣の3倍高いです」ときっぱり言い切るお兄ちゃん。ちょっと怒ってるようにも見える。ごもっともです。
さあこれでもう、たっぷり大阪を楽しませてもらったし、なんぼ都合つけたから言うてもいつまでもわたしらを世話してもらってるのも悪い。
そろそろここらへんで、と思うわたし達を乗せ、車は市内に入って行った。
南から北に向かう。心斎橋ー道頓堀ー千日前ー日本橋ー堂島難波ー梅田ー天神橋筋……。
ほんまにありがとう、楽しかったわ~とお礼を言おうとしたその時、
「風呂入るか?」と唐突に、とんでもないことを言い出す仁ちゃん。
風呂って……。
じゃじゃ~ん!!『なにわの湯』に到着!!天然温泉が出るスーパー銭湯やった。
もうこうなったらとことん行ってみよぉ~!!と腹を決め、着の身着のままで入ることにした。
8階建ての大きなビルの中に、こんな気色のええ露天風呂があるやなんて……感動した。もう入りまくった。よそのおばちゃんともいっぱいしゃべった。
ごろ寝して入るお風呂で、大股開きして豪快に眠るおばちゃんを発見。日焼けしたらかなんのか、顔にだけタイルを被せてる。
けどなあおばちゃん、いくら女ばっかりやからいうてもあれはあかんで~と、今思い出しても文句を言いとうなる。
学びも多い一日なのであった。
タオルを頭にチョコンと乗っけて出てきた仁ちゃんに、売店で売ってるスィーツを買うてもろた。
適当な駅の近くで降ろしてくれてええから、と言えんままにまた車に乗り込んだ我ら三人。
「そろそろやな。その前に、ちょっと寄っとこか」
最後の最後に連れてってくれたのは、日本一うまいきんつばの店。ここも仁ちゃんのブログで知って、散々うらやましがってたとこ。
もうほんま、思い残すことおまへん。
仁ちゃん、かわちゃん、chi-koちゃん、robaちゃん、ディープでハチャメチャ、嬉し恥ずかしのたくさんの思い出を、ほんまのほんまにありがとう。
これにて『いちびり会』in大阪、24時間のお話、おしまいおしまい。
これからどないする?
「僕、仕事で4時にどうしても姫路に戻らなあかんねん」とかわちゃん。
頭の中の大阪地図をナビする仁ちゃん。
よっしゃ、通天閣行こ!
ディープサウス大阪。あいりん地区のある西成区。旦那がこよなく愛するジャンジャン横町。残念やったね旦那!
合計したらけっこう長いこと大阪に住んでたのに、いっぺんも足を運んだことがない三角公園。
まさかこんな形で行けることになろうとは……思いも寄らなかった展開に胸はどきどきわくわく。
助手席にかわちゃん、後ろに美女三人を乗せた仁ちゃん観光高級車は、するするとよどみなく、西成の深みに入って行った。
景色が少し様変わりしてきた。ワンカップを片手に通りで立ち飲みしてるおっちゃんがけっこうぎょうさんいる。なぜか皆、背がちっちゃい。
「ここが飛田新地。こんなん見るの初めてやろ」と、運転しながら仁ちゃんがボソッと言う。
後部座席の窓は、外からは見えない加工がしてあるので、外の様子が陰って見える。
けども、それでもわかる、なにやらすごく特異な世界。
両脇にずらりと並んだ、格子戸も美しい、一見こじんまりした料亭のような店の一軒一軒に、名前入りの電灯がついている。
豪快に開かれたどの玄関先にも、女性が二人座ってる。
どこのペアも決まってひとりは中年、ひとりは若い。
「あれがやり手婆、ほんでその横がおネエちゃんや」と仁ちゃん。
絶句するしかなかった……表向き、あまりにもあっけらかんとしたように見える売春宿の羅列。スゴ過ぎる……。
ゆっくりと車で通り過ぎる仁ちゃんとかわちゃんに、にこやかに微笑みかけるお姉ちゃんと手招きする横のおばちゃん。それを後ろの座席からこそこそ覗くわたし達。
あの暑い夏の、家具一切が持ち出されてった日の夜中に、辛うじて残ったシーツ一枚敷いて、縁側のかたい板間で眠っていたわたしに、父の友人だった島のおっちゃん(島さん、もう時効やからええよね)が電話で密告してくれへんかったら、ほんで、まだ高校生やった弟が、狼狽えてるわたしを「送ったるから」とバイクに乗せて家を飛び出してへんかったら、若いうちはこういうとこで働かされてたかもしれへん。
ほんで、もしかしたら根性出してこの世界なりに出世して、今頃ごうつく婆になって若い娘の横であんな感じで座ってたかもしれへん。
そんなことをしみじみ思いながら彼女達の顔を見ているうちに、少しだけ、ほんの少しだけ、哀しい思いがこみ上げてきた。
唖然としているわたし達とまるでフツ~の仁ちゃんは、車から降りた後、ジャンジャン横町に繰り出した。
串カツのうまそぉ~な店が次から次へと現れるのやけど、さっきのんがまだ胃の中に入り切らんと上がってきそうで、食べ物の写真を見ないようにして歩いた。
「ちょっとここで遊ぶか?」と言う仁ちゃんの後をついてったら、ありゃまあ、そこは懐かしいスマートボールの遊技場。
そこでもお父ちゃんみたいにゲーム台に小銭をちゃっちゃと入れて、「ほれ、遊べ」と言う仁ちゃん。
三人のかしまし娘は飛びついた。さっそくすっからかんになったのはわたし。ほんま、下手っちゅうかツキに恵まれん性分。
ちょっと粘ったのがchi-koちゃん、なんか知らんけどドカドカと玉が出てきて、ボテチと交換してはったんがrobaちゃん。めちゃ嬉しそうやったし。
そのゲーム途中に、とうとう時間切れになったかわちゃんが「ほな」と言いながら手を振ってるというのに、スマートボールに熱中する(勝ってる最中のchi-koちゃん&robaちゃん)は半分以上無視ってて、こういう感じでバイバイできるのもなんかええ感じ、なんて勝手に思いながらわたしと仁ちゃんは彼を見送った。
喉乾いたなあと、これも勝手知ったる仁ちゃんについてったら、すごい!ミルクセーキ屋さん!
卵がいっぱい積んである。注文したら卵割って、なにやら秘密の液体混ぜてミキサーでガ~ガ~。それを一人分ずつグラスに入れてくれる。
けど、ジュース屋さんやのに、店の奥の方から昆布を煮るええ匂いがプンプン。なんでなんで?
「あ、これ?昆布炊いてるねん」
「昆布の佃煮も売ってはるん?」
「ちゃうちゃう!家で食べるねがな~」とニッコリ。さすが、大阪のおばちゃん、自分とこの家用にしたら炊いてる鍋がめちゃデカい!
ついに来たでぇ~通天閣。待っててくれてありがとう~!
展望台から見た大阪は、新しいビルと瓦の家が密集する、ほんでちょっと緑の少ない町やった。
ビリケンのことも初めてまともに読んだら、なんとなんと、こういうことやった?!
『1908年にアメリカ合衆国の芸術家フローレンス・プリッツが制作した像で、彼女が夢の中で見た神がモデルになっているという。これが「幸福の神様」として世界中に流行した。当時のアメリカ大統領であったウィリアム・タフトの愛称が名前の由来とされている。また、セントルイス大学のマスコットになっている』って……めちゃなんか縁あるやん……と勝手に思うわたし。
「通天閣はな、東京タワーより高いねんで」と仁ちゃん。
無茶苦茶言うわ、このおっさん。と思いながらも、ひょっとしたらひょっとするんかな?とふと思てしまう純なわたし。
タワー頂上から降りるエレベーターの中で、係のお兄ちゃんにコソッと尋ねてみた。
「いいえ、東京タワーは通天閣の3倍高いです」ときっぱり言い切るお兄ちゃん。ちょっと怒ってるようにも見える。ごもっともです。
さあこれでもう、たっぷり大阪を楽しませてもらったし、なんぼ都合つけたから言うてもいつまでもわたしらを世話してもらってるのも悪い。
そろそろここらへんで、と思うわたし達を乗せ、車は市内に入って行った。
南から北に向かう。心斎橋ー道頓堀ー千日前ー日本橋ー堂島難波ー梅田ー天神橋筋……。
ほんまにありがとう、楽しかったわ~とお礼を言おうとしたその時、
「風呂入るか?」と唐突に、とんでもないことを言い出す仁ちゃん。
風呂って……。
じゃじゃ~ん!!『なにわの湯』に到着!!天然温泉が出るスーパー銭湯やった。
もうこうなったらとことん行ってみよぉ~!!と腹を決め、着の身着のままで入ることにした。
8階建ての大きなビルの中に、こんな気色のええ露天風呂があるやなんて……感動した。もう入りまくった。よそのおばちゃんともいっぱいしゃべった。
ごろ寝して入るお風呂で、大股開きして豪快に眠るおばちゃんを発見。日焼けしたらかなんのか、顔にだけタイルを被せてる。
けどなあおばちゃん、いくら女ばっかりやからいうてもあれはあかんで~と、今思い出しても文句を言いとうなる。
学びも多い一日なのであった。
タオルを頭にチョコンと乗っけて出てきた仁ちゃんに、売店で売ってるスィーツを買うてもろた。
適当な駅の近くで降ろしてくれてええから、と言えんままにまた車に乗り込んだ我ら三人。
「そろそろやな。その前に、ちょっと寄っとこか」
最後の最後に連れてってくれたのは、日本一うまいきんつばの店。ここも仁ちゃんのブログで知って、散々うらやましがってたとこ。
もうほんま、思い残すことおまへん。
仁ちゃん、かわちゃん、chi-koちゃん、robaちゃん、ディープでハチャメチャ、嬉し恥ずかしのたくさんの思い出を、ほんまのほんまにありがとう。
これにて『いちびり会』in大阪、24時間のお話、おしまいおしまい。