黄瀬戸は室町時代から安土桃山時代に、優れた黄色(黄金色をイメージ)の焼き物として出現します
永禄から天正に掛け、戦国の世の中が治まりつつあった当時、焼き物が「侘び茶」の世界に
「茶陶」として取り込まれ、需要が増大するに従い、伝統の上に新感覚の作品が次々に作られる様に
なります。特に桃山期の天正から文禄(1573~1595年)の短い期間に秀作が作られます。
この期間の黄瀬戸には、油揚手(あぶらげて)と菖蒲手(あやめて)と言う黄瀬戸の代表的な焼き物
が作られます。
黄瀬戸と古瀬戸の釉は非常に似ています。それ故、古瀬戸の釉が発展したのが、黄瀬戸ではないかと
思われています。但し、古瀬戸の釉が「くすんだ色合」に焼き上がっているのに対し、釉を改良する
事で、黄瀬戸はより黄色味が強く成っています。
更に、朝鮮系の焼き物に「伊羅保(いらぼ)」釉があります。これも、古瀬戸や黄瀬戸と同様に
草木灰に黄土や鉄分を調合して施釉したものです。
1) 黄瀬戸の発生。
黄瀬戸は、鎌倉時代以降の古瀬戸の灰釉(かいゆ)の流れを汲む釉です。
① 先駆的作品として、室町後期に作られと思われる作品に、茶人の北向道陳(きたむき
どうちん、1504~1562年)の好みの伝承のある茶碗が有名です。
丸碗と半筒茶碗を合わせた様な形で、素地に鬼板を施し灰釉を掛けた黄瀬戸です。
・ 黄瀬戸茶碗: 高さ 8.5cm、口径 12.5cm、高台径 4.5cm
かって大阪の鴻池家に伝来した物で、箱書きに「北向道陳 好」の書があり、千利休に
伝来したとされています。
② 黄瀬戸の主な作品は、純然たる茶碗などの茶道具ではなく、向付や鉢など懐石料理の高級
食器として作られた物が多いです。
室町以降中国の元や明などからもたらされた、青磁や白磁を模倣した皿や鉢を作っていた
美濃では、「侘び茶」の普及と伴に、桃山風の高級食器を作る様になります。
2) 黄瀬戸の分類: 一般に四種類に分けられます。
① 「ぐい呑手」: 細かい貫入の入った、淡い黄色の光沢のある釉です。
利休好みと言われ、素直な形状の物が多いです。天正年間に多く焼かれます。
② 「菊皿手」: 菊形の小皿に多く、雑器として作られた物です。
口縁部に銅緑色の釉が掛けられている物が多い様です。
③ 「油揚手」: 光沢が無く柚子肌で、しっとりとした油揚げを思わせる色の釉肌が特徴です。
代表的な作品に、黄瀬戸茶碗 銘 朝比奈があります。
) 高さ 8.9cm、口径 13.1cm、 高台径 6.0cm 桃山時代(大萱窯)北陸大学蔵
) 轆轤挽き後に箆取した力強い作行で、胴には真横に一本胴筋が廻らされ、腰の一部に
面取り風の箆目があります。
) 千宗旦(千家三代目、利休の孫)が高台脇に「アサイナ」の銘を朱漆で直書きしています
箱蓋表に「アサイナ 茶碗 宗旦」の書付があり、宗旦の所持として、千家に伝来し、
後に三井八郎衛門家に伝わり、近年まで同家に有った茶碗です。
④ 「菖蒲手(しょうぶて)」: 鉢や向付(むこうつけ)などの食器類に多いです。
名前の由来ともなる、代表的なのが「黄瀬戸菖蒲文輪花鉢」です。
) 高さ 6.0cm、口径 25.3cm、底径 14.8cm 桃山時代
) 俗に鉦鉢(どらばち)と呼ばれる形状です。
) 深い見込み部に、一株の菖蒲がいっぱいに線彫りされ、葉には胆礬(たんばん)が濃く
塗られています。縁は花唐草の線彫りと鉄と胆礬で彩られています。
・ 注:胆礬とは、硫酸塩鉱物の一種です。化学組成は硫酸銅の水和物であり、水によく
溶け素地に吸収され、表から裏側に抜ける事もあります。(抜け胆礬と言う)
焼成すると、成分の銅が緑色に発色します。
3) 黄瀬戸の釉に付いて。
以下次回に続きます。
永禄から天正に掛け、戦国の世の中が治まりつつあった当時、焼き物が「侘び茶」の世界に
「茶陶」として取り込まれ、需要が増大するに従い、伝統の上に新感覚の作品が次々に作られる様に
なります。特に桃山期の天正から文禄(1573~1595年)の短い期間に秀作が作られます。
この期間の黄瀬戸には、油揚手(あぶらげて)と菖蒲手(あやめて)と言う黄瀬戸の代表的な焼き物
が作られます。
黄瀬戸と古瀬戸の釉は非常に似ています。それ故、古瀬戸の釉が発展したのが、黄瀬戸ではないかと
思われています。但し、古瀬戸の釉が「くすんだ色合」に焼き上がっているのに対し、釉を改良する
事で、黄瀬戸はより黄色味が強く成っています。
更に、朝鮮系の焼き物に「伊羅保(いらぼ)」釉があります。これも、古瀬戸や黄瀬戸と同様に
草木灰に黄土や鉄分を調合して施釉したものです。
1) 黄瀬戸の発生。
黄瀬戸は、鎌倉時代以降の古瀬戸の灰釉(かいゆ)の流れを汲む釉です。
① 先駆的作品として、室町後期に作られと思われる作品に、茶人の北向道陳(きたむき
どうちん、1504~1562年)の好みの伝承のある茶碗が有名です。
丸碗と半筒茶碗を合わせた様な形で、素地に鬼板を施し灰釉を掛けた黄瀬戸です。
・ 黄瀬戸茶碗: 高さ 8.5cm、口径 12.5cm、高台径 4.5cm
かって大阪の鴻池家に伝来した物で、箱書きに「北向道陳 好」の書があり、千利休に
伝来したとされています。
② 黄瀬戸の主な作品は、純然たる茶碗などの茶道具ではなく、向付や鉢など懐石料理の高級
食器として作られた物が多いです。
室町以降中国の元や明などからもたらされた、青磁や白磁を模倣した皿や鉢を作っていた
美濃では、「侘び茶」の普及と伴に、桃山風の高級食器を作る様になります。
2) 黄瀬戸の分類: 一般に四種類に分けられます。
① 「ぐい呑手」: 細かい貫入の入った、淡い黄色の光沢のある釉です。
利休好みと言われ、素直な形状の物が多いです。天正年間に多く焼かれます。
② 「菊皿手」: 菊形の小皿に多く、雑器として作られた物です。
口縁部に銅緑色の釉が掛けられている物が多い様です。
③ 「油揚手」: 光沢が無く柚子肌で、しっとりとした油揚げを思わせる色の釉肌が特徴です。
代表的な作品に、黄瀬戸茶碗 銘 朝比奈があります。
) 高さ 8.9cm、口径 13.1cm、 高台径 6.0cm 桃山時代(大萱窯)北陸大学蔵
) 轆轤挽き後に箆取した力強い作行で、胴には真横に一本胴筋が廻らされ、腰の一部に
面取り風の箆目があります。
) 千宗旦(千家三代目、利休の孫)が高台脇に「アサイナ」の銘を朱漆で直書きしています
箱蓋表に「アサイナ 茶碗 宗旦」の書付があり、宗旦の所持として、千家に伝来し、
後に三井八郎衛門家に伝わり、近年まで同家に有った茶碗です。
④ 「菖蒲手(しょうぶて)」: 鉢や向付(むこうつけ)などの食器類に多いです。
名前の由来ともなる、代表的なのが「黄瀬戸菖蒲文輪花鉢」です。
) 高さ 6.0cm、口径 25.3cm、底径 14.8cm 桃山時代
) 俗に鉦鉢(どらばち)と呼ばれる形状です。
) 深い見込み部に、一株の菖蒲がいっぱいに線彫りされ、葉には胆礬(たんばん)が濃く
塗られています。縁は花唐草の線彫りと鉄と胆礬で彩られています。
・ 注:胆礬とは、硫酸塩鉱物の一種です。化学組成は硫酸銅の水和物であり、水によく
溶け素地に吸収され、表から裏側に抜ける事もあります。(抜け胆礬と言う)
焼成すると、成分の銅が緑色に発色します。
3) 黄瀬戸の釉に付いて。
以下次回に続きます。