6) 備前焼の着物。
無釉の焼締陶である備前焼では、ある程度は窯詰めの仕方や焼成方法によって、焼き上げる
作品の模様を意図的に作る事は可能ですが、基本的には、「窯を開けて見なければ解からない」
のが実態です。
備前焼では、焼成方法の違いにより、備前手(窯変手)と伊部手及び緋襷(ひだすき)と呼
ばれる技法が存在します。
① 備前手(近年窯変手と呼ばれています): 古備前と呼ぶ場合、この手の焼き物を指すのが
一般的です。その特徴は以下の通りです。
) 手捻りや轆轤挽きで成形した物をそのまま裸で窯に入れ、薪を燃やし高い温度の焔に晒す
方法で、薪の灰が降り注ぎ、熔けて景色になる技法です。
) 備前の土は、「赤でき」と呼ばれる茶褐色の焼肌と成りますが、松の薪の灰や燠
(おき=燃え尽きていない薪)が作用して、多様な素地肌に成ります。
) 窯の中を熟知している人では、何処にどの様な作品を置けば、どの様に焼き上げるのかが
ある程度予想する事が可能ですので、焼成する事以上に窯詰めが大切な作業になります。
) 備前手の種類。
a) 胡麻(ごま): 薪の松灰が自然に降り注ぎ、熔けて胡麻状の点々が出来たものです。
イ) 胡麻には青胡麻と黄胡麻、かせ胡麻(榎肌)があります。
窯の構造や湿度の差によって、時代毎に変化しています。
・ 青胡麻は平安~桃山時代に多く、暗緑色のもので、完全に熔けています。
・ 黄胡麻は江戸時代に多く、江戸末期以降は茶色が多いです。
・ かせ胡麻(榎肌)は、降掛かった灰が火力が弱く、熔け切らずにそのまま残った状態で
艶が無く、かさかさした肌になります。あたかも榎(えのき)の樹肌の様な感じです。
茶人の間では、この手の物が、特に珍重されています。
・ 胡麻禿(はげ): 長い年月がたつと、灰が剥がれ落ち、その下地の青く焼締まった
土肌が出現する場合があります。これも茶人らによって珍重された景色になります。
ロ) 胡麻が出易い場所は、火の焚口近くで灰が多く降り掛かる棚が良いと言われています
かせ胡麻の場合には、焚口より遠い場所が良く、胡麻の量も少なく火力も弱い為この様な
場所が適しているとも言われています。
ハ) 一説によると、樹齢三十年の赤松の木が良いと言われています。
ニ) 現在では「付け胡麻」と言われる人為的な胡麻があります。
即ち、窯に入れる前に、松灰を振り掛けてから窯詰めする方法です。
但し、専門家が見ると、自然か人為的かの判別は可能との事です。自然の物は火の勢いで
吹きつけられ、力強い形状の胡麻ですが、人為的な物にはその力強さが無いとの事です。
b) 桟切(さんぎり): 薪が炭になった状態の場所では、還元が強く現れ、赤い素地に
ならず、素地の鉄分が暗灰色(鼠色、ねずみいろ)になった物をいいます。
イ) 但し、肌が一様に鼠色に成らずに、赤地に鼠色が付いた物、又逆に鼠色地に赤が
付いた物、更には中央が赤で周囲が鼠色に成った物など、色々なパターンがあります。
ロ) 薪のみでの焼成で桟切を出すのはむ難しく、現在では炭を用いて人工的に行っている
との事です。その方法は、火を止める直前に、焼けた木炭を大量に窯に入れ、作品を
覆う様にするそうです。
c) 玉垂(たまだれ): 灰が多く掛かり火力が強いと、器の表面を流れ落ち、ガラス状の
玉に成ります。火力や窯の雰囲気によって、赤、灰色、緑色の玉垂が出現します。
d) 青備前: 備前焼は酸化焼成を基本にしますが、窯詰めの位置や焼成の仕方、焔の当たり
具合によっては、一部還元焼成になる場合もあります。この様な場所に置かれた作品は
上品な青灰色になり、これを「天然青、自然青」と呼んでいます。
尚、現代では、人工的に作られた「食塩青」と言う物があります。明治時代に開発された
方法で、これは、食塩を作品に入れ状態で、伏せて焼成するそうです。860度程度で揮発
した食塩が、器に付着し土の鉄分と反応して、青又は茶色に発色します。
この食塩釉は古くから外国にあった技法で、土管の茶色はこの技法によります。
e) 牡丹餅(ぼたもち)と伏焼。
以下次回に続きます。
無釉の焼締陶である備前焼では、ある程度は窯詰めの仕方や焼成方法によって、焼き上げる
作品の模様を意図的に作る事は可能ですが、基本的には、「窯を開けて見なければ解からない」
のが実態です。
備前焼では、焼成方法の違いにより、備前手(窯変手)と伊部手及び緋襷(ひだすき)と呼
ばれる技法が存在します。
① 備前手(近年窯変手と呼ばれています): 古備前と呼ぶ場合、この手の焼き物を指すのが
一般的です。その特徴は以下の通りです。
) 手捻りや轆轤挽きで成形した物をそのまま裸で窯に入れ、薪を燃やし高い温度の焔に晒す
方法で、薪の灰が降り注ぎ、熔けて景色になる技法です。
) 備前の土は、「赤でき」と呼ばれる茶褐色の焼肌と成りますが、松の薪の灰や燠
(おき=燃え尽きていない薪)が作用して、多様な素地肌に成ります。
) 窯の中を熟知している人では、何処にどの様な作品を置けば、どの様に焼き上げるのかが
ある程度予想する事が可能ですので、焼成する事以上に窯詰めが大切な作業になります。
) 備前手の種類。
a) 胡麻(ごま): 薪の松灰が自然に降り注ぎ、熔けて胡麻状の点々が出来たものです。
イ) 胡麻には青胡麻と黄胡麻、かせ胡麻(榎肌)があります。
窯の構造や湿度の差によって、時代毎に変化しています。
・ 青胡麻は平安~桃山時代に多く、暗緑色のもので、完全に熔けています。
・ 黄胡麻は江戸時代に多く、江戸末期以降は茶色が多いです。
・ かせ胡麻(榎肌)は、降掛かった灰が火力が弱く、熔け切らずにそのまま残った状態で
艶が無く、かさかさした肌になります。あたかも榎(えのき)の樹肌の様な感じです。
茶人の間では、この手の物が、特に珍重されています。
・ 胡麻禿(はげ): 長い年月がたつと、灰が剥がれ落ち、その下地の青く焼締まった
土肌が出現する場合があります。これも茶人らによって珍重された景色になります。
ロ) 胡麻が出易い場所は、火の焚口近くで灰が多く降り掛かる棚が良いと言われています
かせ胡麻の場合には、焚口より遠い場所が良く、胡麻の量も少なく火力も弱い為この様な
場所が適しているとも言われています。
ハ) 一説によると、樹齢三十年の赤松の木が良いと言われています。
ニ) 現在では「付け胡麻」と言われる人為的な胡麻があります。
即ち、窯に入れる前に、松灰を振り掛けてから窯詰めする方法です。
但し、専門家が見ると、自然か人為的かの判別は可能との事です。自然の物は火の勢いで
吹きつけられ、力強い形状の胡麻ですが、人為的な物にはその力強さが無いとの事です。
b) 桟切(さんぎり): 薪が炭になった状態の場所では、還元が強く現れ、赤い素地に
ならず、素地の鉄分が暗灰色(鼠色、ねずみいろ)になった物をいいます。
イ) 但し、肌が一様に鼠色に成らずに、赤地に鼠色が付いた物、又逆に鼠色地に赤が
付いた物、更には中央が赤で周囲が鼠色に成った物など、色々なパターンがあります。
ロ) 薪のみでの焼成で桟切を出すのはむ難しく、現在では炭を用いて人工的に行っている
との事です。その方法は、火を止める直前に、焼けた木炭を大量に窯に入れ、作品を
覆う様にするそうです。
c) 玉垂(たまだれ): 灰が多く掛かり火力が強いと、器の表面を流れ落ち、ガラス状の
玉に成ります。火力や窯の雰囲気によって、赤、灰色、緑色の玉垂が出現します。
d) 青備前: 備前焼は酸化焼成を基本にしますが、窯詰めの位置や焼成の仕方、焔の当たり
具合によっては、一部還元焼成になる場合もあります。この様な場所に置かれた作品は
上品な青灰色になり、これを「天然青、自然青」と呼んでいます。
尚、現代では、人工的に作られた「食塩青」と言う物があります。明治時代に開発された
方法で、これは、食塩を作品に入れ状態で、伏せて焼成するそうです。860度程度で揮発
した食塩が、器に付着し土の鉄分と反応して、青又は茶色に発色します。
この食塩釉は古くから外国にあった技法で、土管の茶色はこの技法によります。
e) 牡丹餅(ぼたもち)と伏焼。
以下次回に続きます。