わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

焼き物の着物(色彩)59 古備前 6

2014-04-17 20:21:33 | 陶磁器と色彩
5) 備前焼の作品(前回の続きです。)

 ① 特注品としての備前の茶道具。多くの茶道具は注文品として製作されています。

  ) 茶壷(葉茶壷)に付いて。

   15世紀より焼かれていた茶壷は、室町時代には茶道具の中でも、最も重要な器とされて

   いました。茶壷も時代と共に形が変化して行きます。

   桃山時代に流行したのは、いわゆる呂宋(ルソン)茶壷の形を模倣した物です。

    注: 呂宋茶壷とは、フィリピンのルソン経由でもたらされた物で、茶壷の中でも重要視

     されて「島物」と呼ばれていました。更に、呂宋壷の中で文字・紋様の無いものを

     「真壺」(まつぼ)と呼んでいます。

   肩の四方に耳を付け、高さも20~30cm以上のものもあります。

   ・ 備前緋襷(ひだすき)四耳茶壷: 中世備前焼の壷様式の代表として著名です。

     高 30.3cm、口径 12.0cm、底径 13.6cm

   ・ 利休所持の「柴の庵」の銘のある当時著名な茶壷ですが、現在行方がわかりません。

   尚、江戸時代の野々村仁清には、国宝及び数個の重要文化財の茶壷が存在します。

   後日色絵の項でお話出来ればと思っています。

  ) 茶入: 抹茶を入れる容器です。陶製の物が多く、色々な形があります。

   唐物と瀬戸焼きの茶入が主流で著名な物が多いです。唐物は和物より上位に位置し、次いで

   瀬戸焼が重宝され、備前など、瀬戸以外は国焼きとして格下の器でした。

   備前焼きの茶入としては以下の物があります。

   ・ 備前茶入 銘 布袋(ほてい): 中興名物 利休所持と伝えられています。

     高 7.6cm、口径 3.0cm、底径 3.6cm

   ・ 備前茶入 銘 走井(はしりい): 江戸時代の茶人 松平不昧公 旧蔵。 

     唐物の丸壷茶入を模倣した物。 高 5.9cm、口径 2.7cm、底径 3.3cm

   ・ 備前緋襷肩衝(かたつき)茶入 銘 福神(ふくのかみ): 不昧公の箱書があります。

     高 6.9cm、口径 3.4cm、底径 4.5cm

   ・ 備前肩衝茶入 銘 さび助 : 古田織部 旧蔵。

     高 7.4cm、口径 4.0cm、底径 4.5cm

  ) 抹茶々碗に付いて。

    無釉の焼締陶である備前焼きの茶碗の数は少ない様です。    

   ・ 備前沓(くつ)茶碗 銘 只今(ただいま): 岡山県後楽園事務所 蔵。

     高 9.6cm、口径 12.8~15.1cm、高台径 7.8cm

  ) 皿と鉢に付いて。

   a) 備前焼の中で花生や水指に引けをとらない作品に、「透彫鉢」があります。

     特別注文と思われる作品です。

    ・ 備前透彫鉢: 伝世の備前焼食器の中で白眉とも言える逸品です。

     高 10.5cm、口径 25.3~29.00cm、底径 21.0cm

     ほぼ垂直に立ち上がった側面に千鳥、河骨(こうほね=植物名)、菖蒲葉など14種類の

     文様が透彫りされたものです。底には四箇所に小さな脚が付けられています。

     見込みには七つの円形の「牡丹餅(ぼたもち)」があります。

   b) 備前手鉢: 美濃窯でも多くの手鉢が作られていますが、美濃(織部)の手鉢が装飾性に

      富んでいるのに対し、備前焼では、形のおおらかさと、焼き上がりの景色に特徴が

      あります。作品はいずれも一品製作と思われます。

    ・ 備前半月形手鉢: 半月形の皿に弓形の把手が付けられた、備前の代表的な形の作品で

      見込みに大小の抜けを付け、自然と人為的要素が装飾効果を増しています。

       高 7.6cm、口径 3.0cm、底径 3.6cm

    ・ 備前透文手鉢: 桃山~江戸初期に多い作品です。

      口縁の周囲に銀杏(ぎんなん)、扇面、菊文の透彫があり、見込みには徳利を置いたと

      思われる六個の「牡丹餅」がある、梅鉢文風の作品です。把手と口縁部に胡麻(ごま)

      が降り掛かっています。
   
       高 14.5cm、口径 21.5 ~23.2 cm、底径 15.3cm

   c) 大皿に付いて。 桃山期に於いて、最も大きな作品が焼かれていました。

     腰の強い土が、轆轤挽きを可能にしたと思われます。

    ・ 備前緋襷大皿: 16 ~ 17世紀 備前大皿の伝世品の中で最も美しい。藤田美術館蔵

      鉢形に近い深皿で、口縁は丸く内側に捻り返され、平底に成っています。

      緋襷は特に外側が美しい作品です。

       高 9.1cm、口径 47.0cm、底径 27.0cm

    ・ 備前緋襷大皿:  16 ~ 17世紀 岡山県立博物館蔵。

      海揚り(後日説明します)で10点ほど引き揚げられた中の一品です。

      重ね焼きによる緋襷が素晴らしく、最優品の大皿です。底の裏には塗り土が施され、

      テーブル等を傷つけない配慮がされています。

       高 9.0cm、口径 50.5cm、底径 26.5 ~ 27.6cm 

  ) 徳利に付いて。

以下次回に続きます。
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