5) 備前焼の作品(前回の続きです。)
① 特注品としての備前の茶道具。多くの茶道具は注文品として製作されています。
) 茶壷(葉茶壷)に付いて。
15世紀より焼かれていた茶壷は、室町時代には茶道具の中でも、最も重要な器とされて
いました。茶壷も時代と共に形が変化して行きます。
桃山時代に流行したのは、いわゆる呂宋(ルソン)茶壷の形を模倣した物です。
注: 呂宋茶壷とは、フィリピンのルソン経由でもたらされた物で、茶壷の中でも重要視
されて「島物」と呼ばれていました。更に、呂宋壷の中で文字・紋様の無いものを
「真壺」(まつぼ)と呼んでいます。
肩の四方に耳を付け、高さも20~30cm以上のものもあります。
・ 備前緋襷(ひだすき)四耳茶壷: 中世備前焼の壷様式の代表として著名です。
高 30.3cm、口径 12.0cm、底径 13.6cm
・ 利休所持の「柴の庵」の銘のある当時著名な茶壷ですが、現在行方がわかりません。
尚、江戸時代の野々村仁清には、国宝及び数個の重要文化財の茶壷が存在します。
後日色絵の項でお話出来ればと思っています。
) 茶入: 抹茶を入れる容器です。陶製の物が多く、色々な形があります。
唐物と瀬戸焼きの茶入が主流で著名な物が多いです。唐物は和物より上位に位置し、次いで
瀬戸焼が重宝され、備前など、瀬戸以外は国焼きとして格下の器でした。
備前焼きの茶入としては以下の物があります。
・ 備前茶入 銘 布袋(ほてい): 中興名物 利休所持と伝えられています。
高 7.6cm、口径 3.0cm、底径 3.6cm
・ 備前茶入 銘 走井(はしりい): 江戸時代の茶人 松平不昧公 旧蔵。
唐物の丸壷茶入を模倣した物。 高 5.9cm、口径 2.7cm、底径 3.3cm
・ 備前緋襷肩衝(かたつき)茶入 銘 福神(ふくのかみ): 不昧公の箱書があります。
高 6.9cm、口径 3.4cm、底径 4.5cm
・ 備前肩衝茶入 銘 さび助 : 古田織部 旧蔵。
高 7.4cm、口径 4.0cm、底径 4.5cm
) 抹茶々碗に付いて。
無釉の焼締陶である備前焼きの茶碗の数は少ない様です。
・ 備前沓(くつ)茶碗 銘 只今(ただいま): 岡山県後楽園事務所 蔵。
高 9.6cm、口径 12.8~15.1cm、高台径 7.8cm
) 皿と鉢に付いて。
a) 備前焼の中で花生や水指に引けをとらない作品に、「透彫鉢」があります。
特別注文と思われる作品です。
・ 備前透彫鉢: 伝世の備前焼食器の中で白眉とも言える逸品です。
高 10.5cm、口径 25.3~29.00cm、底径 21.0cm
ほぼ垂直に立ち上がった側面に千鳥、河骨(こうほね=植物名)、菖蒲葉など14種類の
文様が透彫りされたものです。底には四箇所に小さな脚が付けられています。
見込みには七つの円形の「牡丹餅(ぼたもち)」があります。
b) 備前手鉢: 美濃窯でも多くの手鉢が作られていますが、美濃(織部)の手鉢が装飾性に
富んでいるのに対し、備前焼では、形のおおらかさと、焼き上がりの景色に特徴が
あります。作品はいずれも一品製作と思われます。
・ 備前半月形手鉢: 半月形の皿に弓形の把手が付けられた、備前の代表的な形の作品で
見込みに大小の抜けを付け、自然と人為的要素が装飾効果を増しています。
高 7.6cm、口径 3.0cm、底径 3.6cm
・ 備前透文手鉢: 桃山~江戸初期に多い作品です。
口縁の周囲に銀杏(ぎんなん)、扇面、菊文の透彫があり、見込みには徳利を置いたと
思われる六個の「牡丹餅」がある、梅鉢文風の作品です。把手と口縁部に胡麻(ごま)
が降り掛かっています。
高 14.5cm、口径 21.5 ~23.2 cm、底径 15.3cm
c) 大皿に付いて。 桃山期に於いて、最も大きな作品が焼かれていました。
腰の強い土が、轆轤挽きを可能にしたと思われます。
・ 備前緋襷大皿: 16 ~ 17世紀 備前大皿の伝世品の中で最も美しい。藤田美術館蔵
鉢形に近い深皿で、口縁は丸く内側に捻り返され、平底に成っています。
緋襷は特に外側が美しい作品です。
高 9.1cm、口径 47.0cm、底径 27.0cm
・ 備前緋襷大皿: 16 ~ 17世紀 岡山県立博物館蔵。
海揚り(後日説明します)で10点ほど引き揚げられた中の一品です。
重ね焼きによる緋襷が素晴らしく、最優品の大皿です。底の裏には塗り土が施され、
テーブル等を傷つけない配慮がされています。
高 9.0cm、口径 50.5cm、底径 26.5 ~ 27.6cm
) 徳利に付いて。
以下次回に続きます。
① 特注品としての備前の茶道具。多くの茶道具は注文品として製作されています。
) 茶壷(葉茶壷)に付いて。
15世紀より焼かれていた茶壷は、室町時代には茶道具の中でも、最も重要な器とされて
いました。茶壷も時代と共に形が変化して行きます。
桃山時代に流行したのは、いわゆる呂宋(ルソン)茶壷の形を模倣した物です。
注: 呂宋茶壷とは、フィリピンのルソン経由でもたらされた物で、茶壷の中でも重要視
されて「島物」と呼ばれていました。更に、呂宋壷の中で文字・紋様の無いものを
「真壺」(まつぼ)と呼んでいます。
肩の四方に耳を付け、高さも20~30cm以上のものもあります。
・ 備前緋襷(ひだすき)四耳茶壷: 中世備前焼の壷様式の代表として著名です。
高 30.3cm、口径 12.0cm、底径 13.6cm
・ 利休所持の「柴の庵」の銘のある当時著名な茶壷ですが、現在行方がわかりません。
尚、江戸時代の野々村仁清には、国宝及び数個の重要文化財の茶壷が存在します。
後日色絵の項でお話出来ればと思っています。
) 茶入: 抹茶を入れる容器です。陶製の物が多く、色々な形があります。
唐物と瀬戸焼きの茶入が主流で著名な物が多いです。唐物は和物より上位に位置し、次いで
瀬戸焼が重宝され、備前など、瀬戸以外は国焼きとして格下の器でした。
備前焼きの茶入としては以下の物があります。
・ 備前茶入 銘 布袋(ほてい): 中興名物 利休所持と伝えられています。
高 7.6cm、口径 3.0cm、底径 3.6cm
・ 備前茶入 銘 走井(はしりい): 江戸時代の茶人 松平不昧公 旧蔵。
唐物の丸壷茶入を模倣した物。 高 5.9cm、口径 2.7cm、底径 3.3cm
・ 備前緋襷肩衝(かたつき)茶入 銘 福神(ふくのかみ): 不昧公の箱書があります。
高 6.9cm、口径 3.4cm、底径 4.5cm
・ 備前肩衝茶入 銘 さび助 : 古田織部 旧蔵。
高 7.4cm、口径 4.0cm、底径 4.5cm
) 抹茶々碗に付いて。
無釉の焼締陶である備前焼きの茶碗の数は少ない様です。
・ 備前沓(くつ)茶碗 銘 只今(ただいま): 岡山県後楽園事務所 蔵。
高 9.6cm、口径 12.8~15.1cm、高台径 7.8cm
) 皿と鉢に付いて。
a) 備前焼の中で花生や水指に引けをとらない作品に、「透彫鉢」があります。
特別注文と思われる作品です。
・ 備前透彫鉢: 伝世の備前焼食器の中で白眉とも言える逸品です。
高 10.5cm、口径 25.3~29.00cm、底径 21.0cm
ほぼ垂直に立ち上がった側面に千鳥、河骨(こうほね=植物名)、菖蒲葉など14種類の
文様が透彫りされたものです。底には四箇所に小さな脚が付けられています。
見込みには七つの円形の「牡丹餅(ぼたもち)」があります。
b) 備前手鉢: 美濃窯でも多くの手鉢が作られていますが、美濃(織部)の手鉢が装飾性に
富んでいるのに対し、備前焼では、形のおおらかさと、焼き上がりの景色に特徴が
あります。作品はいずれも一品製作と思われます。
・ 備前半月形手鉢: 半月形の皿に弓形の把手が付けられた、備前の代表的な形の作品で
見込みに大小の抜けを付け、自然と人為的要素が装飾効果を増しています。
高 7.6cm、口径 3.0cm、底径 3.6cm
・ 備前透文手鉢: 桃山~江戸初期に多い作品です。
口縁の周囲に銀杏(ぎんなん)、扇面、菊文の透彫があり、見込みには徳利を置いたと
思われる六個の「牡丹餅」がある、梅鉢文風の作品です。把手と口縁部に胡麻(ごま)
が降り掛かっています。
高 14.5cm、口径 21.5 ~23.2 cm、底径 15.3cm
c) 大皿に付いて。 桃山期に於いて、最も大きな作品が焼かれていました。
腰の強い土が、轆轤挽きを可能にしたと思われます。
・ 備前緋襷大皿: 16 ~ 17世紀 備前大皿の伝世品の中で最も美しい。藤田美術館蔵
鉢形に近い深皿で、口縁は丸く内側に捻り返され、平底に成っています。
緋襷は特に外側が美しい作品です。
高 9.1cm、口径 47.0cm、底径 27.0cm
・ 備前緋襷大皿: 16 ~ 17世紀 岡山県立博物館蔵。
海揚り(後日説明します)で10点ほど引き揚げられた中の一品です。
重ね焼きによる緋襷が素晴らしく、最優品の大皿です。底の裏には塗り土が施され、
テーブル等を傷つけない配慮がされています。
高 9.0cm、口径 50.5cm、底径 26.5 ~ 27.6cm
) 徳利に付いて。
以下次回に続きます。