3) 黄瀬戸の釉に付いて。
黄瀬戸の良い物は、テカテカ光沢のあるものではなく、油揚手と呼ばれる焼き物と言われています
桃山期の良品は、志野と同様に大萱の窯下窯で焼かれた物に多いとされています。
① 黄瀬戸の釉は、鉄分を多く含む木灰を使った灰釉(かいゆ)です。
)木の種類は、栗、椿、樫(かし)、楢(なら)、欅(けやき)、松、柞(いす)などが多く
使われています。又雑木を焼いた灰を、土灰(どばい)と言い、良く使われる灰です。
)木灰に含まれる主の成分。
石灰(炭酸カルシウム)、珪酸、アルミナ、鉄分、マグネシア、燐(りん)などです。
樹木の産地、種類、根、幹、葉などの部位により、その成分に違いがあります。
) 樹木を焼いた灰は水と伴に細かく粉砕し、何度も水に晒して灰汁(あく)を取り除きます
更に、乾燥した灰と石粉(長石の半分解物)を調合して釉にします。
尚、天然の樹木は都市化の影響で、採取しずらくなります。それ故現在では、桃山時代と
同じ様な黄瀬戸の作品(釉薬)を作る事は、困難になったと言われています。
・ 天然灰を理想としますが、高価である事と品質にバラツキが有りますので、現在では、
各種の合成の灰を使う事も多くなりました。
) 施釉した作品は、酸化焼成で鉄分が黄色や茶色に発色しますし、還元炎では黄緑色に成り
ます。 当然樹木の種類によって発色に差が出ます。
尚、黄瀬戸の第一人者と言われた加藤唐九郎氏は、良い油揚げ手の釉として、備長炭の灰を
使っています。
・ 注:備長炭とは、「うばめ樫」又は、樫(かし)全般の木で作る木炭です。
1千度程度で焼く「白炭」で、非常に堅く、燃焼時間が長いのが特徴です。
② 黄瀬戸釉の調合例。
) 土灰 50、長石 25、赤土 25
) 土灰 50、長石 40、藁灰 10、 酸化鉄 1(外割り)
酸化鉄を入れるのは、後世に行われる様になり、桃山期には入れていません。
) 土灰 40、赤土 40 SK8透明釉 20
施釉は「ズブ掛」(浸し掛)の方法を採っています。
4) 桃山期の優れた黄瀬戸の焼き物。
) 重要文化財 黄瀬戸立鼓花入 銘 旅枕 : 桃山時代 和泉市久保惣記念美術館蔵。
高さ 21.4cm、 口径 10.5cm、 底径 11.9cm
千利休の所持の花入で、利休自記筆の「セト 里うこ 花入」の文字が箱書きされています。
) 黄瀬戸茶碗 銘 難破: 桃山時代 大萱の窯下窯
高さ 7.2cm、 口径 11.7cm、 底径 8.0cm
背が低く高台が大きい事から、本来向付けとして作られた物と思われています。
油揚手の黄瀬戸茶碗の中で、第一の名碗と言われています。
かって益田鈍翁の愛憎品です。
) 重要文化財 黄瀬戸大根文輪花鉢 : 桃山時代、 萬野美術館蔵
高さ 7.4cm、 口径 24.8cm、 底径 13.8cm
形はいわゆる鉦鉢(どらばち)です。見込みいっぱいに大根一株が箆(へら)で線彫り
されています。大根の葉と周囲の輪花部には、胆礬(たんばん)が薄く点じられています。
この鉢も、かって益田鈍翁の愛憎品です。
) 前述した様に、黄瀬戸の胆礬を打った良品は、主に鉢や向付けなどの食器類として、
作られ、茶会後に行われる食事会、即ち懐石料理を盛る器でした。
又、茶碗の制作例は少なく、向付けを茶碗に転用する場合が多かった様です。
黄瀬戸の食器類が懐石料理での主役であったのは、短い期間で次に現れる織部に取って
変わられる運命にありました。
以下次回(瀬戸黒)に続きます。
黄瀬戸の良い物は、テカテカ光沢のあるものではなく、油揚手と呼ばれる焼き物と言われています
桃山期の良品は、志野と同様に大萱の窯下窯で焼かれた物に多いとされています。
① 黄瀬戸の釉は、鉄分を多く含む木灰を使った灰釉(かいゆ)です。
)木の種類は、栗、椿、樫(かし)、楢(なら)、欅(けやき)、松、柞(いす)などが多く
使われています。又雑木を焼いた灰を、土灰(どばい)と言い、良く使われる灰です。
)木灰に含まれる主の成分。
石灰(炭酸カルシウム)、珪酸、アルミナ、鉄分、マグネシア、燐(りん)などです。
樹木の産地、種類、根、幹、葉などの部位により、その成分に違いがあります。
) 樹木を焼いた灰は水と伴に細かく粉砕し、何度も水に晒して灰汁(あく)を取り除きます
更に、乾燥した灰と石粉(長石の半分解物)を調合して釉にします。
尚、天然の樹木は都市化の影響で、採取しずらくなります。それ故現在では、桃山時代と
同じ様な黄瀬戸の作品(釉薬)を作る事は、困難になったと言われています。
・ 天然灰を理想としますが、高価である事と品質にバラツキが有りますので、現在では、
各種の合成の灰を使う事も多くなりました。
) 施釉した作品は、酸化焼成で鉄分が黄色や茶色に発色しますし、還元炎では黄緑色に成り
ます。 当然樹木の種類によって発色に差が出ます。
尚、黄瀬戸の第一人者と言われた加藤唐九郎氏は、良い油揚げ手の釉として、備長炭の灰を
使っています。
・ 注:備長炭とは、「うばめ樫」又は、樫(かし)全般の木で作る木炭です。
1千度程度で焼く「白炭」で、非常に堅く、燃焼時間が長いのが特徴です。
② 黄瀬戸釉の調合例。
) 土灰 50、長石 25、赤土 25
) 土灰 50、長石 40、藁灰 10、 酸化鉄 1(外割り)
酸化鉄を入れるのは、後世に行われる様になり、桃山期には入れていません。
) 土灰 40、赤土 40 SK8透明釉 20
施釉は「ズブ掛」(浸し掛)の方法を採っています。
4) 桃山期の優れた黄瀬戸の焼き物。
) 重要文化財 黄瀬戸立鼓花入 銘 旅枕 : 桃山時代 和泉市久保惣記念美術館蔵。
高さ 21.4cm、 口径 10.5cm、 底径 11.9cm
千利休の所持の花入で、利休自記筆の「セト 里うこ 花入」の文字が箱書きされています。
) 黄瀬戸茶碗 銘 難破: 桃山時代 大萱の窯下窯
高さ 7.2cm、 口径 11.7cm、 底径 8.0cm
背が低く高台が大きい事から、本来向付けとして作られた物と思われています。
油揚手の黄瀬戸茶碗の中で、第一の名碗と言われています。
かって益田鈍翁の愛憎品です。
) 重要文化財 黄瀬戸大根文輪花鉢 : 桃山時代、 萬野美術館蔵
高さ 7.4cm、 口径 24.8cm、 底径 13.8cm
形はいわゆる鉦鉢(どらばち)です。見込みいっぱいに大根一株が箆(へら)で線彫り
されています。大根の葉と周囲の輪花部には、胆礬(たんばん)が薄く点じられています。
この鉢も、かって益田鈍翁の愛憎品です。
) 前述した様に、黄瀬戸の胆礬を打った良品は、主に鉢や向付けなどの食器類として、
作られ、茶会後に行われる食事会、即ち懐石料理を盛る器でした。
又、茶碗の制作例は少なく、向付けを茶碗に転用する場合が多かった様です。
黄瀬戸の食器類が懐石料理での主役であったのは、短い期間で次に現れる織部に取って
変わられる運命にありました。
以下次回(瀬戸黒)に続きます。