わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

焼き物の着物(色彩)62 古備前 9(牡丹餅、緋襷)

2014-04-20 20:43:39 | 陶磁器と色彩
6) 備前焼の着物。(前回の続きです)

 ① 備前手(近年窯変手と呼ばれています): 古備前と呼ぶ場合、この手の焼き物を指すのが

   一般的です。その特徴は以下の通りです。

 ) 備前手の種類。

  e) 牡丹餅(ぼたもち)と伏焼(ふせやき)、及び特殊の焼き方。

   イ) 牡丹餅とは、棚板が使われていなかった昔の窯では、多くの作品を重ね焼きをして

    いました。特に無釉の場合には、作品同士がくっつく恐れが少なく、直接重ねる事が

    可能な為、一般に行われています。

    大きな皿や鉢などでは、その内側に徳利や盃、茶碗などを載せて焼成しました。

    載せた跡は、赤く残り他の部分には灰が掛かり、胡麻などが出ますので、明らかな差が

    出ます。特に載せた作品の底が丸い場合には、赤い丸い模様になります。

    この模様(景色と言います)が牡丹餅の様に見える処より、この名前があります。

   ・ 牡丹餅文様は、中心部と周辺部では色の違いがあります。中心部は火に直接触れま

     せんが、重ね合わせの周辺部分では、若干火に触れますので、発色に差がでます。

   ・ 施釉陶器でも重ね焼きを行いますが、その際には、「目」を立てて浮かせて重ねます。

     それ故「目跡」が残ります。

   ロ) 伏焼とは、壷や瓶などの首の部分に、湯呑や筒壷などの作品を伏せて載せて焼成

     すると、その部分が火に触れずに、赤く(又は下とは異なる色に)発色する事になり

     ます。伏せる際、重ね合わせの部分に藁(わら)を巻きつけると、後で述べる緋襷

     (ひだすき)が出る場合があります。

   ハ) 特殊な焼き方として、施釉陶器では不可能な、作品を横に倒して焼成する方法があり

     ます。下になった部分は火が当たりませんので、赤く発色し、他の部分は胡麻が掛かり

     ます。使う際には立てて使用しますので、片側のみに赤が出現する事に成ります。

 ② 緋襷(ひだすき)

   緋襷にするには、胡麻が掛からない様に「匣鉢(さや)」に納めて焼成する必要があります。

  ) 備前焼は無釉の陶器ですので、原則的には、何枚も重ね焼きが可能になります。しかし

   実際には重ね合わせると、作品の重みで口縁などに加重が掛り、破損する恐れもありす。

   その為、藁(わら)を巻き付てクッションを入れる事で、下部の口縁に掛かる荷重を軽減し

   ました。又、高温で素地はある程度軟らかくなり、密着した部分で焼き付く場合も有りました

   これを防ぐ為にも、密着し過ぎない無い様に作品に藁を巻く必要がありました。

  ) 藁の当たった部分が緋色に発色する場合があります。これを緋襷と呼んでいます。

    但し、赤い緋襷以外にも、黒っぽい緋襷や鼠色掛かった色になる緋襷も出現します。

    更に、藁を巻けば緋襷が、必ず出現する訳ではありません。

  ) 赤く発色するのは、藁に多く含まれる珪酸と、素地の鉄分との化学反応の為です。

    窯の雰囲気にも左右され、酸化焼成の方が発色し易いと言われていますが、強酸化では

    緋色が出ないとの事です。即ち、火の焚口の近くより、離れた場所が適します。

  ) 当然、素地も選ぶ必要があります。伊部の土の様に非常に粘度が強い、黒土が適します。

    信楽や志野土(もぐさ土、五斗蒔土など)等も火色が出易いとの事です。

  ) 偶然見付けた技法ですが、現在では人工的に緋襷を作る方法もあります。

   a) 藁に食塩水(塩化ナトリウム、塩化カリウムなど)を掛けてから(又は浸してから)

     作品に巻き付けると緋色が出るそうです。

     尚、藁は十分に叩いて軟らかくしておくと、使い易くなります。

   b) 白い粘土の素地に、食塩水に溶いた酸化鉄(弁柄など)を霧吹(噴霧器)で吹きかけ

     焼成する事で、緋色に発色させている人もいるそうです。

  ) 緋襷は薪窯で発色させますが、ガス窯で焼成している人もいます。

     焼成温度も大切です。1220℃程度が最適で、それ以上に成ると鉄分が飛び、色が消えると

     話す作家さんもいます。

 ③ 伊部手。 以前お話した様に、塗土した作品に胡麻の掛かったもので、窯変手と異なり紫褐色

   に焼上がった物が多く、器肌は滑らかに成っています。尚、匣鉢(さや)詰めで焼成し、

   胡麻が掛からない様にした作品も、伊部手と言います。

   江戸初期頃から、茶人の間で流行し伊部で大量に作られる様になります。

以下次回(海揚り)に続きます。
   
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする