4) 織部焼の作品。
① 大量生産による制作。
) 織部焼の代表的な窯である元屋敷窯には、九州唐津より技術移入された連房式登窯が築か
れます。一度に沢山の作品を焼く量産に適する窯であり、発掘調査で14房の焼成室が確認
されています。ここでは、都市生活者の要求に応じた作品が次々に焼かれています。
注: 連房式登窯とは、山腹の傾斜に沿って地上にアーチ状の燃焼室が連なる構造の窯です。
) 轆轤成形と型物成形。
従来の様に、作品一個一個を手轆轤で作る方法も取られていますが、向付や鉢には、型作りの
伝世品が多く存在しています。布目跡から型作りである事が判明します。
a) 型作りによる生産。
板状に伸ばした土(タタラ)を土型に押し込み、同じ形の作品を多数作る方法です。
型離れを良くする為に、蚊帳などの布を型に嵌め、その上に軟らかい粘土を押し込み型通り
の形に作ります。
b) 一つの型から五客一組、又は二組程度の量(5~10個)を生産する方法で、現在我々の
感じる量産とはかなり違いがあります。これは、需要者の注文数に応じて、臨機応変に
型を作ったと考えられています。それ故、型物とは言え、異なる多数の形が存在する事に
成ります。
) 専業陶工集団による近世的な生産システムに発展します。
一つ又は複数個の窯を指導する指揮者が、生産を管理していたと思われています。
即ち、注文を受けてから納品までの最終段階までの工程を監督指揮する立場の人(窯大将)
で、生産技術や意匠(デザイン)、販路の開拓、運搬手段までも管理したと思われています
② 織部の種類
) 青織部: 素地の一部に鉄絵が施され、要所要所に銅の緑釉が掛けられた焼き物です。
全体に銅釉が掛かった物を「総織部」と呼びます。多くの場合、釉の下に印花、櫛目、
線刻文、貼付などの彫刻的な装飾が施されています。
) 赤織部: 素地に赤土を選び、一部に白化粧土を施し更に鉄絵を付け物で、向付、皿、
鉢、抹茶茶碗などが多いです。
) 鳴海(なるみ)織部: 白土と赤土を適宜継ぎ合わせた陶板を作り、型に嵌め込み作品に
成形します。白土部分には青釉を、赤土部分には白化粧土で模様を描き、更に鉄絵を
施します。把手の付いた手鉢や、四方平鉢、扇面形蓋物、扇面形向付などがあります。
) 織部黒、黒織部: 文様の無い黒一色の物を織部黒と呼びます。
白い素地に黒釉を一部掛け残し、そこに鉄絵で文様を描いたり黒釉の一部を掻き落し
文様を描いた物を黒織部と呼びます。
) 織部唐津(美濃唐津): 織部を焼いた元屋敷窯や、高根窯で焼かれた絵唐津風の物で、
少量であるが、向付、茶碗、四方鉢などがあります。
) 志野織部: 志野と織部の中間的なもので、鉄絵を施し、長石単味の志野釉に更に灰を
加え施釉したもので、登窯で焼いた為、緋(火)色が無く、志野と区別できない物も
有ります。皿、鉢などの食器類が多いです。
③ 著名な作品。
) 織部松皮菱(まつかわびし)手鉢: 鳴海織部の傑作。 桃山~江戸初期。型抜き成形。
高さ 17.7cm、口径 24.1 X 26.8 cm。 四脚。
王朝時代の文様(片輪車)を復活させた物で、太い把手(とって)が豪快に付いています
) 織部葦鷺文切落(あしさぎもんきりおとし)手鉢: 型作りの布目跡と重ね焼の目跡あり
高さ 18.4cm、口径 19.1 X 21.6cm。 四脚
箱書に「織部焼」と「貞享5年(1688年)」の文字があり、織部焼の名称が始めて登場
した物です。
) 重要文化財 織部四方(よほう)平鉢 : 著名な作品で、かって芥川龍之介が所蔵
していた物です。 高さ 6.3cm、口径 20.6 X 21.3cm。 四脚
上下方向が問題になる事もあります。一般に織部の緑釉側を下にした写真が多いですが、
上下が逆の場合もあります。 縁の中央に把手の取れた跡があります。
鼠色の地に5個の二重の四角が鬼板で描かれ、二重線による棒状の物が織部側に伸び
ています。
) 黒織部菊文茶碗: 平瀬家から藤田家に伝来の筒茶碗です。
高さ 9.1cm、口径 10.7cm、 高台径 5.1cm。
胴に三角の黒釉の掛け残しを設け、そこに鉄絵で菊の折枝文が描かれています。
) 織部片輪車文沓形(かたわぐるまもんくつがた)茶碗 : 銘 山路
高さ 6.0 ~ 6.7cm、口径 9.5 ~ 13.5cm 、 高台径 5.8cm。
四方に広がる口縁部に緑釉が掛かり、素地の赤味と緑釉の調和が見事な沓茶碗です。
片輪車とは平安貴族の牛車の車輪の片側の事です。
) 織部四方蓋物: 織部には蓋物の作品も多いです。
高さ 11.3cm、口径 17.0~18.6cm、 二脚
緑釉が対角線に斜めに掛けられ、その中央に大小二隻の帆掛舟が描かれています。
内部に12個の目跡があり、重ね焼きした跡です。
) その他:
a) 向付には筒状の物と、皿状(鉢状)の物があります。
形は多種多様で、扇面形、千鳥形、船形などが代表的なもので、いずれも土型を利用して
います。
b) 水注(すいちゅう): 轆轤挽きの作品で、真上に把手がある水注ぎで、大小様々
です。鬼板で亀甲文や、橋文んどの絵付けされています。
c) 徳利類:轆轤挽きによる作品で、当時流行の秋草文や水草文等の植物文が描かれて
います。高さが24.6cm、胴径が18cm以上の大徳利もあります。
d)その他、香炉、香合、燭台、水指、茶入、花生、振出(小さい菓子を入れる菓子器)
などがあります。
以下次回に続きます。
① 大量生産による制作。
) 織部焼の代表的な窯である元屋敷窯には、九州唐津より技術移入された連房式登窯が築か
れます。一度に沢山の作品を焼く量産に適する窯であり、発掘調査で14房の焼成室が確認
されています。ここでは、都市生活者の要求に応じた作品が次々に焼かれています。
注: 連房式登窯とは、山腹の傾斜に沿って地上にアーチ状の燃焼室が連なる構造の窯です。
) 轆轤成形と型物成形。
従来の様に、作品一個一個を手轆轤で作る方法も取られていますが、向付や鉢には、型作りの
伝世品が多く存在しています。布目跡から型作りである事が判明します。
a) 型作りによる生産。
板状に伸ばした土(タタラ)を土型に押し込み、同じ形の作品を多数作る方法です。
型離れを良くする為に、蚊帳などの布を型に嵌め、その上に軟らかい粘土を押し込み型通り
の形に作ります。
b) 一つの型から五客一組、又は二組程度の量(5~10個)を生産する方法で、現在我々の
感じる量産とはかなり違いがあります。これは、需要者の注文数に応じて、臨機応変に
型を作ったと考えられています。それ故、型物とは言え、異なる多数の形が存在する事に
成ります。
) 専業陶工集団による近世的な生産システムに発展します。
一つ又は複数個の窯を指導する指揮者が、生産を管理していたと思われています。
即ち、注文を受けてから納品までの最終段階までの工程を監督指揮する立場の人(窯大将)
で、生産技術や意匠(デザイン)、販路の開拓、運搬手段までも管理したと思われています
② 織部の種類
) 青織部: 素地の一部に鉄絵が施され、要所要所に銅の緑釉が掛けられた焼き物です。
全体に銅釉が掛かった物を「総織部」と呼びます。多くの場合、釉の下に印花、櫛目、
線刻文、貼付などの彫刻的な装飾が施されています。
) 赤織部: 素地に赤土を選び、一部に白化粧土を施し更に鉄絵を付け物で、向付、皿、
鉢、抹茶茶碗などが多いです。
) 鳴海(なるみ)織部: 白土と赤土を適宜継ぎ合わせた陶板を作り、型に嵌め込み作品に
成形します。白土部分には青釉を、赤土部分には白化粧土で模様を描き、更に鉄絵を
施します。把手の付いた手鉢や、四方平鉢、扇面形蓋物、扇面形向付などがあります。
) 織部黒、黒織部: 文様の無い黒一色の物を織部黒と呼びます。
白い素地に黒釉を一部掛け残し、そこに鉄絵で文様を描いたり黒釉の一部を掻き落し
文様を描いた物を黒織部と呼びます。
) 織部唐津(美濃唐津): 織部を焼いた元屋敷窯や、高根窯で焼かれた絵唐津風の物で、
少量であるが、向付、茶碗、四方鉢などがあります。
) 志野織部: 志野と織部の中間的なもので、鉄絵を施し、長石単味の志野釉に更に灰を
加え施釉したもので、登窯で焼いた為、緋(火)色が無く、志野と区別できない物も
有ります。皿、鉢などの食器類が多いです。
③ 著名な作品。
) 織部松皮菱(まつかわびし)手鉢: 鳴海織部の傑作。 桃山~江戸初期。型抜き成形。
高さ 17.7cm、口径 24.1 X 26.8 cm。 四脚。
王朝時代の文様(片輪車)を復活させた物で、太い把手(とって)が豪快に付いています
) 織部葦鷺文切落(あしさぎもんきりおとし)手鉢: 型作りの布目跡と重ね焼の目跡あり
高さ 18.4cm、口径 19.1 X 21.6cm。 四脚
箱書に「織部焼」と「貞享5年(1688年)」の文字があり、織部焼の名称が始めて登場
した物です。
) 重要文化財 織部四方(よほう)平鉢 : 著名な作品で、かって芥川龍之介が所蔵
していた物です。 高さ 6.3cm、口径 20.6 X 21.3cm。 四脚
上下方向が問題になる事もあります。一般に織部の緑釉側を下にした写真が多いですが、
上下が逆の場合もあります。 縁の中央に把手の取れた跡があります。
鼠色の地に5個の二重の四角が鬼板で描かれ、二重線による棒状の物が織部側に伸び
ています。
) 黒織部菊文茶碗: 平瀬家から藤田家に伝来の筒茶碗です。
高さ 9.1cm、口径 10.7cm、 高台径 5.1cm。
胴に三角の黒釉の掛け残しを設け、そこに鉄絵で菊の折枝文が描かれています。
) 織部片輪車文沓形(かたわぐるまもんくつがた)茶碗 : 銘 山路
高さ 6.0 ~ 6.7cm、口径 9.5 ~ 13.5cm 、 高台径 5.8cm。
四方に広がる口縁部に緑釉が掛かり、素地の赤味と緑釉の調和が見事な沓茶碗です。
片輪車とは平安貴族の牛車の車輪の片側の事です。
) 織部四方蓋物: 織部には蓋物の作品も多いです。
高さ 11.3cm、口径 17.0~18.6cm、 二脚
緑釉が対角線に斜めに掛けられ、その中央に大小二隻の帆掛舟が描かれています。
内部に12個の目跡があり、重ね焼きした跡です。
) その他:
a) 向付には筒状の物と、皿状(鉢状)の物があります。
形は多種多様で、扇面形、千鳥形、船形などが代表的なもので、いずれも土型を利用して
います。
b) 水注(すいちゅう): 轆轤挽きの作品で、真上に把手がある水注ぎで、大小様々
です。鬼板で亀甲文や、橋文んどの絵付けされています。
c) 徳利類:轆轤挽きによる作品で、当時流行の秋草文や水草文等の植物文が描かれて
います。高さが24.6cm、胴径が18cm以上の大徳利もあります。
d)その他、香炉、香合、燭台、水指、茶入、花生、振出(小さい菓子を入れる菓子器)
などがあります。
以下次回に続きます。