朝鮮から渡来した陶工達は、革新的な二つの技法をもたらします。
一つは以前にお話した(割竹式)登窯の使用です。中世までは窖窯(あながま)が使われていました
が、より効率的な登窯が導入されます。 二つ目は蹴(け、又はけり)轆轤の使用です。
従来の轆轤は手回轆轤といわれる物で、回転盤の端に設けられた複数の小穴に、回し棒を差込手で
回転させる方法で、成形途中で回転力が落ちた時、手を止め棒を握り回転力を与える必要があります
即ち、蹴轆轤ならば、連続して制作が可能で制作能力も格段に上昇する事になり、唐津焼が急速に
普及する原動力になります。
尚、手回轆轤の場合一般に右回転(時計方向回転)で、蹴轆轤の場合には左回転(反時計方向)
で使用されています。
5) 絵唐津に付いて。
李朝の絵付け陶器の影響で、我が国で最初に作られた絵付け陶器と言われています。
最初は李朝風の絵付けでしたが、次第に我が国の絵柄(和風)が採用される様になります。
① 鉄絵のある唐津の陶器を「絵唐津」と呼びます。
絵では無く、文字が描かれた物も「絵唐津」と呼び、鉄砂で刷毛塗りしただけの焼き物も
「絵唐津」と呼ばれます。それ故「無地唐津」と呼ばれる焼き物とまったく同じ焼き物ですが、
違いは絵の有無だけです。
② 「絵唐津」には、素地の違い、釉の違い、絵柄の違いや描き方の違い、焼成方法の違いなど
多くの違いや様式が存在しますが、全て「絵唐津」になります。
③ 絵の具として、含有岩鉄を磨り潰し水に溶いた物で、素焼きしない成形品に、絵筆などで、
絵を描き、土灰釉や長石釉を掛け匣鉢(さや)を使わずに、登窯で焼成します。
釉は透明又は半透明な為、光沢の絵が浮き出てきます。
尚、初期唐津では、施釉後に鉄絵が描かれた物もあります。
④ 土灰釉は透明度が高い為、模様ははっきり現れます。一方長石釉は多少白濁する為、絵が
ぼやけたり、穏やかな感じになります。
・ 酸化焼成の場合:鉄絵は茶色を帯びた発色になり易く、強酸化の場合には、柿色になりす。
釉肌も釉が黄ばむ為、素地の赤土の影響で枇杷(びわ)色に発色します。
・ 還元焼成の場合: 鉄絵の線は黒くなります。釉肌も青味を帯びるのが一般的です。
但し、意図的に絵を茶色にしたり黒くしたする作業は行われなかった様です。即ち結果的に
そう成ったと言う事の様です。
⑤ 鉄絵の図柄(文様)や描写方法。
この方法には、李朝系の模倣と見られる方法と、織部好みの美濃陶を模した物の二通りがあり
ます。
) 李朝系の図柄と描写方法。
朝鮮から渡来した陶工達は、当時李朝で流行していた技法を持ち込みます。
即ち、南朝鮮の窯場では、鶏竜山(けいりゅざん)で代表される刷毛目鉄絵が盛んに作ら
れていました。 その文様や描写方法は、きちんとした構図や筆法は無く、好きな形を好き
勝手に描くと言うすこぶる素朴な方法が取られていました。丸、三角、十字、点などの
抽象的な物から、草花、蔓草(つるくさ)、樹木など身近な自然や、何を描いているのか
不明な物まで、色々描かれています。
注: 鶏竜山の土は黒っぽい為、鉄絵を描くには白化粧する必要が有ったとおもわれます
絵唐津に使われる土は、白っぽい土の為、白化粧の必要はありませんでした。
) 織部風の絵唐津の図柄と描写方法。
a) 美濃陶の織部や志野の焼き物に描かれた絵柄が、絵唐津に使われるます。
瀟洒な構図と巧みな筆法で、橋、網干、松山、春草、菫(スミレ)、菖蒲(あやめ)、
千鳥、干し柿などがテーマで、李朝風とは、全く異なるものでした。
b) 器の形に合わせて、構図の取り方が工夫される様になります。
以下次回に続きます。
一つは以前にお話した(割竹式)登窯の使用です。中世までは窖窯(あながま)が使われていました
が、より効率的な登窯が導入されます。 二つ目は蹴(け、又はけり)轆轤の使用です。
従来の轆轤は手回轆轤といわれる物で、回転盤の端に設けられた複数の小穴に、回し棒を差込手で
回転させる方法で、成形途中で回転力が落ちた時、手を止め棒を握り回転力を与える必要があります
即ち、蹴轆轤ならば、連続して制作が可能で制作能力も格段に上昇する事になり、唐津焼が急速に
普及する原動力になります。
尚、手回轆轤の場合一般に右回転(時計方向回転)で、蹴轆轤の場合には左回転(反時計方向)
で使用されています。
5) 絵唐津に付いて。
李朝の絵付け陶器の影響で、我が国で最初に作られた絵付け陶器と言われています。
最初は李朝風の絵付けでしたが、次第に我が国の絵柄(和風)が採用される様になります。
① 鉄絵のある唐津の陶器を「絵唐津」と呼びます。
絵では無く、文字が描かれた物も「絵唐津」と呼び、鉄砂で刷毛塗りしただけの焼き物も
「絵唐津」と呼ばれます。それ故「無地唐津」と呼ばれる焼き物とまったく同じ焼き物ですが、
違いは絵の有無だけです。
② 「絵唐津」には、素地の違い、釉の違い、絵柄の違いや描き方の違い、焼成方法の違いなど
多くの違いや様式が存在しますが、全て「絵唐津」になります。
③ 絵の具として、含有岩鉄を磨り潰し水に溶いた物で、素焼きしない成形品に、絵筆などで、
絵を描き、土灰釉や長石釉を掛け匣鉢(さや)を使わずに、登窯で焼成します。
釉は透明又は半透明な為、光沢の絵が浮き出てきます。
尚、初期唐津では、施釉後に鉄絵が描かれた物もあります。
④ 土灰釉は透明度が高い為、模様ははっきり現れます。一方長石釉は多少白濁する為、絵が
ぼやけたり、穏やかな感じになります。
・ 酸化焼成の場合:鉄絵は茶色を帯びた発色になり易く、強酸化の場合には、柿色になりす。
釉肌も釉が黄ばむ為、素地の赤土の影響で枇杷(びわ)色に発色します。
・ 還元焼成の場合: 鉄絵の線は黒くなります。釉肌も青味を帯びるのが一般的です。
但し、意図的に絵を茶色にしたり黒くしたする作業は行われなかった様です。即ち結果的に
そう成ったと言う事の様です。
⑤ 鉄絵の図柄(文様)や描写方法。
この方法には、李朝系の模倣と見られる方法と、織部好みの美濃陶を模した物の二通りがあり
ます。
) 李朝系の図柄と描写方法。
朝鮮から渡来した陶工達は、当時李朝で流行していた技法を持ち込みます。
即ち、南朝鮮の窯場では、鶏竜山(けいりゅざん)で代表される刷毛目鉄絵が盛んに作ら
れていました。 その文様や描写方法は、きちんとした構図や筆法は無く、好きな形を好き
勝手に描くと言うすこぶる素朴な方法が取られていました。丸、三角、十字、点などの
抽象的な物から、草花、蔓草(つるくさ)、樹木など身近な自然や、何を描いているのか
不明な物まで、色々描かれています。
注: 鶏竜山の土は黒っぽい為、鉄絵を描くには白化粧する必要が有ったとおもわれます
絵唐津に使われる土は、白っぽい土の為、白化粧の必要はありませんでした。
) 織部風の絵唐津の図柄と描写方法。
a) 美濃陶の織部や志野の焼き物に描かれた絵柄が、絵唐津に使われるます。
瀟洒な構図と巧みな筆法で、橋、網干、松山、春草、菫(スミレ)、菖蒲(あやめ)、
千鳥、干し柿などがテーマで、李朝風とは、全く異なるものでした。
b) 器の形に合わせて、構図の取り方が工夫される様になります。
以下次回に続きます。