三崎亜記さんの'11年作品『海に沈んだ町』を読みました。9つの短編が収められている本です。
『遊園地の幽霊』では、幼い自分が動かない遊園地の遊具に乗っている夢を再三見るようになった私が、地元の医師を訪ねると、それは以前にあった遊園地の幽霊の仕業だと告げられます。やがて夢の中でいつも近くにいる少年が成長した青年に現実の中で会った私が、夢の中でも彼と親しくなっていくという話。
『海に沈んだ町』は、ある日住民とともに海に沈んだ生まれ故郷の町を、20年ぶりに妻と私が訪ねるという話。
『団地船』では、たまたま接岸しているのに私が出会った老朽化した団地船が、私が小学生の頃同級生だった女の子が引っ越していった先のものであることに気付き、彼女が住んでいた部屋を訪ね、彼女から最後にもらった未開封の手紙を読み、彼女がその手紙を書いた直後、後に沈没する団地船に引越していったことを知るという話。
『四時八分』は、5年前から午前4時8分のまま時間が止まってしまっている町を、その時にたまたま受験勉強で起きていた女子中学生を案内人として、旅する私が通り過ぎる話。
『彼の影』では、夏至の日に始まった影の反乱が、やがて私にも影響を及ぼすようになりますが、私の場合は他の人と違って、自分の影がいつの間にか誰とも知らぬ男性の影と入れ替わってしまいます。その男性の影と過ごすうちに、私は影の「主人」である男性に気持ちが引かれるようになりますが、影の反乱の最終日である冬至の日、私は結局その男性に会えぬまま、自分の影と再会するという話。
『ペア』は、10年の間、何も生み出すことができなかったペアを解消することを決心した私が、相手に手紙を書きますが、相手は何も生み出さなかったことが、かえって無限の可能性を秘めているのだと言って、これからもペアの相手は私しか考えられないと言い、私をこれ以上ないほど励ましてくれますが、やがて私はその手紙の筆跡が以前にもらった手紙のそれと違うことに気付くという話。
『橋』は、主婦である私がある日、市役所の委託で来たという女性から、私の住む住宅地と一般道を唯一結ぶ橋が予定よりも通行量が少ないので、人一人渡るのが精一杯の木橋に架け替えられると説明され、当然私は反論しますが、今の幸福が明日にも続くと決まっているわけではないと逆に諭され、その後、周囲の人々に対しても、私がその女性と同じような見方をするようになっていくという話。
『巣箱』は、棲みつかれたものが1つでもあると異常発生するようになると言われている巣箱が町に蔓延するようになり、その棲みつかれた巣箱というのが実は、私と妻が住んでいる家だったという話。
『ニュータウン』では、唯一残ったニュータウンの文化を守るために、鉄条網で世間から隔絶されたニュータウンの監視員として働く私が、そこの一番若い女性の住人と子供をもうけますが、その5才になる娘がある日私の同僚に発見されてしまいます。当局に知られれば抹殺されかねない娘を守るため、もう一人の同僚がわざと現代の歌を住人たちに教え、その文化汚染を知った当局は、ニュータウンを閉鎖し、結果として私と妻と娘は平和に暮らすことができるようになったという話です。
前作『コロヨシ!!』を読んだ時のガッカリ感をすっかり流し去ってくれるほどの、素晴らしい短編の数々を十分に堪能しました。やはり三崎さんに「廃墟」化した記憶を書かせると、無敵といった感じです。次の短編の予告が一つ前の短編にさりげなくなされているという工夫もあり、楽しく読ませていただきました。次回作が今から楽しみです。
→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/)
『遊園地の幽霊』では、幼い自分が動かない遊園地の遊具に乗っている夢を再三見るようになった私が、地元の医師を訪ねると、それは以前にあった遊園地の幽霊の仕業だと告げられます。やがて夢の中でいつも近くにいる少年が成長した青年に現実の中で会った私が、夢の中でも彼と親しくなっていくという話。
『海に沈んだ町』は、ある日住民とともに海に沈んだ生まれ故郷の町を、20年ぶりに妻と私が訪ねるという話。
『団地船』では、たまたま接岸しているのに私が出会った老朽化した団地船が、私が小学生の頃同級生だった女の子が引っ越していった先のものであることに気付き、彼女が住んでいた部屋を訪ね、彼女から最後にもらった未開封の手紙を読み、彼女がその手紙を書いた直後、後に沈没する団地船に引越していったことを知るという話。
『四時八分』は、5年前から午前4時8分のまま時間が止まってしまっている町を、その時にたまたま受験勉強で起きていた女子中学生を案内人として、旅する私が通り過ぎる話。
『彼の影』では、夏至の日に始まった影の反乱が、やがて私にも影響を及ぼすようになりますが、私の場合は他の人と違って、自分の影がいつの間にか誰とも知らぬ男性の影と入れ替わってしまいます。その男性の影と過ごすうちに、私は影の「主人」である男性に気持ちが引かれるようになりますが、影の反乱の最終日である冬至の日、私は結局その男性に会えぬまま、自分の影と再会するという話。
『ペア』は、10年の間、何も生み出すことができなかったペアを解消することを決心した私が、相手に手紙を書きますが、相手は何も生み出さなかったことが、かえって無限の可能性を秘めているのだと言って、これからもペアの相手は私しか考えられないと言い、私をこれ以上ないほど励ましてくれますが、やがて私はその手紙の筆跡が以前にもらった手紙のそれと違うことに気付くという話。
『橋』は、主婦である私がある日、市役所の委託で来たという女性から、私の住む住宅地と一般道を唯一結ぶ橋が予定よりも通行量が少ないので、人一人渡るのが精一杯の木橋に架け替えられると説明され、当然私は反論しますが、今の幸福が明日にも続くと決まっているわけではないと逆に諭され、その後、周囲の人々に対しても、私がその女性と同じような見方をするようになっていくという話。
『巣箱』は、棲みつかれたものが1つでもあると異常発生するようになると言われている巣箱が町に蔓延するようになり、その棲みつかれた巣箱というのが実は、私と妻が住んでいる家だったという話。
『ニュータウン』では、唯一残ったニュータウンの文化を守るために、鉄条網で世間から隔絶されたニュータウンの監視員として働く私が、そこの一番若い女性の住人と子供をもうけますが、その5才になる娘がある日私の同僚に発見されてしまいます。当局に知られれば抹殺されかねない娘を守るため、もう一人の同僚がわざと現代の歌を住人たちに教え、その文化汚染を知った当局は、ニュータウンを閉鎖し、結果として私と妻と娘は平和に暮らすことができるようになったという話です。
前作『コロヨシ!!』を読んだ時のガッカリ感をすっかり流し去ってくれるほどの、素晴らしい短編の数々を十分に堪能しました。やはり三崎さんに「廃墟」化した記憶を書かせると、無敵といった感じです。次の短編の予告が一つ前の短編にさりげなくなされているという工夫もあり、楽しく読ませていただきました。次回作が今から楽しみです。
→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/)