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高野秀行『またやぶけの夕焼け』

2012-08-01 08:53:00 | ノンジャンル
 高野秀行さんの初の小説である'12年作品『またやぶけの夕焼け』を読みました。
 小4になったばかりの僕・阪野ヒデユキは、通っている八王子市立第六小学校では少数派の又木の住人です。いつものように弟のユーリンと同級生のシゲオと発見した「またやぶけ」の土管(わざと足をすべらせると、半ズボンの股が破けるので)に行くと、そこは多数派の子安の上級生に占領されていました。そこへ又木の五年生で「すごく変なやつ」として知られるカッチャンが弟のミンミンと現れ、土管の先を探検しようと言い出します。途中でエロ本を見つけたり、沼を渡ったりして、僕らは源流に行き着きます。それ以降、僕らはカッチャン軍団を結成するのでした。
 六月に僕らは、以前ストライキの時に横浜線の鉄橋を渡り、警官に捕まったことから、鉄橋に復讐することにします。犬釘を拾い、それをトンカチで鉄橋のレンガに叩き付ける僕たち。レンガの表面に穴を開け、復讐を遂げた僕らでしたが、そこに現れた警官から身を隠すため、線路の下に移動したところ、その上を通過する列車の轟音に肝を冷やします。
 夏休みもせまったある日曜日には、僕は転校してきたばかりのマサトを誘い、夜明け前に家を出発して、仲間の中でのランキングを決めるノコギリクワガタを採りに行き、見事にゲットします。
 両親が留守をした日には、軍団は魚採りに出かけますが、魚採りがうまいシゲオにユーリンが付いていってしまい、夕方になっても戻ってきませんでした。ようやく戻ってきたユーリンは、シゲオに魚の採り方を習ったと言って、得意気です。
 僕の家の裏の空地は野球場として使われていましたが、ある日、試合にボロ負けした軍団は、カンチャンの指導の元、千本ノックを受けることになります。カンチャンの打った球は見事僕の家のガラスを割りますが、それがきっかけで、野球場には僕らの親たちが作ったフェンスが備え付けられます。
 夏休みが終わった頃、学校では「不思議な話」が流行し、僕も京王線のガード下で幽霊を見た気になります。学校で話すと、誰も信用してくれませんでしたが、幼馴染みの長谷川真理が味方になってくれました。
 文化祭が終わった頃、カッチャンは僕だけを秘密基地に案内してくれ、そこで少女マンガに出会い、結婚に憧れるようになります。僕は秘かに長谷川との結婚を夢想しますが、カッチャンの必殺技を受けても、決してそれを口にしようとはしません。
 11月の早朝、僕は犬の散歩をしていて、ゴルフの練習場でゴルフボールを発見します。「プロゴルファー猿」に夢中だった僕らは、それ以降、ゴルフに夢中になります。
 12月30日、恒例の親戚同士の餅搗きが行われ、僕は犬のボニーを連れていくことにしますが、遊びに夢中になっている間に、ボニーは行方不明になってしまいます。運良くボニーは見つかりますが、ハトコのセッちゃんは駆落ちをした兄は帰ってこないとポツリと言います。
 冬、カッチャンの発案でカマドで焚き火をしているうちに、鉛が解けることを発見し、やがて僕は鉛で地底戦車を作り、それを氷に置いて、自動的に沈んでいく様子を見て、皆で楽しみます。
 春休みになり、僕らは城跡で偶然縄文式土器を見つけます。そして土器を自分たちで作ることに挑戦し、できた土器にゴルフボールを落とすと、追い求めていたゴルフカップの音がするのでした。
 カッチャンが六年生になったある日、遊びに行くと、そこにはカッチャンの同級生がいて、僕らとは遊ばないと言われます。僕らは新たなゴルフコースを探し出し、そこでドラコンをやってカッチャンが負けたら軍団は解散しないと決めますが、僕はOBを叩いてしまい、ドラコンに負けてしまうのでした。

 主人公・阪野ヒデユキは著者・高野秀行さんその人であり、おそらく著者の小学生時代の思い出を綴った小説なのでしょう。「ぐっちゃん、ぐっちゃんという水入りズックの音」とか「靴のつま先をとんとんと地面にぶつけて履く」とか「稲の切り株を靴でへしゃ、へしゃとつぶす」とか細部にリアリティが感じられました。

→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/