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ハワード・ホークス監督『男性の好きなスポーツ』

2020-07-27 18:56:00 | ノンジャンル
 DVDで、ハワード・ホークス監督・製作の1964年作品『男性の好きなスポーツ』を観ました。山田宏一さんの『ハワード・ホークス映画読本』から文章を転載させていただくと、

 ハワード・ホークスの映画の女たちはまるで犯罪のように、あるいは事故のように、突発的だ。あるいはむしろ、火災のように思わぬ時にやってきて猛威をふるい、手がつけられなくなる。ピラミッドのなかに永久に閉じ込められたジョーン・コリンズをのぞけば、ホークス映画の女たちはみな、『赤ちゃん教育』(1938)の動物園(だったかサーカスだったか)の檻から逃げだした豹のように野放しにされたままの野獣といった感じだ。(中略)『男性の好きなスポーツ』(1964)のポーラ・プレンティスに至っては男(ロック・ハドソン)の婚約を当然のように事も無げにぶちこわしてしまうのだ。
『男性の好きなスポーツ』のロック・ハドソンの部屋に婚約者のシャーレン・ホルトがやってくる。そこへ、奥の寝室から、パジャマの上着のほうだけを甚兵衛風に羽織ったポーラ・プレンティスがねぼけまなこで出てくる。そして、おどろきもせずに、ごく自然な口調で、「あら、おはよう」などと言うのだ。これにはもちろん深い“わけ”があるのだが(なにしろ彼女はその前日の夜、眠り薬を飲んでそのまま眠ってしまったのだ!)、そんな事情を説明してロック・ハドソンがくどくど弁解したところで、婚約者のシャーレン・ホルトとしては納得できるわけがない。ついに、婚約解消である。ロック・ハドソンは髪の毛をかきむしって叫ぶ。「これは何かの間違いだ! 悪夢だ! 災難だ!」。
 そんな犯罪的なまでに破壊的な女たちがいかに美しく魅力的かということ(といっても、美しい女なら何をやってもいいというような、いわゆる女に甘い男の思いあがった妄言ではもちろんなく、まさに女が攻撃的、破壊的なるがゆえに美しくなるのだということ)を見せてくれるところが、ハワード・ホークスの映画ならではのおもしろさであり、新しさだ。
 ホークスの映画ほど単純明快な映画はないだろう。男のヒロイズムを讃えたアクション映画とその裏返しにすぎない男の幼児性をあばいたコメディーがホークス映画のすべてと言ってもいいくらいなのである。あるいはむしろ、コメディーのほうが中心で、アクション映画はその裏返しにすぎないのかもしれない。ホークスのデビュー作の一本と言っていいホークス自身のオリジナル・ストーリーによる『無花果の葉』(1926)がアダムとイヴすなわち世界最初の男と女を主人公にした「セックス・コメディー」あるいは女性と男性の戦争(ウォー)を描くという意味での「セックス・ウォー・コメディー」であったことを思いだすことにしよう。(中略)
『男性の好きなスポーツ』は釣りの名人として釣りに関するハウ・ツーもののベストセラーの作者であるありながらじつは一度も釣りの経験がないというロック・ハドソンが、ポーラ・プレンティスという“男釣り”の名手に逆に見事に釣られてしまうというコメディーだ。『赤ちゃん教育』のペットと間違えられた豹や『モンキー・ビジネス』の人間に代わって若返りのクスリを発明してしまうチンパンジーのように、この映画では熊がすまして自転車に乗って走り去ったり、釣りの名人気取りで竿で川魚を釣ったりして大活躍。ロック・ハドソンが奔放な美女たち(ポーラ・プレンティスとマリア・バーシー)にひどい目に遭うのである。(後略)

 ロック・ハドソンがこれでもかというほど虐められるのが軽快に描かれ、気軽に楽しめる映画でした。

 →サイト「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto