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豊島ミホ『檸檬のころ』

2007-04-27 16:44:28 | ノンジャンル
 今日紹介する豊島ミホ作品は、彼女の第4作目「檸檬のころ」です。私は豊島ミホさんの作品の中では、この作品が一番好きです。
 この小説は、ある高校の様々なエピソードが綴られています。当然、共通した登場人物も出て来ます。どれも珠玉の短編です。では、第一話から。
「タンポポのわたげみたいだね」では、サトはは初めて高校で出来た友人で、うちの中学から私しか進学しなかった高校へ向かう電車の中で、胸のバッジを見て「クラスメイトだ~」と声をかけてくれてから、親友になった。サトは人気者で、かわいいものをたくさん身に付け、話題も豊富だった。が、サトは2年になって授業に出なくなってしまう。その理由を、私は分からない。遅刻が多くなり、私と一緒に登校しても保健室に行くようになった。ある日、藤山と名乗る男子から一緒に通学しよう、と誘われ「小島智なんか、ほっとこうよ。」と言う。私はその誘いに乗ってしまうが、第一日目、私の隣に藤山くんが座っているのを見て、サトは、藤山は中学の時、男の子をパシリに使い、女の子を喰ったという。私は「やっぱり一緒に通うのやめようね」と笑顔で言うと、藤山は逃げて行き、その席にサトが座った。「こんな友達でごめんね」とサトは言う、という話。
「金子商店の夏」では、五回司法試験に落ちている俺は、未だに予備校に通い、他の生徒から痛がられている。電話で母が「おじいちゃんが死にそう」だからすぐに帰って来い、と言う。俺の実家の金子商店に帰ってみると、じいちゃんはピンピンしていた。「俺はこの店を継がないぞ」と宣言する。この店はひいじいちゃんが隣の高校の生徒たちのために作った店だった。店に今は体育教師となった高校の同級の大田が来て「この店、やっぱいいなあ。お前もじいさんになるまで続けてくれよ?」と言う。じいさんに言われて水まきをしていた俺は、軒先に風鈴を吊るそうと思い、俺の手もじいさんの手みたいになるのだろうか、と思うのだった、という話。
「ルパンとレモン」では、野球部3年の俺に吹奏楽部の指揮者の秋元が「ねえ、西はテーマ曲何がいい?」と聞いて来る。「別に何でもいいよ」と答えると「ほんとに?じゃあ『ルパン』にするね」と言われる。予選でバッターボックスに立った時、、かっこいい曲じゃん、と思った。しばらくして秋元が「うちの学校から北校受けるの、私と西だけなんだって。一緒に勉強しない?」と言われ、そうすることにする。2人とも北校に受かり、二人とも中学と同じ部活に入った。そして高3の夏。練習後、うちのエースのサル顔の佐々木と俺は金子商店でコーラを飲んでいた。彼は明るく、チームのムードメーカーだった。俺と秋元は高校に入ってだんだん疎遠になり、今は遠い存在だ。佐々木は、好きな秋元に会いに行き、彼女を見つけると「加~代子ちゅわ~ん」と呼ぶ。秋元は嬉しそうに「佐々木くん」と返事するのを俺は嫉妬する。秋元はきれいで、リップクリームのレモンの香りがした。ある日秋元が部室にやってきてテーマ曲を決めてほしい、と言う。佐々木はしゃしゃり出て、中学の時の「ルパン」だったから「ルパン」がいい、と言う。秋元は俺を見て唇をかんだ。帰りの電車は秋元と一緒になった。秋元は「西のこと、好きだったよ」と言う。電車を降りる際、秋元は「もう使わないから」とリップクリームをくれる。佐々木と俺はキャッチボールをしながらベスト32に残ったら、佐々木が秋元に告ることにする。俺は秋元のためにホームランを打ち、秋元が指揮するファンファーレが聞こえて来る。
「ジュリエット・スター」では、私の家は高校生向けの下宿をしている。私は24才。家の手伝いをしながら本屋でバイトもしている。うちは下宿内恋愛禁止だが、このルールに挑戦する子が入って来た。珠紀だ。3年の林君が入って来てから彼をよく見つめるようになる。「おはよう」をいう仲になり、外で二人で会うようになっていた。状態が改善されなければ、珠紀に下宿を出てもらくことにする。母は私に珠紀の説得役を押し付ける。下校時の林くんを捕まえて、珠紀との交際を止めてくれるよう頼むが「俺は珠紀ちゃんのこと好きだもん」と一蹴される。久しぶりに彼の家に泊まり、朝帰ると、会った珠紀に朝帰りをからかわれ「今日寄り道しないで帰ってくんない?話があるから」と言うと、彼女はニヤリと笑った。珠紀の部屋で話し合うが、完全に彼女のペースにはまってしまい、ローソクを灯し合って勉強していた話では、彼女のことを可愛いと思ってしまい、とりあえず別れるつもりのないことを確認する。。珠紀は下宿を出ることになった。トラックの荷台に乗った珠紀の視線を追うと、林くんの部屋にともるローソクの灯が見える。トラックが出発すると私は「珠紀ーィ!」と叫んで駆け出していた。「たまには遊びに来ても、いいからねーっ!」トラックはしばらく走ると止まってしまう。そこはおばあちゃんが一人でやっている下宿の前だった。脱力。こらえきれずに笑う息がこぼれるのだった。
「ラブソング」では、今の私は音楽があれば何もいらない。勉強をしつつ、時間を見つけて音楽も聞くし、感じたことを文章にしてもみる。廊下でしゃがんでMDを聞いていた私は、やはりMDを聞いている辻本くんに見つめられる。音楽に身をゆだねている彼を見て、この人は音楽を知っている、と直感する。ホームルームの時間、野球部のエースからもらった手紙を読む吹奏楽部の加代子さんの姿を見て、彼女から発散されている息が詰まるような唯一無二のラブソングに胸をかきむしられる。掃除当番で生物教室に行くと、辻本くんが現れ掃除を始める。辻本くんは「聴いちゃった。昨日のラジオ」といきなり話しかけて来る。昨日のラジオで私が書いたハガキが読まれ、うちの学校のバンドは下手ばっかり、と書いたのだが、そのバンドの一つに入っていた辻本くんは「昨年は確かに最低だった。でも今年は‥‥。あっ、俺しゃべりすぎ?」と笑うと、私は「いや全然」と言うのが精一杯で、ギターのうなる音がし、やがてそれは音楽になる。私は大急ぎで保健室にいるいとこの志摩ちゃんに会いに行き、「私ヘンだよぉ」と助けを求めた。翌日の掃除タイムに私と辻本くんは音楽話で盛り上がった。すごい! 世界ってこんなにも熱いものだったんだ、と私は全速力で自転車をこいで家に帰った。久しぶりに志摩ちゃんと話したくて保健室に行くと、志摩ちゃんの文が雑誌に載ったことで盛り上がっていた。私はショックを受けるが、懸命に祝福する。私は保健室を飛び出した。雑誌を買って志摩ちゃんのレビューを繰り返し読み、今までの私の文は比べものにならないほどぶざまで分かりにくく、泣きたくなった。翌日、落ち込んでる私に辻本くんは歌詞をかいてくれない、と言って来る。とりあえず1週間で書く、と約束してしまう。月曜の朝、辻本くんは気晴らしに高いところに行こうと言って、放課後、城址公園に行った。そこで私は辻本くんの友人であり、恋愛の対象ではないことを知る。彼と別れて一人で泣きたかったので、志摩ちゃんちで夕食を食べることにすると、志摩ちゃんに「辻本先輩の彼女のこと、知ってました」と謝られる。その帰り道、突然詞が頭に浮かぶ。次の日、楽譜に書き込んだ詞を辻本くんのに渡し、学祭のやきそば屋のBGM作りを始めると、だんだん楽しくなってきて、私はやっぱり音楽が好きなんだ、と思う。学祭当日。私は教室のスミでBGMを流していると、加代子さんが走って来て「白田さん、あの曲、あれって白田さんの作詞なんだってね。あの詞、すっごい。すっごい良かった!」と言い、林くんが来て「辻本、言ってたよ。白田さん、貴重な友達だから、なくしたくないって」と言う。そこへ辻本くんが現れ、私はライブの様子を聞いてしまう。辻本くんと話したら嬉しくて、私はライターになりたいんだあ、とか語り出しそうになってしまった、という話。
「担任稼業」では、受験校に関する面接。27人目の子は説得して志望校を変更させる。次の子は志望大学以前に問題のある子だ。端で見えるほど高校教師は楽じゃない。進学校では生徒との関係を築きにくいので、こっちも割り切って「進学のために存在する教師」を演じることになる。次の生徒は小嶋智。彼女は保健室にいることが多く、卒業に100コマ以上足りない。教室内の話し相手は一年から一緒の橘ゆみ子だけだ。「このままだと卒業無理だから」と言うと「‥‥卒業できるとは思ってません。大検とか、週力とか、卒業できなくても何かしらありますし」と小嶋は暗く、鋭い目で言う。俺は何も言えず、面接はお開きとなった。再度、小嶋を訪ねると俺は小嶋に説教を始めてしまい、「自分を過大評価してるんだよ。いい加減悟れ」と言ってしまう。「先生、全然分かってない!」と言って彼女は走り去っていった。残された文庫本「桜の森の満開の下」は、俺も数学の授業中に読んでいた本だった。俺も「先生は何も分かってない」と思っていたのだ。そして、1週間後、小嶋は授業に出るようになった。2月に補習を組めば、ギリギリ卒業できそうだ。小嶋にそれを言うと「それ、やります」と言う。文庫本を返すと「貸しましょうか? 先生こういうの読んだことないでしょう」と言う。生徒というのは何もわかっちゃないんだ、という話。
「雪の降る町、春に散る花」では、野球部のエース・佐々木くんと付き合い始めたのは2年の夏だった。サルというあだ名の彼は、他人を笑わせるのが上手で、私は正反対。私は彼を見ていたくて一緒にいた。でも3年の秋になり、東京の私立を受けるつもりだった私に、彼は東京の学校、首都圏の公立も難しく、私立は財政的に無理だった。東京と佐々木くんなら、私は東京を選ぶ。佐々木くんはそのことを分かっていて、私は悲しくて泣いた。いずれ離れなければいけない、という事実は、佐々木くんから笑顔を奪った。私は一足先に第一志望に受かり、彼から受験の合否を一緒に聞いてほしい、と電話がかかってくる。約束の電話ボックスに行くと「おめでとう」と言われ「落ちてたら、キスしてくれる?」と言う。私は不合格の電話で方針状態の彼の唇にキスをする。彼は後期の国立の受験が終わったら、私の上京の日までいっぱい遊ぼう、と言って、早々と帰る。佐々木くんから「受験終わったから遊ぼう」と電話があり、それからは佐々木くんと毎日のように自転車の二人乗りをして遊んだ。兄の部屋に行き、上京する電車のホームで佐々木くんと最後に会う。お互いいい言葉が見つからない。私は動きだした電車の中から「終わらなきゃいいと思った! 一緒にまだいられたらいいのにって、ほんとにほんとに思った」と私は叫んだ、という話。

 ちょっとあらすじ紹介が長くなってしまいました。これでも相当削ったんですけど‥‥。きちんとしたあらすじは「Favorite Novels」の「豊島ミホ」のところに載ってますので、そちらをご覧ください。豊島ミホさんの作品を読んだことがない方、オススメです。

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