今日紹介する豊島ミホ作品は5作目の「陽の子雨の子」です。下のあらすじですが、語り手が少年と青年と交互に替わるので、その点気を付けて読んで下さい。
僕・夕陽は14で、私立の男子中学に通い、入学してすぐ松田という親友もでき、不幸ではない。ただ、雨の日が怖い。灰色の無数の点が見えて、それが何か暗いものを運んで来る気がする。今日は日直だったので日誌を書いて担任の先生に届けると、先生の大学時代の同級生・雪枝さんがいて、メルアドを交換し、別れる。
15才の俺・聡は家出し、雨でぐっしょり濡れてるところを20才の雪枝に救われる。雪絵は資産家で、たまに派遣の仕事をするぐらいで、ほとんど働かない。しばらくしてお互いの初体験を済ませてから、捜索願が出されている俺は外出できずに、雪絵と本が俺の生活のすべてとなる。4年がたち、雪枝から「大人になりすぎた」と言われ、夕陽が来る日、俺は後ろ手に縛られ、押し入れの中に詰め込まされる。
僕と松田が塾で話していると、ファミレスで期末の勉強をみてあげるという雪枝さんからのメールが来る。ジョナサンで期末の勉強をみてもらっている最中、僕は欲情してしまい、それを彼女に告白すると、彼女は「今日は勉強しよう。で来週はウチに来な?」と言う。
訪ねて来た男の若い声に俺は驚いた。中坊か? 少年は「いい加減な気持ちでもいいんですか?」と言い、雪枝は俺を押し入れから引き出して「いい加減でもいいよ」と言う。俺は怒鳴るが、雪枝は「この人には飽きたから、この人をオモチャにして遊ぼう」と少年に言う。少年は「灰色の点が、この家にたくさん見える。怖い」と言って、帰ってしまう。
僕は平和なファミリーに恵まれていると実感するが、気持ちは雪枝さんの世界の方へ向かってしまう。塾に行くと松田が新しいガールフレンドの祐子ちゃんを紹介する。祐子ちゃんといつも一緒の清水は放送部の合宿中らしい。次に雪枝さんの家を訪ねると、今度は聡と雪枝さんの性行為を覗く役をやらされる。
俺は雪枝との行為が終わると、隣部屋に夕陽がいるのに気が付く。夕陽は雪枝が短歌を詠むからおかしくなったんだ、と言う。
小6の時、詩の暗唱を清水がやると、クラス中が静かになった。僕は「意思」をいう魔法だ、と思い、後で清水にそれを言うと、彼女は恥ずかしがる。「聡が出ていっちゃったよ。台風怖いから来て?」という雪枝さんのメールを見て、彼女の家に向かう。雪枝さんは生まれてしばらくしてこの家に移ったのだが、その際にかなしー話があって、言いたくてしょうがない、と言う。そして「聡が戻ってこなかったら、あたしはほんとにダメになる」と泣く。
俺は朝起きて、昨日の夜のケンカの続きをし、雪枝に普段言わないような言葉もぶつけ、雪枝に「出てけ」と言われる。お金を借り、単なる腹いせのつもりで、台風の中を出て行く。市街地の方へ歩いていき、誰かに気付かれるんじゃないか、とビクビクする。
雪枝さんは自分の過去の話を始めた。母は精神病で、父は母に愛想をつかし離婚。10才年下の女性と再婚。その人は自己犠牲に酔っている申し分ない「母親」だった。雪枝さんは産みの母親を見舞い続ける一方、息抜きに会いに行っていたのが今住んでいるこの家の住人だったおばあちゃんだった。彼女が高1の制服を見せに行った時、台所で脳卒中を起こし死んでいた。それを追うように産みの母も死んでしまう。そして祖母の遺言により遺産のすべてをもらった彼女は、大学入学時に一人でここへ越して来た、という。
俺が雪枝の家に帰ると、入れ違いに夕陽が帰り「大人の事情で腹一杯になったので、もう来ないと思います。」と言う。雪枝が戻り「私がじたばたするのに今後も付き合って」と言う。
僕はサトシが帰って来た時、部屋の中の灰色の点が風に飛ばされて行ったのを見た。図書館で会った松田は外デートをしたこともないのに、祐子ちゃんと夜景を見るプランを妄想していた。清水さんも誘って4人で海へ行こうという松田は誘いのメールを祐子ちゃんに送る。海には祐子ちゃんがカゼをひいて来れなくなったので、僕と清水だけで行くことになる。僕はりんごの詩を清水に暗唱してもらい、彼女の声に当時と変わらない強さとしなやかさが宿っていて、僕は泣きそうになる。
雪枝は今までに書いた短歌を整理していると、夕陽からの手紙が届いていて、清水という好きな子がいて、その子をなるべく悲しませないようにしたい、さようなら、と書いてあった。俺たちは晴れた日、水族館に行った。子どものように楽しんで、記憶の中の家族写真に今の光景がゆっくり重なっていく。満面の笑みの雪枝を撮ったアナログカメラのシャッター音が耳に残った。
長々と書いてしまいましたが、結論から言うとあまり面白い小説ではありませんでした。魅力的なキャラクターも出てこないし、話もどうってことない話です。家族を主題にした話ですが、夕陽は普通のしあわせ家族、著者らしさが出ていたのは、夕陽と松田と清水がからむ場面で、ここを広げて短編にしちゃった方がずっと面白くてさわやかな小説になったと思いました。もしかしたら豊島さん、長編向いて無いかも?
僕・夕陽は14で、私立の男子中学に通い、入学してすぐ松田という親友もでき、不幸ではない。ただ、雨の日が怖い。灰色の無数の点が見えて、それが何か暗いものを運んで来る気がする。今日は日直だったので日誌を書いて担任の先生に届けると、先生の大学時代の同級生・雪枝さんがいて、メルアドを交換し、別れる。
15才の俺・聡は家出し、雨でぐっしょり濡れてるところを20才の雪枝に救われる。雪絵は資産家で、たまに派遣の仕事をするぐらいで、ほとんど働かない。しばらくしてお互いの初体験を済ませてから、捜索願が出されている俺は外出できずに、雪絵と本が俺の生活のすべてとなる。4年がたち、雪枝から「大人になりすぎた」と言われ、夕陽が来る日、俺は後ろ手に縛られ、押し入れの中に詰め込まされる。
僕と松田が塾で話していると、ファミレスで期末の勉強をみてあげるという雪枝さんからのメールが来る。ジョナサンで期末の勉強をみてもらっている最中、僕は欲情してしまい、それを彼女に告白すると、彼女は「今日は勉強しよう。で来週はウチに来な?」と言う。
訪ねて来た男の若い声に俺は驚いた。中坊か? 少年は「いい加減な気持ちでもいいんですか?」と言い、雪枝は俺を押し入れから引き出して「いい加減でもいいよ」と言う。俺は怒鳴るが、雪枝は「この人には飽きたから、この人をオモチャにして遊ぼう」と少年に言う。少年は「灰色の点が、この家にたくさん見える。怖い」と言って、帰ってしまう。
僕は平和なファミリーに恵まれていると実感するが、気持ちは雪枝さんの世界の方へ向かってしまう。塾に行くと松田が新しいガールフレンドの祐子ちゃんを紹介する。祐子ちゃんといつも一緒の清水は放送部の合宿中らしい。次に雪枝さんの家を訪ねると、今度は聡と雪枝さんの性行為を覗く役をやらされる。
俺は雪枝との行為が終わると、隣部屋に夕陽がいるのに気が付く。夕陽は雪枝が短歌を詠むからおかしくなったんだ、と言う。
小6の時、詩の暗唱を清水がやると、クラス中が静かになった。僕は「意思」をいう魔法だ、と思い、後で清水にそれを言うと、彼女は恥ずかしがる。「聡が出ていっちゃったよ。台風怖いから来て?」という雪枝さんのメールを見て、彼女の家に向かう。雪枝さんは生まれてしばらくしてこの家に移ったのだが、その際にかなしー話があって、言いたくてしょうがない、と言う。そして「聡が戻ってこなかったら、あたしはほんとにダメになる」と泣く。
俺は朝起きて、昨日の夜のケンカの続きをし、雪枝に普段言わないような言葉もぶつけ、雪枝に「出てけ」と言われる。お金を借り、単なる腹いせのつもりで、台風の中を出て行く。市街地の方へ歩いていき、誰かに気付かれるんじゃないか、とビクビクする。
雪枝さんは自分の過去の話を始めた。母は精神病で、父は母に愛想をつかし離婚。10才年下の女性と再婚。その人は自己犠牲に酔っている申し分ない「母親」だった。雪枝さんは産みの母親を見舞い続ける一方、息抜きに会いに行っていたのが今住んでいるこの家の住人だったおばあちゃんだった。彼女が高1の制服を見せに行った時、台所で脳卒中を起こし死んでいた。それを追うように産みの母も死んでしまう。そして祖母の遺言により遺産のすべてをもらった彼女は、大学入学時に一人でここへ越して来た、という。
俺が雪枝の家に帰ると、入れ違いに夕陽が帰り「大人の事情で腹一杯になったので、もう来ないと思います。」と言う。雪枝が戻り「私がじたばたするのに今後も付き合って」と言う。
僕はサトシが帰って来た時、部屋の中の灰色の点が風に飛ばされて行ったのを見た。図書館で会った松田は外デートをしたこともないのに、祐子ちゃんと夜景を見るプランを妄想していた。清水さんも誘って4人で海へ行こうという松田は誘いのメールを祐子ちゃんに送る。海には祐子ちゃんがカゼをひいて来れなくなったので、僕と清水だけで行くことになる。僕はりんごの詩を清水に暗唱してもらい、彼女の声に当時と変わらない強さとしなやかさが宿っていて、僕は泣きそうになる。
雪枝は今までに書いた短歌を整理していると、夕陽からの手紙が届いていて、清水という好きな子がいて、その子をなるべく悲しませないようにしたい、さようなら、と書いてあった。俺たちは晴れた日、水族館に行った。子どものように楽しんで、記憶の中の家族写真に今の光景がゆっくり重なっていく。満面の笑みの雪枝を撮ったアナログカメラのシャッター音が耳に残った。
長々と書いてしまいましたが、結論から言うとあまり面白い小説ではありませんでした。魅力的なキャラクターも出てこないし、話もどうってことない話です。家族を主題にした話ですが、夕陽は普通のしあわせ家族、著者らしさが出ていたのは、夕陽と松田と清水がからむ場面で、ここを広げて短編にしちゃった方がずっと面白くてさわやかな小説になったと思いました。もしかしたら豊島さん、長編向いて無いかも?
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