恒例となった、東京新聞の水曜日に掲載されている斎藤美奈子さんのコラムと、同じく日曜日に掲載されている前川喜平さんのコラム。
まず10月9日に掲載された「勇気ある人と勇気ない人」と題された前川さんのコラムを全文転載させていただくと、
「「統一教会」信者の両親のもとで育った小川さゆりさん(仮名)が7日、外国特派員協会で記者会見を行った。見た目の貧しさからいじめを受けたこと、アルバイトで貯(た)めたお金を親に奪われたこと、教団の修練会でセクハラを受けたこと、精神を病み入院したことなどを彼女は率直に語った。
政治に対しては、高額献金を規制する法律を今国会で成立させるよう強く求め、恐怖心を煽(あお)る教義などを理由に団体の規制や解散ができる法律、行き過ぎた信仰による虐待から子どもを守る法律、子どもの利益を最優先に動く組織、政治家が広告塔にならないようにする行動基準などの必要性を訴えた。
会見の終盤、「統一教会」から両親の署名したメッセージが届いた。娘は精神の異常のため嘘(うそ)を言うので会見を中止するよう求める内容だった。彼女は自身の病歴を隠さず語り、夫の支えにより今は治ったと言明。最後に決然と言った。「私が正しいと思ってくださるなら、どうかこの団体を解散させてください」
同じ日、細田博之衆議院議長は、議長公邸で議院運営委員会の山口俊一委員長と与野党筆頭理事に二枚紙を渡し、「統一教会」との「接点」について「説明」したという。なぜ委員会に出席して説明しないのか。なぜ記者会見をしないのか。勇気のない人だ。小川さんの爪の垢(あか)を飲め。」
また、10月12日に掲載された「なぜ辞めない?」と題された斎藤さんのコラム。
「山際大志郎経済再生担当相はなぜ大臣をお辞めにならないのだろう
鉄のメンタルの持ち主なのか、特別な事情があるのか。これだけやり込められたら、普通、ご自分から止めますよね。
この人に引導を渡せない首相も首相だ。この人のおかげで支持率は下がり、国会が滞る。すみやかにお辞めいただくのが道理というものである。なのにお咎(とが)めなし。
それでふと思い出したのがオランダの堤防の話である。堤防の穴から水が漏れていると気づいた少年が、自分の腕を穴に突っ込んで漏水を防ぎ、洪水から町を守ったという、あの話である。
もしかして山際大臣はこの少年と同じ状態にあるのではないか。
少年が手を引っ込めたらたちまち水があふれ、やがて堤防は決壊する。同様に山際大臣が辞めたら、旧統一教会と関係のある他の議員にも影響が及び、辞任の連鎖を招いて政権は崩壊。ひいては党そのものが瓦解(がかい)する。なにしろ岸田内閣は、大臣8人、副大臣11人、政務官12人が教団と接点があったと認めているのだ。細田衆院議長も萩生田政調会長も当然、無傷ではいられまい。
少年の行為は英雄的だが、役割としては樽(たる)の栓である。栓を抜けば、たちまちヤバイ情報があふれ出し、自分にも厄災が及ぶ。だから恐(こわ)くて誰も栓を抜けない。でも栓はもう限界だ。諦めてはどうか。」
そして、10月16日に掲載された「東京医科歯科工業大学」と題された前川さんのコラム。
「東京医科歯科大学の田中学長と東京工業大学の益学長が14日記者会見し、2024年度中に両大学を統合すると発表した。医工連携など異分野融合研究を追究する新たな自然科学系総合大学。名称は未定だ。統合を急いだ背景には、新設の「大学ファンド」の支援を受ける「国際卓越研究大学」を目指す意図があると言われる。
十兆円のファンドの運用益は数校の国際卓越研究大学に集中的に配分される。配分額は一校あたり年間数百億円というから、認定が得られるかどうかは死活問題だ。認定されるためには、事業規模(総支出額)の年3%程度の成長や学外者を入れて学長を監督する合議制機関の設置などが求められる。引用回数の多い論文を一定数以上生み出すことも条件とされるが、この条件は新大学のような自然科学中心の大学に有利に働くだろう。
大学ファンドと国際卓越研究大学。その目的は経済成長を牽引(けんいん)するイノベーションの創出だ。こんな制度を考えたのは文部科学省ではない。内閣府の総合科学技術・イノベーション会議だ。新大学が国際卓越研究大学になれば、世界に伍(ご)する研究大学に成長することも可能だろう。しかし大学はイノベーション創出のための機関ではない。真理の追及という大学本来の目的は決して見失わないようにしてほしいと願うのだ。」
その文章も一読に値する文章だと思います。
まず10月9日に掲載された「勇気ある人と勇気ない人」と題された前川さんのコラムを全文転載させていただくと、
「「統一教会」信者の両親のもとで育った小川さゆりさん(仮名)が7日、外国特派員協会で記者会見を行った。見た目の貧しさからいじめを受けたこと、アルバイトで貯(た)めたお金を親に奪われたこと、教団の修練会でセクハラを受けたこと、精神を病み入院したことなどを彼女は率直に語った。
政治に対しては、高額献金を規制する法律を今国会で成立させるよう強く求め、恐怖心を煽(あお)る教義などを理由に団体の規制や解散ができる法律、行き過ぎた信仰による虐待から子どもを守る法律、子どもの利益を最優先に動く組織、政治家が広告塔にならないようにする行動基準などの必要性を訴えた。
会見の終盤、「統一教会」から両親の署名したメッセージが届いた。娘は精神の異常のため嘘(うそ)を言うので会見を中止するよう求める内容だった。彼女は自身の病歴を隠さず語り、夫の支えにより今は治ったと言明。最後に決然と言った。「私が正しいと思ってくださるなら、どうかこの団体を解散させてください」
同じ日、細田博之衆議院議長は、議長公邸で議院運営委員会の山口俊一委員長と与野党筆頭理事に二枚紙を渡し、「統一教会」との「接点」について「説明」したという。なぜ委員会に出席して説明しないのか。なぜ記者会見をしないのか。勇気のない人だ。小川さんの爪の垢(あか)を飲め。」
また、10月12日に掲載された「なぜ辞めない?」と題された斎藤さんのコラム。
「山際大志郎経済再生担当相はなぜ大臣をお辞めにならないのだろう
鉄のメンタルの持ち主なのか、特別な事情があるのか。これだけやり込められたら、普通、ご自分から止めますよね。
この人に引導を渡せない首相も首相だ。この人のおかげで支持率は下がり、国会が滞る。すみやかにお辞めいただくのが道理というものである。なのにお咎(とが)めなし。
それでふと思い出したのがオランダの堤防の話である。堤防の穴から水が漏れていると気づいた少年が、自分の腕を穴に突っ込んで漏水を防ぎ、洪水から町を守ったという、あの話である。
もしかして山際大臣はこの少年と同じ状態にあるのではないか。
少年が手を引っ込めたらたちまち水があふれ、やがて堤防は決壊する。同様に山際大臣が辞めたら、旧統一教会と関係のある他の議員にも影響が及び、辞任の連鎖を招いて政権は崩壊。ひいては党そのものが瓦解(がかい)する。なにしろ岸田内閣は、大臣8人、副大臣11人、政務官12人が教団と接点があったと認めているのだ。細田衆院議長も萩生田政調会長も当然、無傷ではいられまい。
少年の行為は英雄的だが、役割としては樽(たる)の栓である。栓を抜けば、たちまちヤバイ情報があふれ出し、自分にも厄災が及ぶ。だから恐(こわ)くて誰も栓を抜けない。でも栓はもう限界だ。諦めてはどうか。」
そして、10月16日に掲載された「東京医科歯科工業大学」と題された前川さんのコラム。
「東京医科歯科大学の田中学長と東京工業大学の益学長が14日記者会見し、2024年度中に両大学を統合すると発表した。医工連携など異分野融合研究を追究する新たな自然科学系総合大学。名称は未定だ。統合を急いだ背景には、新設の「大学ファンド」の支援を受ける「国際卓越研究大学」を目指す意図があると言われる。
十兆円のファンドの運用益は数校の国際卓越研究大学に集中的に配分される。配分額は一校あたり年間数百億円というから、認定が得られるかどうかは死活問題だ。認定されるためには、事業規模(総支出額)の年3%程度の成長や学外者を入れて学長を監督する合議制機関の設置などが求められる。引用回数の多い論文を一定数以上生み出すことも条件とされるが、この条件は新大学のような自然科学中心の大学に有利に働くだろう。
大学ファンドと国際卓越研究大学。その目的は経済成長を牽引(けんいん)するイノベーションの創出だ。こんな制度を考えたのは文部科学省ではない。内閣府の総合科学技術・イノベーション会議だ。新大学が国際卓越研究大学になれば、世界に伍(ご)する研究大学に成長することも可能だろう。しかし大学はイノベーション創出のための機関ではない。真理の追及という大学本来の目的は決して見失わないようにしてほしいと願うのだ。」
その文章も一読に値する文章だと思います。
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