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ジェフリー・ディーヴァー『バーニング・ワイヤー』

2013-12-24 13:48:00 | ノンジャンル
 ジェフリー・ディーヴァーの'10年作品『バーニング・ワイヤー』を読みました。リンカーン・ライム・シリーズの最新作です。
 ニューヨーク市の電力会社の管理センターに詰めていた主任技術者は、目の前に点滅し始めた赤ランプ「致命故障」に気づいて眉をひそめた。大型モニターにまた一つアラートが現れた。「MH-12 オフライン」「ブレーカーが開放されたって? どうしてだ? 負荷は正常だぞ」また一つ警告が増えた。「MH-12 オフライン」「MH-17、MH-10、MH-13、NJ-18より当該サービスエリアにリルート」電力会社はあらかじめ二重三重の冗長性を持たせるようにしていた。今日の場合も、MH-12のダウンと同時に、コンピューターが自動的に別の変電所から電力を振り分け、需要に応じた電力をMH-12のサービスエリアに提供し始めた。しかし解せないのは、そもそもMH-12のブレーカーが落ちた理由だった。そのとき、また一つ赤ランプが点滅を始めた。「致命故障 NJ-18 オフライン」電力供給を絶たれた二つのサービスエリアに送電しているのは、マンハッタン内の三つの変電所、第17、第10、第13だけだった。コンピューターは本来の仕事をしていない。主任技術員は、中堅の技術員に指示した。「手動に切り替えよう。MH-12のサービスエリアの東半分に、Q-14から融通してくれないか。何してる? すぐやれ」「それが――やってみてはいるんですが、スイッチギアが反応しないんです」「馬鹿な!」次の点滅したランプは「致命故障 MH-17 オフライン」。いまは二つの変電所が五つ分の仕事を引き受けている。やがて「致命故障 MH-13 オフライン」の点滅も始まった。巨大な貯水地にいっぱいに溜まった水を、たった一本の排水パイプ、それも冷蔵庫についているドレンホース程度の細いパイプから放出しようとしているようなものだった。MH-10のブレーカーの設定がリセットされていた。安全負荷の十倍もの電圧を受け容れるようになっている。旧式なトランスや配電盤のなかには、なすすべもなく溶けて伝導率の高い金属の塊になり果てるところもあるはずだ。そうなれば電気はそのまま流れ続け、火災を引き起こしたり、下手をすると電気的爆発(アークフラッシュ)を発生させたりしかねない。「国土安全保障省と市警に通報だ! 頼む、誰かリセットしろ! ブレーカーをリセット!」「反応なし! MH-10のシステムに入れません」「負荷を制限しますか?」主任技術員は熟考した。“負荷を制限する”とは、大規模停電を回避するために一部地域への送電を手動で停止するということだ。主任技術員は上司の上級副社長に連絡した。現場での手動の作業の危険さを主任技術員が訴えると、上級副社長は社長のジェッセンの決断を仰ぎ、その結果、作業員を現場へ派遣して手動でケーブルを接続することになった。
 バスの運転手は「アルゴクイン・コンソリデーテッド電力会社 MH-10変電所 社有地 危険 高電圧 立入厳禁」と書かれた建物の窓から直径1センチ強のケーブルが無造作に垂れ下がっているのを見ていた。やがてバスのうしろにアルゴクイン・コンソリデーテッドの車が停まり、作業員が3人降り、変電所のほうに歩き出した。最後のラテン系の若者がバスに乗ろうとしていた時、運転手は物の焦げた臭いを嗅ぎ、変電所の出入口から煙が一筋立ち上がっているのを見た。若者がバスに乗ろうとした瞬間、変電所のなかから何かが弾けるような音が続けざまに響き、窓からぶら下がったケーブルとバスとのあいだの空間に1ダースの太陽が出現したかのような光が閃いた。同時に、白い炎の雲が広がって、ラテン系の若者が呑み込まれた。何も見えなくなった。なかば視力を失われた目は、炎をとらえた‥‥。

 今回もハラハラドキドキの謎解きどんでん返し大作戦でした。微細証拠による思ってもいない話の展開に快く身を任せるとともに、特にディーヴァーの場合は事件で悲惨な死者が出ることが多く、その点、ゴシックホラー的な楽しみ方も無意識のうちにしているのかなあ、と思いました。なお、上記以降のあらすじは、私のサイト「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto)の「Favorite Novels」の「ジェフリー・ディーヴァー」のところにアップしておきましたので、興味のある方は是非ご覧ください。

→「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/

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