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中島らも『ぷるぷる・ぴぃぷる』その1

2011-08-04 01:52:00 | ノンジャンル
 サム・ペキンパー監督の'73年作品『ビリー・ザ・キッド 21才の生涯』をスカパーの洋画★シネフィル・イマジカで再見しました。無名時代のハリー・ディーン・スタントンが顔を見せるなど、見どころもあるのですが、いかんせん主役であるビリー役のクリス・クリストファーソンと、パット・ギャレット役のジェイムズ・コバーンが今一つ魅力に欠け、同じペキンパー作品でジェイソン・ロバーズ主演だった'69年作品『砂漠の流れ者』などに比べると、明らかに見劣りし、途中から早回しで見てしまいました。

 さて、岡野宏文さんが対談本『読まずに小説書けますか』の44 ページ中ほどの部分で紹介していた、中島らもさんの'88年作品『ぷるぷる・ぴぃぷる』を読みました。新作落語二題、コントの脚本34本、短編小説一つからなる本です。
 新作落語の一つめ『曼陀羅散華(まんだらさんげ)』では、18世紀の蘭学医・緒方洪庵の弟子である橋本左内が、薬と毒に詳しい八瘤米明斎の娘・おりんに一目惚れし、米明斎の知識を後世に伝えるという名目で、三日と空けずおりんの元に通いますが、次第に弱り衰えていきます。洪庵は、おりんの母・おりくがかつては自分の許嫁だったこと、自分が長崎に行っている間に米明斎が強引におりくと結婚し、その後も洪庵を慕うおりくを恨む米明斎がおりくに毒を盛って殺したという噂があることなどを左内に話し、おりんが毒を欲している事実を知って、以後おりんに会わないように言いますが、左内は納得しません。そこで洪庵は左内を連れて、夜の米明斎の家に忍び込みます。おりんが世話をしている花に野犬を放つと、図らずして花に触れた野犬は即死し、花の下からはおりくの死骸が出てきます。そこに現れた米明斎は、おりくを毒殺したこと、おりんが洪庵とおりくの間の子ではと疑って、同じ毒で赤子のおりんも殺そうとしたところ、おりんは死なず、毒を栄養としておりんが育ったことを明かし、周囲の者を自らの毒で殺してしまうおりんの売れる先がやっと見つかったと言って喜びます。おりんは左内を自分の不幸な人生に引き込んでしまったことを悔い、米明斎に口づけをして彼を殺します。洪庵はどんな猛毒をも消す薬を持っていることをおりんに告げると、おりんは「来世であなたを待っています」と左内に言い残して、その薬を飲み、毒そのものである自分自身をこの世から消し去るのでした。
 新作落語の二つめ『神も仏もアルマジロ』では、淡路島から通勤しているために、明日の出張のために新大阪に朝6時には来られない岸が、前夜、上司の課長宅へ泊まらせてもらうことになります。玄関の三和土には聖母マリアの像の絵が落ちていましたが、これは仏教徒である課長の妻が、キリスト教徒である課長を貶めるために仕組んだ罠でした。天井に張り付いていた妻に対し、課長は十字架を投げますが、かわされ、妻は回覧を届けに床下格納庫を通って出ていきます。冷蔵庫の中には、山岳密教に凝り、山伏の資格を取るために荒行を続けている長男が凍えながら入っていました。岸が気付くと、自分の背中には、去年死んだブードゥ教徒の課長の父が、ゾンビとなっておぶさり、岸の脳みそをすすろうとしています。応接間に逃れると、ゾロアスター教徒の長女が床に灯油をまいて、火をつけようとしていました。やっとビールで乾杯した課長と岸でしたが、10時を超えたことを知った岸は、メッカに向かって祈りを捧げなければならない時間を過ぎてると言ってあわてるのでした。

 著者によるあとがきによれば、前者はホーソーンの怪奇小説『ラパチーニの娘』を下敷きにしたもので、後者はもともとはラジオ用コントだったものを仕立て直し、著者の劇団リリパット・アーミーの座員でもある桂吉朝、キッチュのために書いたものなのだそうですが、どちらもよくできた落語で、堪能しました。普段落語をあまり聞かないので、落語ってこんなに面白いものなんだなあと再認識した次第です。これに続くコント、小説の部分も楽しみです。

→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/

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