岡野宏文さんと豊崎由美さんの共著『読まずに小説書けますか』の中で紹介されている、エリック・マコーマックの'87年の短編集『隠し部屋を査察して』を読みました。
表題作『隠し部屋を査察して』では、この入植地の地区には六楝の建物が建ててあり、それぞれの建物には地下牢と呼んだ方がふさわしい〈隠し部屋〉があって、その住民を1階の住人である管理人が管理し、わたしは、管理人の仕事ぶりを月末に当局に報告する査察官の一人です。最初の〈隠し部屋〉の住民は、完璧な人工の森を創造した男が収容され、当局によって火をつけられたその森からは、目も口も脚もでたらめな位置についた奇怪な動物たちが次々に飛び出してきたのでした。二人目の住人は発明家で、自動ギロチンを発明し、そのそばからは動物の死骸の山とともに彼の妻の友人ふたりの首なし死体が発見されました。三人目の住人は絶世の美女で、魔女として逮捕された後、口からウツボや毛糸やピストルや花崗岩や牛馬の糞や自分の血液型ではない血液や解読不能な文字で書かれた書物や治安判事との遭遇を詳細に記した羊皮紙を吐き出した後、まさにその羊皮紙に記されていたとおりにピストルで治安判事を射殺したのでした。四人目の住人は元農夫で、森の中に実物大のスペイン艦隊のガリオン船を組み立てて逮捕され、その後、首都の門の夜警助手に任命されましたが、朝になると城壁の頂上に登って「光だ!光だ!」と絶叫したという男。五人目の住人は登山家で、世界中のあらゆる峻険な岸壁を征服した後、自然の山より巨大な人工の山を建造しようとして逮捕され、現在も部屋の壁を登ることに執着し続けています。六人目の住民は元町長で、年に一度人生を交換しあう祭りをエスカレートさせて、一年中本来の自己を捨てて自由に役割を交換しあうよう奨励し、その結果自分も本当の元町長なのか分からなくなった男です。わたしは初めて首都にやって来た時、住所と名前を警察に登録しましたが、登録した住所には村だったかもしれない廃墟しかなく、地面の下から若い娘から作られ、細かな文字がびっしりと刺青されたなめし皮が発見されたと警察から知らされ、それ以降この地区の査察官に指名されたのでした。
『断片』は、バートンの著書の一節から生じた問題の解決のためにわたしがスコットランドに戻され、やがて禁欲、沈黙、盲目を誓うために、信者が去勢され、舌を抜かれ、目をつぶされた教団が存在したことを知る話。
『パタゴニアの悲しい物語』では、パタゴニアの探検隊のメンバーが焚き火を囲みながら、一人ずつ悲しい思い出話をしていきます。そして、神殿の守護者になるために上半身と下半身が180度ねじれるよう育てられ、呪術師の施す手術によって、生殖器を空に向け、顔と胸を地面に向けて四つんばいになるしかなくなる少年の話、ある修道士の墓のまわりで、失われた手足が再生したり、視覚や聴覚が回復したり、とりわけ痔疾と梅毒がよく治ったので、聖人として奉るため、墓を暴くと、柩の内側を引っ掻いた跡が見つかり、「早すぎた埋葬」であったことが分かる話、外科医が妻を殺し、その死体をバラバラにして4人の子供と飼い犬と飼い猫の体内に埋め込んだ話がなされるのでした。(明日へ続きます‥‥)
表題作『隠し部屋を査察して』では、この入植地の地区には六楝の建物が建ててあり、それぞれの建物には地下牢と呼んだ方がふさわしい〈隠し部屋〉があって、その住民を1階の住人である管理人が管理し、わたしは、管理人の仕事ぶりを月末に当局に報告する査察官の一人です。最初の〈隠し部屋〉の住民は、完璧な人工の森を創造した男が収容され、当局によって火をつけられたその森からは、目も口も脚もでたらめな位置についた奇怪な動物たちが次々に飛び出してきたのでした。二人目の住人は発明家で、自動ギロチンを発明し、そのそばからは動物の死骸の山とともに彼の妻の友人ふたりの首なし死体が発見されました。三人目の住人は絶世の美女で、魔女として逮捕された後、口からウツボや毛糸やピストルや花崗岩や牛馬の糞や自分の血液型ではない血液や解読不能な文字で書かれた書物や治安判事との遭遇を詳細に記した羊皮紙を吐き出した後、まさにその羊皮紙に記されていたとおりにピストルで治安判事を射殺したのでした。四人目の住人は元農夫で、森の中に実物大のスペイン艦隊のガリオン船を組み立てて逮捕され、その後、首都の門の夜警助手に任命されましたが、朝になると城壁の頂上に登って「光だ!光だ!」と絶叫したという男。五人目の住人は登山家で、世界中のあらゆる峻険な岸壁を征服した後、自然の山より巨大な人工の山を建造しようとして逮捕され、現在も部屋の壁を登ることに執着し続けています。六人目の住民は元町長で、年に一度人生を交換しあう祭りをエスカレートさせて、一年中本来の自己を捨てて自由に役割を交換しあうよう奨励し、その結果自分も本当の元町長なのか分からなくなった男です。わたしは初めて首都にやって来た時、住所と名前を警察に登録しましたが、登録した住所には村だったかもしれない廃墟しかなく、地面の下から若い娘から作られ、細かな文字がびっしりと刺青されたなめし皮が発見されたと警察から知らされ、それ以降この地区の査察官に指名されたのでした。
『断片』は、バートンの著書の一節から生じた問題の解決のためにわたしがスコットランドに戻され、やがて禁欲、沈黙、盲目を誓うために、信者が去勢され、舌を抜かれ、目をつぶされた教団が存在したことを知る話。
『パタゴニアの悲しい物語』では、パタゴニアの探検隊のメンバーが焚き火を囲みながら、一人ずつ悲しい思い出話をしていきます。そして、神殿の守護者になるために上半身と下半身が180度ねじれるよう育てられ、呪術師の施す手術によって、生殖器を空に向け、顔と胸を地面に向けて四つんばいになるしかなくなる少年の話、ある修道士の墓のまわりで、失われた手足が再生したり、視覚や聴覚が回復したり、とりわけ痔疾と梅毒がよく治ったので、聖人として奉るため、墓を暴くと、柩の内側を引っ掻いた跡が見つかり、「早すぎた埋葬」であったことが分かる話、外科医が妻を殺し、その死体をバラバラにして4人の子供と飼い犬と飼い猫の体内に埋め込んだ話がなされるのでした。(明日へ続きます‥‥)
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