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柳宗悦『朝鮮人を想ふ』

2018-05-28 06:26:00 | ノンジャンル
 先日、劇団民藝の舞台『SOETSU 韓(から)くにの白き太陽』を母と観たのですが、実在したその主人公、柳宗悦(やなぎむねよし、通称やなぎそうえつ)が書いた文章がパンフレットに載っていましたので、こちらに転載させていただきたいと思います。題名は「朝鮮人を想ふ」です。

「吾々とその隣人との間に永遠の平和を求めようとなれば、吾々の心を愛に清め同情に温めるよりほかに道はない。併し日本は不幸にも刀を加え罵りを興へた。之が果して相互の理解を生み、協力を果し、結合を全くするであらうか。否、朝鮮の全民が骨身に感じる所は限りない怨恨である、反抗である、憎悪である。分離である。独立が彼等の理想となるのは必然の結果であらう。彼等が日本を愛し得ないこそ自然であって、敬ひ得ることこそ例外である。
 人は愛の前に従順であるが、抑圧に対しては頑強である。日本は何れの道によつて隣人に近づかうとするのであらう。平和がその希望であるなら、何の稚愚を重ねて抑圧の道を選ぶのであらう。
 金銭や政治に於て心は心に触れる事は出来ぬ。只愛のみが此悦びを興へるのである。植民地の平和は政策が産むのではない。愛が相互の理解を産むのである。此力を越える軍力も政権もあらぬ。余は想ふ、国と国とを交び人と人とを近づけるのは科学ではなく芸術である。政治ではなく宗教である。智ではなく情である。只ひとり宗教的若しくは芸術的理解のみが人の心を内より味ひ、味はれたものに無限の愛を起すのである。
 日本は朝鮮を治めようとして軍人を送り政治家を送った。併し友情や平和の真意を知つてゐるのは宗教家であり芸術家である。余は古いソクラテスやプラトーンの如き又は孔子、老子の如き人々が真に一国の治平、万国の平和を語り得る人々であると確く信じてゐる。
 朝鮮の人々よ、余は御身等に就いて何の知識もなく経験もない一人である。又今迄御身等の間に一人の知人をすら持つてゐないのである。併し余は御身等の故国の芸術を愛し、人情を愛し、その歴史が嘗めた淋しい経験に尽きない同情を持つ一人である。又御身等がその芸術によつて長い間何を求め何を訴へたかを心に聞いてゐる。余は余の心にそれを想ふ毎に淋しさを感じ、湧きくる愛を御身等に贈らずにはゐられない。
 朝鮮の人々よ、よし余の国の識者の凡てが御身等を罵り又御身等を苦しめる事があつても、彼等の中に此一文を草した者のゐる事を知つてほしい。否、余のみならず、余の愛する凡ての余の知友は同じ愛情を御身等に感じてゐる事を知つてほしい。かくて吾々の国が正しい人道を踏んでゐないと云う明かな反省が吾々の間にある事を知つてほしい。余は此短い一文によつて、少しでも御身等に対する余の情を披歴し得るなら浅からぬ悦びである。(一九一九、五、十一)」

 『柳宗悦全集著作篇第六巻』(筑摩書房、1981年)より転載されたものだそうです。そして「1919(大正8)年5月20日~24日読売新聞に連載。全六節の第六節にあたる。『同年三月一日京城を中心として朝鮮の各所に起つた所謂騒擾(そうじょう)事件に対して、誰も不幸な朝鮮の人々を公に弁護する人がないのを見て、急ぎ書いたのである。之は私が朝鮮に就て書いた最初のものであつた』と柳は記している。」とパンフレットには記載されていました。
 北朝鮮に対して圧力をかけるだけの安倍政権の人々に一度読んでもらいたい文章です。また、対話重視の現在の韓国の文大統領の偉大さも見えてくる、そんな文章でした。現在の日本は安倍政権のようなひどい政治が行われているにも関わらず、日本の日常生活の中に美を発見し、また日本の文化にも興味を持ってくれる外国の方々が多くいて、その点では、私たちが当たり前と思って見過ごしているようなことの中にも美や芸術が存在していることになり、心強くなります。日本政府は、産業育成のために発展途上国にカネを出すだけではなく、もっと文化的事業におカネを出してほしいと切に思います。柳宗悦は天国で今の日本をどう見ているのでしょう?

 →Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto

P.S 昔、東京都江東区にあった進学塾「早友」の東陽町教室で私と同僚だった伊藤さんと黒山さん、連絡をください。首を長くして福長さんと待っています。また、この2人について何らかの情報を知っている方も、以下のメールで情報をお送りください。(m-goto@ceres.dti.ne.jp)

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