常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

木の芽

2022年05月03日 | グルメ
この季節、身体を元気にしてくれる食べものと言えば山菜。コゴミやワラビは言うまでもないが、芽吹いたばかりの木の芽は珍重される。こちらでは、木の芽と言えばアケビの葉のことだ。サッと湯がいて、クルミの実などとともに口に入れて広がるあの独特の苦味は、まさに春の味だ。だが、木の芽は、本来、サンショウの新芽を指す。鮭の焼き身の乗せたり、たけのこご飯に、また木の芽味噌にもする。日本人に古くから愛された、ハーブである。

少しばかり早き夕餉の木の芽和え 下村ひろし

一つかみの木の芽を持ち帰って、鮭のルイベに乗せて食べると、想像以上のおいしさだ。値上がり時代の食卓には、こんな日本の知恵を復活させたい。ウコギという木の芽をもある。米沢藩の上杉鷹山が推奨したものだ。今も、米沢には生垣にウコギが用いれている。春、芽吹いたウコギの芽を摘んで、ウコギご飯にする風習は、今も連綿と続いている。
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ブリ大根

2021年12月04日 | グルメ
今年は知人からたくさん大根をいただいた。ひところジャガイモや玉ネギなどの値上がりが報じられたが、ここへきて白菜や大根が安値になっているらしい。晩秋の気温が高かったせいか、大根の成長に寄与したらしい。映画監督の吉村公三郎の『味の歳時記』を見ていたら、「大根」の項に面白い話があった。大根役者のいわれを若い事務員に聞いた話だ。フランスにも同じ話があるそうで、「大根は決して当らない。(中毒しない)」と下手な役者が演ずる芝居は当らない、をひっかけた駄洒落だ、と説明してくれた。

今年は海水温が高くなって秋の獲れる鮭が不漁で、そのかわりに北の漁場でブリやサバが予期せぬ豊漁になっているらしい。サバにいたっては、この季節の漁獲量の百倍にもなっているそうだ。八百屋さんが言っていたが、ものがたくさん出廻って値が下がっている時期がその野菜の一番おいしい時。近年、冬に夏野菜を食べるような、地球を痛めつけるような食べものは食卓に乗せないことだ。その意味で一番安値のブリ、それも粗(魚屋さんで捌くのを待って買う)でいただいた大根を煮る。丁度、寒気が降りて来て小雪が舞う空を眺めながら、ふう、ふうとブリ大根を食べるのに何とも言えぬ幸せを感じる。

寒鰤のいづれ見劣りなかりけり 鈴木真砂女

昔、祖母や母が伝えてきた伝統食を改めて大切であると痛感している。納豆、マグロの血合い、牛筋の煮込み、イカの塩辛。どれも酒のつまみに向いているが、身体にもいい。「アメリカインディアンは風邪ひかない」というジョークのような話があった。しかし、これは本当の話だ。トウモロコシとビーンズ、これがインディアンの主食になる。動物性の食品は水牛だ。これは肉のほかに内臓も食べられる部位は全て食べる。西部劇では、ヨーロッパから渡った渡来じんと現地のインディアンの壮絶な戦いが描かれる。現地人の伝統食に培われた身体能力は想像を超えるものがある。流通で国全体の食料を賄うには無理があることが明らかになりつつある。伝統に戻って、耕作を放棄した土地にしっかりと目を向けた方策をみんなで支える国であるべきだ。
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檸檬

2021年05月07日 | グルメ
nhk の「ためしてガッテン!」の影響を受けている。瀬戸内海に浮かぶ人口9000人の生口島。ここでは、明治の頃から、国産レモンの産地として名高い。番組によると、ここの島民は2日に1個レモンを食べるという。その結果、島民の骨密度は全国平均と比較して13%とも高いという。レモンに含まれるクエン酸とカルシュウムを含む食品を一緒に採ると、カルシュウムの吸収率が格段によくなるとのことであった。

番組が紹介したのは、レモンサワーブームである。レモンの酸味、香りに加え、皮の付近の白い部分に含まれる苦みが味の決め手になっている。番組を見ながら昔作ったレモンの砂糖漬けだ。部活で運動をした後、子どもたちは作ったレモンで疲れを癒した。ならば家でできる手作りは、レモンを薄切りにして蜂蜜で漬けこむ、焼酎の蜂蜜レモン割り。夜の楽しみは、晩酌を楽しみながらカルシュウムの吸収を高める。

梶井基次郎の『檸檬』を読む。「私は何度も何度もその果実を鼻に持っては嗅いで見た。それの産地だといカリフォルニアが想像に上って来る。「鼻を撲つ」という言葉が断れぎれに浮かんで来る。そしてふかぶかと胸一杯に匂やかな空気を吸込めば、ついぞ胸一杯に呼吸したこのなかった私の身体や顔には温かい血のほとぼりが昇って来て何だか身内に元気が目覚めて来たのだった。」

生口島の人たちが食べるのは、島で採れた檸檬だ。自分たちで育てた木が、果実を生み出す。梶井が得た元気の何倍もの元気をえることだろう。私が口にするは、梶井と同じカリフォルニア。それでも、そのおいしさは一日を楽しくしてくれる。
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山菜

2021年04月30日 | グルメ
今年の山菜は、コゴミ、ワラビ、アケビの芽、ヤマニンジン、タラの芽、コシアブラ、アイコなどほんの少しずつ食べた。どの山菜も春を感じさせてくれ、食卓に彩りを添えてくれる。春を待つ、というより、「もうワラビが出たの?」と驚かれるような早い春の訪れであり、初夏が足早に迫っている。ふと気づくのだが、山菜採りに行った人から、お裾分けしてもらうことが多くなった。以前はウドなど持ちきれぬほど収穫して、好きな人に分けて歩いたものだ。水上勉に『土を喰う日々』というエッセイがあるが、その4月の章に、山菜を食べる歓びが書かれている。

「この季節は、たらの芽、アカシアの花、わらび、みょうがだけ、里芋のくき、山うど、あけびのつる、よもぎ、こごめなど、わが家のまわりは、冬じゅう眠っていた土の声がする祭典だ。収穫したものを台所へはこんで、土をよく落とし、水あらいをしていると、個性のある草芽のあたたかさがわかっていじらしい気持ちがする。ひとにぎりのよもぎの若葉に、芹の葉に、涙がこぼれてくるのである。」

収穫した山菜は、テーブルの上に新聞紙を敷いて、仕分けや始末をする。固い部分やごみを除き、食べる部分を集める。その時点で、山菜の手触りや、放つ芳香ですでに山菜を食べた気になる。口のなかに広がっていく山菜の香りに、しみじみと生きている歓びを感じる。

ひとびとの言葉しづかや初蕨 八木林之助
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発酵食品

2021年04月03日 | グルメ
汗ばむような陽気である。開花が宣言された桜は、一気に3分咲きになった。青空に花の色がマッチする。コロナの終息が見えないなか、食生活に変化が見えている。毎日の食事に意識して取り入れているのは、発酵食品だ。免疫力のある身体を意識している。毎朝、必ず食べるのはみそ汁である。味噌は大豆と米麹に塩を加えて発酵させたもので、タンパク質が多く含まれている。野菜などの具を入れて、味噌汁とするのは日本特有の食文化と言える。わが家では、季節の野菜のほかに一粒の牡蠣、数粒の銀杏を入れて飲むのが習慣であるが、そこへ溶けるモッツァレラチーズが加わった。味が一段と深まり、栄養もかなりいけそうな気がする。

朝食にはこのみそ汁に加えて、辛子メンタイ、キュウリの糠味噌漬けがつく。ときには、納豆や梅干しなど、長く食べ続けてきた発酵食品である。食品の保存が発酵食品のそもそもの始まりであるが、それを司る微生物菌の研究が進むにつれて、健康維持にも大きな役割を果たしていることが分かってきた。糠のなかには豊富な栄養成分が含まれているが、発酵の際には新たなビタミンなどの栄養成分が作られる。糠床の栄養は、漬けられた野菜にも浸透して、栄養がプラスされる。

毎日食べる発酵食品に手製のヨーグルトがある。昼は麺類を食べるときも多いが、バナナやリンゴなどの果物にヨーグルトをかける。500㎖ほどの瓶で作っているが、妻と二人でひと瓶を食べてしまう。かけるジャムはブルーベリー。ヨーグルトには原料である牛乳由来の良質なたんぱく質が豊富だ。発酵されたことによって消化吸収が非常によくなっている。造血作用のあるビタミンである葉酸が蓄積されている。ポパイで有名になったほうれん草にもある葉酸で、元気のもとになる。

煮ゆる時蕪汁とぞ匂ひける 虚子
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