薊が頭を垂れて咲く山道を歩くと、ちょっと偉くなったような気がしないでもない。一本だけすっと立って咲いている花に蜜を求める蜂の姿があった。蜂に恵みを与えているような薊の様子がいかにも母性を感じさせる。野薊は晩春から夏にかけて咲く。ある人の言葉に花の色には春の風情が残るが、茎や葉には夏草の逞しさがあるとあったが、言いえて妙である。
一輪の薊を持ちし手が疲る 山口波津女
ここに住んでいる住民の人たちにも、山道を歩く人が増えている。ちょっと山歩きなどしそうもない人から「5時に起きて千歳山でに登ってきました。身体の不自由な人も歩いているのね。すごいと思いました。」と話しかけられた。そう言えば、今月に鹿島槍への山行の日が迫ってきた。その仲間たちも、アルプスを歩くための足づくりに、千歳山に登るのを日課に人がいる。夏の登山最盛期がまもなくやってくる。