公園にヤマユリが咲いていた。我が家で長年鉢に植えていたのと同じ種類だ。我が家のは、球根が増えすぎて堀上て、植え直したが芽は出ずじまいである。ユリにはずいぶんと多くの種類がある。ヤマユリ、オニユリ、ヒメユリ、ヒメサユリ、クルマユリ、テッポウユリ。果てはカサブランカという外来種まで、この季節はユリを愛する人が多いのではないか。
鬼もあり姫もありけり百合の花 鬼貫
話は少し飛んでしまうが、シェイクピアの『冬の物語』は王の娘が愛の象徴と寓意として花を登場させる。パーディナの台詞を少しだけ紹介しよう。
燕もまだ現れない前に咲きだして、三月の風を
その美しさでとりこにする花!ほのかに咲くすみれの花、
それでもジューノーのまぶたより愛らしい花、
ヴィーナスの息よりもかぐわしい花、あおざめた桜草の花、
大胆にものおじしないで咲くクリン草の花、
それに王冠草、あらゆる種類の百合の花、
いちはつもそのひとつ!ああ、こういう花がないのです、
あなたにそれで花輪を作ってあげたいのですが、・・・
冬にはどの花も咲かない。王女からこんなたくさんの花、愛の象徴としての花を貰う男はどれほどしあわせなことだろうか。上田敏は訳詩集『海潮音』で、この詩を「花くらべ」と題して訳している。