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梅雨の晴れ間、貴重な日に山行計画を前倒して行ってきた。会津の猫魔ヶ岳、この珍しい名の山は磐梯山と兄弟火山と呼ばれている。猫魔というのは、もとより猫の妖怪だ。化け猫とでもいうのか、近隣の人たちへ様々祟りをしてきた。曰く、この山に化け猫が住み着いて、入山する人を手当たりしだい食べていたという伝説も残っている。標高1404m、昨日までの雨で登山道はぬかるんでいた。雄国沼を巻くように登る登山道は、平坦な道から高度を300mほど上げる3キロほどの道のりである。
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頂上の手前、雄国沼を展望できる地点に猫石がある。大きな岩を積み重ねた、不気味な石だ。この石は、弘法大師がこの地を錫杖の折、住民の人の猫魔の被害を聞いて、大師が猫魔を調伏し、この怪石で妖怪を閉じ込めてこの地に現れぬようにしたシンボルだと言い伝えられている。この石から約600mで頂上に着く。頂上からは磐梯山、燧ヶ岳、飯豊山などの眺望をほしいままにするが、あいにくの霧でこの景観は叶わなかった。小憩、記念撮影後、下山する。
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麓にある雄国沼は、ニッコウキスゲの大群落が見られる名所として知られる。ちょうど見ごろを迎え、多くの人がこの花を見に訪れていた。本日の参加者は4名。この雄国沼のニッコウキスゲが見頃である情報を得ている人ばかりであった。この花は遠目で見ると、沼の前の湿原を黄色く染め上げるように咲いているが、近づいて見ると重なりあって咲いているわけではない。一本一本の花は適当な距離をとって咲いている。
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この日は週末の金曜日。学校の生徒や幼稚園の児童の遠足に出会った。子どもたちは、久しぶりの校外活動のためか、元気いっぱい。水辺に産卵した森アオガエルの泡状の卵のおおはしゃぎ。久しぶりに子どもたちから元気をもらった。
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湿原に咲くのはニッコウキスゲだけではない。草むらに目をこらすとアヤメの花が、日かげにひっそりと群生している。アヤメの奥ゆかしいたたずまいが好ましい。さらに小さくてもっと可憐なトキソウがたくさん咲いていた。この日の山行の目的は、猫魔ヶ岳の頂上を極めることのほか高山の花たちに会うことでもあった。雄国萩平ら駐車場から登山口のある金沢峠までの山道は会津バスのシャトルバスに乗る。往復1000円。
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