78歳の誕生日が過ぎた。ラインやフエイスブックの友達から、たくさん誕生日を祝うメッセージが届いた。おめでたいと言うべきか、男性の平均寿命に近づて、やはり意識するのはどのような最期を迎えるか、ということだ。兼好法師の言葉が思い出される。
「人皆生を楽しまざるは、死を恐れざる故なり。死を恐れざるにはあらず。死の近き事を忘るるなり」(『徒然草』)
死を人間の運命として深く自覚している人は、一日、一日を喜びをもって、自分のしたいことして送ることができる。これが兼好法師の教えである。93段に「牛を売る」という話がある。「牛を売るがあり、買う人があった。その買う人が『明日、代価を払うので、その時、牛を引き取ろう』と言ったが、その夜に牛が死んでしまった。この話から、人は牛を売る人が損をし、買う人が得をしたと考える。
兼好の考えは、牛を死なせた者は、死は生命あるものにとって差し迫ったものである事を知った。一日の命は万金より重いと知ったわけだから、損をしたことにならない、考える。この一日の命を、楽しんでいきることができるからだ。