常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

おでん

2024年11月03日 | グルメ
11月は寒気とともにやってきた。スーパーに買い物に行っておでん種を見つけ急におでんが食べたくなった。秋になるといち早くコンビニにおでんの旗が立ち季節を告げる風物詩になっている。空の雲や樹々の色で季節を感じるのでなくコンビニの旗やおでんを炊く匂いに冬を感じる。なんとも情けないような気がする。冬になっておでんが食べたくなるのはおでん屋に青春の思い出があるからだ。最近はラーメン屋の行列ができるがあまりおでん屋に人が集まる景色は見ない。若者たちがあまり食べなくなったのだろうか。

おでんはそもそも田楽からきている。コンニャクを湯がいて味噌をつけた簡単ものだが、発展して出汁を入れた醤油鍋に、コンニャク、大根、はんぺん、がんもどき、豆腐、くし刺しにした銀杏、卵など煮込んだものに変化していった。大鍋の汁は変えることなく使うのおでん屋の自慢だ。「大根、豆腐」などと注文すると、店の親父さんが、「へい」と言ってドンブリに熱々の汁に注文した品を入れてくれる。燗酒を飲みながら、湯気の立つ大根をフーフー引きながら食べると身体中が温まる。裏口が開いて鍋を差し入れる主婦がいた。何も言わず親父さんは鍋にたっぷりの汁と煮だった具材をを入れて渡す。その家では今夜はおでんで夕食という贅沢するのがすぐに見て分かる。

旧県庁の近くに「ふくろ」というおでん屋がある。学生時代からの馴染みで、コンパと言えば安くて腹いっぱいになるこの店に集った。就職してからも、この店が行きつけのようになった。会社帰りのバスを待つ間に店に寄ると、おでんをよそりながら親父さんが色んな話をしてくれた。東京で空襲にあったという。命からがら逃げた話も生々しかった。東京に店をたたんで、山形で開業したという話だ。まだ西も東も分からない若者におでんの修行時代の話をしてくれた。そんなひとときが私の青春時代を豊かにしてくれた。関東炊きということも親父さんから聞いた話だ。京都にもおでん屋があるが、このやり方は関東炊きと呼ばれ関東が本場あったらしい。
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