家から出ないと‥

　家から一歩も出ずにずぅーと鉢植えの準備をしていた。きちんと数えていなかったけれど、鉢は半分近くになったように思う。それだけ作業が少なくてすむけれど、何だか寂しい気がする。空の鉢はいつもチューリップを植えつけている鉢が２０個、同じくらいの大きさの鉢が１０個あり、もっと大きな鉢はとうとう１個になってしまった。ランタナの鉢は増えすぎて、２０個はあるだろう。薔薇の鉢が８個、白い花のニンドウが２鉢と橙色のものが１鉢、水仙は６０センチ鉢１個、デイゴが植わっている一番大きな鉢が１個。その他にまだ３０鉢はある。

　今日は空になった大き目の鉢にチューリップを植えつける準備をするつもりだった。それが、ランタナが大きくなってきたので、１鉢に１本ずつにしてやろうと始めたので、それだけで随分手間取ってしまった。私が差し上げたランタナが友人の家では地植えにされていたが、実に大きくなっていた。鉢ではなかなか成長しないのに、こんなにも違うものなのかと思った。鉢植えのランタナも取り出してみると、根がかなり張っているから、大き目の鉢に移せば成長することは分る。すると鉢の置き場がなくなってしまう。ランタナは鉢植えではうまくいかない花なのかもしれない。

　夕方になって、土が足りないので買い物に出かけようとして、ビックリした。髭が剃ってなかったばかりか顔も洗っていない。カミさんは朝早くからゴルフの練習で出かけていたから、朝食を食べてすぐにベランダに出てしまい、顔を洗うことに無頓着になっていたのだ。子どもの頃、年寄りは汚いなと思ったことがあった。髭がのび、目やにを溜め、だらしの無い格好でいるのを恥ずかしくないのかと思った。汚い年寄りにはならないようにと思ってきたはずなのに、どうもダメなジジイになってきている。

　恋でもしているなら、まず自分の身なりに気遣うだろう。人間のオスは動物のように、メスの気を引くような派手さや美しさや力強さを持っていない。昔は雄々しさがもっとはっきり見えたのかもしれないが、次第に人間の中身が気を引く基準になっていった。いや待て、今日でも女性たちの多くは男にどれほどの収入があるかで結婚相手を決めるというから、見た目は収入の多さに変わってきたと言うべきかも知れない。そういう点でも無職となった年寄りは女性の気を引くものを持ち合わせなくなっている。

　チューリップやサルビアに入れ込むことはいいけれど、もう少し自分のことに気を配らなくてはいけないなと思い知らされた。博物館学芸員の資格を取って欲しいと言われて始めた勉強も、このところ全くやっていない。資格を取って、それでどうするという見通しが立たないと勉強の意欲も失せる。何事もそうなのだろうけれど、これから先に楽しみがなければ意欲は湧いてこないものだ。こうやってチューリップの植え込みの準備をするのも、春に咲く風景を思い描くからだ。さあ、明日は買い求めてきた土を混ぜ合わせ、チューリップの植え込みの準備をやり遂げてしまおう。